商品を海外から輸入する場合は、関税がかかってしまうことがあります。しかし、関税の計算方法が難しくて分からないという人もいらっしゃるでしょう。
この記事では、商品を海外から輸入する際の関税の計算方法を紹介します。
関税について
関税という言葉はよく聞きますが、一体どういう税金なのでしょう。
まずは関税について解説します。
商品を輸入する際にかかる税金
関税とは、海外から商品を輸入する時にかかる税金です。企業が大量の商品を輸入する場合も、個人が旅行先からたくさんの商品を持って帰る場合も関税がかかります。基本的に、関税は商品を輸入する人が輸入する国に対して払うことになります。
国の産業を守るため
なぜ私たちは関税を支払わなければならないのでしょうか。その理由は、国内の産業を守るためです。
例えば、私たちがスーパーに並んでいるお肉の値段を比べてみてください。日本産よりも外国産の方が安いですよね。日本産のお肉よりも外国産の方が価格が安ければ、多くの人が外国産のお肉ばかりを購入してしまいます。
しかし、関税によって外国産のお肉を値上がりさせれば、消費者は外国産だけでなく日本産のお肉も買ってくれるようになります。
財源の確保
関税の徴収には国内産業の保護の他にも、財源の確保という目的もあります。
経済産業省の調査によると、日本の関税収入額は約0.94兆円です。これは、日本の税金の約1.6%に当たります。たった1.6%のように感じますが、日本の商業や農業の発展のために使われる大切な収入となるのです。
関税を支払うタイミング
実際に商品を輸入するとなると、いつどのように関税を支払えばよいのでしょう。
ここからは、関税を支払うタイミングについて解説します。
商品代金と一緒に支払う
私たちが海外通販サイトから商品を購入し輸入する場合は、商品代金の支払時が関税を支払うタイミングです。商品代金を玄関先で支払う場合は、商品代金と一緒に送料や関税を支払うことになります。
通関業者に立て替えてもらう
本格的に輸入ビジネスを行っている人の中には通関業者を利用している人も多くいます。通関業者に商品の輸入を頼めば、通関業者が関税を立て替えて納付してくれます。その後、通関業者に関税分の金額を支払うことになります。
関税のルール
関税にはルールがあり、定められたルールに従って税額が決まります。
商品ごとに異なる関税率
輸入する商品によって関税率は異なります。商品ごとの関税率は税関のホームページで確認できるので、輸入する前に必ず確認しておきましょう。
例えば、お茶の場合は、緑茶も紅茶も関税率は20%です。コーヒーの場合は、コーヒー豆は無税ですが煎った状態のコーヒーには基本的に20%の関税がかかります。
特恵関税制度
開発途上国の経済発展のため、開発途上国から商品を輸入する際は特定の品目に対して一般の関税率よりも低い税率となる場合があります。特恵関税措置といいます。この制度は、インドネシアやカンボジアなど126か国5地域の開発途上国の特定品目が対象となっています。
参考:外務省「特恵関税制度」
個人使用目的か商業目的か
商品を個人で使用するために輸入するか、商業目的で輸入するかによっても関税率は異なります。
個人で使用するとは、文字どおり、自分で買ったものを自分で使用することです。同じような商品を複数購入した場合でも、商品の種類によっては個人使用と認めてもらえない場合もあります。例えば、同じ種類の靴をサイズ違いで数足購入した場合は、個人使用とは認められません。
その一方で、靴のコレクターなどは全く同じサイズの同じ靴を2足買う場合があります。自分で履くための1足と、鑑賞用の1足です。この場合は個人使用と認められることが多いです。
関税の検索機能
海外から商品を輸入する場合は、どんな商品にどれくらいの関税がかかるかを把握しておく必要があります。そんな時に利用したいのが、関税の検索機能です。
簡単に関税が検索できるサイト
日本関税協会は、ネット上で簡単に関税が検索できる「webタリフ」というサービスを提供しています。
参考:webタリフ
webタリフの使い方は簡単で、商品を輸入する国または地域を選んで、統計番号やキーワードを入力して検索するだけです。
実際に関税を検索してみよう
例えば、イギリスから紅茶を輸入する場合を検索してみましょう。
まずは、原産国・地域の選択で「205 英国」を選択します。
次にキーワード欄に「紅茶」と入力してみましょう。検索ボタンを押すと検索結果が表示されます。
「紅茶くず」と「茶」、「茶くず」の3種類が表示されました。今回は、「茶」を選びましょう。HS番号をクリックすると、関税率の書かれた表が表示されます。
この表から、「紅茶及び部分的に発酵した茶」の基本税率が20%であることが分かりました。
このように各商品の関税率をチェックしていきましょう。
3種類の関税率
Webタリフで調べた表の関税率には、「基本」「暫定」「WTO協定」という種類があります。
基本税率は全ての商品に定められている関税です。ただし、無税の商品には定められていません。
暫定税率とは一時的に定められた関税率で、商品を輸入する国で何らかのトラブルがあった場合に適応されます。
WTO協定税率とは、WTO加盟国や地域に対して課される税率で、一定の率以上の関税を課さないよう定められています。
関税の計算方法
関税の計算方法を紹介します。
個人使用目的の場合と商業目的の場合とで関税の計算方法は異なります。違いを把握して正しく計算してください。
基本的に1万円以下は免税対象
海外から商品を輸入する場合、1箱当たりの商品価格が1万円以内であれば免税対象となります。
個人で使用する目的で商品を輸入する場合は、商品価格に0.6をかけた金額が1万円以内であれば免税対象になります。
商業目的で商品を輸入する場合は、この0.6掛けルールは適用されません。また、0.6掛けルールを適用するためには条件があります。あくまでも、個人で使用する商品を輸入する場合のみ0.6掛けルールが適用されます。
例えば、輸入した商品を友人や知り合いにあげる場合は個人使用にはなりません。もちろん、オークションサイトやフリマサイトで販売する場合も個人使用とは認められません。
具体的な計算方法
商品を海外から輸入する場合の計算方法を解説します。
例えば海外から、7,000円・5,000円・4,000円の商品を購入する場合を考えてみましょう。
1.個人で使用する目的で輸入する場合
個人で使用する目的で商品を輸入する場合は、商品金額に0.6を掛けられます。
(7,000円+5,000円+4,000円)×0.6=9,600円
商品金額の合計が1万円以下なので免税対象になります。
2.商業目的で輸入する場合
商業目的で輸入する場合は、商品金額そのままです。
7,000円+5,000円+4,000円=16,000円
1万円以上になるので免税とはなりません。輸入する商品の関税率により関税が決定します。
関税に関する注意点
関税に関する注意点を解説します。
海外の通販サイトで買い物をする場合の参考にしてください。
商品ごとの関税率で計算する
1つの通販サイトで複数の商品を購入すると、商品ごとに個別の関税率がかかります。例えば、洋服とアクセサリーを複数購入した場合は、洋服には洋服の関税率、アクセサリーにはアクセサリーの関税率で計算しなければなりません。
もちろん、個人で使用することを目的として購入しているので、商品の合計金額に0.6を掛けた金額が1万円以下なら関税はかかりません。
別々に送っても合計額に課税?
1つの荷物内の商品金額が1万円以下になるように、分割して注文した場合は関税がかからないのでしょうか。
実は、2つ以上の荷物になるように分割して注文処理した商品でも、近い時間・日付で郵送された場合は全ての荷物の合計金額が課税対象になることが一般的です。
ちなみに、海外の通販サイトでも送料がかかる場合がありますが、送料に関しては関税の計算に含めません。
商品を返品した場合
海外の商品を購入したものの、キズがあったり壊れていたりして返品することはよくあります。
輸入した商品を返品する場合は、関税も払い戻してもらえますが、それには条件があります。
1.輸入が許可されてから6ヶ月以内
2.輸入時の性質や形状を変更していない
以上2つの条件を満たしていれば、関税の払い戻しが可能です。
返品する商品の価格によって関税の払い戻しにかかる手続きが少し異なります。
税関に提示するべき書類は以下の通りです。
1.関税払戻し申請書
2.個人使用を目的として通販サイトで購入したことを証明できるもの
3.輸入許可書または国際郵便物課税通知書
4.輸入インボイス(3で確認できない場合のみ)
・商品の合計が20万円以下の場合
事前検査を受けた後に、商品を郵便局に差し出します。この際、郵便物受領書を受け取りましょう。郵便物受領書に上記の書類一式を添えて税関に提出します。税関で審査されたのち、関税は指定した銀行口座に振り込まれます。
・商品の合計が20万円を超える場合
事前検査を受けた後に、通販会社や出品者を仕向人として税関で輸出申告を行います。税関の審査が終了したら、商品を郵便局に差し出し郵便物受領書を受け取ります。
税関に郵便物受領書を提示し輸出許可書を受け取ったら、書類一式を提出しましょう。税関での審査が終われば、銀行口座に関税が振り込まれます。
簡易税率について
海外から輸入する商品の合計金額が20万円以下の場合は簡易税率が適用されます。
7区分の簡易税率
簡易税率が適用されると関税の計算が非常に楽になります。通常は数千ある品目の中から輸入する商品に対応する関税率を見つけて計算しなければなりません。しかし、簡易税率であれば大まかに7区分に分類されているだけです。
簡易税率が適用される品目の一部を紹介します。
品 目 | 簡易税率 |
---|---|
酒類 (1)ワイン (2)焼酎等の蒸留酒 (3)清酒、りんご酒 等 | 70円/リットル 20円/リットル 30円/リットル |
トマトソース、氷菓、なめした毛皮(ドロップスキン)、毛皮製品 等 | 20% |
コーヒー、茶(紅茶を除く)、なめした毛皮(ドロップスキンを除く) 等 | 15% |
衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものを除く) 等 | 10% |
プラスチック製品、ガラス製品、卑金属(銅、アルミニウム等)製品、家具、玩具 等 | 3% |
ゴム、紙、陶磁製品、鉄鋼製品、すず製品 | 無税 |
その他のもの | 5% |
詳しくは、以下の簡易税率表を参照して下さい。
簡易税率が適用されない品目
商品の中には簡易税率が適用されない品目もあります。簡易税率が適用されない品目に関しては一般税率が適用されるので注意してください。
例えば、以下の商品には簡易税率が適用されません。
・米、ミルク、ハム、たばこ、革製品、ニット類、履物、身辺用模造細貨類
関税を計算してから輸入しよう
海外から商品を輸入する場合は、個人使用目的であっても商業目的であっても関税の計算は必要です。
個人使用目的の場合は、商品の合計金額に0.6をかけた金額が1万円以下であれば免税対象になります。商業目的の場合は、輸入する物品の合計金額が1万円以下であれば免税されます。
また、商品の合計金額が20万円以下であれば、計算が容易な簡易税率が適用されます。
実際に商品を輸入する際は、関税をしっかりと計算してスムーズな輸入を心がけましょう。