コンセプトとはどんな意味?テーマとの違いもわかりやすく解説!

ビジネスシーンでもよく耳にする言葉「コンセプト」、コンセプトとは「基本となる終始一貫した考え方」を意味します。何か企画を提案する時には必要な「コンセプト」ですが、テーマとの違いをよくわかっていない方も実は多いです。

そこで、正しい「コンセプト」の意味や使い方を似て非なる「テーマ」との違いも含めて解説します。

目次

「コンセプト」の意味とは?

ビジネスシーンで使われる「コンセプト」とは、具体的にどのような意味なのでしょう。

語源である英語のconceptの日本語訳と意味

「コンセプト」は外来語でカタカナで使われています。英語ではconceptと書きます。

英語のconceptの和訳は「概念」です。「概念」というと、どこか堅苦しく曖昧さも感じられますが、「物事の大まかな意味内容」を表現する言葉になります。

コンセプトを用いる場合の例文

コンセプトという言葉を用いる場合、「コンセプトを考える」「コンセプトにする」「コンセプトにする」「コンセプトに決まる」「コンセプトに採用する」など様々な言い回しがあります。

例として

  • この企画のコンセプトを考えましょう。
  • このレストランは○○をコンセプトにしています。
  • 新規展開するサービスは、○○というコンセプトに決まりました。
  • 私の提案したフレーズがコンセプトに採用されました。

「コンセプト」を英語で用いる場合の表現および例文

「コンセプト」を英語では、「concept」と書き、「○○のコンセプトは〜です」と伝えたい時は、「The concept of ○○ is~」と表記します。

「concept」を使用した英語の例文は、以下のものがあります。

・The interior of this cabin is a space with the concept of comfort
(この機内は安らぎをコンセプトした空間となっています)

・The concept is to have fun in this amusement park
(この遊園地は楽しむことがコンセプトです)

コンセプトとは?4つの例を紹介

コンセプトとは「実態と関連の組み合わせ」を意味しますが、このコンセプトを色んなビジネスに応用するとどのようなものになるのでしょうか。ここでは例を4つ紹介していきます。

・例①デザインコンセプト

「未経験から即戦力になれるプログラミング」

未経験から即戦力になれる【概念】+プログラミング【実体】

・例②企画コンセプト

「親子の仲を深めるイベント」

親子の中を深める【概念】+イベント【実体】

・例③事業コンセプト

「定型業務を自動化するIT事業」

定型業務を自動化する【概念】+IT事業【実体】

・例④店舗デザインコンセプト

「子供時代に戻れる遊園地」

子供時代に戻れる【概念】+遊園地【実体】

「コンセプト」という言葉の他の使われ方

「コンセプト」という言葉は、「コンセプト + 〇〇」のように使用されることもあります。

いくつか例をご紹介します。

・コンセプトカフェ

世界観を全面に押し出して、ライバルと差別化を図っているカフェのことをコンセプトカフェと言います。

美術館や病院など、さまざまな場所をイメージしたカフェや、漫画やアニメなどをイメージしたカフェもあります。

メイドカフェなどもコンセプトカフェの一種です。

・コンセプトカー

自動車メーカーが、これからの技術やデザインをどうしていくかを表すために制作されるのがコンセプトカーです。

名詞+「コンセプト」を用いた使い方

「コンセプト」は、冒頭に使用するだけではなく、「名詞+コンセプト」という形式で用いられることもあります。

「名詞+コンセプト」といった場合、「名詞」の部分には、主軸となる思想や考え方を持つ意味があり、以下のように使用できます。

・ブランドコンセプト

ブランド全体に共通する思想。そのブランドが日々、誰のために何を提供したいのかの思想を言語化したもの。

・製品コンセプト

その製品のみに用いた機能やデザインなどの考え。新製品など、新しく開発する製品において、誰にどのような製品を提供するのかの詳細を言葉にしたもの。

・商品コンセプト

その商品のみに用いた機能やデザインなどの考え。この商品は誰がどんな場面で提供したいのかを言葉にしたもの。

・デザインコンセプト

そのデザインに至った主軸となる思想や方向性などの考え。

「コンセプト」と「テーマ」の意味の違い

「コンセプト」と「テーマ」の意味をそれぞれ見てみましょう。

1. コンセプト:企画などの基本となる統一された考え方や概念
2. テーマ: 映画や絵画などの芸術作品の主題

「コンセプト(概念)」と「テーマ(主題)」はいずれも語源は英語です。これらは全く違うシーンで使われる言葉です。

商品企画で使われる「コンセプト」は大切な企画の枠組みで、マーケティング用語として使われています。

一方、「テーマ」は芸術作品で作者が伝えたいこと。つまり「主題」です。例えば、映画「E.T」はタイトルや映画の内容を観ると、テーマは「小さな宇宙人と人間の交流」であることが推測されます。

しかし、「E.T」のコンセプトは何かというと、企画の段階で以下のような映画製作の基本になることです。

1. 宇宙人であるE.Tはどんなキャラクターにするか
2. キャスティングは誰にするか
3. 少年の両親が離婚する
4. E.Tは宇宙船で宇宙に帰る

ちなみに、この映画監督であるスティーブン・スピルバーグは、自らが経験した「両親の離婚」がこの映画のテーマであり、SFは表面的な要素にすぎないと言っていたという説があります。

参考:Wikipedia

もし、それが本当であれば、それは正しくは「テーマ」というよりも「両親の離婚=創作の動機となる主要な題材」で、つまりは「モチーフ」ということになります。芸術作品でのコンセプトに当たる適切な言葉は「モチーフ」と呼ばれています。

そのモチーフは、ラストシーンの少年がE.T.に別れを告げるシーンで、ようやくその少年が両親の離婚を受け入れることを匂わせて表現されていることになるのでしょう。

日本語では、2つの言葉がどこか曖昧で混乱を招いていることがあり、時と場合によっては使えたり使えなかったりします。

しかし、「テーマ」と「コンセプト」は全く意味が異なるものだということを理解しておきましょう。

なぜテーマパークはコンセプトパークと言わないのか?

決められたテーマ(主題)を元にしたアトラクションで構成するテーマパークですが、コンセプトパークとは言いません。

コンセプトカフェという言葉があるくらいだから、コンセプトパークと言ってもいいのでは?と思うかもしれませんが、「テーマ」と「コンセプト」は似て非なる言葉です。

この二つの言葉は混同して使われることが多く、捉え方やシーンによって意味合いが変わります。

ここではコンセプトとは、商品の企画をする上で基本となる統一された考え方や概念ということを覚えておきましょう。

コンセプトの重要性とは?

これまでの解説で、「コンセプトとは何か」について意味を理解できたでしょうか。

次に、コンセプトがなぜ必要なのかという理由と「商品コンセプト」について解説していきます。

コンセプトワークは全ての作業において影響力が強いから

商品開発は、まずは何かのきっかけで「こんなものがあればいいな」というアイデアから始まります。

そして、次にそのアイデアを実現化するための具体的な作業が始まります。これを「コンセプトワーク」といいます。

簡単にいうとコンセプトワークのステップは以下のようになります。

1. こんなものがあればいいな
2. 人からニーズがあるはず
3. 商品の姿や形を決定づける

そして、次のステップに移ります。

4. 実現化するためにはどんな行動が必要か機能設計を考える
5. 具体的にどんな形で実現するかデザイン設計を考える

商品開発の手がかりとなるのは、この1~3のコンセプトワークです。

コンセプトとは、その商品の基本となる「概念」であり、商品自体の在り方を決定づけます。

つまり商品のあるべき姿が変われば次のステップである機能やデザイン設計も変わるということです。

消費者にとっての新しい価値を生み出すから

あなたは、タンザニアに住む伝統的な野営生活を営むハッザ族をご存知でしょうか。ハッザ族は、人工照明や電力を一切使わず、狩猟採集生活で暮らす少数派民族です。

彼らにスマホを渡してみたとします。しかし、スマホが一体どんな役割をする物なのかを全く認識していなければ、彼らにとってそれは必要がなく価値の無いものとみなされるでしょう。

なぜなら、彼らの生活には遠くに住む人と電話で話をすることもなければ、インターネットで何かを調べることもないからです。そのような概念も実体も彼らの生活には存在していないのです。

しかし、これまで持っていた既成概念にはない、「スマホを持つ」という新しい生活の概念を取り入れることは不可能だとは限りません。つまり、これまで認識している既成概念というものが変わる可能性は無限にあるということです。

その新しい「概念」を商品とどう結びつけて価値を生み出すのかがコンセプトワークの重要な点となります。

ビジネスとして成り立つのかを明確にできる

コンセプトを作成する際は、いつ、どこで、何を、なぜ、誰に、どのようにを考えます。そして、そのビジネスは本当に成り立つのかを考えるのです。

例えば、若者が全くいない街で若者向けの商品を販売してもビジネスとして成り立ちませんよね。

ビジネスは需要と供給で成り立っています。そのため、需要があるかを考えるのが大切です。

また、需要があったとしても、競合と同じような価値を提供していては、価格競争を勝ち抜くことはできません。

コンセプトを作る際は、オリジナル性や強みを明確にする必要があるのです。

制作過程でブレが起きなくなる

コンセプトは、終始一貫した考えになります。
どんなことをするべきかが明確になり、商品などの制作過程でブレが起きなくなるのです。

例えば、静かで落ち着いた空間のコンセプトなのに、騒がしいBGMを流していたら台無しですよね。

ビジネスをする上で、終始一貫した考えを持っておけば、さまざまな出来事の中でもブレることはなくなります。

コンセプトからキャッチコピーが誕生することがある

コンセプトは、堂々と伝える必要はありません。
社員や関係者に理解と共通認識を持たせ、迷わず行動に移せるのが理想です。

コンセプトはキャッチコピーとは全くの別物なのです。

しかし、コンセプトがあると強みになり、マーケティングの強力な武器にもなります。

有名なものでいうと、「吸引力の変わらない、ただ一つの掃除機」というダイソン掃除機のキャッチコピーがわかりやすいですね。
このキャッチコピー一つから、オリジナル性や競合との差別化も図れています。

コンセプトとキャッチコピーの違いとしては、コンセプトは社員や関係者へ向けたもので、キャッチコピーは消費者に向けたものです。

コンセプトとは?マーケティング・コンセプトについて紹介

マーケティング・コンセプトは、

  • 生産志向(生産コンセプト)
  • 製品志向(製品コンセプト)
  • 販売志向(販売コンセプト)
  • マーケティング志向(マーケティング・コンセプト)
  • 包括的マーケティング志向(ホリスティック・マーケティング・コンセプト)

の5つのタイプがあります。

企業はこれらのコンセプトを複数に組み合わせたりして、企業独自の志向を生み出しています。ここではこの5つのタイプについて紹介していきます。

生産志向(生産コンセプト)

生産志向(生産コンセプト)とは「消費者は手頃な価格の製品やサービスを求めている」という視点で、経営資源を集中させる考え方のことです。生産志向コンセプトの考え方を導入することで、生産性を高めたり、コストを下げたりすることを目的としています。

この生産志向コンセプトは、マーケティングコンセプトとしては最も歴史が古く物が不足していた時代に生まれました。生産が追いつかない、価格を下げたいといった課題を解決し、より多くの人に製品やサービスが届くように注力するのが使命となります。

製品志向(製品コンセプト)

製品志向コンセプトは「消費者は革新的で特徴のある製品やサービスを求めている」という視点で、経営資源を集中させる考え方です。高い品質や機能を求めたり、革新的な製品を開発したい企業向けのコンセプトと言えます。

このコンセプトは、昔多くの企業が同じような製品やサービスを提供し始めた競争が激しい時代に生まれました。生産志向によって社会の需要に対応できるようになることで、企業は品質や機能で競争することになります。

販売志向(販売コンセプト)

販売志向は「何も行動しなければ消費者は製品やサービスを買ってくれない」という視点で経営資源を集中させる考え方です。新しい市場を開拓したり、積極的に販売を行う企業向けのコンセプトになります。

このコンセプトは製品志向と同じタイミングで生まれたコンセプトであり、競合他社に勝つために生まれたものです。販売志向は売り方で商品を差別化していきます。

例として顧客に上位の商品をすすめる方法である「アップセル」と顧客に関連する商品をすすめる「クロスセル」という方法があります。

マーケティング志向(マーケティング・コンセプト)

マーケティング志向は「消費者にふさわしい製品やサービスを届けるべきだ」という視点で、経営資源を集中させる考え方です。具体的に顧客のニーズを理解する、価値を創造するといったことに集中します。

このコンセプトにもある「マーケティング」という言葉は、1950年代の半ばに登場したとされており、成熟した市場に対応するためのコンセプトとして発展していきました。マーケティング志向に基づいた製品開発のことを「マーケットイン」と言います。

包括的マーケティング志向(ホリスティック・マーケティング・コンセプト)

包括的マーケティング志向は「消費者だけでなく全てが重要である」という視点から、経営資源を集中させる考え方です。利害関係者と長い関係を保ったり、マーケティング活動全体を連携させるといったことに集中します。

包括的マーケティング志向は、先ほどのマーケティング志向をさらに発展させたもので、顧客だけでなく利害関係者全てに対してマーケティングを行います。

マーケティングにおいてコンセプトが重要な理由3つ

ここからはなぜマーケティングにおいてコンセプトが重要なのかを具体的に解説していきます。コンセプトが重要である理由は主に3つです。

  1. ビジネスが成功しやすくなる
  2. 具体的な方針がわかる
  3. 狙った層に響くようになる

1つずつ見ていきましょう。

ビジネスが成功しやすくなる

コンセプトを決めることによってビジネスがより成功しやすくなります

例えばレストランを出店するとして、コンセプトを決めなかったらどうなるでしょうか?他社との差別点もなく、どんな人に来てほしいのかもわからず、どんな特色があるかわからないレストランにお客さんが来ないのは明白でしょう。

コンセプトを決める際には競合や市場を調査し、お客さんが何を求めているかを徹底的に考えます。それらを具体的にコンセプトへ落とし込むことで他社との差別化に繋がり、自社の強みを活かせるのです。

具体的な方針がわかる

何をすればいいか具体的な方針も決まります。社員は抽象的な経営戦略のみを聞いても、具体的に何をすればいいかわかりません。経営戦略をコンセプトというわかりやすいものにして初めて社員の行動方針になります

コンセプトが決まっておらず社員の行動にブレがあると、ビジネス全体にもブレが出てきて顧客満足度の低下にも繋がります。

狙った層に響くようになる

コンセプトが決まっていれば狙った層に響きやすくなります

コンセプトを端的に表したものにキャッチコピーがあります。

例としてタワーレコードのキャッチコピー「NO MUSIC,NO LIFE」を見てみましょう。英語にすることで、タワーレコードのメインターゲットである「海外のポップカルチャーに興味のある人」を惹きつけますが、難しい単語を使っていないので誰でもわかるようになっています。

キャッチコピーのようにコンセプトを分かりやすい形で表すことで特定の層に響きやすくなり、売上アップに繋げられます。

「コンセプト」の類似語とは?

ちなみに、「コンセプト」を他の言葉で表現するのであれば、どんな類義語があるかご紹介します。

類義語は「概念」「観念」「理念」

英語のconceptの和訳を調べると、「概念」「観念」「理念」などの表現がいくつかあります。これらは類義語になります。

よく「企業理念」という言葉が使われますが、これは企業のコンセプトということになります。簡単にいうと、コンセプトは「考え方」ということです。

「コンセプト」とは一貫して存在するもの

前述で、「コンセプト」と「テーマ」は違うということについてお話しましたが、「テーマ」は主題という意味なので、中心となる内容を指す言葉になります。

一方で、「コンセプト」は内容全体の基本となる「一貫した考え方」です。つまり、物事において一貫して存在しているので終始変わることはありません。

ヒット商品のコンセプトの実例とは?

では、実際に企業が提供しているサービスにはどんなコンセプトがあるのでしょう。その実例を見てみましょう。

缶コーヒー「ワンダ モーニングショット」のコンセプト

アサヒ飲料の缶コーヒー「ワンダ モーニングショット」のコンセプトは、「朝専用 缶コーヒー」です。非常にシンプルで、わかりやすいコンセプトです。

「朝」というシチュエーションに特化したコーヒーということを表現しています。朝だけに限定すると飲まれる本数が少なくなるのではないかと思いがちなところを、「専用化」することで差別化を図る戦略が成功したケースです。

焼肉グリル「やきまる」のコンセプト

岩谷産業のカセットグリルガス「やきまる」のコンセプトは、「スモークレス焼肉グリル」です。

今まで、焼肉を焼けば当然のごとく煙が出るものだという既成概念を変えています。これまでの「家で焼肉をすると煙が出る」という問題を解決していることを、一言でうまく表現しています。

これは、消費者は何か問題と感じていることを解決したいという気持ちを持っているので、試してみたいという気持ちを掻き立てられます。

人気レストラン「俺のフレンチ」のコンセプト

俺の株式会社の人気レストラン「俺のフレンチ」のコンセプトは「高級食材を使った高級料理を低価格で」です。

美味しいものを安く食べたいというのは、誰もが持っている願望です。しかし、それを実現するのは難しいところを叶えて人気のお店となりました。

一流シェフを採用して高級食材を使っているのに安いのには、回転率の良さに秘訣があります。

キラリと光るコンセプトの作り方と手順

次に、コンセプトの作り方とコンセプトワークの手順について例を挙げていきます。魅力的なコンセプトを作るには、以下の手順と作業が必要です。

1. 抽象化
2. 切り口化
3. 文章化

さて、これらが一体どんなことで具体的に何を指しているのでしょう。これから詳しく解説します。

手順1.抽象化とは?

抽象化とは、今ある目で見える物事の「実体」に囚われることなく本質的な要素を見抜き、目の前にない概念を抜き出していくことを指しています。

以下の画像をご参照ください。

この場合、目に見える実体は「布」です。では、この「布」について「コンセプトを作りましょう。」と言われたら、あなたは戸惑うことでしょう。

しかし、「布」という実体に囚われず、布の本質的な要素をまず考えてみましょう。そこから目の前にない「形のない概念」を考えた時に「布=拭くもの」というひとつの概念が生まれます。

手順2. 切り口化とは?

あなたの目に見える「実体」はひとつです。しかし、そこから抽象化してできた「概念」は複数あります。例えば、「布」という実体からは以下のようないくつかの概念があります。

1. 拭くもの
2. 切って使うもの
3. 縫って使うもの
4. 綿で織られたもの

まだまだありますが、目の前にある「布」の実体はひとつでも、多角的な概念を抜き出すことができます。

どの視点からどんな切り口で概念を抜き出すかという作業が「切り口化」です。

つまり、どれだけ多くの視点があるかが、優れたコンセプトを生み出すかどうかを決定づけるということになります。

手順3. 文章化とは?

物事の在り方であるコンセプトは「実体+概念」の組み合わせで決定づけられます、コンセプトの要素である「実体」は、名詞になるものを指し、「概念」は形容詞に当てはまるものです。

例えば、以下のコンセプトについて見てみましょう。

【概念】エジプト時代から愛されている猫
【概念】かわいい
【実体】猫
【コンセプト】エジプト時代から愛されている猫種、かわいい猫アビシニアン

名詞と形容詞に分けると以下の図のようになります。

ちなみに、コンセプトをつくる手順の「切り口」とは文章の切り口という文章力を意味するものではありません。どの視点から物事を捉えているかという意味です。

コンセプトとは「実体+概念」で物事の姿や形、在り方を決定づけます。

例えば、「布」という実体は概念が「拭くもの」であれば布巾や雑巾に変わり、「身に着けるもの」であれば服に変わります。

つまり、全く違う形の商品ができあがります。

例え文章力がなくても、物事の実体に対しての視点の切り口が面白いものであればコンセプトは面白いものとなります。

コンセプトの作り方・考え方

コンセプトを作るといっても、特に正解があるわけではありません。しかし、抑えておくべきポイントはいくつかあります。

誰に何を届けたいのかを考える

コンセプトは基本的に自社や関係者のために作ります。目的は、誰にどんな価値をどういう形で提供するのかを明確にすることです。

基本的には5W1Hの「いつ」「どこで」「何を」「なぜ」「誰が」「どのように」を考えます。それよりも大事なのが「7W1H」にあたる「誰に」です。

価値を提供する対象が明確でなければ、コンセプトは誰にも刺さりません。

ターゲットの母数が減ったとしても、なるべく絞ることをおすすめします。

ターゲットを絞らなかったり誰にでも喜ばれるコンセプトを作ったりすると、すべてが中途半端になってしまうのです。

負の要素を確かめる

誰に届けたいのかを考える際に、負の要素についても確かめましょう。

負の要素は、5W1Hでいうと「なぜ」です。

商品の不満点や依存の業界などを表します。

例えば、「女性にも優しい牛丼屋」がコンセプトの場合は、「牛丼を食べたいけど女性一人だと入りづらい」という不満をコンセプトにしているのです。

「もっとこうなってくれればいいのに」というように負の要素を洗い出してコンセプトにできれば、他者との差別化を図れます。

届けるのはモノではなく価値

「ドリルを購入しに来た人が本当に欲しいのは、ドリルではなくて穴である」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

これは、あくまでドリルは手段で、穴をあけたいというのがニーズ。つまり、問題を解決することを求めているということです。

例えば「落ち着けるカフェ」がコンセプトの場合は、落ち着けることが本当の価値提供で、コーヒーや料理などは手段でしかないのです。

今回は「5W1H」や「7W1H」の考え方を紹介しましたが、必ずしもこれだけが正解ではありません。もし、あまり理解できない場合は終始一貫して考えることを意識しましょう。

おすすめのコンセプト本 2選

あなたは既にコンセプトがビジネスの上でどれだけ重要な役割を果たすかは理解したことでしょう。

では、最後にオススメのコンセプト本2冊をご紹介します。

これから紹介する書籍を選んだ理由は、これらを読めば普遍的な物事の本質や原理がわかることと、実際にビジネス戦略に役立つものだと確信したからです。

おすすめ書籍「コンセプトのつくりかた」

この書籍の著者は、任天堂のゲーム機「Wii」を開発した玉樹真一郎氏です。

これは、まさにコンセプトをしっかり作ると、必然的に差別化されるデザイン設計ができてしまうということが具体的にわかる書籍です。

また、商品が完成するまでの作業をどのようにしてきたのか現場の事例をリアルに再現しています。その中で、これまで既成概念がなかった未知の世界を既知の世界に導くために、いかにコンセプトが重要な役割を果たしているかということも具体的にわかります。

「コンセプトとは何か?」だけではなく、周りの人をどう巻き込んでいくかというノウハウも学ぶことができるおすすめの一冊です。

おすすめ書籍「成功はすべてコンセプトから始まる」

売れている商品のコンセプトはキラリと光っています。面白く魅力的なコンセプトに人は集まります。そのような、コンセプトをつくるための要素からビジネスに重要な要素の全てを幅広く学べる書籍です。

この書籍の著者であるマッキンゼー出身の木谷哲夫氏は、ロジカルシンキングを磨いても素晴らしいコンセプトの立案はできないことを述べています。

では、そのロジカルシンキングの限界を突破して成功に導いたコンセプトとは何なのかは、この書籍を読めばわかります。

コンセプトの作り方を具体的に解説していますが、それはビジネス全般に役立つものでもあります。ビジネスマンは読んでおくべき一冊であることは間違いありません。

おすすめの書籍「コンセプトメイキング変化の時代の発想法」

「コンセプトメイキング変化の時代の発想法」は、元博報堂制作部長の高橋宣行さんが「コンセプトの作り方」を解説した本です。

「そもそもコンセプトとは何か?」ということから、「コンセプト」に繋がる発想までの仕組みなども描かれています。

大手企業を含む、86個もの豊富な事例が掲載されており、事例を通して解説されているので、初心者でも理解しやすく、「コンセプト」の根本を知ることができるため、入り口で躓いている人にぜひ読んでほしい一冊です。

まとめ

ビジネスの基礎となる「コンセプト」。テーマとの違いを理解して、正しい使い方を知るとビジネスでとても役立ちます。

コンセプトの重要性を理解することは、面白いアイデアを引き出すことにも繋がります。

何かしたいけど何から始めて良いかわからないという人は、優れたコンセプトをつくったことでヒット商品を生み出した人が実際にどのような作業をしてきたかを学び、真似することから始めてみましょう。

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この記事を監修した人

ビジネスのノウハウを実践ベースで徹底的に追求するのがアクシグ。
世界で最も専門的で網羅的なコンテンツを提供し、ノウハウを惜しげもなく提供していきます。

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