商品を手にとってもらったり、多くの人に愛されたりするには、商品の名前が非常に重要です。
商品名ひとつで売上が大きく変わることもあるのです。
閃きで良い商品名が思いつくこともありますが、閃きに頼っていると安定して良い名前をつけるのが難しくなってしまいます。
そこで今回は、良い商品名をつけるための方法をお伝えしていきます。
商品そのものは良いのに名前がイマイチなせいで全く売れない、なんてことがないように売れる商品名とその発想法について学んでいきましょう。
商品名の役割とつけ方のポイント
まずは、商品名の役割とつけ方のポイントについて解説していきます。
インパクトのある商品名をつけられるよう、役割を正確に理解した上でポイントをしっかり押さえていきましょう。
商品名によって商品の魅力を伝える
商品名が担っている役割とは何でしょうか?それは、商品の魅力を伝えることです。
そのためには、魅力を一言で伝えられるような名前をつける必要があります。
商品にどんな名前をつけるかによって、商品そのものは同じでも顧客に与える印象や顧客の受け取り方は変わってしまいます。
たとえば、ペットボトル飲料の「お〜いお茶」は、発売当初は「缶入り煎茶」という名前でしたが、売れ行きはイマイチでした。
「煎茶」という呼び名が一般的に浸透していないことに気づき、商品名を「お〜いお茶」に変更した途端、その親しみやすさや覚えやすさが功を奏し、一気に売上が伸びました。
このように、商品の売上は、その名前一つで大きく変わるものなのです。
シンプルな言葉で特徴を表現する
商品名の付け方のポイントは、商品名を読むだけで特徴が分かる名前にすることです。
そして、詳細な商品説明を読まなくとも、名前だけで商品がどんなものかイメージできるような名前にするには、シンプルに表現することが重要になってきます。
具体例として、アパレルブランドの代表格であるユニクロで扱われている商品の名前を見てみましょう。
- 「スリムフィットジーンズ」
- 「ウルトラライトダウンジャケット」
- 「ワイドフィットスウェットシャツ」
どれも商品名を読むだけで、どんな商品なのかが簡単にイメージできるのではないでしょうか。
このように、「商品の特徴+商品カテゴリ」で商品名を表記すると商品の魅力を伝えやすくなります。
まずは、このパターンに当てはめて商品名をつけてみると良いでしょう。
商品に込めた思いを表現する
想いやストーリーに基づいた名前をつけるのも有効です。
商品に込めた開発者の想いや、開発に至るまでのストーリーなどを商品名を通して表現するのです。
この方法が有効な理由は、その商品独自の世界観を伝えることができ、競合商品との差別化が図れるところにあります。
たとえば、その独自の世界観で多くのファンを魅了するApple社の商品を見てみましょう。
iPhone、iPad、iPod、iMacなど、多くの商品の頭に「i」がついていることはみなさんご存知でしょう。
実は、この「i」には以下の5つの意味が込められているのです。
- internet(インターネット)
- individual(個人)
- instruct(指導する)
- inform(知らせる)
- inspire(ひらめき)
「誰もがシンプルで素早くインターネットを楽しめるように」という想いから、「i」に上記5つの意味が込められたと言われています。
商品名の頭の「i」は、今やApple製品を象徴するキーワードになっており、これが独自の世界観を伝える役割を果たしているとも言えます。
このような独特な名前をつけられれば、競合商品にはない魅力を伝えられるので、大変有効です。
先頭にキーワードを含める
商品を広く認知してもらうためには、キーワードを先頭に含めることも有効な名前の付け方です。
先頭にキーワードが含まれていると、そのキーワードでGoogleやYahoo!などの検索エンジンで検索されたときに上位表示されやすくなるからです。
どんなキーワードで検索されたときに上位表示されるのが望ましいかを考えたうえで、そのキーワードを商品名の先頭につけてみましょう。
商品名を思いつくために必要な2つの作業
魅力的な商品名を思いつくためには、とても重要な作業が2つあります。
この作業を行うことで商品名が浮かびやすくなりますので、しっかり押さえていきましょう。
1. 商品情報の棚卸し
1つ目は、商品に関する情報を棚卸ししてみることです。
具体的には、商品のコンセプトや特性、ターゲットなどを改めて洗い出してみるのです。
この作業を行わなければ、元々のコンセプトとズレた商品名をつけてしまったり、ターゲットに全く響かない商品名になったりする可能性があります。
商品名を考えるときは、必ず商品情報の棚卸しを行うようにしましょう。
2. キーワードを集める
2つ目は、商品に関するキーワードをひたすら出してみることです。
商品そのものとは直接関係がなくても、商品のジャンルやターゲット、業界、トレンドなど、間接的にでも関係がありそうなものまでひたすらピックアップしていきます。
自分の頭の中から出すのみでは限界があるので、書籍で調べたりインターネットで検索してみたりするのも有効です。
「これは関係ないかも」と一見感じてしまうようなキーワードから魅力的な商品名が閃いたりするので、制限をかけずにキーワードを集めてみましょう。
商品名に悩んだときに試したい7つのアイデア発想法
考えても考えても商品名が決まらないときもあるでしょう。
そんなときに参考になる7つのアイデア発想法をここで紹介します。
1. 集めたキーワードを組み合わせてみる
前述の「商品名を思いつくために必要な2つの作業」の2つ目の作業で集めたキーワードを組み合わせられないか検討してみるというのが、1つ目の発想法です。
たとえば「Microcomputer」と「Software」の2つの単語を組み合わせて付けられた「Microsoft」のように、単語の組み合わせを行うことによって新しい言葉が生まれ、独自の名前を作ることができます。
この方法を試す際は、シンプルでインパクトのある名前になるよう、なるべく文字数の少ないキーワードを選ぶことと、語感の強いキーワードを選ぶことがポイントです。
2. 文字の一部を変更する
集めたキーワードの中から、文字の一部を変えてみるのも一つの方法です。
商品のイメージには合っているけれどいまいちインパクトに欠ける、あるいは発音が難しくて馴染みにくいと思われるときに有効です。
ただし、商品のイメージを損ねるような名前はもちろん駄目ですし、見た目や発音が不自然になるものも避けたほうが無難です。
3. 接頭語や接尾語をつける
キーワードの前後に接頭語や接尾語をつけてみるのも良い方法です。
たとえば、トヨタ社のウインダム(windom)は、「勝つ」を意味する「win」と「〜の状態」を意味する接尾語の「dom」を組み合わせて付けられた車名です。
このネーミング法は、核となるキーワードをそのまま残すことによって商品のイメージを伝えつつ、インパクトも与えられるところが魅力です。
4. キーワードを逆にしてみる
キーワードを逆にしてみるというのも有効です。
「逆にしたら変な言葉にならない?」と思われるかもしれませんが、意外と有効です。
たとえば、清涼飲料水の「MIU(ミウ)」は、「UMI(海)」を逆に読んだ商品名ですが、全くおかしな感じはしません。
また、サッカークラブの「コンサドーレ札幌」の「コンサドーレ」は、「どさんこ」を逆にしたうえでスペイン語の「オレ(ole)」を合成して作られた名前です。
このように、キーワードを逆にしてみると意外と馴染みやすい名前が生まれるのです。
5. 語呂合わせをする
語呂合わせという方法もあります。
たとえば、「アスクル」は「明日来る」の語呂合わせですし、「SUUMO」は「住もう」から連想された名前です。
馴染みやすい言葉を選べば、親しみやすくて、なおかつ商品のイメージも伝えられる名前になります。
ただ、少し軽い印象になってしまう点には注意が必要です。
6. キーワードを略してみる
略すことで新しい言葉が生まれることもあります。
たとえば、新宿のバスターミナル「バスタ新宿」の「バスタ」は「バスターミナル」を略した言葉です。
また、NHK(日本放送協会)のように、アルファベットの頭文字をとることでインパクトのある名前になることもあります。
7. クラウドソーシングで依頼する
どうしても自分では良い名前が思いつかない場合は、クラウドワークスなどのクラウドソーシングサービスでネーミングを依頼するのも一つの手段です。
他者に依頼することによって自分にはない発想を得られるため、ネーミング経験が何度かあっていつも似たりよったりの名前になってしまう場合にもオススメです。
商標権を理解しておこう!
商品名を決めるにあたって注意しなければならないのが、商標権です。
商標権に関する理解が浅いままだと、思わぬところでトラブルになりかねないので、ここでしっかりとポイントを押さえておきましょう。
早めに商標登録を確認しておく
商品名を決めるにあたって必ず確認しておかなければならないのが、商標登録の有無です。
商標登録されている名前には商標権が発生しているので、登録者以外は同一の名前を使用することができません。
意図的かどうかに関係なく、すでに商標登録されている名前を使うのは違法行為です。
そのため、なるべく早めに商標登録の有無を確認しておきましょう。
カテゴリが違えば問題がないケースもある
商標登録はカテゴリで分かれているため、同一の商品名や似ている商品名であっても、カテゴリが違えば問題にならないケースも存在します。
しかし、カテゴリが同じ場合は問題が発生する可能性が高くなるので、いずれにしても商標登録の確認は早めに行っておきましょう。
未登録であれば早めに登録する
商標登録を確認した結果、まだ登録されていない名前だった場合は、できるだけ早めに登録しておきましょう。
商標登録は先着順であるため、仮に他の人が同じ商品名、あるいは似た商品名を思いつき、先に登録してしまうと、あなたのほうが先に思いついたにもかかわらずその商品名を使用することができなくなってしまいます。
せっかく思いついたアイデアを無駄にしないためにも、商品名は早めに登録するようにしましょう。
優れたネーミング事例5選
最後に、優れたブランド名の実例を見ていきましょう。
良い具体例を知れば、実際に自分が商品名を考えるときのヒントを得られるはずです。
1. Death Wish Coffee (デス・ウィッシュ・コーヒー)
コーヒーブランドDeath Wish Coffeeは、語感が強く非常にインパクトのあるネーミングです。
「世界で最も強いコーヒー」を販売するという意図から、このような名前がつけられました。
ブランドが表現する世界観が色濃く反映されたネーミングの好例と言えるでしょう。
2. Super Ink Clothing(スーパー・インク・クロシング)
Super Ink Clothingは、デザインやロゴがプリントされた衣類を販売するアパレルブランドです。
特別感を表現する「スーパー」に、プリントする意味を込めた「インク」、そして「クロシング」から衣類を扱うブランドであることも分かるようになっています。
シンプルでありながら、ブランドのイメージも湧きやすいネーミングです。
3. The Sock Market(ザ・ソック・マーケット)
The Sock Marketは、靴下を販売するアパレルブランドです。
靴下を意味する「ソック」と「マーケット(市場)」という単語を組み合わせることで、靴下を求めるすべての人のための場を提供するという意図が込められています。
4. Cotopaxi(コトパクシー)
Cotopaxiは、ハイクオリティなアウトドア用品を販売するブランドです。
また、「Cotopaxi」はアンデス山脈にある活火山の名前でもあることから、ブランドが掲げる壮大な理念や哲学、背景にある物語を感じ取ることができるネーミングになっています。
5. Coffee Joulies (コーヒー・ジュリーズ)
Coffee Jouliesに使われている単語「Joulies」は、エネルギーの単位「Joul(ジュール)」から来ています。
熱すぎるコーヒーの熱を冷ましてくれたり、適度に保温してくれたりするなど、熱(エネルギー)を程よい具合にコントロールできる商品の特徴をうまく表現したネーミングとなっています。
自分で名付けた商品名には愛着が湧く!
今回の記事では、商品名を決めるための方法や注意点、良いネーミングの事例などをお伝えしてきました。
こういったクリエイティブな作業は、不思議なもので、一瞬でパッと閃くこともあれば、いくら考えてもなかなか思いつかないこともあります。
特定の手順を踏めば、常に良い商品名が思いつくというわけではないのです。
それでも、商品名を考える経験を重ねれば重ねるほどセンスは磨かれていき、アイデアも洗練されていきます。
そうすれば、高い確率で優れた商品名をつけられるようになるはずです。
親が子供に名前をつけるのと同じように、自分で命名したものには愛着が湧くものです。
そうして愛情を込めてネーミングした商品が多くの人に愛されることとなれば、その喜びは計り知れないものになるでしょう。
そんな喜びにたどり着くための手段として、今回の記事が参考になれば幸いです。