お客様と店員さんが対面することのないネットショッピング。買い物の際に領収書がないことが多いですよね。ネットショッピングでは領収書が発行されないケースが多いですが、お客様の中には領収書を必要とする人がいるのも事実です。
事業者側は商品やサービスを提供してお金を受領した場合に領主書を発行する義務があります。ただし、ネットショッピングは支払方法を選択するため領収書の発行が複雑です。
虚偽の発行によりペナルティを受ける可能性もあります。安易に発行するのはトラブルの原因となるので注意しましょう。
そこで、今回はネットショッピングにおける領収書の発行義務や注意点について解説していきます。領収書についての知識を深め、未然にトラブルを回避しましょう。
なぜ領収書を発行する必要があるのだろうか?
実は領収書には現金を受け取った際に発行する「義務」があり、民法という法律で定められています。それではなぜ法律で定める必要があったのでしょうか。以下で詳しく解説します。
そもそも領収書って何?
「領収書」と言うと聞きなれませんが、普段私たちが受け取っている「レシート」のことです。日本では手書きのものを領収書、機械で印字されたものをレシートと呼ぶ傾向にありますが、本来はレシートも領収書の一部。コンビニやスーパーなどで1つでも買い物をすれば店員さんから渡される支払証明書です。
民法486条には領収書発行についての義務が明記されています。代金を支払った側は代金支払いと引換に、代金を受領する側に対して、領収書(受取証書)の発行を請求することができます。証拠として領収書(受取証書)を発行するように申し出があれば、店側は領収書(受取証書)を必ず発行しなければなりません。もし店側が領収書(受取証書)発行を拒否した場合は、代金の支払いを断ることができます。
そもそもなぜ領収書の発行が義務付けられたのでしょうか。それは「二重に請求されることを防ぐため」です。領収書がなければ支払いをしたという証拠が残りません。トラブルを無くすために法律で定められています。
領収書の再発行は拒否することができる
もし「領収書を無くしたからもう一度発行してほしい」と申し出があったときにも、店側は領収書を発行する必要があるのでしょうか。
その答えはNOです。再発行に関しては義務ではありません。一度でも領収書を発行していれば再発行は拒否することができます。
ただし店側の判断で再発行することもできますが、悪用される可能性があることを十分に考える必要があります。善意のつもりがかえって店に被害をもたらすこともあるのです。再発行する場合は慎重に検討することをオススメします。
ネットショップの領収書の扱い
民法で定められている通り、領収書を発行するように申し出があれば店側は領収書を必ず発行しなければなりません。しかし一般的には、申し出が無くても店側はお金を受け取る際に領収書(レシート)を発行します。その方が効率が良いからです。
それでは対面で対応のできないネットショップはどのような扱いになるのでしょうか。
領収書の代わりになる書類
実は領収書が無くても、以下の書類は支払証明書の代わりになります。
- クレジットカード払いなら「利用明細書」
- 銀行振込なら「振込明細書や預金通帳」
- 代金引換なら「配送業者から渡される領収書」
- コンビニ払いなら「コンビニでもらえるレシート」
上記の書類はネットショップの領収書代わりとして使うことができます。もちろん確定申告用の書類としても提出することができます。
そのため、ネットショップは領収書を発行する必要はなく、二重発行にならないためにも作成しない方が賢明です。このように代用できる書類があることを知っていれば、お客様から領収書の発行依頼があってもスムーズな対応をすることができます。
ネットショップから発行された領収書が欲しいと言われた場合
領収書代わりになる書類があることを説明しても、ネットショップから発行された領収書が欲しいと言われた場合には慎重に対応することが大切です。領収書の再発行と同様に悪用される可能性があるからです。当然、領収書の発行を求められた場合は発行の義務が生じますが、経費の水増し請求や二重請求を疑われないためにも領収書は何度も発行してはならないのです。
こういったトラブルを回避するためにも、利用規約などにあらかじめ記載しておきましょう。領収書代わりになる書類があることを知らないお客さん側からしてみれば、対応の悪い店だという印象を与えてしまいリピーターの消滅にもつながります。
実店舗と違いネットショップは画面の奥で働いている出店者の人柄を実際に目で見ることはできません。口コミの悪さが目に付いてしまうと今後の存続にも関わりますので先手を打つことが大切です。
領収書の再発行を依頼された場合の対処法とは?
紛失などを理由にお客様から領収書の再発行を依頼されるケースが考えられますが、基本的に再発行に応じる必要はありません。この記事でも解説したように再発行の義務はないからです。
ただし、お客様は領収書についての法的な知識がない方ばかりです。そのため、一方的に発行をお断りするとサービスが悪い旨の口コミを投稿されたり、場合によってはクレームをいただいたりする可能性があります。
そこで、トラブルを避けるための対処法を紹介していきます。
事前に領収書の再発行ができない旨のアナウンスをする
Webサイトの利用規約やFAQなどに「領収書の再発行は致しかねます。ご了承ください」などと明記しておくことが大切です。ショップの運営方針を事前に周知しておくことでトラブルを避けられます。
例えばWebサイトに明記してある状態で再発行を依頼されたとしても「利用規約に明記しているとおり、再発行はできません」と断りやすいです。また、利用規約などを読んでいないケースも考えられるので、領収書に「再発行はできません。大切に保管してください」と明記する方法も効果があります。
領収書の代わりとなる書類で代用してもらう
領収書に限らなくても「支払先」「日付」「支払金額」「支払内容」の4つの記載があれば、領収書の代用が可能です。これらの情報が記載されている書類は次の3つが挙げられます。
- 注文確認メール
- クレジットカードの利用明細書
- 金融機関の振込明細書
上記の明細書を印刷したり画面キャプチャーしたりして、お客様自身で保管しておけば領収書の代わりになります。ただし「2」と「3」は支払内容が明記されていないので「1」の注文確認メールも併せて保管することが大切です。
以上の内容をWebサイトのFAQなどに明記するか、再発行の問い合わせがあったときに伝えるようにしましょう。
ちなみに、納品書や請求書は代金を支払った証明にはなりません。領収書の代わりにはならないので注意が必要です。
領収書ではなく支払明細書を発行する
領収書を再発行する代わりに支払明細書を発行して代用する方法があります。支払明細書は領収書に比べると証拠価値が下がりますが、お金を受領したことは証明できるからです。
支払明細書には「作成者」「発行日」「支払内容」「金額」「支払先」の5つを記載して発行しましょう。ただし支払明細書だけでは効力が弱いので、お客様には支払明細書だけではなく注文確認メールも併せて保管するように伝える必要があります。
領収書の保存義務について
領収書を発行した事業者側は領収書を保存する義務はありません。領収書の保存義務があるのは領収書を証拠資料とする「顧客側」だからです。例えば、経費の証拠資料として領収書を利用する場合は7年間保存する必要があります。
基本的に領収書は取引が成立した日に発行するものですが、購入した商品やサービスを証明するレシートなどがあれば後日発行が可能です。ただし、取引から時間が経過しすぎている場合はトラブルの要因となります。事前に領収書の発行期限を設けてWebサイトに明記するなどして、トラブルを回避するようにしましょう。
現金以外の領収書発行内容
もしも現金以外の支払方法について領収書を求められた場合は、どのような内容を記載すれば良いのでしょうか。銀行振込・クレジットカード払いについて解説します。
銀行振込の領収書発行内容
会社の経費として申告するために領収書を求められることも多いです。領収書を求められた場合には発行義務が生じますが、納品書などを発行することで、振込明細とあわせて領収書の代用とすることも可能です。
ネットショップで領収書を発行する場合には、必ず銀行振込で受領したことが分かる文言を記載してください。振込日・銀行名・振込名義人があれば更に良いです。振込明細書が領収書代わりになるため、二重発行を避けるためにも領収書を発行しない方が良いという意見もあります。こちらもよく考えて発行するかどうかを検討しましょう。
ポイントを使う場合の領収書発行内容
領収書には実際に支払われた金額を記載します。
5,000円の商品を1,000円分のポイント+4,000円の銀行振込で支払ったとしましょう。1,000円分のポイント部分はポイント発行会社が負担し、4,000円の現金部分はお客様が負担します。ポイント発行会社が1,000円・お客様が4,000円を支払うので、ポイント発行会社に1,000円の領収書・お客様に4,000円の領収書を発行することになります。
お客様から領収書を求められたら本来であれば4,000円部分のみの領収書発行となるのですが、商品代金5,000円としての領収書が欲しいと依頼されることもあります。その場合は「1,000ポイント使用分含む」と記載して発行する方法もあります。
送料の領収書発行内容
元払いは送料を含めた金額を領収書に記載します。着払いは送料を含めない金額(商品代金)のみを領収書に記載します。送料分は配送会社が領収書を発行します。
領収書に貼る収入印紙について
ネットショップの場合は領収書の発行義務がないので、もし発行しても正式な書類にはなりません。
正式な領収書なら、大きな金額には収入印紙を貼る義務があります。5万円以上~100万円未満の金額に必要な収入印紙の額は200円です。
収入印紙を貼る位置はどこでも構いません。また、収入印紙を貼った領収書には消印が必要となります。これは社印・認印でも構わず、角印ならより安心です。
収入印紙と消印は義務ですので、これを忘れると罰則があります。万が一忘れた場合でも領収書として使うことはできますが、お客様の会社で却下されることがあります。
税込みなら5万円以上・税抜きなら5万円未満になる商品については、領収書の表記によっては収入印紙を不要とすることもできます。例えば税込み50,600円の商品=税抜き46,000円+消費税4,600円で構成されています。領収書に税込み50,600円だけを記載した場合には消印と収入印紙が必要ですが、消費税部分も明記した金額を領収書に記載すれば収入印紙は不要です。
ネットショップの場合は5万円以上~100万円未満の商品を販売しても、代金引換払いの場合、収入印紙と消印は必要ありません。印紙税は運送会社からの回収代金振込の際に差し引かれるからです。
領収書の金額と印紙税額
収入印紙は印紙税を支払うための証票で、領収書に記載された金額が税抜きで5万円以上の取引から必要になります。この印紙税額は領収書に記載された金額によって金額が異なるので注意が必要です。
領収書の受け取り金額(税抜金額) | 収入印紙の金額 |
---|---|
5万円未満 | 必要なし(非課税) |
5万円〜100万円以下 | 200円 |
100万円超〜200万円以下 | 400円 |
200万円超〜300万円以下 | 600円 |
300万円超〜500万円以下 | 1,000円 |
500万円超〜1,000万円以下 | 2,000円 |
1,000万円超〜2,000万円以下 | 4,000円 |
2,000万円超〜3,000万円以下 | 6,000円 |
3,000万円超〜5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超〜1億円以下 | 2万円 |
領収書に記載する内容
ネットショップで領収書を発行する際には以下の内容を記載しましょう。
- 領収書という文言
- 宛先
- 金額
- 但し書き
- 発行日
- ネットショップ名とネットショップの住所
- 支払方法
【発行の注意点】
- 宛先がお客様個人名なら漢字を間違えないように、会社名でも一字一句正確に記載しましょう。
- 改ざんされないように金額の前に「¥」と金額の後に「-」を記載し、カンマは3桁ごとに入れましょう。
- お客様から但し書きに指定があれば指定通りに、無ければ「商品代」とそのまま記載しましょう。
- 二重発行を疑われないためにも支払方法は必ず記載しましょう。
クレジットカード払いの領収書発行は義務なのか
領収書を発行するようにお客様から申し出があれば、店側は領収書を発行する義務がありました。それではリアルタイムで現金を受け取れないクレジットカード払いではどうでしょうか。ここではクレジットカード払いでの領収書について解説します。
クレジットカード払いに領収書発行の義務はない
領収書は直接支払いを受けた部分に対してのみ発行することができます。お客様がクレジットカード払いにすると、実際に現金としてネットショップに支払ってくれるのはクレジットカード会社です。
お客様はクレジットカード会社から請求が来た金額を銀行口座などから支払います。クレジットカード払いでは「お客様」→「クレジットカード会社」→「ネットショップ」というように間接的に支払う形になるので、領収書の発行義務はありません。
もしもお客様へ領収書を発行してしまったらどうなるのでしょうか。ネットショップはクレジットカード会社からしか支払いを受けていないはずが、お客様・クレジットカード会社の2ヶ所から支払いを受けたことになってしまいます。
それだけではなくお客様に対しても2ヶ所への支払いが生じてしまうため経理上の食い違いが発生します。こういったトラブルを招かないためにも、お客様へ領収書を発行してはなりません。
クレジットカード払いでの領収書の代わりになる書類
クレジットカード払いでは、発行者・宛先・金額・発行日・購入内容の記載があれば「利用明細書」を領収書の代わりとして使うことができます。多くのネットショップでは利用規約などに領収書の発行をしていないことを記載しています。二重発行を防ぐためにもネットショップ開設時に記載しておきましょう。
発行の義務は無いがサービスとして発行することも
本来であれば領収書は発行しない方が良いのですが、お客様から依頼されることがあります。「利用明細書」が領収書代わりになると説明しても、どうしても領収書が欲しいと依頼があればサービスとして発行することもできます。ただしトラブルにつながる可能性もあるので、慎重に考えて発行する必要があります。
クレジットカード払いの領収書でトラブルを防ぐには
領収書を発行する場合には、必ずクレジットカード払いで受領したことが分かる文言を記載してください。経費の水増し請求や二重請求を疑われないためにも領収書に記載しておく必要があります。領収書に記載するべき基本的な事項の他に「クレジットカード払い」と記載するだけで、この領収書は二重発行ではないという証明になります。
また、本来であればクレジットカード払いの場合は領収書を発行する義務はないので、発行した領収書は正式な書類とはなりません。そのため収入印紙を貼る必要はありません。
ネットショップの領収書を発行する上で押さえるべき2つのポイント
自分のネットショップを開設するにあたって、領収書の発行が求められた場合を想定して、領収書の発行のやり方を知っておかなければなりません。
そこでここでは、ネットショッピングの領収書に関して押さえておくべきポイントを2つ紹介します。
ネットショップの領収書の発行期間
結論言うと、領収書を発行する側には特に発行期間についてのルールがありません。ルールはありませんが、購入者とのトラブルを防ぐために発行期間を記載しておくことをおすすめします。
領収書の発行可能期間をネットショップ上で書いておくことで、購入者とのトラブルが防げます。
ネットショップの領収書には印鑑がいる?
基本的に領収書に印鑑は不要となっています。ですが領収書のほとんどには印鑑が押されているものが多いです。これはあくまでもビジネス上のマナーのようなものです。印鑑が押されてないからといって法律違反になることはありません。
ただし領収書によっては印鑑が必要になるものがあります。それは収入印紙を貼る場合です。収入印紙を貼る場合には、割り印が必要になるので注意しましょう。
もしもPDFで領収書を発行する場合には、収入印紙が不要になるので印鑑も不要になります。
ネットショップでは領収書の発行はあくまで「サービス」
ネットショップでは領収書を発行する義務はありません。むしろトラブル回避のためにも発行しない方が身のためなのです。実店舗であれば、一般的には領収書の申し出が無くても店側はお金を受け取る際に領収書(レシート)を発行します。間接的に現金を頂くネットショップには、領収書は関係のない話なのです。
それでもネットショップで領収書を発行してほしいという依頼が多く寄せられます。領収書の代わりになる書類があることを説明しても要望がある場合には慎重に発行を検討することが大切です。領収書を求められた場合はどのように対応するべきでしょうか。
なぜ領収書が必要なのか?
領収書の代わりになる書類が存在するのに、どうしてネットショップで発行した領収書を欲しがるのでしょうか。その理由はお客様によって様々です。例えばクレジットカード払いで商品を購入した場合、実店舗であれば支払った際に紙に印字された支払証明書が発行されます。
ところがインターネットで支払うとメールやデータ上で支払証明が確認できるだけで、紙などの実物として受け取ることができません。画面を印刷してしまえば良い話なのですが、会社によっては角印が無いと領収書として認めてもらえないこともあります。そのため角印を押した領収書を依頼されることがあるのです。
プライベート用と会社用のクレジットカードを分けていない個人事業主も多く存在します。プライベート用でいくら、会社用でいくら支出したのかを把握するためにも個別の領収書が必要となります。
領収書で売上アップ!?
トラブルを避けるために、あらかじめ利用規約などに領収書発行は非対応と記載しておくことは大切なことです。ところが、どうしても領収書を発行してほしいと考えているお客様は多く存在します。当然売上の減少につながります。
領収書の二重発行を疑われるリスクはあるが売上を重視するか、利益が上がらなくてもトラブル回避をして安心を取るか。それぞれのメリット・デメリットを踏まえて慎重に判断しましょう。ライバルの多いネットショップでは、たった少しのサービスの違いで人の流れが変わるのです。
もし領収書を発行するなら
サービスとして領収書を発行することを決めたら、エクセルやワードであらかじめテンプレートを作っておくと便利です。
- 領収書という文言
- 宛先
- 金額
- 但し書き
- 発行日
- 収入印紙貼付欄
- ネットショップ名とネットショップの住所
- 支払方法
【発行の注意点】
- 宛先がお客様個人名なら漢字を間違えないように、会社名でも一字一句正確に記載しましょう。
- 改ざんされないように金額の前に「¥」と金額の後に「-」を記載し、カンマは3桁ごとに入れましょう。
- お客様から但し書きに指定があれば指定通りに、無ければ商品代をそのまま記載しましょう。
- 二重発行を疑われないためにも支払方法は必ず記載しましょう。
「領収書」以外の文言にすると安心
印紙税は運送会社からの回収代金振込の際に差し引かれるため、ネットショップの場合は5万円以上~100万円未満の商品を販売しても200円の収入印紙を貼る必要はありません。そうなると「領収書」として作る意味はあるのかという疑問が残ります。
領収書は発行せず金額入りの「納品書」に領収済と記載する方法や、納品書ではなく「ご入金確認書」という文言に変える方法であれば安全に発行することができます。ただし人によって見解が変わるため、詳しくは専門家に指示をもらう方が良いでしょう。
まとめ
ネットショップには領収書の発行義務はありませんが、サービスとして領収書を発行できることが分かりました。本来ならネットショップには必要ない書類ですが、発行する場合には起こりうるトラブルについて十分に理解し、検討するようにしましょう。