この記事では、輸入の際にかかる消費税の計算方法や納税方法、帳簿のつけ方について解説します。
国内とは消費税の計算が異なるために、はじめは大変ですが、慣れてしまえば怖いものはありません。輸入の消費税についてわからない・帳簿の勘定項目はどうしたら良いのと悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
輸入の際の消費税について
ここでは、輸入の際の消費税について解説します。
輸入取引でも消費税はかかる
国税庁では、「外国貨物の引き取り」は課税対象だとしています。外国貨物とは、輸出の許可を受けて海外から日本に到着した荷物のことです。つまり、輸入ビジネスにおいて海外から日本に取り寄せた商品は外国貨物となり、消費税の課税対象になる、ということです。
これは、個人で輸入をおこなう場合でも事業としておこなう場合でも変わりません。海外製品を輸入するときは、使用用途にかかわらず消費税がかかると覚えておいて下さい。
消費税の計算方法
実際にはもう少し複雑な計算式になりますが、ここでは説明を省きます。簡単に消費税の計算を式に表すと以下のようになります。
輸入消費税=(商品価格+海外でかかった配送料+保険料+関税)×消費税率10%
海外から日本に輸入するまでの間でかかった料金すべての合計に、消費税率がかかる仕組みです。商品価格のみへの課税でない点に注意しましょう。
支払先は国
日本国内で買い物をしたときには、商品代金や送料などにかかった消費税を直接店に払っています。
しかし、輸入の場合、国に直接消費税を納税しているのです。つまり、アメリカから輸入した場合は、該当商品がアメリカから出た時点で、アメリカに消費税を払っているということです。
かといって、実際に国宛てに入金するわけではなく、通関業者や配達業者を間にはさんでいます。納税者が通関業者や配達業者に支払う、通関業者や配達業者が国に納めるという流れです。
輸入代行業者を使う場合の2種類の納税方法
輸入代行業者にも種類があり、それぞれ納税方法が異なる点に注意しましょう。
購入代行を頼んだ場合は、一般的に仕入れしか担当してくれません。そのため、海外ショップから直接、依頼者である自分の住所に商品が届きます。
購入代行と転送代行をセットで頼んだ場合、仕入れの後一旦代行業者が商品を受け取り、代行業者の事業所住所から自分の住所に届きます。
ここでは、上記2つのパターンの納税方法の違いを紹介します。
海外ショップからの直送=配達員に支払い
輸入代行業者がしてくれる業務内容が購入代行のみであった場合、仕入れた商品は仕入先ショップから直接自分のもとに送られてきます。この場合の輸入者は「自分」なので、納税義務は自分です。
自宅に商品が届いた際に、配達員に代金を支払うことで、納税義務を果たしたことになります。配達員に渡した消費税は、配送業者を通じて税関に届けられ、輸入先の国に納税されます。
《納税の流れ》
(1)仕入れる商品を海外ショップで購入し、海外ショップに代金を支払う
(2)海外ショップから商品を受け取る
~商品受け取りの際に、依頼者が納税~
代行業者を経由しての輸送=代行業者に支払い
購入代行だけでなく発送代行まで対応してくれる輸入代行業者であれば、海外ショップからのお届け先は「輸入代行業者」です。つまり、消費税の支払い義務は輸入代行業者にあり、輸入代行業者が関税消費税を立て替えてくれるシステムです。依頼者は後から、代行業者の請求に応じて税金分の支払いをします。
《納税の流れ》
(1)仕入れる商品を代行業者に依頼する
(2)仕入れ商品の代金を代行業者に支払う
(3)代行業者が仕入れをおこない、海外ショップから商品を受け取る
~商品受け取り時に、代行業者が納税~
(4)代行業者が改めて依頼者住所に商品を発送する
~商品とともに請求書が送られてくる、請求書の額を税金分として代行業者に支払う~
配送業者への支払いと代行業者への支払いどっちが良いのか
結論から言うと、どちらでも構いません。ただし、きっちりかかった金額だけを請求される配送業者への支払いに比べ、輸入代行業者からの請求は本来かかった金額と同額であるとは限らないというデメリットがあります。
消費税などの税金納品時には「納付書」が発行されていますので、輸入代行業者に提示を求めましょう。その際「他の依頼者とまとめて印字されているために、個人情報の観点から提示できない」と言われることがあります。
その場合には、無関係の部分は黒塗りで提出してもらいましょう。通関では黒塗りの書類でも立証可能としています。
輸入代行業者に依頼している場合の帳簿の付け方について
一般的に、輸入代行業者に業務を依頼すると、一般的には以下の流れで取引が進みます。
(1)輸入代行業者に仕入れてほしい商品を伝える
→輸入代行業者から見積もりが提示される
(2)仕入れ代金を入金
→輸入代行業者が仕入れを代行・輸出発送する
(3)商品と請求書が手もとに到着
(4)輸入代行業者宛てに税金を支払う
ここでは、流れに沿った帳簿のつけ方についてと、各種税金の経理処理方法について解説します。
(1)輸入代行業者に仕入れてほしい商品を伝える
例として商品の仕入れに70万円がかかるとして帳簿につけていきます。
《借方勘定科目》
仕入高
《借方金額》
700,000円
《貸方勘定科目》
買掛金
《貸方金額》
700,000円
《摘要》
輸入商品の購入
国内仕入れと違い、消費税が国税と地方税に分かれます。帳簿のこの段階ではまだ消費税が加算されていないことを、理解しておいてください。消費税コードの欄には「対象外」もしくは、会計ソフト独自の対象外を意味する消費税コードを入力します。
(2)仕入れ代金を入金
《借方勘定科目》
買掛金
《借方金額》
700,000円
《貸方勘定科目》
普通預金
《貸方金額》
700,000円
《摘要》
輸入商品代金支払い
(3)商品と請求書が手もとに到着
輸入代行業者から商品と請求書が届いたら、請求書の内容を帳簿に移します。
《借方勘定科目》
支払手数料
仕入高
仮払消費税等
仮払消費税等
《借方金額》
112,000円
28,000円
44,100円
12,320円
《貸方勘定科目》
未払金
《貸方金額》
196,420円
《摘要》
代行手数料
関税
輸入消費税(国税)
輸入消費税(地方税)
借方勘定科目は同じ「仮払消費税等」ですが、輸入消費税の国税と地方税は分けて記入します。会計ソフトでの入力の場合、会計ソフト独自の消費税コードがありますので、それぞれ該当するものを記入してください。
(4)輸入代行業者宛てに税金を支払う
輸入代行業者に請求分の料金を支払ったら、帳簿に以下のように記載します。
《借方勘定科目》
未払金
《借方金額》
196,420円
《貸方勘定科目》
普通預金
《貸方金額》
196,420円
《摘要》
代行手数料等支払い
国税と地方消費税の経理処理法
【国税】
《借方勘定科目》
仮払消費税等
《消費税コード》
課税対応輸入消費税7.8%
※軽減税率の場合、課税対応輸入消費税6.24%
【地方税】
《借方勘定科目》
仮払消費税等
《消費税コード》
地方消費税貨物割2.2%
※軽減税率の場合、地方消費税貨物割1.76%
関税の経理処理法
通関業者が立て替えてくれた関税は課税対象ではないため、帳簿には以下のように記載します。
《借方勘定科目》
仕入高
《消費税コード》
対象外
代行手数料の経理処理法
代行手数料も勘定科目は「仕入高」です。また、代行業務は課税対象になるため、該当する消費税コードの記載が必要です。
《借方勘定科目》
仕入高
《消費税コード》
消費税率10%
※軽減税率の場合、消費税率8%
輸入消費税の計算は国内仕入れと異なるために注意が必要
輸入消費税の計算について理解していないと、決算時に仕入税額控除が受けられず、多くの消費税を支払う結果になってしまいます。
ここでは、国内仕入れと輸入仕入れの消費税計算の違いについて解説します。
国内仕入れのみと国内+輸入仕入れでは納税額の計算方法が違う
輸入がある場合、消費税コードの記入が必要になる・国税と地方消費税を分けて記入する必要があるなど、国内仕入れとは違った帳簿付けが必要です。なぜこういった違いが生まれるかというと、消費税の計算方法が異なるためです。
国内仕入れの場合、消費税は商品代金や送料にかかってきます。これが輸入になると、商品代金や送料に加えて関税に対しても消費税が加算されます。
このような違いから、国に納付する消費税の計算方法が異なるのです。国に納付する消費税額の計算式は、売上にかかる消費税-仕入れにかかる消費税です。簡単に計算式にすると以下のようになります。
《国内仕入れの場合の計算方法》
仕入れにかかる消費税=税込の仕入れ高から計算して求める必要がある
《輸入仕入れの場合の計算方法》
仕入れにかかる消費税=税関で支払った消費税
次項から具体的に説明していきます。
国内仕入れのみ
《例》売上500,000円、国内仕入200,000円の場合
【1】国税の納付額を求める
(1)売上にかかる消費税の計算
(2)仕入れにかかる消費税の計算
(3)国税の納税額の計算
という3ステップで計算します。
(1)売上にかかる消費税の計算
計算式は、税抜価格×消費税率です。
- まず、税込みになっている売上から消費税分を引き、税抜価格を出す
500,000円×100/110=454,545円
※軽減税率で消費税8%の場合、500,000円×100/108=462,963円
- 売上にかかる消費税を出す
454,545円×7.8%=35,455円
※軽減税率の場合、462,963円×6.24%=28,889円
(2)仕入れにかかる消費税の計算
税込仕入高×7.8/110で求めます。※軽減税率の場合、税込仕入高×6.3/108
200,000円×7.8/110=14,182円
※軽減税率の場合、200,000円×6.24/108=11,556円
(3)国税の納税額の計算
売上にかかる消費税-仕入れにかかる消費税で求めます。
35,455円-14,182円=21,273円
※軽減税率の場合、28,889円-11,556円=17,333円
【2】地方消費税の納付額を求める
国税の納税額×22/78で求めます。※軽減税率の場合も同じ
21,273円×22/78=6,000円
※軽減税率の場合、17,333円×22/78=4,889円
【3】納税額の合計を計算する
国税の納税額+地方消費税の納付額で求めます。
21,273円+6,000円=27,273円
※軽減税率の場合、17,333円+4,889円=22,222円
国内仕入れと輸入仕入れが混在している場合
《例》売上500,000円、国内仕入れ100,000円、輸入仕入れ100,000円、輸入消費税(国税)6,250円、輸入消費税(地方消費税)1,755円の場合
【1】国税の納付額を求める
(1)売上にかかる消費税の計算
(2)仕入れにかかる消費税の計算
(3)国税の納税額の計算
という3ステップで計算します。
(1)売上にかかる消費税の計算
計算式は、税抜価格×消費税率です。
- まず、税込みになっている売上から消費税分を引き、税抜価格を出す
500,000円×100/110=454,545円
※軽減税率で消費税8%の場合、500,000円×100/108=462,963円
- 売上にかかる消費税を出す
454,545円×7.8%=35,455円
※軽減税率の場合、462,963円×6.24%=28,889円
(2)仕入れにかかる消費税の計算
- 国内仕入れ分を計算する
税込仕入高×7.8/110で求めます。※軽減税率の場合、税込仕入高×6.3/108
100,000円×7.8/110=7,091円
※軽減税率の場合、100,000円×6.24/108=5,778円
- 輸入仕入れ分を計算する
輸入仕入れにかかる消費税は、税関で支払った国税の金額そのままです。
=6,250円
- 合算して仕入れにかかる消費税を出す
国内仕入れにかかる消費税+輸入仕入れにかかる消費税で求めます。
7,091円+6,250円=13,341円
※軽減税率の場合、5,778円+6,250円=12,028円
(3)国税の納税額の計算
売上にかかる消費税-仕入れにかかる消費税で求めます。
35,455円-13,341円=22,114円
※軽減税率の場合、28,889円-12,028円=16,861円
【2】地方消費税の納付額を求める
国税の納税額×22/78で求めます。※軽減税率の場合も同じ
このとき、地方消費税の数字は計算式に使いません。
22,114円×22/78=6,237円
※軽減税率の場合、16,861円×22/78=4,756円
【3】納税額の合計を計算する
国税の納税額+地方消費税の納付額で求めます。
22,114円+6,237円=28,351円
※軽減税率の場合、16,861円+4,756円=21,617円
このように、同じ売上50万・仕入れ20万であっても、計算方法は輸入仕入れが混在している方が複雑です。
また、消費税の納付額も変化します。
国内仕入れのみ:27,273円
輸入仕入れ混在:28,351円
ただし、これはあくまで一例です。関税や輸入消費税は変動することに注意しましょう。
まとめ
輸入仕入れの際の消費税計算は非常に複雑化しており、これは輸入代行業者に発送代行まで頼んだ場合でも変わりません。
今は関税の仕組みがわからなくても利用できる輸入代行業者が増えてきましたが、やはり輸入ビジネスをするのであれば関税や輸入に係る消費税について無知ではいられません。
慣れ次第なので、この機会に輸入にかかる消費税・関税・その帳簿の付け方について是非学んでみましょう。