独立開業するには、どの業界でも煩雑な手続きが必要となります。
ここでは、中古車販売店を開業する際に必要な手続きについて紹介していきます。どれも重要な手続きばかりですので、しっかりと学んでいきましょう。
中古車販売ビジネスで開業するには?
中古車販売は誰でも始めることができるビジネスです。しかし開業するには、取得しておくべき資格や必要な届け出があります。
誰でも簡単に中古車販売店は開業できる
中古車販売業は誰でも簡単に開業できますが、利益を出すことは難しい業種です。誰でも参入しやすい分、中古車市場が飽和状態になっているためです。なので、開業前から事業内容や資金についての緻密な計画を立てるなど、しっかりと準備を行っていく必要があります。
中古車販売業の開業に必要な手続き
中古車販売店業を開業するには、次の5つの手続きが必要です。
1.古物商許可の取得
管轄の警察署へ古物商の許可申請を行います。古物商許可をいったん受ければ、更新手続きは不要です。
2.自動車引取業の登録
廃車の引き取りの際に必要になります。都道府県知事宛てに申請を行います。期限は5年ですので、更新手続きを忘れないようにしましょう。
3.自動車リサイクルシステムへの事業者登録
使用済自動車を引き取る場合、パソコンでの移動報告やリサイクル料金の預託実務があります。
4.オートオークションへの入会
オートオークションは中古自動車の競り市場です。安く買えて高く売れるので1つは入会しておくべきです。ただし、参加資格がないと入会できません。たとえば古物商許可の取得から1年以上経過していることが必要です。その他にも条件がありますので、申請の際には確認しておきましょう。
5.自賠責保険の代理店登録
特に登録の義務はないのですが、頻繁に事務手続きが発生することを考慮すると、代理店登録しておいたほうが良いでしょう。また、代理店資格の他にも、保険の取り扱いには損保募集人資格も必要になります。
6.オートローンの加盟店契約
オートローンは審査が早く、納車時間も短縮できるというメリットがあるので、加盟店契約しておくことをおすすめします。
中古車販売業開業に必要な知識
中古車販売業を始めるということは当然自動車を扱うことになるのですから、まずは自動車に関する知識を深めることが必須です。さまざまな車種に関する知識を身につけて、お客さんの要望に応えられるようにしておくことが大切です。
また、車の売買に伴って重要な手続きも発生しますので、各種手続きに関する知識も必要になってきます。
さらに、中古車販売においては車の整備や修理に関する知識も重要です。中古車という性質上、故障や不具合が発生することは日常茶飯事です。仕入れた車の整備が不十分だと、引き渡した後にお客さんとの間でトラブルになることは避けられません。
「個人事業主」と「法人」どちらで開業する?
事業を始めるには、「個人事業主」と「法人」、いずれの形態で行うかを選択しなければなりません。そこで、それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
個人事業主のメリット・デメリット
何といっても思い立ったらすぐ開業できることが個人事業主のメリットです。手続きは簡単で、最寄りの税務署に開業届を提出するだけ。しかも、初期費用も抑えられます。
デメリットとしては、法人と比較すると経費に計上できる費用の幅が狭いことが挙げられます。節税という観点からは、どうしても法人に見劣りしてしまいます。また、法人より社会的信用が低いのもネックです。
法人のメリット
一方で、法人形態で事業を行うメリットは、個人事業主とは逆に社会的信用が高いことにあります。また、法人の方が人材が集まりやすいので、良い人材を確保できるというメリットもあります。
法人における税金面でのメリット
法人の方が税金面でもメリットがあります。
例えば、個人事業主と比べて経費項目の範囲が広いため、節税に有利です。法人の場合、社長の給与や生命保険料を経費に含めることもできます。
また、所得が高くなるほど税金を抑えられる点も見逃せません。
法人経営におけるデメリット
法人形態のデメリットは、事務的にも金銭的にも負担が大きいことです。個人事業主と比べると、会社設立や社会保険への加入、会計処理、その他雑多な事務処理と煩雑な手続き業務が多くなります。また、会社経費の負担も大きくなりがちです。
どちらを選択すべき?
どちらを選ぶべきかですが、それは個々の事情によります。メリットとデメリットを考慮し、どちらのパターンの方が自身の目指す事業形態により合致するかよく考えて決めましょう。
中古車販売店の開業に必要な資金
中古車販売店の開業にはどの程度の資金が必要なのか見ていきましょう。開業方法や販売形態により異なりますので、それぞれのケースをチェックしてください。
開業方法(1) 独立開業
中古車販売店を独立開業するのであれば、少なくとも2,000万円は用意しましょう。開業資金は当面の運転資金込みで見積もっておくことをおすすめします。
初期費用の内訳は以下のとおりです。
・物件契約料(販売場所などの土地賃借料) 約100~900万円
・中古車の仕入れ費用(数十台分) 1,000万円以上
・工事費(内装や外装など設備用)
・備品、消耗品費
・広告費(お店の宣伝等)
物件の契約料は、賃料・保証金・礼金などで金額が大きくなりがちなので、月額賃料の半年~1年分を目安に準備しておくと安心です。
開業方法(2) フランチャイズ開業
フランチャイズでの開業には、加盟金や保証金、ロイヤリティの支払いをすることが前提です。金額はどのフランチャイズに加盟するかによって異なります。その他、前述の独立開業と同様、設備の工事費や土地の取得費、備品代などが必要になります。それでも、全て合わせても100万円以下で始められるので、独立して開業する場合より資金は少なくて済みます。
販売形態(1) 展示場販売
展示場で中古車販売を始める場合は、独立開業した場合と同様に最低でも2,000万円は準備する必要があります。
・物件契約料(販売場所などの土地賃借料) 約100~900万円
・中古車の仕入れ費用(数十台分) 1,000万円以上
・工事費(内装や外装など設備用)
・備品、消耗品費
・広告費(お店の宣伝等)
上記にプラスして、家賃や仕入れ費用、従業員を雇用する場合は給与など、月々にかかる経費を含む当面の運転資金についても余裕をもって用意することをお勧めします。
販売形態(2) インターネット販売
インターネットで自動車販売を始めるための開業資金の内訳は以下のとおりです。展示場販売のケースと同様の内訳ですが、展示場販売とは違って数十万円から始められます。
・物件契約料(販売場所などの土地賃借料)
・中古車の仕入れ費用(数台分)
・工事費(内装や外装など設備用)
・備品、消耗品費
・広告費(お店の宣伝等)
販売台数が数台程度なら広い土地はいりませんし、仕入れの費用も最低数十万円~多くても数百万円で済みます。また、自宅を事務所として使用すれば、設備工事費もいりません。そして、ネット販売の場合、ネットに写真を掲載しておけば宣伝にもなるので広告費も不要です。
自宅を事務所とした場合には家賃・光熱費が不要になりますし、従業員を雇用しなければ給与も不要なので、当座の運転資金を抑えられます。
中古車販売業の開業にはどのような手続きが必要?
ここでは中古車販売業の開業に必要な各種手続きを紹介していきます。いろいろな手続きがありますが、順番に確認していきましょう。
古物商許可を取得する
中古車を販売するには古物商許可が必要になります。お客さんから車を買い取るのにこの許可を得ておく必要があるのです。申請はご自身の店舗・営業所の住所地を管轄する警察署に対して行って下さい。また、2020年4月に古物営業法が改正され、古物商許可は全国共通の許可になりました。例えば、A県で古物商許可を取った人がB県に拠点を構える場合でもB県の古物商許可を取得する必要がなくなったため、手続きが楽になりました。
自動車引取業の登録をする
お客さんから廃車として自動車を引き取る場合には、自動車引取業の登録を行う必要があります。こちらは都道府県宛てに申請手続きをしなければなりません。また、前述の古物商許可には期限はありませんが、引取業登録の有効期限は5年となっていますので、期限が切れる前に更新手続きを行う必要があります。
自動車リサイクルシステムへ事業者登録する
事業者が使用済自動車を引き取る場合、あらかじめ自動車リサイクルシステムに事業者登録を行わなければなりません。
オートオークションに入会する
オートオークションとは中古自動車の競り市場のことです。市場に流通している全中古車の約9割が、オートオークション経由で取引されています。中古車を安く購入できて、高く販売できる大きなメリットがあるので入会をおすすめします。ただし、基本的に個人での参加は不可能で、中古車販売業者を対象とした会員制の場合が多いです。また、オートオークションの会員資格を満たしていることが必要です。いくつか条件がありますが、古物商許可を取ってから1年以上経っていることや、車を展示する場所や営業所を確保していることなどが求められます。以上の条件を見ていただけば分かるかと思いますが、個人にはハードルが高くなっています。
自賠責保険を取り扱うため代理店登録する
中古車販売店には自賠責保険の取り扱いについての義務は特にありません。ところが、業務の性質上、自賠責保険への加入手続き事務が頻繁に発生します。そのため自店で代理店登録する方が効率が良いでしょう。
代理店を始めるには、試験に合格後、損害保険会社との代理店委託契約を結びます。そして、財務局に代理店登録申請をし、認められると自賠責保険の取り扱いが可能になります。また、保険の取り扱いには代理店資格の他に募集人の資格も必要ですので、損保一般試験に合格しなければなりません。
オートローンの加盟店契約
オートローンは新車だけでなく中古車の購入にも利用できます。中古車であっても状態が良いものだと高額になりがちなので、ローンを利用する人は少なくありません。お客さんだけでなく、こちらにもメリットが大きいので、オートローンの加盟店契約をすることをおすすめします。
個人で開業した場合に必要な届出
中古車販売店を個人で開業する場合に届け出が必要になる書類は以下のとおりです(青色申告に関する書類は任意です)。
・個人事業の開業届出書
・所得税の青色申告承認申請書
・青色事業専従者給与に関する届出書
・所得税、消費税の納税地の変更に関する届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
また、「個人事業開始申告書」は、地方税に関係する書類ですので、管轄の都道府県や市町村への提出が必要です。
ちなみに、個人事業の場合は、登記簿謄本のように事業内容を証明する書類がありません。したがって銀行口座開設の際は、税務署で受理された届出書の提出が必要です。
法人で開業した場合に必要な届出
中古車販売店を法人で開業した場合は、4点の書類を税務署へ提出します。その他、登記簿謄本と定款の写しも添付する必要があります。
・法人設立届出書
・青色申告の承認申請書
・給与支払事務所等の開設届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
また、「法人設立届出書」は管轄の都道府県や市町村へも提出が必要です。税務署用と都道府県・市町村用と用意しましょう。
段階を踏んで中古車ビジネスに挑戦しよう
ここまで中古車ビジネスでの開業方法を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
中古車販売店を開業するには、いろいろと複雑な手続きが必要になってくるので、初めて起業する人には難しく感じられるかもしれません。
開業に不安がある場合は、まず、初期費用も少なく簡単に始められる個人事業主としてスタートしてみてはどうでしょうか。個人事業主として中古車ビジネスを学び、事業が軌道に乗った段階で法人へ移行していくことをおすすめします。