AliExpressは、BtoCの中国系ECサイトです。販売価格が安いので、AliExpressで商品を仕入れて国内で転売するビジネスが注目を集めています。
もっとも、海外のサイトで購入した商品を日本まで送ってもらうと、それは商品を輸入したことになります。一定の条件を満たせば関税などが発生しますし、個人使用目的で輸入する場合と、販売目的で輸入する場合とでは、関税の額が違ってきます。
この記事では、AliExpressで購入した商品を輸入する際にかかる関税などについて解説します。関税の計算方法などについても解説していきますので、AliExpressで商品を購入する際は、是非参考にしてください。
関税の基本知識
最初に、関税に関する基本的な知識について簡単に解説しておきます。
関税の計算は商品全体の価格に対して行われる
個人使用目的で輸入する場合は、商品価格の60%に当たる金額が1万円を超えなければ関税はかかりません。大体1万6千円くらいまでは非課税ということになります。
この場合の商品価格とは、同梱されている商品の合計価格のことです。したがって、例えば1万円の洋服をAliExpressで1着だけ購入しても非課税ですが、2着以上購入すると合計価格が1万6千円を超えるので課税対象になります。
税関でスルーされた商品は課税されない
上で説明したように、商品価格が約1万6千円までなら関税はかかりません。
しかし、商品価格が1万6千円を超えるのに課税されないまま商品が届くことが結構あります。少額の関税は荷物の受け渡し時に配達員に支払うのですが、支払いを求められないケースがあるのです。
これは、荷物が国内に入ってきた際に税関のチェックに引っ掛からなかったということです。特に配送量が多いEMS(国際スピード郵便)の場合は、関税を徴収されないケースが多くなります。税関の検査が全数ではなく一部をピックアップして行われることが原因とされています。
この場合、本来は課税されるべきなのですが、後日関税を請求されることもありません。荷物はそのまま受け取ってしまって問題ありません。
AliExpressで購入した商品が課税対象になる場合
ここでは、AliExpressで購入した商品が課税対象となるケースについて見ておきます。課税価格が20万円以下の場合の簡易税率についても、ここで併せてご説明します。
また、商品の種類によっては、商品価格が約1万6千円以下の商品を個人使用目的で輸入しているにもかかわらず、関税が免除されない場合もあります。こちらについても解説します。
個人使用目的の場合の免税について
個人使用目的で商品を輸入する場合、商品価格の60%に当たる金額が課税価格となります。そして、前述のとおり、課税価格が1万円以下の商品の輸入は免税となるため関税はかかりません。
問題は、個人使用目的の内容です。一般的に「個人輸入」という言葉を使いますが、輸入する当事者が個人であっても「個人で使用する目的」でなければ60%で計算されません。
例えば、オークションサイトで転売する目的とか、自分で使用するのではなく他人が使用するものを代わりに輸入するとかいった場合は、個人使用目的とは認めてもらえません。
商業目的の場合は、課税価格が変わる
商業目的で輸入する場合は、課税される金額の範囲が変わります。
課税価格が1万円以下であれば免税という点は個人使用目的の場合と同じなのですが、課税価格の中身が変わるのです。
具体的には、商業目的で輸入する場合は、商品価格に保険料や配送料も含めた金額が課税価格となります。また、個人使用目的の場合のように、商品価格の60%が課税価格となるわけでもありません。100%課税対象になります。
このような話を聞くと、「個人使用目的と偽って輸入すれば良いのでは?」と考える人もいるかもしれません。しかし、発覚した場合は追徴課税が課されることになりますし、関税法違反にも問われることになりますから、止めた方がいいでしょう。
課税価格20万円以下の場合は簡易税率で
課税価格が20万円以下の場合は簡易税率が適用されます(前述のとおり、1万円以下なら免税)。ただし、輸入者が希望すれば一般の関税率で計算してもらうこともできます。もっとも、簡易税率の方が税率が低い場合がほとんどなので、通常は簡易税率の適用を望むことになるでしょう。
一般税率による場合は、課税品目は数千もの種類に細かく分類されています。しかし、簡易税率の場合は、7区分に分けられているだけです。具体的な区分と、それぞれの税率については、以下の税関のページを確認してください。
参考:総額20万円以下の貨物の簡易税率(一般輸入貨物、国際郵便物)
免税や簡易税率の対象にならない商品も
免税や簡易税率の適用対象とならない物品もあります。革製品が代表的なもので、その目的は国内産業の保護にあります。
詳細は以下の税関のページを確認してください。(参考)のところに、主なものが例示されています。
なお、簡易税率の適用がない物品については、前の項目で挙げた簡易税率のページに記載があります。
具体的に自分が輸入しようとしている物品が免税や簡易税率の対象になるかどうかの判別が難しいときは、税関に問い合わせてください。問い合わせ先は、以下の税関のページに記載されています。
一般税率について
ここまで免税や簡易税率について解説してきましたが、一般税率についても簡単に見ておきます。
一般税率は実行関税率表で確認できる
一般税率については、税関のホームページで公開されている「実行関税率表」というもので確認することができます。
すでに書いたように、数千にも上る品目に細かく分類されているため、あまり見やすいものではありませんが、自分が輸入しようとしている商品についてはチェックしておきましょう。
実行関税率表の見方は、「税率決定までの流れ」というページに記載されています。
参考:税率決定までの流れ
基本となる見方は、まず商品が該当する品目を探します。その後、その商品の原産国から関税率を調べます。原産国によって税率が変わるのは、例えばWTO加盟国の間では低い税率が適用されたりするからです。後発開発途上国からの輸入品は、特に関税が安く抑えられています。
なお、ここまで詳細に知る必要はなく、大体の税率が分かればそれでいいという場合は、以下の税関のページを参照してください。個人輸入される機会が多い品目について税率の目安がまとめられています。
参考:主な商品の関税率の目安
関税についての不明点は、事前教示制度で問い合わせることができる
輸出入に関する手続については、事前教示制度というものも設けられています。
輸入する貨物がどの品目に当たって何パーセントの税率になるかといったことを、原則として文書で問い合わせ、文書で回答してもらう制度です。
個人でAliExpressの商品を購入する場合は、事前教示制度まで利用することはないと思いますが、こういった制度があることは知っておいて損はありません。事前教示制度の詳細は以下の税関のページで確認できます。
また、税関には税関相談官というものも配置されているので、そちらに相談することもできます。以下のページに連絡先の記載があります。
参考:税関相談官の問合せ先一覧
関税を計算する際の注意点
ここでは、関税を計算する際の注意点をまとめておきます。ここまでに書いた内容と重複する点もありますが、確認の意味も込めて記載しておきます。
個人使用目的で輸入する場合は、課税価格が低くなる
個人使用目的で輸入する場合は、課税価格が商品価格の60%になります。保険料や配送料は課税価格に含まれません。
商品価格の60%が1万円を超えなければ課税されないので、商品を安く手に入れたいのであれば、この範囲に収めるのがコツです。
細かく計算すると16,666円×0.6=9999.6円ですので、16,666円までの商品なら免税ということになります。
商用での輸入の場合は、保険料や配送料も課税対象
これに対して、商用目的の場合は、商品価格だけでなく保険料や配送料も含めた価格に課税されます(商品価格の60%という恩恵もなしです)。これをCIF価格といいます。
なお、商用目的と書きましたが、厳密には個人が自分で使用する目的以外すべてということになります。
免税や簡易税率の適用がない品目に注意
商品ジャンルによっては、革製品のように、課税価格1万円以下の免税や20万円以下の簡易税率の適用がない品目があります。これに当たる場合は、少額の輸入であっても一般税率で税額が計算されます。
なお、革製品の中には、革が使われている部分やその用途によって税率が細かく分類されているものもあります(革靴が代表例)。
このような場合は税関の担当者によっても微妙に判断が分かれるので、実際に課税されるまで具体的な税率が何パーセントになるか正確なところは分かりません。事前に計算した数字とズレる可能性があることも考慮に入れておいてください。
具体的に関税を計算してみよう
ここからは、具体的に関税などを計算してみます。例として、以下のAliExpressで販売されている毛皮のコートを用います。個人使用目的の輸入を前提にしますが、適宜商用目的の場合についても補足します。
細かな販売価格は変動しますので、ここでは17,000円で計算します。金額的には「1万円以下免税」の範囲を超えていますが、毛皮のコートに関しては、そもそも「1万円以下免税」の適用はありません。
関税率は、以下のページにもあるとおり、20%です。
参考:主な商品の関税率の目安
個人使用目的でない場合は、保険料・配送料を合計する
個人使用目的ではない場合は、商品価格に保険料と配送料を合計して課税価格を算出します。
なお、AliExpressの場合、AliExpress Standard Shippingを選べば、多くの場合で配送料は無料になります。EMSやDHLを利用することもできますが、この場合は配送料がかかります。
課税価格を算出する
個人使用目的の場合は、商品価格の60%が課税価格になります。
計算すると、17,000円×0.6=10,200円となります。ただし、課税価格は1,000円未満切り捨てになるので、結果として10,000円が課税価格です。商用目的の場合は、この作業は必要ありません。
関税率をかけて、関税額を算出
先ほど求めた課税価格に関税率をかけて、関税額を計算します。
毛皮のコートは関税率20%なので、10,000円×0.2=2,000円となります。なお、今回は関係ありませんが、関税額は100円未満切り捨てとなります。
消費税額も計算する
ところで、輸入の場合も消費税はかかります。国内の消費税同様、税率は10%です。
消費税は、端数処理前の課税価格に関税を合計したものを端数処理(1,000円未満切り捨て)して、それに消費税率をかけることで計算されます。
つまり、10,200円+2,000円=12,200円、これの1,000円未満を切り捨てた12,000円が消費税の課税標準額となります(課税標準額というのは、税額計算の基礎になる金額のこと)。
12,000円の10%、すなわち1,200円が消費税額です。今回は関係ありませんが、関税のときと同様、消費税額も100円未満は切り捨てです。
なお、厳密には、国税としての消費税7.8%、地方消費税2.2%の合計で10%です。
通関手数料も発生する
関税などの税金が発生する場合は、通関手数料も発生します。国際郵便の場合は、200円です。
FedExやDHLといった国際配送業者を使った場合は、通関手数料の金額が変わります。事前に知りたい場合は、各社のホームページ等で確認してください。
合計額を計算
ここまでに計算した結果を合計してみます。
関税額:2,000円
消費税額:1,200円
通関手数料:200円
合計3,400円です。商品の代金は17,000円ですから、合計20,400円を支払うことで、毛皮のコートが買えるということになります。
関税のことを知って、AliExpressを上手に利用しよう!
商品価格が安いのが魅力のAliExpressですが、関税がかかると結果としてその恩恵を十分に得られなくなります。
特に個人で自分用の商品を輸入する場合は、課税価格が1万円以下なら免税になるので、この範囲を意識するとお得です。
税金は当然納めなければならないものですが、無駄に支払う必要はありません。関税のことを知って、上手にAliExpressを利用できるようになってください。