この記事のテーマは「セミリタイア」です。リタイアは引退することなどを意味する言葉ですが、ここでは定年退職のことです。
そして、セミリタイアは、会社を辞めて、自分のペースで働きながら暮らしていく生き方のことを言います。完全に仕事を辞めないところが、単なるリタイアとは違います。
セミリタイアを検討している人や、具体的な検討はしていなくても将来的にはセミリタイアをしたい人には、この記事が参考になるはずです。
Contents
「セミリタイア」と早期優遇退職制度
セミリタイアと近い概念に、アーリーリタイアというものもあります。先ほども軽く触れたように、セミリタイアは多少なりとも働き続けていくことを前提にしていますが、アーリーリタイアは、文字通りの早期引退です。セミリタイアとアーリーリタイアの差異については、後でまた詳しく解説します。
そして、セミリタイアを選ぶ人の多くが、早期優遇退職制度を利用しています。全ての会社にこの制度があるわけではありませんが、セミリタイアを考えている人には、有利な制度です。
早期優遇退職制度の概要
細かい条件は会社によって異なりますが、共通するのは、普通に退職する場合よりも退職金の額が上乗せされることです。
大きく分けて2つのタイプがあります。一つは、通常の定年よりも早い年齢、45歳や50歳、55歳といった年齢になったときに会社が退職を促すもので、選択定年制度と呼ばれます。
もう一つは、人員整理の必要がある会社が行うもので、広く会社が退職者を募ります。希望退職と呼ばれます。
どちらの場合も退職金の上乗せがあるので、セミリタイアを考えている人は、利用を検討すべき制度です。
セミリタイアとアーリーリタイア
ここでは、先ほども軽く触れたセミリタイアとアーリーリタイアの違いについて解説します。自分が目指すリタイア生活はどちらにあたるのか、考えてみてください。
働き続けるか否か
「セミ」リタイアというのは、リタイア後もある程度は働き続けることを前提にしているためです。会社勤めをしている間に蓄えた資金を使うことには代わりがありませんが、それだけでなく、短時間働いたりして、多少のお金を稼ぎつつリタイアするというやり方です。
これに対して、アーリーリタイアといった場合は、リタイア後は働くことを想定していません。
リタイアする年齢の違い
セミリタイアの場合、上でご紹介した早期優遇退職制度の選択定年制度を使って会社を辞める人が多くなります。したがって、リタイアするのは、45歳、50歳、55歳といった年齢です。
アーリーリタイアでは、このような決まった年齢での退職は想定されません。自分で辞めると決めたときに辞める人が多いのが、アーリーリタイアの特徴です。
リタイアした後にどんな生活を送るか
セミリタイアは、完全に働くことを辞めてしまうわけではありませんから、仕事は生活の一部であり続けます。しかし、仕事をする量はセーブされるため、あくせく働くといった生活からは開放されます。ゆとりを持って、自分なりのペースで働きながら、趣味などにも時間を使えるといったイメージが、セミリタイア後の生活です。
一方、アーリーリタイアは、仕事をしないので時間が完全に自由に使えます。趣味に没頭したり、都会を離れて自然に囲まれて暮らしたりと、自分が好きなことだけをして生きていくスタイルです。
セミリタイアが失敗してしまう原因とは?
セミリタイアに挑戦してみても、全員が上手くいくとは限りません。セミリタイア後の生活が、実際に始める前に思い描いていたものとは違ったり、生活資金に困ったりして続けられなくなることもあります。ここでは、セミリタイアが失敗してしまう場合の原因について解説します。
セミリタイアした後の生活を具体的にイメージできていない
セミリタイアは、リタイアすること自体が目的であってはいけません。リタイアして何をしたいのか、具体的にイメージしておくことが極めて重要です。
頑張って仕事をしてお金を貯めてセミリタイアを実現した人の中には、リタイア後の生活に意味を見出せずに苦しむ人がいます。
例えば、セミリタイアをして、それまでは時間が足りずにできなかったゲームをしたり、録画が溜まっていたドラマやアニメを見たりする生活に入ったとします。その生活は、何日くらい続けられるでしょうか。
ゲームが好きという人でも、仕事が終わった後の帰宅した時間に息抜きに楽しむことはできても、丸一日没頭できるという人は案外少ないものです。
仕事でストレスを感じているからこそ、ストレス解消になるのであって、ストレスがかからない生活では、ストレス解消にゲームを楽しむこともできなくなります。
セミリタイアをする際には、仕事を辞めて浮いた時間を何に使いたいのかを具体的にイメージした上で実行しないと、結果として何もせずにボーっと時間を浪費するだけの生活になってしまいかねないのです。
計画通りの収入が入らなくなる
アーリーリタイアは、貯蓄だけでその後の人生を送れるだけの貯蓄額があることを前提にしますが、セミリタイアの場合、貯蓄を削りながら生活するだけでは生活ができない人が大半です。一定の収入を上げながら、貯蓄の減少をできるだけ抑えて生活することになります。
セミセミリタイアをする前に、リタイア後の収入について計算しておく必要がありますが、必ずしも、計算通りにいかない場合もあります。
例えば、ブログのアフィリエイト収益で生活することを考えていた人が、アクセス数が思ったほど伸びずに収益が上がらないといった場合です。
他の例としては、中古カメラの転売は、以前はかなりの高収益をのぞめる分野でした。しかり、転売のノウハウが広まることでライバルが増えて、現在では以前ほどには儲からなくなっています。中古カメラの転売で生活費を稼いで、セミリタイア生活をすることが難しくなってきているのです。
このような事態が起こると、リタイア前の計画が崩れて、セミリタイア生活を続けていけなくなります。
資産の運用が上手くいかない
これも収入が思ったほど上がらない場合の一種ですが、資産の運用による収益が上手く上がらない場合もあります。資産運用には、リスクも伴います。FXにせよ、株式投資にせよ、常に上手くいくとは限りません。
例えば、安定的な値動きを示している投資信託を手堅く運用すれば、リスクはかなり小さくなりますが、それでもリスクはゼロにはなりません。
運用益をあてにしてセミリタイアした人が資産運用に失敗すると、リタイア生活は続けられなくなってしまうかもしれないのです。
病気やケガによる想定外の出費が生じる
病気やケガは人生にはつきものです。仮に50歳でセミリタイア生活に入ったとして、80歳まで生きたとします。その30年間、大きな病気に一度もかからず、自動車事故などにも遭わず、健康でいられるとは限りません。また、本人は健康でも、家族が大病することもあるかもしれません。
最初から医療費も含めて必要な貯蓄額を計算していて、保障額が大きな保険にも入っているといった人なら問題ありませんが、健康でいることを前提にして貯蓄額などを見積もっていた人は、病気やケガに見舞われると、たちまち計算が狂ってしまうことになります。
社会的な信用を築くことが難しい
日々仕事をして固定収入があるということは、単にお金を稼いでいるということに留まらず、社会的な信用を築いているという意味も持ちます。
仕事を辞めてしまうと信用力がなくなり、クレジットカードが作れなくなったり、ローンが組めなくなったりします。また、アパートやマンションの賃貸契約をする際にも、安定した仕事についているということは重要です。
持ち家の人は問題ありませんが、賃貸で暮らしている人がセミリタイア生活に入った場合、現在済んでいるアパートを立ち退く必要が出た場合には、次の入居先が決まらない危険性があります。
社会的な信用を築くために、セミリタイア生活を断念して再就職先を探すことになる場合もあるのです。
セミリタイアを成功させた人の実例
失敗する場合の原因を先に見てしまいましたが、セミリタイアを成功させている人も、もちろん存在します。
セミリタイアをした人の中には、ブログなどでセミリタイア後の生活や、セミリタイアのために事前に行ったことなどを公開している人もいるので、こういった人のブログを見ると、これからセミリタイアを目指す人には大いに参考になります。
以下では、セミリタイアに成功した人の実例をブログと供にご紹介します。
元公務員、48歳でセミリタイア
「48歳からのセミリタイア日記」を運営している「luna」さんは、元公務員。ブログのタイトル通り、セミリタイア時は48歳です。
ブログには資産運用についても書かれていますが、セミリタイア日記というタイトル通り、内容が多岐にわたった雑記的なブログでもあり、読みやすくなっています。
節約しながらセミリタイアを続けていくスタイルで、セミリタイアを目指す多くの人に参考になるものです。
ブログ収入で稼いで、32歳でセミリタイア達成
「不労所得でセミリタイアを目指す30代のブログ」を運営している「鈴(suzu)」さんは、2500万円の貯蓄で、32歳でセミリタイア生活に入っています。
投資による収益もありますが、ブログ収入がかなり大きいことが特徴です。今後もある程度安定したブログの収益があると見越してのセミリタイアでしょう。
投資と事業経営でセミリタイア
「暗号資産投資の研究まとめ」を運営している「ショウ」さんは、元エンジニアで、投資に関するブログを運営しています。小規模な事業も経営されているそうです。ブログでは、「投資の7つのポイント」も公開されているので、興味がある人は見てみるといいでしょう。
参考:暗号資産投資の研究まとめ
「リタイアを目指すブログ」からセミリタイア生活に
「29歳からの貧乏セミリタイア」を運営している「人生よよよ」さんは、セミリタイアを目指している段階からブログを公開していました。現在では、晴れてセミリタイアを果たされています。
高校卒業後、工場に就職して、セミリタイアするまでの資産額の推移も公開されているので、これからセミリタイアを目指して貯蓄や投資を始めたいという人にも参考になるブログとなっています。
親の介護をしつつ、小額資金でセミリタイア
「無職という名の貧乏セミリタイア」を運営する「くらげネコ」さんは、親の介護問題を抱えながらも、節約生活でセミリタイアを実現しています。「年間100万円生活実践中!」とのことです。
基本的にはセミリタイア生活に入る前に、ある程度の貯蓄をしておくことが大事です。くらげネコさんのようなセミリタイアは誰にでもオススメすることはできませんが、貯蓄額は多くなくても早期にセミリタイアを実現したい人には、参考になる点も多いはずです。
セミリタイアをするために準備すべき資金
セミリタイアをするために考えておくべきことには色々ありますが、多くの人にとって当面の問題は、セミリタイアした後の生活資金をどうするかです。
どの程度の貯蓄をすべきかと、貯蓄した資産の運用について解説します。
セミリタイアに必要な資金は?
総務省によって2019年に実施された家計調査によれば、単身世帯の1ヶ月間の消費支出は平均16万3781円とのことです。50歳でリタイアして80歳まで生きるとして、上の数字を元に30年間の支出額を計算すると、5896万1160円になります。
もちろん、これは平均でしかないので、実際にいくらくらいのお金があれば1か月の生活ができるかは人によって異なります。また、セミリタイアは、何らかの収入があることを前提にしますから、必要なお金の全てを貯蓄しておく必要があるわけではありません。
自分の現在の支出額や、セミリタイアした後に得られる収入を計算して、実際に必要な貯蓄額を計算してみてください。
計算をする際に忘れてはいけないのは、税金や社会保険料です。源泉徴収をされている会社員の場合、税金のことを意識する場面が少ないので、セミリタイアする前には、しっかりと調べておくことをおすすめします。
貯蓄と収入の見通しを立てる
必要な貯蓄額の見当がついたら、現在のあなたの年齢とリタイアする年齢から考えて、毎年いくらくらい貯蓄をしていけばいいか計算してみましょう。仮に現在30歳だとして50歳までに4000万円を貯めるなら、年に200万円の計算になります。
そして、もし4000万円の資金があれば、年利4%で運用できれば、年160万円の収入になります。実際には、税金が発生するので多少減りますが、ある程度の資産が貯まっていると、セミリタイア後の生活が楽になることは、お分かりいただけるでしょう。
資産運用の経験がない人は、今からでも少しずつ資産運用の経験を積んでおくこともセミリタイア生活にスムーズに移行するために有効です。
将来のセミリタイア実現のために始められること
この記事の最後は、将来のセミリタイア生活に備えて、今からでも始められることについて書いて終わりにします。ここまでに記述した内容と重複する点もありますが、復習する意味も兼ねて読んでください。
支出を見直して、セミリタイア生活に備える
セミリタイア生活を成功させるためには、支出を抑えることが非常に重要です。収入を増やすことを検討するのも大事ですが、収入を増やす試みは失敗することもあります。それに対して、支出を抑えることは、誰にでもできますし、確実に効果があります。
支出を抑えられるようになれば、セミリタイア後の生活が楽になるのはもちろん、セミリタイアのための貯蓄をするのにも有効です。
具体的には、毎月の出費である固定費を削ることができないか検討してみましょう。固定費には、家賃やスマホ料金、保険料などがあります。必要なものまで削る必要はありませんが、少しでも減らせないか検討してください。
普段乗らない自家用車を所有している人は、思い切って自動車を手放せば、税金もかかりませんし、駐車場代や車検にかかる費用、保険料など、かなりの費用が節約できます。
小額からでも投資を始めてみる
セミリタイア後の収入源として、投資を考えている人も多いでしょう。この場合、セミリタイア後に始めると、失敗した場合のリスクが大きく、取り返しがつかなくなります。貯蓄をしつつ、投資を実践することもセミリタイア前に始めておきましょう。
投資で儲けるためには、スキルが必要です。そして、スキルを身に付ける一番の方法は、実際にやってみることです。小額からで構わないので、早めに投資を始めてみてください。
リタイア後の生活を具体的にイメージする
この記事の最初の方に書きましたが、リタイア後の生活が具体的にイメージできていない人は、仕事を辞めて空いた時間をただ浪費するだけの人生を送りがちです。
セミリタイアした後にどんな生活を送りたいのか、具体的なイメージを固めておきましょう。
趣味に時間を使いたいとか、旅行にいきたいといった希望を持っている人も多いでしょうが、それだけでは数ヶ月でやりたいことはやれてしまう場合が多いです。「残りの人生をかけて達成したい目標」といったものを考えてみてください。
まとめ
セミリタイアについて解説してきました。セミリタイアの良い面ばかりではなく、失敗する原因なども説明してきたので、参考にしてください。
セミリタイアという言葉は、会社勤めで苦労をしている人には非常に魅力的に思えるものですが、実現するには準備と覚悟が必要です。
この記事を読んだ人は、セミリタイアについて可能な限り具体的にイメージしてから、行動に移してください。セミリタイアには難しい面もありますが、決して不可能ではありません。