事業を始めるにあたって作成しなければならないのが、ビジネスプランです。
ビジネスプランとは、事業の方向性、事業内容、事業目標の達成手段などを目に見える形で表現したものです。
そんなビジネスプランですが、いざ作ろうと思っても、
「どうやって作ればいいのか?」
「何を意識すればいいのか?」
「そもそもなぜ作る必要があるのか?」
という方もいらっしゃることと思います。
そこで今回の記事では、ビジネスプランが果たす役割から作り方、作る上での重要ポイントまでを解説していきます。
ご自身のビジネスを円滑に進めていくためにも、しっかりとビジネスプランについて学んでいきましょう。
ビジネスプランを作成する3つの目的
はじめに、ビジネスプランを作る目的を取り上げます。
目的が不明確なままビジネスプランを作成しても大したものはでき上がりません。
そのため、まずは、ビジネスプランを作成する目的をしっかり理解して、ビジネスプランの必要性を押さえていきましょう。
目的1. 融資を受けやすくする
ビジネスプランを作成する目的の1つ目は、融資を受けやすくすることです。
事業を行なっていくためには、当然ながら資金が必要です。
そして、資金を集めるためには、融資してくださる方々に対してあなたの事業の魅力や優位性を示す必要があります。
その手段として、ビジネスプランを作るというわけです。
目的2. 事業内容を明確化する
ビジネスプランを作成する目的の2つ目は、事業の内容および目的の明確化です。
複数人で事業を行う場合、事業の内容や目的を明確にしておかないとメンバー間の意思統一が図れなくなるおそれがあります。
個々のメンバーが自分勝手なことをしていたのではチームがバラバラになってしまい、事業どころではなくなってしまいます。
また、個人で事業を行う場合であっても、事業の方向性を見失わないようにするために、事業内容等を明確にしておくのは有益です。
目的3. リスクと問題点の洗い出し
ビジネスプランを作成する目的の3つ目は、事業にまつわるリスクや問題点を洗い出すことです。
事業にはリスクがつきもので、事業者は常に問題と向き合っていかなければなりません。
やりたいことや理想を掲げるだけで全てが円滑に進むことはありえないのです。
その点、ビジネスプランを作成すれば、その過程で、これからやろうとしていることに「どんな問題がつきまとうか」「どんなリスクが伴うか」「そもそも実現可能なのか?」といった事柄を明らかにすることができるのです。
ビジネスプランに求められる3つの要素とは?
ここでは、ビジネスプランに求められる3つの要素について解説していきます。
これらの要素を外してしまうと、ビジネスプランとして成り立たなくなってしまうので、しっかりとポイントを押さえておきましょう。
市場性
市場性とは、市場規模と売上獲得に向けたシナリオのことです。
市場規模をよりわかりやすく言い換えると、その事業が今後どれくらいの規模になる可能性があるのか、ということです。
具体的には、参画する市場の大きさはどの程度なのか、その市場の中でどれくらいの成長が期待できるのか、市場を独占した場合にどれくらいの売上が見込めるのか、といった問いに答える必要があります。
売上獲得に向けたシナリオとは、その事業で扱う商品やサービスがどの程度必要とされているのか、を説明するものです。
誰のどんな需要を解決する商品・サービスなのか、他の商品にはない新しいコンセプトや特徴はあるのか、ライバルには真似できない独自のアイデアやストロングポイントはあるのか、といった点を説明することが重要になります。
収益性
収益性とは、ひと言で言うと、事業の継続可能性のことです。
収益性を示すためには、事業の売上計画だけではなく出費の部分も説明する必要があります。
キャッシュフローのプラスとマイナスの両面を示す必要があるということです。
出費には、人件費や材料費、水道・光熱費、広告宣伝費、研究開発費など、様々な種類があります。
こういった費用を勘案した上で、継続して採算の取れる事業であることを示すことが重要です。
実現性
実現性とは、ひと言で言うと、ビジネスプランの実行可能性のことです。
実現性を示す上で重要になってくるのは、「どんな事業を行うか?」ではなく「誰が事業を行うのか?」です。
つまり、事業を行う主体のパーソナリティやアイデンティティーを提示する必要があるということです。
具体的には、どんな理想やビジョン、情熱を掲げているのか、経営を行なっていくだけの経験や知識、スキルはあるのか、組織を率いまとめるだけの統率力はあるか、そしてどんな組織構造で各人がどのような役割を果たすのかといった事項に言及する必要があります。
ビジネスプランで押さえておきたい5つのポイント
ここでは、ビジネスプランを書くときに最低限押さえておきたい5つのポイントを紹介します。
意外と見落としがちなポイントも含まれていますので、しっかりと頭に入れておきましょう。
読み手を意識する
事業内容を考える際は顧客を意識する必要があるように、ビジネスプランを考えるときも「誰が読むのか?」を考慮する必要があります。
なぜなら、読み手が明確になれば、「その人がどんな情報を求めているのか?」「何を重視してビジネスプランを読むのか?」「どんな言葉に響くのか?」といったことが考えやすくなるからです。
事業を行う時と同様に、常にターゲットを意識してビジネスプランを作成しましょう。
目標を明確にする
目標とは、ビジネスプラン作成というタスクにおけるゴールのことです。
目標が明確であれば、ビジネスプランとして記載すべき内容も自然と明らかになります。
例えば、事業資金の獲得が目標であれば、融資担当者を意識したビジネスプランとなることでしょう。
リサーチを徹底する
ビジネスプランとして記載する各々の情報は、入念なリサーチによって裏付けられている必要があります。
逆に、リサーチなしでビジネスプランを書くことは不可能と考えてください。
商品・サービスを販売する相手から、自分たちの事業内容、競合する商品やサービスまで、さまざまな項目に対して十分なリサーチを行なった上でプランを作成する必要があります。
簡潔で読みやすい文章にする
これは文章一般に妥当することですが、要点を簡潔にまとめ、短く読みやすい文章を書くようにしましょう。
ビジネスプランの場合、一般的には15〜20ページほどの分量が望ましいと言われています。
また、文章中に収まりきらない補足情報は、無理やり本文中にねじ込もうとせず、添付資料とするのがオススメです。
トーン、スタイルを統一する
資料全体を通して、トーンやスタイルを統一することも重要です。
これは特に、複数人でビジネスプランを作成する場合に注意すべきことです。
個々人の色や癖を放置していると、全体的にまとまりのない資料になってしまうからです。
これではビジネスプランを提供する相手に自社をアピールすることができません。
このようなビジネスプランにならないようにするには、作成前にある程度ルールを統一する、全体を編集する時間を取る、などの対策が重要になります。
より効果的なビジネスプランを書く5つのテクニック
最後に、より効果的なビジネスプランを書くためのテクニックをお伝えします。
これらのテクニックを駆使することで、あなたが作成するビジネスプランに対する信頼感や納得感をグッと高めることができます。
ぜひ参考にしてください。
内容に一貫性を持たせる
全体を通して一貫性を持たせることは非常に重要です。
一貫性を持たせるとは、言い換えると、矛盾がないということです。
たとえば、資料の前半で言っていたことと後半で言っていることが違うといった矛盾があると、資料に説得力がなくなってしまいます。
矛盾した部分が1箇所あるだけでも資料全体の信ぴょう性が失われてしまいますので、全体を通して矛盾のない内容になるよう注意していきましょう。
具体的に説明する
具体的に説明することも、ビジネスプランを作る上では重要です。
集客手段、客単価、一月あたりの集客見込みや売上の予想額といった項目を全て具体的な数字で説明すべきです。
具体的に表現することで、事業内容がより分かりやすくなり、納得感のある資料にすることができます。
論理的に説明する
論理的に説明することも、重要な要素です。
「論理的に」とはどういうことかというと、根拠を示すことです。
例えば、売上予測や市場成長率などの数値データを資料内で用いた場合、その数値を算出した際の根拠を明確に説明する必要があるということです。
根拠のない資料を提示すると、読み手に不安感や不信感を抱かれてしまいます。
何か情報を提示するときには、常にその根拠も合わせて提示するようにしましょう。
リスクを想定する
ビジネスプランを作成する目的のセクションでも言及しましたが、事業にはリスクや課題がつきものです。
市場の動向や法規制など、様々な外的要因を考慮しながら事業を進めていかなければならないのです。
そこで、事業につきまとうリスクや課題を想定した上で、それらをどう解決・クリアしていくかを提示できれば、より信頼感のあるビジネスプランとなることでしょう。
ビジョンを語る
どんなに事業内容が真新しく、製品やサービスが優れていても、また、経営者にスキルや経験があっても、そこにビジョンがなければ人の心を動かすことはできません。
例えば、ベンチャーキャピタルは、起業家の事業にかける想いや熱意といった人間性をより重視するとも言われています。
困難やリスク、障害が常につきまとう事業運営という道を選ぶからには、それなりのきっかけや動機があるはずです。
あなたが事業を始めるに至った理由、実現したい未来など、熱い想いを堂々と語りましょう。
挑戦することを選んだあなたへ
今回の記事では、ビジネスプランの作成目的からその具体的な作り方、重要なポイントまでを紹介してきました。
実のところ、こちらで紹介したノウハウを用いればすぐに完璧なビジネスプランが書けるかと言うと、残念ながらそうはいきません。
実際に書き始めてみると、どう書いたらいいか、どんな表現を使えばいいか、何を使って説明すればいいかといった不明点が噴出することでしょう。
また、ビジネスプランを作成する過程で、事業内容を詰めきれていなかったことに気づくことがあるかもしれません。
また、なんとか完成させても、そのビジネスプランの趣旨が読み手に正確に伝わるかといったら、残念ながらそんなこともありません。
伝えたいことがうまく伝わらなかったり、求めている結果につながらなかったりすることも度々です。
しかし、過去の起業成功者は、そういった失敗を重ねつつ、少しずつビジネスプランをアップデートしていくことで望む成果にたどり着いたのです。
ビジネスプラン作成に限らず、事業を行なうとなると数えきれないほどの失敗に直面します。
その中で大事になってくるのは、「全ては仮説検証である」というマインドです。
仮説検証とは、「こうしたらこういう結果になるだろう」という仮説を立てて、それを実際の行動で検証するプロセスのことです。
仮説検証マインドの有効性は、全ての失敗を学びへと転化させられる点にあります。
仮説通りにいかなかったとしても、「これがダメだったなら、次はこうすればうまくいくかな」といったように前回の検証結果を踏まえて次に進むことができるのです。
失敗が続くと、気が落ち込んでしまうかもしれません。
挑戦することを諦めたくなる気持ちも湧いてくるかもしれません。
しかし、仮説検証マインドを持てば、たとえ失敗続きでも前進している自分を感じられます。
前に進んでいるといことは、成功に近づいているということです。
そして、検証の回数が多ければ多いほど、成功へ近づいていくのです。
事業を成功させるのは容易なことではありません。
それでも、厳しい道を選んだ以上は、前進あるのみです。
ビジネスプランの作成は、事業者にとってのはじめの一歩です。
その一歩を踏み出すにあたっては、ぜひ今回の記事を参考になさってください。