仕入れ金額の計算方法や利益計上の仕方を基礎から徹底解説

物販で利益を出すうえで重要なのは、「仕入れの質」です。また、仕入れの度に販売予測や利益目標を計算する必要もあります。その際に重要なのが、会計上の計算方法や概念です。

この記事では、初めての方でもわかるよう順を追って会計上の計算方法や概念についてまとめています。また、計上の基準やメルカリで利益を算出する方法なども紹介していきます。仕入れについて理解を深める際の参考にしてください。

目次

仕入れの前の事前準備。そもそも「掛け率」とは?

商品を仕入れる際に必ず出てくる言葉、「掛け率」。この概念を理解していないと会計に関する一連の会話に付いて行けず、置いてけぼりを食うことがあるかもしれません。また、今日では「掛け率」について間違った知識を身につけている方も少なくありません。

ここでは「掛け率」の正しい意味から活用の仕方まで、順を追って説明していきます。

そもそも、「掛け率」とは?

「掛け率」とは、「希望小売価格」に対する「仕入れ価格(=卸値)」の割合のことです。「卸率」ということもあり、小売店の立場から見た「仕入原価率」と同じものを指します。

掛け率は一律ではありません。メーカーと卸先との関係や取引実績、商品の取引価格などによって変化します。

掛け率を使った計算方法

掛け率という言葉がどのように使われているかを見てみましょう。

たとえば、バイヤーが仕入先に「今回も7掛けでよろしいでしょうか?」というふうに言ったりします。7掛けとは、7(割)を掛けるということです。

すなわち、上のセリフは、「希望小売価格に対して7割を掛けた値段で仕入れさせてくれますか?」という意味になります。

希望小売価格1,000円の商品があって7掛けの場合、1,000円×0.7=700円での仕入れとなります。30%OFFですね。

人によっては「7掛け」と言ったり「掛け率70%」と言ったり、表現の仕方は人それぞれですが、言っていることはみんな同じです。大事なことは、「掛け率」が「商品の希望小売価格に対し何%の値段で仕入れるのか」を意味していることを理解することです。

基本的な掛け率相場

メーカーと小売店との関係などさまざまな要因で掛け率は変わると申しましたが、掛け率はある程度相場が決まっています

アパレルメーカーが小売店に卸す際の相場は、6掛けと言われています。希望小売価格10,000円の服なら仕入れ値は6,000円となります。他には、化粧品メーカーなら6掛け食品メーカーやおもちゃメーカーなら7掛けが相場と言われています。掛け率が分かると、大まかな原価や販売コストが見えてきます。

もっとも、各業界の掛け率の相場は、あくまでも相場にすぎません。各業界内でも掛け率には幅がありますし、取引先と良い関係を築いたうえで上手く交渉することができれば、相場よりお得に仕入れることもできます。

掛け率の応用

ここからは、掛け率の応用法をご紹介したいと思いますが、その前に掛け率と一緒に確認しておきたい「上代」「下代」の意味について説明しておきます。

上代・下代とは?

先ほどから何度か出ている「希望小売価格」。これが「上代」です。つまり「上代」=「希望小売価格」となります。そして、「仕入れ価格」のことを「下代」といいます。

たとえば、店頭価格1,000円の商品を7掛けの700円で仕入れることができました。すると1,000円が「上代」、700円が「下代」となります。上代と下代の差が販売店の利益ですね。補足ですが、希望小売価格とはメーカーが示す「基準となる価格」のことです。

掛け率はどんな人が使うのか?

掛け率という言葉を日常生活の中で使うことはあまり無いでしょう。しかし、掛け率を使うのは商社などに勤める人たちだけではありません。それどころか、掛け率についての知識は社会人の常識といえます。

仕事上であなたが業者に見積もりを依頼する時、相手の見積もりどおりに発注というのはとてももったいないことです。

特に会社勤めの方なら、勤め先の会社がだいたいいつも同じ業者に発注するということはご存知ではないでしょうか。何度も取引することで交渉データが蓄積されるので、掛け率も自然に決まってきます。材料費は7掛けだけど人件費は2掛け、といった感じです。

掛け率についての知識を理解し覚えておけば、きっと役に立つでしょう。

掛け率についてしっかり理解しておきましょう

以上、掛け率をはじめ上代・下代の意味やその使用法などについて解説してきましたが、お分かりいただけましたでしょうか。

掛け率の概念を知っておくだけで、仕入れの際の交渉の幅が広がります。日常生活で使われない言葉なので、意識して理解し覚えておかなければ掛け率が出てくる会話に付いていくこともできません。

ここまでに学んだ知識を今後に活かしていただければ幸いです。

仕入れとは、売り上げ予測を立てた後に考えるもの

最終的に利益を出すためには、「仕入れの質」はとても重要な要素です。仕入れについて深く考えたことなんて無いという方は多いかもしれませんが、利益の多寡に仕入れ作業は大きく影響します。

ここからは、「仕入れ」の基礎について説明していきたいと思います。

どのように仕入れを決めるか

利益を出すための仕入れで参考になるのは「売り上げ予測」です。

仕入れが重要な理由は次のとおりです。

利益を出すには、仕入れ値が売り上げ額を下回らないといけません。当然のことです。現実に仕入れをする必要がある業種(小売が典型)であれば商品を在庫としてストックしておく必要がありますが、仕入れが多くなりすぎると赤字が膨らみます

どういうことなのか、具体的に見ていきましょう。

食品など、長期保管できない商品は回転率が命です。毎月20万円の売り上げしかないにもかかわらず40万円分仕入れると、売れなかった分は余計な在庫に回り、保管に必要な維持費がかさみます。また、破棄しなければならないとなると、廃棄料が掛かってしまいます。これらの維持費や廃棄料が赤字の原因となってしまいます。

また、衣料品など長期保管が可能なものでも、年間の売り上げが1000万円なのに1500万円分も仕入れてしまえば赤字です。また、衣料品は流行り廃りのある商品なので、ブームが過ぎれば売れなくなる可能性があります。

利益を生むための仕入れは難しくありません。売り上げよりも少ない金額で仕入れていれば利益は出ます。

たとえば、1000万円の売り上げが見込める場合、800万円で仕入れれば200万円の利益が出ます。

企業活動は利益あってこそです。利益を出すためには、正確な売り上げ予測に基づく適切な仕入れを心掛けましょう。

売り上げ予測は前年通りでなくてはならない、ということはありません。

「今まで安定して横ばいだったけど、ブームに火がついていて前期比110%は見込める」

というのであれば、それが正しい売り上げ予測です。

十分な根拠に基づいて売り上げを予測したうえで、仕入れを決めることが重要です。企業であれば利益率に関する資料や、前年のデータなどもあるでしょうから、詳細を把握するのも難しくは無いでしょう。

仕入れ値の計算

では、実際に売り上げ予測を立てたうえで仕入れ値を計算してみましょう。

売り上げ予測を100万円、利益率は40%とします。売り上げ100万円のうち利益率40%であれば、利益は40万円です。

売り上げ×利益率=利益

だからです。40万円の利益が目標なら、残りの金額で仕入れを行えば良いので、仕入れ値は60万円となります。

売り上げ-利益=仕入れ値

という計算です。売り上げのうちどれくらいの割合を利益にしたいのかを考え、残りを仕入れに当てればよいだけです。仕入れる前に「売り上げ予測」「利益率」を決めましょう。

仕入れ値を決めるには、売り上げ予測と利益率を先に決める必要があります。

「とりあえず仕入れたものを全部売ろう」

では綱渡りにもほどがあります。まずはゴールを決めて、ひとつずつ進めていきましょう。

適切な仕入れが、利益を生むのです。

締め後売り上げ・仕入れと在庫計上で利益・仕入れ値を計算

ここからは粗利益の計算についてや、締め後の売り上げ・仕入れの洗い替えについて説明してきます。

粗利益=売り上げ-仕入れ値

粗利益とは商品を販売した際の利ざやのことです。計算方法は、「売り上げ-仕入れ値」です。ちなみに、仕入れ値は、「売上原価」とも言います。

100万円の売り上げがあった際に、仕入れに70万円を使ったとすれば、100万円-70万円=30万円が粗利益となります。

ここからは、決算処理の基礎として、事業年度ごとの粗利益計算と売上原価の計算方法に関する注意点について説明します。

「飲み会」で売上原価計算を理解しよう

売り上げを集計するのは難しくありません。しかし、売り上げの元となった商品の売上原価を正しく計算するのは骨が折れる作業です。

もし、ひとつの商品しか取り扱っていないのであれば商品の売上原価を把握するのは容易ですが、何十、何百という商品を取り扱っていると、個々の売上原価把握は一苦労です。

また、仕入れた商品が期間内に売れたのか、翌月に繰り越されるのかといったことも考えなければならないとなると、計算がますます面倒になります。

仮に、当期に1,000円の商品を10個仕入れたとします。そのうち、期間内に8個商品が売れました。この場合、当期の売上原価を10,000円(1,000円×10個)としてはいけません。売れ残りが2つあって、これらは翌期以降の売り上げになるため、売上原価も翌期にシフトするのです。上記の場合では、

仕入れた商品の代金(1,000円×10個)から残り物である期末在庫分(1,000円×2個)を引いた8,000円

が当期の売上原価となります。

ここで期末在庫分は翌期の期首の在庫になります。さらに7個仕入れると合計9個となり、翌期の期末には1個在庫が残りました。とすると、翌期の売上原価は、

期首在庫(1,000円×2個)+新たに仕入れた分(1,000円×7個)-期末在庫(1,000円×1個)=8,000円

となります。

身近な例として飲み会の翌日のことを考えるとわかりやすいかもしれません。

忙しかったプロジェクトが無事終わり、今日は仲間と飲みに行きます。現在財布の中には5,000円入っています(期首在庫)。ついつい盛り上がってしまって途中コンビニATMで6,000円おろしました(期中仕入れ)。どうやって家に帰ったかはわからないけれど、財布の中には1,000円しか残っていませんでした(期末在庫)。飲み会では

10,000円(5,000円+6,000円-1,000円)

使ったことになります。売上原価も考え方は同じで、

売上原価=期首在庫+期中仕入れ値-期末在庫

となります。ちなみに、期首在庫の額を「期首商品棚卸高」、期末在庫の額を「期末商品棚卸高」と言ったりもします。この計算式を見れば、期末在庫が多いほど売上原価は少なくなるという反比例の関係がお分かりいただけるのではないでしょうか。

仕入れを計上する基準

最初に仕入れを計上する際には、仕入れの計上基準を決める必要があります。

仕入れの計上基準とは、仕入れの額を決算で処理できる状態にするタイミングのことで、発送基準、入荷基準(受取基準)、検収基準の3つから選ぶのが一般的です。

発送基準とは、仕入れ先が商品を発送したタイミングを計上日とする基準です。まだ商品が手元にない状態で計上するため、商品が届くのが遅れた場合や、異なる商品や不良品が届いた場合には、後で修正する必要があります。

発送基準は最も早いタイミングで計上する方法なので、信頼のおける相手との長期的・継続的な仕入れに向いています。

入荷基準(受取基準)は、商品が入荷した時に計上する基準で、商品の到着を確認してから計上することができます。実物と比較しながらデータの管理ができることから、実際に使用している例が多い基準です。

検収基準は、商品が入荷して検品まで終えたタイミングで計上する基準です。計上基準の中では最も遅い計上になるのですが、その分丁寧に検品をしたうえで計上することができます。

そのため、高級品や少しの傷が影響するパーツなど、品質にこだわる必要のある物の仕入れには検収基準が適しています。

売り上げ・仕入れの洗い替え

商品の仕入れ・販売を何度も繰り返し行う場合、代金は取引のたびに支払われず、一定の期間ごとにまとめて後日決済します。この期間の最後の日を「締め日」といいます。締め日は会社によって異なり、月末、15日、20日などさまざまです。

他方、会計・税務などは基本的に月末を締め日として計算します。会社の締め日と異なることも少なくないため、実務としては、会社の締め日に従って集計・計算することがほとんどです。

しかし、それでは事業年度内の最後の月に漏れが生じてしまいますので、最後の月にそこだけ修正します。たとえば、15日締めの会社の場合、事業年度の最後の月の16日~月末までの利益等が漏れてしまいます。そのため事業年度末月のみ、16日~末日までの請求書等をピックアップし決算年度内の会計に計上します。

このような会計処理をすると、また別の問題が生じます。翌期最初の月に通常通りの計算をしてしまうと、前期決算に計上した前期最後の月の16日~末日分が二重計上されてしまうという問題です。そこで、前期に計上した16日~末日の金額は当期の金額から差し引きます。

ただし、そのような処理をした場合でも、期首の月の会計日数が15日と小さくなり、期末の月の会計日数は45日と長くなってしまいます。会計日数にブレが生じると期中の利益予想もつきにくくなります。

そこで、期首での調整を避け、会計ソフトの「決算」欄を用いて前期締め後金額を控除して、当期の締め後金額を追加します。

値入額の計算方法

値入額ねいれがく と読み、粗利益のことを意味します。つまり、値入率は粗利益率と同じ意味であり、

売価値入率=値入額÷販売価格×100

=(販売価格-仕入原価)÷販売価格×100

=(1-仕入原価÷販売価格)×100

原価値入率=値入額÷原価×100

=(売価-原価)÷原価×100

=(売価÷原価-1)×100

値入率の計算には、販売額に対するものと原価に対するものの二種類がありますが、一般的な値入率は売価値入率をさす場合が多いです。

売価と原価から値入率を求める計算

原価が100円の商品を120円で販売した場合の値入率を計算します。

売価値入率=(販売価格-仕入原価)÷販売価格より

=(120-100)÷120×100≒17%

原価値入率=(120-100)÷100×100=20%

よって売価値入率は17%、原価値入率は20%です。

売価と売価値入率から原価を計算する方法

売価150円、売価値入率70%である商品の原価を計算します。

仮に原価をXとすると、

売価値入率=(販売価格-仕入原価)÷販売価格×100

70=(150-X)÷150×100

X =45

よって原価は45円となります。また売価値入率が70%ということは30%が原価率となり、

150円(売価)×30%(原価率)=45円(原価)

とすることもできます。そこで、

値入率+原価=売価

という公式も覚えておきましょう。この式を変形すると、

(値入率÷売価)+(原価÷売価)=1

売価値入率+原価値入率=1

となります。

値入率の計算方法

はじめのうちは計算に時間がかかるかもしれません。ですが、公式自体はあまり複雑なものではないので、それぞれの数字が何を意味するか、式の各項は何を表しているのかを一度理解してしまえばすぐに慣れることができます。

また、式自体もいっしょに暗記することで、より手早く計算できるようになります。形を覚えるだけではなく、意味を一緒に覚えるようにしましょう。

メルカリでの利益計算方法

メルカリは不用品を売買するためのアプリとして有名ですが、転売によって利益を出すアプリとしても使えます。

ここでは、メルカリで利益を求める際の利益率計算や仕入れ値の計算について説明します。

利益の計算 ―仕入れ値と販売価格より―

まずは仕入れ値10,000円、販売額15,000円、送料500円の場合を考えてみましょう。

販売額15,000円-仕入れ値10,000円-送料500円=利益4,500円・・・

としてしまいそうですが、まだ式に入れなくてはならない雑費があります。それは販売手数料です。メルカリでは販売価格の10%を手数料として徴収される仕組みになっているので、

販売手数料15,000円-仕入れ値10,000円-送料500円-販売手数料1,500円=利益3,000円

となります。また、利益率を求める場合、

利益率=純利益÷販売価格 なので、3,000円÷15,000円=20%

となります。

販売価格の計算―仕入れ値と利益より―

仕入れ値10,000円、利益目標4,000円、送料500円の場合、利益目標を最初に立てたい場合は以下のように計算します。

販売価格=(仕入れ値+目標利益+送料)×10/9

よって

販売価格=(10,000円+4,000円+500円)×10/9≒16,111円

また、販売手数料の計算式は、

販売手数料=(仕入れ値+目標利益+送料)×1/9

となりますので、

販売手数料=(10,000円+4,000円+500円)×1/9≒1,611円

となります。

販売価格の計算―仕入れ価格と利益率より―

仕入れ値10,000円、送料500円、利益率30%とする場合、仕入れ値と利益率から販売価格を決めるには次の式を用います。

販売価格-販売手数料(=販売価格の1/10)-利益(販売価格×利益率)=仕入れ価格+送料

よって

販売価格-1/10販売価格-0.3販売価格=10,000+500

0.6販売価格=10,500

販売価格=17,500円

となります。

販売価格をXなどに置き換えたほうが見やすいかもしれません。

メルカリ用の利益計算サイトもあります。

以下のサイトなら、専用フォームに値を入力するだけで計算してくれるので便利です。

メルカリ利益計算式

最後に

仕入れについて説明してきましたが、いかがでしたか。

仕入れ計算は単純に式を覚えるだけでなく、式の値や言葉の意味などに注意することでより覚えやすくなります。

仕入れ計算は、場合によってはさらに複雑になることもありますが、すこしずつでよいので理解していくようにしましょう。

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この記事を監修した人

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