安定した利益をあげやすい中国輸入ビジネスは、近年個人輸入ビジネスとして大きな拡大を見せています。
中国から商品を輸入するときには関税がかかりますが、この関税のしくみや計算方法を把握していないと、売上はアップしているのに手元にお金が残らないなんていうことにもなりかねません。また、日本から中国へ商品を輸出する場合も、中国側で関税がかかるため、中国関税に関する知識も必要です。
そこで今回は、中国輸入・輸出の関税のしくみについて徹底解説します。中国輸出入ビジネスに興味をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
関税とは?関税の基礎知識
まずは、「関税とは何か」について詳しく解説しましょう。
関税とは何か?
関税とは、輸入する品物に課される税金のことです。国内産業の保護や市場経済の混乱防止を主な目的としています。
関税額は、原則的に輸入する商品の代金や送料、保険料の合計額に関税率を掛けた金額になります。
関税=(商品代金+送料+保険料)× 関税率
関税率は、輸入国や品目によって異なります。中には関税がかからない商品もあります。詳しい内容は税関のHPでチェックしてください。
参考:税関
中国の関税は3種類
それでは、中国の関税について見てみましょう。
中国の関税は、
・貨物の物流に基づく分類…輸入関税、輸出関税
・課税の計算基準に基づく分類…従価税、従量税、複合税
・徴収目的に基づく分類…保護関税、財政関税
に分類されます。
日本の関税とは仕組みがかなり異なりますので、日本から中国への輸出ビジネスも視野に入れている方は、事前にしっかり内容を把握しておきましょう(後ほど詳しく解説します)。
中国の関税率を調べる方法とは?
中国の関税率を調べるには、主に以下の3つの方法があります。
1.World Tariff(ワールドタリフ)
World Tariffは、FedEx Trade Networks社が提供する世界の関税率情報データベースです。日本貿易振興機構(ジェトロ)のサイトから無料で利用可能です。
2. Rules of Origin Facilitator(ルール オブ オリジン ファシリテーター)
Rules of Origin Facilitatorは、世界の関税や貿易協定などの情報を提供するオンラインリソースです。海外市場での輸入関税について無料で調べることができます。
3.中国税関などでHSコードを調べる
HSコードは、世界共通で使用される輸出入品目のための分類番号です。HSコードは税関の輸出統計品目表で調べることが可能で、このHSコードを中国税関のデータベースに入力すれば関税率が調べられます。
参考:ジェトロ
参考:Rules of Origin Facilitator
中国輸出の関税3選
日本から中国に輸出する場合、中国の税関で関税を払わなければなりません。先ほど解説した通り、中国輸出にかかる関税は日本とは内容がかなり異なります。そこでここでは、中国の関税の具体的な内容について解説します。
中国の主な関税には、以下の3つの種類があります。
1.輸入関税
2.消費税
3.輸入増値税
それぞれ詳しくご紹介しましょう。
1.輸入関税
輸入関税とは、中国の税関が外国からの輸入品に対して課す税金です。国内の産業の保護を目的としています。
主に以下の3種類があります。
・従価税…輸入品の価格に応じた税
・従量税…重量や面積などに応じた税
・複合税…価格および重量、面積の両者に応じた税
2.消費税と輸入増値税
・消費税
中国の消費税は、車や宝石、酒などの贅沢品にかかる税金とされており、日本の消費税とは性格が異なります。これらの贅沢品が輸入される場合にも消費税が課されます。
・輸入増値税
輸入増殖税は、日本の消費税に相当する税金です。海外から品物を輸入する際にも発生します。課税率は原則16%ですが、品目によって異なります。
このように、中国の関税は日本の関税と異なる部分が多いため、事前に内容をしっかり理解しておくことが重要です。そしてビジネスを始めたときに、迅速に対応できるようにしておきましょう。
中国輸入の関税の決定方法
中国から日本へ商品を輸入する際にかかる関税は、個人輸入と商用輸入とで計算方法が異なります。
ここでは、個人輸入・商用輸入の違いと、関税の計算方法についてご説明します。
個人輸入とは?
個人輸入とは、一般的に課税価格が20万円以下の輸入のことを指します。関税率には簡易税率が適用されます。
また、個人輸入には、
「個人使用目的」…個人が自身で利用することを目的とする
「販売目的」…個人で輸入した商品を国内で販売することを目的とする
の2種類に分かれます。
それぞれの関税の計算方法は以下の通りです。
・個人使用目的…(商品代金 × 0.6)× 関税率
・販売目的…(商品代金+送料+保険料)× 関税率
なお、個人使用目的の場合、課税価格が10,000円以下の場合は原則免税となります。
商用輸入とは?
商用輸入は、国内の第三者に販売することを目的とした課税価格が20万円を超える輸入であり、簡易税率よりも高い一般税率が適用されます。そのため、一般輸入とも呼ばれます。
商用輸入の計算方法は以下の通りです。
関税額=(商品代金+送料+保険料)× 100% × 関税率
商用輸入は個人輸入に比べて税率が高いため、小口の輸入の場合には個人使用目的の輸入として関税を安く済ませようとする人がいます。しかし、これは違法行為ですので絶対に避けてください。
中国輸入は個人輸入?それとも商用輸入?
中国輸入ビジネスは個人輸入か商用輸入か、もうおわかりになりますよね。
中国から輸入した商品を国内で販売する中国輸入は、「商用輸入」に該当します。
つまり、転売目的での輸入はすべて商用輸入になるのです。そのため、たとえ小口でも税関での輸入申告や届出が必要になるので注意してください。
個人輸入の通関手続きの方法
ここでは、個人輸入における通関手続きの方法を解説します。
個人で手続きをする場合
まず、個人で手続きをする方法です。商品を一般貨物として輸入し、自分で関税を申告します。
主な流れは以下の通りです。
1.仕入れ書、運賃証明書、領収書、保険証券(保険を掛けている場合)などの必要書類のほか、身分証明書、印鑑を用意する
2.船荷証券と未払い運賃を支払い、船会社から荷渡指示図を受け取る
3.税関で輸入申告書と関税を納付し、必要書類を提出する
4.審査および検査を受けた後、輸入許可書を受け取る
5. 納税が完了後、保税地域(倉庫)から商品を受け取る。配送を希望する場合は保税地域の担当者に相談する
通関業者に依頼する場合
次に、個人ではなく、通関業者に依頼する方法です。先ほど説明した税関への申告と納税をすべて業者が代行し、自宅へと引き渡してくれるので、手間がなく非常に効率的です。
また、販売許可や検査が必要な輸入品目の手続きにも対応してもらえますし、中国語による業者との交渉も任せられるので、トラブルの発生も防ぐことができます。
とはいえ、通関代行料をはじめ、手数料や自宅への運送料などのコストがかかるので、事前に費用を確認しておきましょう。
中国輸入ではアンダーバリューに要注意!
中国輸入では、業者から商品代金を安く記載してあげると持ち掛けられることがあります。これを「アンダーバリュー」と言います。
しかし、アンダーバリューは違法行為であり、何も知らずに承諾してしまえば、犯罪に手を染めてしまうことになってしまいます。
そこで、ここではアンダーバリューについて詳しく解説します。
アンダーバリューとは?
アンダーバリューとは、関税を安く抑えるために、インボイスという輸入貨物の明細書の単価や金額等を安く記入することです。
中国では当たり前のように行われているため、業者がアンダーバリューを強くすすめてきたり、勝手に行ったりする場合もあります。
しかし、このアンダーバリューは脱税行為であり、刑事罰の対象となることがあります。そのため、すすめられても絶対に断り、正規価格を記入するように頼みましょう。
もしかすると税関にはバレないかも?
アンダーバリューは中国では当たり前のように行われています。また、毎日大量のインボイスが処理されている税関なら、もしかしたらバレないかも?と考える方もいることでしょう。
しかし、アンダーバリューは必ずバレます。
なぜなら、税関にはNACCS(ナックス)と呼ばれる巨大なシステムコンピューターに輸出入に関わる全てのデータが集約され、少しでも不審なデータが見つかればすぐに検知されるようになっているからです。
また、税関職員によるチェックや面談、書類などの確認も行われるので、怪しいものはすべて検挙されます。万が一、税関では発見されなかったとしても、税務署で摘発されるでしょう。
アンダーバリューを行えば、悲惨な結末が待っている
アンダーバリューが摘発された場合、非常に重いペナルティや罰則が用意されているため、かなり悲惨な状況に追い込まれてしまうでしょう。ここでは、そのペナルティや罰則について詳しくご紹介します。
アンダーバリューが摘発された際に受けるペナルティとは?
アンダーバリューが摘発されると、過去の取引のすべてに調査が入り、ペナルティとしての税金が取られます。
ペナルティとして支払う具体的な税金には、以下のようなものがあります。
・過少申告加算税…本来払うべき税金を安く支払ったときに課せられる税金
・重加算税…税金を故意に支払わなかったり、隠蔽したりした場合に課せられる税金
・延滞税…納付日の期日を守らなかったり、期日後に修正申告したりした場合に課される税金
その他にも、税関での検査が厳しくなるため、商品の到着にも時間がかかるだけでなく、内容が悪質であれば輸入禁止になることもあります。さらに、税務署にも目をつけられるため、税務調査も厳しくなるでしょう。また、銀行に発覚すれば格付けが下がり、資金調達も難しくなるかもしれません。
アンダーバリューの罰則とは?
では、悪質なアンダーバリューが露見し逮捕された場合、どのような罰則を科せられるのでしょうか?
アンダーバリューは密輸犯(虚偽申告犯)に該当するため、「5年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金(その両方の場合もあり)」が科せられることになります。こうなると、もうビジネスどころではなくなってしまうでしょう。
このように、アンダーバリューを行ってしまうと、厳しい罰則やペナルティが待っているのです。「これくらい大丈夫だろう」という安易な気持ちでいると悲惨な状況が待っていることを常に肝に銘じて業務にあたるようにしてください。
中国輸入の関税に関する知識は、あなたのビジネスの「お守り」になる!
今回は、中国輸入の関税に関する基礎知識としくみについて詳しく解説してきましたが、いかがでしたか?
関税は、国内製品を守るために課されるもので、品目によってそれぞれ税率が異なるとても複雑な税金です。しかも、中国は輸出入の規制が厳しいため、貿易に関する知識をきちんと理解していないと、思ったほどの利益を見込めない場合があります。そのため、関税のしくみや中国の貿易事情はしっかり把握しておく必要があります。
また中国では、関税や消費税を安く抑えようとするアンダーバリューも横行しているため、知らない間に巻き込まれてしまい、法律を犯してしまうおそれもあります。このような事態を避けるためにも、常にインボイスをしっかりと確認し、業者による不正の持ちかけがあったとしても毅然とした態度で断るようにしましょう。
中国輸入の関税に関する知識をしっかりと身に着けることは、あなたのビジネスを守ることにつながります。ぜひ今回ご紹介した情報をもとに関税について理解を深め、より堅実に利益を出せる中国輸入ビジネスへと成長させてください。