商品が売れると利益が出ますが、この利益に一番影響するのが「仕入れ」だということを知っていますか。意外と知らない人が多いかもしれませんが、利益を出すには仕入れがとても重要です。
仕入額と売上原価の違いとは
仕入額と売上原価。この2つは、同じようでいて実は違うものです。それぞれの意味と計算方法を説明します。
仕入額とは
商品を売るには、他社から仕入れた商品を自社製品として販売する・他社から仕入れた材料で新しい商品を作って販売するという方法があります。
このように、他社から商品や材料を買うことを「仕入れ」といいます。1年間の仕入額とは、他社から仕入れた金額の総額のことをいいます。仕入額は、利益を計算するのに欠かせないものですが、実は損益計算書には載っていません。
では、損益計算書には、何が載っているのでしょうか。
売上原価とは
損益計算書に載っているのは、仕入額ではなく売上原価です。売上原価とは、その年度中に販売された商品に関連するコストで、仕入額も売上原価の一部となります。
例えば、販売した商品が前年度に仕入れた商品であっても、その年に売れれば前年の仕入額も当年度の売上原価に含めることになります。
売上原価とは、当年度に売り上げた商品の仕入額の合計となります。それに対して、仕入額とは、その年度中に仕入れた金額の合計のことをいいます。
売上原価とは
売上原価は、次のようにして計算することができます。
前年度末の売れ残り商品の仕入総額+当年度の仕入総額-当年度末の売れ残り商品の仕入総額=当年度販売された商品の仕入総額
売上原価は、その年度に販売した商品の仕入総額なので、1つも商品が売れなかった年の売上原価は0円となります。
売れ残った商品は在庫になります。この在庫のことを、会計上「棚卸資産」といいます。この棚卸資産も仕入額から計算しています。
なお、製造活動を行う企業は、仕入以外に、人件費やその他経費も売上原価に含まれます。
仕入れ額の計算方法
売上原価の計算方法を解説する前に、仕入れ額の計算方法について説明します。
仕入れ額の計算は単純ですが、所得や納税額にも関わってくるポイントなので、しっかりと理解しておきましょう。
仕入れ額の計算方法は、当年度に他社から購入した商品や材料の総額を求めるだけでOKです。ここでのポイントは、商品や材料の入手や保管にかかった人件費などのコストは計算に含めないことです。
例えば、A社から100,000円、B社から200,000円で商品を仕入れ、それらの保管を20,000円の倉庫で行った場合の仕入れ額は
100,000 + 200,000 = 300,000円
と計算できます。
仕入れの計上基準
仕入れの計上基準とは、「仕入れを帳簿につけるタイミングを決めるもの」で、3つの基準が存在しています。
仕入れ額を帳簿に記録する場合は、『計上基準』を決める必要があります。
選択した基準を変更すると、年度による状況比較ができなくなってしまうため、一度選択した基準は継続しなければいけません。
そのため、それぞれの特徴を理解して、ご自身にあった基準を選択するようにしてください。
1.発送基準
仕入れ先が商品を発送した日を計上日とし、3つの計上基準の中ではもっとも早く計上されます。
商品がこちらの手元に届く前に計上するため、
・商品が届かない
・発注と違うものが届いた
・不良品だった
といった場合には、記録を修正する必要があります。
2.入荷基準(受取基準)
仕入れ先から商品を受け取った日を計上日とします。
はじめに届いたものが発注と違うものだった場合でも、正しいものが届いてから計上すれば良いため、修正の必要がありません。
3.検収基準
仕入れた商品を検品し、問題ないことが確認できた日を計上日とします。
不良品でないことを確認してから計上するため、仕入れた商品のクオリティを担保できます。
一方、計上するタイミングは3つの中でもっとも遅いです。
消費税の扱い
仕入れの際に発生する消費税は、『税込処理』か『税抜処理』を選択して計上します。
1.税込処理
仕入れにかかった消費税も含めた金額を計上します。
税抜価格を計算する必要がないので、記録が簡単なメリットがあります。
デメリットは、期中で正確な損益を計算できない点です。
2.税抜処理
発生した消費税と税抜価格を分けて計上します。
税込処理に比べ、期中でも正確な損益を算出できるメリットと、記録に手間がかかるデメリットがあります。
売上原価の計算方法
ここでは、実際に仕事をする上での売上原価の具体的な計算方法を説明します。
売上原価を計算すると、損益計算書の売上原価に入る数字を出すことができます。
売上高と売上総利益に挟まれた部分が、売上原価です。
売上原価を計算するには、4つのステップに分けて考えるとわかりやすくなります。まず、4つに分かれた図を用意します。
この4つを1つ1つ埋めていきます。
ステップ1 前年度末の在庫(期首商品棚卸高)
まずは、図の左上から数字を埋めていきましょう。ここには、前年度末の在庫の金額をいれます。前年度末の在庫は、1年の始まりの在庫と同じことですが、正式名称を期首商品棚卸高といいます。
期首棚卸高が、200万であれば、図の左上には200万円と入ります。
ステップ2 今年仕入れた在庫(当期商品仕入高)
次に、左下に数字を入れます。ここには、今年仕入れた在庫の金額が入ります。正式名称を当期商品仕入高といいます。
当期商品仕入高を、500万とします。
ステップ3 年度末在庫(期末商品棚卸高)
3つ目は、右下に年度末在庫の金額を入れます。1年の終わりの在庫のことを正式名称で、期末商品棚卸高といいます。
期末商品棚卸高を、300万円とします。
期末商品棚卸高とは、仕入れたけど売れ残った商品のことです。1年の最後にある在庫のことなので、普段からしっかりとデータで管理しましょう。
ステップ4 売上原価を計算
ここまで説明してきたステップ1~ステップ3までで、4つに分かれた図のうち3つを埋めることができました。
ステップ1 前年度末の在庫
ステップ2 今年仕入れた在庫
ステップ3 年度末の在庫
あとは残っている1つの数字を計算すればいいだけです。
売上原価=前年度末の在庫+今年度仕入れた在庫-当年度末の在庫 となります。
計算式だけでは難しく感じるかもしれませんが、今回のように図で見るとわかりやすくなりますよね。ステップ1~ステップ3がしっかりとできれば売上原価を出すことができます。
正式名称でも覚えましょう。
売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高となります。
正式名称での図
損益計算書に数字を載せる
最後に、損益計算書にステップ1~ステップ4の数字を載せれば、完成です。
損益計算書を見てみると、ここで説明したことと同じような仕組みで成り立っていることが分かると思います。
売上総利益(粗利)の計算方法
売上原価が求まったら、売上総利益(粗利)を算出しましょう。
売上総利益とは、「商品の売上から原価を引いた利益」のことです。粗利(あらり)とも言われます。
せどりなどで紹介されている利益は、この粗利であることがほとんどです。
売上総利益(粗利)は 売上高 – 売上原価 で計算できます。
売上総利益(粗利)の具体的な計算例
売上総利益について、具体的な例を出して考えてみましょう。
例えば、商品を10,000円で販売し、その商品の売上原価が8,000円であった場合、
売上総利益 = 売上高 – 売上原価
= 10,000 – 8,000
= 2,000
より、売上総利益は2,000円と求めることができます。
物販における売上総利益
物販の場合は、商品の販売額から仕入れにかかった原価を差し引くことで売上総利益を算出できます。
例えば、5,000円で仕入れた商品を10,000円で販売したとします。
売上総利益 = 売上高 – 売上原価
= 10,000 – 5,000
= 5,000
より、売上総利益は5,000円と求めることができます。
売上総利益を算出するメリットは、「どの商品を扱うと、どれだけもうけられるか」が分析できる点にあります。
売上総利益が高くなる商品をメインとして扱うことで、収益を大きくすることも可能です。
売上総利益を高くする方法
収益を多くするには、売上総利益を高くすることが不可欠です。では、売上総利益を高くするにはどうしたらよいでしょうか。
1.売上高をあげる
まず、売上高をあげることが考えられます。
物販の場合は商品の販売額をあげる必要があるため、
・プレミア価格の商品を扱う
・サービスに付加価値をつける
などの工夫が必要です。
2.仕入額を下げる
次に、商品の仕入額を下げるのも有効です。
物販の場合は
・大量に仕入れによる値引き交渉
・クーポンを有効活用する
などが手段として挙げられます。
会社の損益を決定する在庫の評価とは
期末に売れ残った在庫の金額計算をしっかりとしていますか。仕入れた商品が、年度中に全て売れるとは限りません。在庫として抱えてしまうことも多いのです。
在庫評価をすることで、会社の損益を確定させることができるので、正しい会計報告をするためにも、しっかりと在庫評価について学びましょう。
在庫を評価するには
在庫を評価するとは、在庫の金額を計算するということです。在庫の金額を把握することで、資産を知ることができます。
在庫の数は、年末の棚卸で把握することが可能です。単価100円の在庫が10個あれば、1,000円ですよね。ここで問題となるのが、在庫の仕入額が違う場合です。
仕入先の違い・季節要因・仕入数量などによって仕入額は変動します。5月に単価100円で20個仕入れたが、7月に仕入量を増やし単価80円で50個買った。さらに、10月に単価70円で80個買ったというような場合、計算が難しいですよね。在庫で残っているものが、単価100円で仕入れたものなのか、単価80円で仕入れたものなのか分からなくなってしまいます。
このような場合の計算方法がいくつかあるので代表的なものを紹介します。
商品の特性に合った在庫評価計算をしよう
在庫金額を計算するには、主に「原価法」と「低価法」の2つがあります。
原価法は、最終仕入原価法・平均法・個別法・先入先出法・売価還元法などに分けられるのですが、今回は多くの会社で使われている先入先出法について紹介します。
先入先出法とは、先に仕入れた商品から順に売れたということで計算する方法です。例えば、商品が70個売れたとします。先ほどの例でいえば、単価100円で20個・単価80円で50個仕入れているので、残っている在庫は、10月に仕入れた単価70円の80個ということになります。
他にも、最終仕入原価法もよく使われています。期末に最も近い最後の仕入をした時の仕入単価を使います。上記であれば、10月に仕入れた単価70円を使って計算します。
もう1つの低価法とは、仕入単価と期末時点の時価を比べて安い方を採用する計算方法です。市場価格で計算することによって、価格低下の激しい商品の仕入計算をすることができます。ファッション業界など流行りの商品を扱う会社でよく使われる計算方法です。
品質劣化・破損による評価損とは
通常、商品を仕入れたらそれに利益を上乗せして販売するため、仕入れた価格より低い価格で商品を販売するということはありません。しかし、陳列中の傷・品質劣化・流行商品の売価低下で、仕入れ価格よりも低い価格で販売しなければいけないことがあります。これを在庫の評価損として計上することができます。
実際に販売をしない限りは評価損が発生することはありませんが、以下のケースでは評価損と認められる場合があります。
・環境や経済的な変化により著しく陳腐化した場合
・災害によって、著しく損傷した場合
・季節商品の売れ残りで、今後通常価格で販売することが困難と明らかである場合
ただし、単に物価変動・過剰生産などの事情によって価格が低下しただけでは、評価損を計上することは認められていません。
売上の予測をしてから仕入額を決める
企業が利益を出すには、仕入が重要です。仕入は、売上の予測をしてから決めるのが基本となっています。まずは、売上額・利益目標の計画を立てましょう。
利益を出すには、仕入額<売上額
利益を出すには、仕入額<売上額となるようにします。
まず、年間の売上目標を決めます。売上目標が100万円であれば、仕入額はそれ以下にしなければいけません。毎月10万円しか売上がないのに、毎月10万円仕入れていては利益になりません。
食品を扱う企業であれば、保管期間も限られてきます。回転率の高い商品を仕入れるようにしましょう。
100万円の売上目標で仕入額が40万円なら利益は60万円になります。このように、まずは売上目標を決めることで仕入額を計算することができます。
当たり前のことですが、売上額を仕入額が上回ってしまうと利益が出ないので、しっかりと計算して仕入れましょう。
売上目標を立てるには
まずは、売上目標を立てましょう。前年度の売上額を参考にすると計算しやすくなります。
前年度の売上が100で、今年度の売上が130ならば、そこから次年度の売上額を予測することができます。
売上額の目標が決まったら、仕入額を計算します。
利益率から利益額の予算を立てる
利益率から利益額を計算してみましょう。
100万円の売上がある場合、利益率40%なら
100×0.4=40万円
40万円の利益額となります。
利益額の予算がない場合は、このように前年度の利益率から算出してみましょう。
このようにして、利益率・利益額が分かったら、これをもとに仕入額の計算をします。
せどりでの仕入はどのくらいの利益率がいいのか
せどりでの利益率についても考えてみましょう。せどりで仕入をする場合、いくらで仕入れるのかが問題です。この場合も、利益率を計算することで、仕入れるかどうかの判断をすることができます。
どのようにして利益を出すのか決める
まず初めに、せどりでどのようにして利益を出していくのか決める必要があります。商品を販売する方法として、薄利多売というものがあります。1つ1つの利益が小さくても数を多く売ることによって利益を出していく販売方法です。
これに対して、1つ1つの利益を大きくして少ない商品でも利益を出すことができる販売スタイルがあります。ここでは、利益型販売と呼ぶことにします。薄利多売が、1つ300円の利益を出すのに対して、利益型販売は、1つの利益を3,000円程度にすることによって少ない商品でも利益が出るようにしています。
せどりで利益を出すには、自分がどちらのスタイルで販売をしていくのか決めるということが大切です。
薄利多売での仕入
薄利多売での仕入はどのようにしたらいいでしょうか。せどりをする場合、「いくらで仕入れていくらで売るのか」という基準があると簡単に利益を出すことができます。重要なポイントなので計算方法を紹介します。
薄利多売の場合は、利益率が20%あれば十分です。
例えば、ヤフオクで500円で売られていた商品がAmazonで1,000円で売られていたとします。この場合、500÷1,000=50%の利益率になると勘違いしてしまいますが、実際には販売手数料がかかるので利益率はもっと下がります。ただ、1,000円で売っているものを500円で仕入れられるなら、販売手数料を入れても利益率20%程度になるので、薄利多売スタイルであれば仕入れます。
いちいち計算するのが面倒くさいという場合は、「売上額が仕入値の2倍になるものなら購入する」というルールを決めると簡単に仕入をすることができるようになります。
次に、1,000円の商品がAmazonで1,500円で売っていた場合はどうでしょうか。この場合の利益率は、500÷1,500=約33%の利益率となります。販売手数料も考慮した場合の利益率は、10%以下になってしまいます。この場合は仕入をしません。
同じ500円の差でもこのようにして利益率を計算してみると、仕入ができる商品なのかそうでないのかかが分かります。
また、Amazonでは、販売手数料にも注意してください。本・CDなどは15%、カメラ・パソコン周辺機器は8%、スポーツ・アウトドア10%などの販売手数料がかかります。さらに、小口出品は基本成約料が1商品売れるたびに100円かかります。大口出品は月額料金を支払うことになるので、手数料も考慮して計算してください。
利益型販売での仕入
薄利多売では利益率20%程度の仕入をしますが、利益を重視する場合は、利益率50%以上を目指しましょう。
例えば、ヤフオクで2,000円で売っている商品がAmazonで4,000円で売っている場合を考えてみます。この場合、販売手数料などを考慮すると利益率が50%以下になってしまうので、仕入はしません。
ヤフオクで2,000円で売っている商品がAmazonで6,000円で売っている場合は、手数料を含めても利益率50%以上になります。この場合は、仕入をします。
薄利多売の場合は、売上金額が仕入額の2倍程度と説明しましたが、利益型販売の場合は、売上額が仕入額の3倍以上になるようにするといいでしょう。このように考えていけば、計算をする必要がないので時間短縮になります。
薄利多売と利益型販売
薄利多売は、多くの商品を仕入れて販売しなければいけませんが、利益型販売の場合は、仕入の数が少なく在庫管理をしやすいという特徴があります。どちらを選ぶかによって仕入の方法が変わってきます。
薄利多売スタイルから利益型スタイルに変えたい場合は、Amazonなどの売上ランキングを参考にして仕入れるだけでなく、今回説明したような利益率から仕入れる商品を決めることで、利益を大きくすることができます。
せどりのスタイルは、その人によって違うと思います。最終的に利益が出ればどちらでもいいのですが、まず最初にどちらのスタイルにするのか決めておくことが成功のカギとなります。
まとめ
ここまで、仕入額・売上原価の違い、損益計算書、利益率について説明してきました。仕入額を決める際の参考になったでしょうか。
どんなに多くの商品を仕入れていようが、売上がなければ利益として計上することができません。
利益計上しないからといって、販売目標から程遠い仕入をすると在庫を多くかかえてしまうことになります。在庫をかかえるということは、その分他の用途に使えた資金を眠らせてしまうということになります。せっかくのチャンスを棒に振ることになってしまうかもしれません。
売上目標・利益率・利益額からしっかりとした仕入額の予算を立てましょう。
この記事が、みなさんの商売のお役に立てば幸いです。