日米貿易に興味はあるけれど、何だか小難しくて取っ付きにくいと感じている人は多いものです。
そこで、こちらの記事では日米貿易の概要だけでなく、貿易の流れや注意すべき輸出品について解説します。この記事を読んで貿易に関する知識を深めてください。
日米貿易
日本にとって重要な貿易相手国と言えばアメリカです。
まずは、日本とアメリカの貿易関係について紹介します。
アメリカにとって日本は主要貿易国
アメリカはカナダやメキシコを始めとした多くの国と貿易を行っていますが、日本も主要な貿易相手国に含まれます。アメリカの輸出総額の4.5%を日本への輸出が占めており、アメリカにとって日本は4番目に取引額の大きな輸出相手国なのです。
しかし、アメリカ側から日米貿易を眺めると大きな問題が見えてきます。貿易赤字です。貿易赤字とは、輸入が輸出よりも大きくなっている状態のこと。つまり、外国に払うお金が外国から入ってくるお金よりも多くなっている状態のことです。貿易赤字の解消が今のアメリカにとって大きな課題となっています。
アメリカへの輸出品
参考:日米貿易構造
つぎに、日本側から見たアメリカとの貿易について説明します。
アメリカへの主な輸出品は自動車や精密機器などの工業製品です。
これを見ると、アメリカでも日本の技術力の高さが評価されているのがわかります。
日本からアメリカへの主な輸出品
1位 自動車
2位 自動車の部分品
3位 原動機
アメリカからの輸入品
参考:日米貿易構造
日本もアメリカの高い技術力を活かした製品を輸入しています。医薬品や技術開発が進んでいる航空機類、自国の資源不足を補うためのガスなどを多く輸入しています。
また、アメリカからの輸入品で忘れてはならないのが食料品です。
小麦、大豆、牛肉など多くの食品を日本はアメリカからの輸入に頼っています。
輸出入の流れ
輸出入の流れを分かりやすく解説します。
商品と取引先の選定
物品や食品を輸入・輸出する際は、まずは商品と取引先を選定します。
輸入する場合
国内でどのような商品に需要があるのかをチェックします。
その上で、輸入する商品を決定し、取引先の企業を選定することになります。
輸出する場合
海外で通用する自社商品を選定します。
そして、商品を海外に向けて宣伝し、商品の売り込み先を見つけます。
注意点
輸入の場合、輸入する商品が法令の規制対象となっているかどうかや、
関税がどれくらいかかるのかをチェックする必要があります。
また、取引先の信用調査も欠かせません。
条件交渉・契約
価格や数量、梱包、検査方法などの交渉は日本国内での取引と同様に行います。ただし、海外取引では商品の輸送距離が長くなるため、輸送中のトラブルに見舞われた場合の責任分担をきちんと決めておかなければなりません。
また、商品を引き渡す場所や日時などの取引条件についても取り決めておきます。お互いが条件に同意した後は、契約書を作成して取り交わすことになります。
商品の搬入
通関業者を選定し、商品の輸送に必要な船腹を予約します。また、地上・海上における事故を想定した保険への加入も必須です。そして、保税地域へ商品を搬入し通関手続きを行います。
通関手続き
輸出入の多くは、輸出する側が通関や積込の手続きを行います。そして、貨物が輸入国に到着すると輸入する側が通関手続きを行います。現在は、オンライン通関システムのNACCSを利用して申請処理が行えるようになっています。
参考:NACCS
商品の引き取りと決済
荷物を受け取った輸入者は、契約で定めたタイミングで商品代金を支払います。輸出入における決済方法としては、前払い・後払い・L/C決済がよく利用されます。L/C決済とは、輸入者と輸出者の間に銀行が入る決済方法のことです。これによって安全でスムーズな決済が可能になります。
海外取引のリスク
海外との取引には、国内取引とは異なるリスクがあります。
知っておくべき輸出入のリスクを紹介します。
言葉や慣習の違い
当然のことですが、海外への輸出入では外国の方と交渉することになります。ほとんどの場合、輸出する側と輸入する側のどちらかの言語に合わせたり、英語を用いたりしますが、意思疎通が上手くいかない場合もあります。
また、言葉の問題の他にも国による考え方や慣習の違いもあります。口頭のみのコミュニケーションでは誤解や勘違いを生んでしまいます。そのため、後から内容を確認できるように、メールや手紙などを使ってやり取りするのが良いでしょう。
法制度の違い
法制度は国によって異なります。日本と外国で輸出入に許可が必要な商品も違ってきます。取引を開始してから思わぬトラブルに巻き込まれないためにも、輸出する側・輸入する側それぞれの国の法制度を確認しておきましょう。
社会動向・経済情勢
戦争や内乱のリスクがある国との取引は特に注意が必要です。最悪の場合、輸出入の停止や為替送金不能などの事態に陥ってしまいます。そのため、取引相手国の社会動向や経済情勢の把握は必須です。
貿易保険に入っていれば、戦争や内乱、自然災害などによる損害が保証される場合があります。カバーされる範囲は以下のサイトに詳しく記載されていますので、参考にしてください。
参考:NEXI「貿易保険とは」
アメリカの貿易事情
アメリカの貿易は現在どのような状況なのでしょうか。
ここからは、アメリカの貿易事情を解説します。
大きな貿易赤字
冒頭でも紹介しましたが、アメリカは現在大きな貿易赤字を抱えています。米国商務省発表の貿易統計によると2022年は10期ぶりの減少である前年比293億ドル減となっていますが、依然として赤字は続いています。日本に対する貿易赤字は10年間ほぼ変化はありませんが、中国に対する貿易赤字が年々増加しています。現在アメリカは、貿易赤字の削減に取り組んでいます。
アメリカの貿易主要品目
アメリカの主要な貿易品目は以下の通りです。医薬品や自動車部品は輸出・輸入両方の対象になっていますが、輸出額よりも輸入額の方が大きくなっています。
輸入:医薬品、自動車部品、携帯電話及びその他生活雑貨
輸出:医薬品、自動車部品,工業用機械,航空機,自動車
アメリカの貿易品目
アメリカは、民間航空機に関する輸出額は大きく黒字ですが、その他医療機器・通信機器などに関しては赤字が続いています。
航空機に関してはアメリカは高い技術力を持っており、世界中の航空機メーカーランキングの上位をアメリカ勢が占めています。
航空機メーカーランキング
1位 ボーイング(アメリカ)
2位 エアバス(フランス)
3位 ロッキード・マーティン(アメリカ)
4位 ユナイテッド・テクノロジーズ(アメリカ)
5位 GEアビエーション(アメリカ)
輸出管理について
アメリカでの輸出品の管理は主に商務省、通商代表部、国務省、国土安全保障省、財務省、内務省などが行っています。
米国輸出管理規則(Export Administration Regulations)とは
米国輸出管理規則(EAR)について解説します。
アメリカから商品を輸出する場合、直接A国へ届けられる場合もあれば、B国を経由してA国へ再輸出される場合もあります。ある製品のA国への輸出量が規制されている場合に、輸出規制のない第三国を経由してA国に輸出することを許してしまうと、A国への輸出規制が意味のないものになってしまいます。そこで、第三国を経由してA国へ再輸出される場合でも輸出量が同様に規制されるしくみになっています。これが、米国輸出管理規則(Export Administration Regulations)と呼ばれるものです。
米国輸出管理規則(EAR)の対象
米国輸出管理規則(EAR)の対象となるものは以下の通りです。
- アメリカ国内にある全ての品目
- アメリカ国外にあるもの
アメリカで生産された品目やアメリカ原産品目
外国製品でも特定の割合以上に米国規制品目が含まれたもの
外国製品でも特定の米国規則技術が使用されている製品
- アメリカ人、アメリカ人以外の外国人の特定の活動
- 技術やソースコードの外国人への移転(ソースコード開示を含む)
参考:Export Administration Regulations (EAR)
輸出に許可が必要な品目
輸出するために許可の必要な品目があります。許可が必要かどうかは対象製品や輸出国・輸出用途によっても異なりますが、特に以下の品目には注意が必要です。
A.品目カテゴリー
- 核物質、核施設、核装置、その他品目
- 素材、化学物質、微生物、有毒物質
- 材料加工
- 電子機器
- コンピュータ
- 通信、暗号
- レーザー、センサー
- 航行補助装置、航空電子機器
- 海洋技術
- 推進システム、宇宙機器、宇宙関連装置
B.品目グループ
- 装置、組み立て品、部品
- 試験、検査、製造の装置
- 素材
- ソフトウエア
- 技術
C.規制目的
- 国家安全保障
- ミサイル技術
- 核拡散防止
- 生物化学兵器
- テロ対策、犯罪防止、国連制裁など
参考:ジェトロ「輸出品目規制」
商務省以外が行う輸出管理
商務省以外で輸出管理が行われている品目は以下の通りです。
・国防サービス・軍需品
⇒国務省 国防貿易管理課
・制裁措置関連国への輸出
⇒財務省 外国資産管理局
・核物質・核関連設備
⇒原子力規制委員会
・核関連技術および原子力、核関連特殊物質に関する技術データ
⇒エネルギー省 国家核安全保障局
・天然ガス、電力
⇒エネルギー省 化石エネルギー局
・医療機器、医薬品
⇒食品医薬品局
アメリカとのスムーズな取引を
アメリカは日本にとって重要な貿易相手国です。日本は原子炉や精密機器などの高い技術力を輸出し、アメリカの航空機や食料品などを輸入しています。
輸出入の実践には取扱商品に対する規制の有無や法制度の確認が欠かせません。アメリカとの取引にあたっても、慎重な態度で臨み、スムーズに事が運ぶように注意しましょう。