輸入関税とは?関税の計算方法と注意点

輸入ビジネスをする上で切っても切り離せないのが関税です。関税は輸入目的・配送方法によってかかったりかからなかったりします。また、品目によって関税率が違うため、輸入ビジネスは利益計算が非常に面倒です。

そこで今回は、輸入関税の計算方法と、関税を安くする方法を徹底解説します。

目次

関税とは?

関税とは輸入品にかけられる税金のことです。

関税を決定する5大要素

関税の仕組みは複雑です。同じ商品でも関税がかかる場合とかからない場合があります。関税がかかるか否かは、以下の5つの要素で決まります。

1.配送方法
2.発送区分
3.荷物量
4.商品品目
5.商品価格

まず1つ目は、配送方法です。選んだ配送方法で関税のかかりやすさが変わります。USPS(アメリカ合衆国郵便公社)などの国際郵便を利用した場合の方が、ヤマト運輸・FedEx・DHLなどの国際宅配業者を利用した場合よりも関税がかかりにくくなっています。その理由は通関方式にあります。通関の際、DHLなど国際宅配業者はすべての荷物の申告を行います。そのため、100%関税がかけられます。しかし、USPS(アメリカ合衆国郵便公社)などの国際郵便は全ての荷物を申告しません。税関がいくつか荷物をピックアップして税率を計算するため、課税対象商品がスルーされることがあります。こういった事情があるため、国際郵便は関税がかかる場合とかからない場合があるのです。

2つ目は、発送区分です。発送区分には「商品」と「贈物」の2種類があります。贈物として発送された貨物は関税がかかりにくい傾向にあります。ただし、並行輸入している場合は、原則として商品としての発送になります。

3つ目は、荷物量です。荷物の量が多ければ多いほど、関税がかかりやすくなります。1回あたりの荷物量が多い場合はもちろん、今まで輸入した荷物量の合計が多い場合も関税がかかりやすくなります。

4つ目は、商品の品目です。関税のかかりやすさと関税率は、品目によって様々です。税関は関税を多く取るために、関税率の高い商品を優先的にチェックしています。そのため、関税率の高い商品ほど関税がかかりやすくなっています。

5つ目は、商品価格です。商品価格が高いほど徴収できる関税額も多くなるため、必然的に関税がかかりやすくなります。

関税はいつ支払うのか?

関税を支払うタイミングは以下の3パターンに分けられます。

(1)購入時

一番多いのは購入時です。最近は購入時に商品代金や送料と一緒に関税も請求するECサイトが増えています。支払い方法としては一番簡単ですが、関税がかかるかからないかに関わらず徴収されるため購入者にとっては損です。仮に関税がかからなかったとしても、先に支払った関税分の代金は返金されません。

(2)荷物受け取り時

EMS(国際スピード郵便)など国際郵便で配送される場合は、商品の受取時に配達員に関税を支払うケースが多くみられます。ただし、支払う関税が高額になる場合は、郵便局窓口で手続きをする必要があります。

(3)後日請求される

FedExが配送する場合は、商品が先に配達され、後日関税の請求書が送られてきます。請求書は商品到着から1ヶ月以内には届きます。支払期限は、請求書が届いてから約10日以内に設定されています。支払い方法は銀行振込かコンビニ払いです。

なぜ関税がかかるのか?

輸入ビジネスをする上で、関税は非常に大きな障壁です。輸入初心者は全員口を揃えて「関税なんて撤廃すればいい」と言います。

しかし、関税がなくなると日本は大変なことになります。

というのも、関税がなくなると外国製品の価格が今より更に安くなり、高い日本製品がほとんど売れなくなってしまうからです。そうなれば、日本の産業は衰退してしまいます。

関税の意味

つまり、関税とは、安い海外製品が売れて国内製品が売れなくなることを防ぐために設定された「日本を守る税金」なのです。

輸入ビジネスの利益計算

商品を仕入れる前には必ず利益計算をするものですが、輸入ビジネスの場合、関税がかかるかどうかもわかりませんし、品目によって関税率が違うため、厳密に利益計算をしようとするとすごく手間がかかります。

そのため、仕入れ前の利益計算では、関税はざっくりと概算することをおすすめします。「関税は一律10%」と仮定した上で利益を計算すれば、時間もかかりませんし、そこまで大きく外れることもありません。

輸入関税の計算方法

関税率の計算や関税がかかるかの判断は非常に複雑ですが、関税の計算方法自体は比較的単純です。

関税の基本的な計算方法

関税は、輸入した商品代金と送料・保険料の合計額に対して課税されます。関税の計算方法は以下の通りです。

関税=(商品代金+送料+保険料)×関税率

関税率は品目ごとに異なります。詳細は税関のホームページで確認できます。

参考:輸入統計品目表(実行関税率表)

関税率は毎月更新されています。

個人輸入の関税

個人輸入の場合は、商品代金の60%が課税価格となります。そのため関税の計算式は以下のようになります。

関税=(商品代金×0.6)×関税率

税関によると、以下のいずれかに該当する場合は個人輸入とみなされます。共通して言えるのは、「自分で使うことを目的として購入する」という点です。

(1)自分が使うための商品を、輸入者自身が直接海外のECサイト・小売店・メーカーに注文して直接購入する
(2)自分が使うための商品を、輸入代行業者に注文して、その代行業者を通じて購入する

個人輸入の免税条件

個人輸入の場合は、課税価格が1万円以下の場合、基本的に関税はかかりません。つまり、商品代金が16,666円以下の場合は基本的に免税となるのです。

しかし、1つの商品の課税価格が1万円以下でも、同梱された商品の合計課税価格が1万円を超える場合は関税がかかります。例えば、課税価格が9,000円の商品を単品で輸入した場合は関税はかかりませんが、5,000円の商品を4つ購入してまとめて梱包して発送してもらった場合は、同梱商品の合計課税価格が1万円を超えるため、関税がかかります。同梱してまとめて配送してもらえば送料は安くなりますが、場合によっては関税がかかる場合もあります。注意してください。

個人輸入の簡易税率

同梱商品の課税価格が1万円超でも、20万円以下の場合は一般税率より安い簡易税率が適用されます。品目別の簡易税率は以下の通りです。

 品  目簡易税率
ワイン70円/リットル
焼酎等の蒸留酒20円/リットル
清酒、りんご酒30円/リットル
トマトソース、氷菓、なめした毛皮(ドロップスキン)、毛皮製品20%
コーヒー、茶(紅茶は除く)、なめした毛皮(ドロップスキンは除く)15%
衣類及び衣類附属品(メリヤス編み・クロセ編み製品は除く)10%
プラスチック製品、ガラス製品、卑金属(銅、アルミニウム)製品、家具、玩具3%
ゴム、紙、陶磁製品、鉄鋼製品、すず製品無税
その他のもの5%

簡易税率が適用されない製品

以下の製品は同梱商品の課税価格が20万円以下でも簡易税率が適用されず、一般税率が適用されます。

(1)穀物とその調製品
(2)牛乳、クリームなどとその調製品
(3)ハムや牛肉缶詰などの食肉調製品
(4)たばこ
(5)精製塩
(6)革製の旅行用具、ハンドバッグ
(7)ニット製衣類
(8)靴類
(9)身辺用模造細貨類(卑金属製を除く)

また、これらの商品は同梱商品の課税価格が1万円以下でも免税になりません。

お得に輸入する方法

ここからは、輸入関税を安くするコツを解説します。

個人輸入

前述の通り、個人輸入の場合は課税価格が通常の6割で済みますし、課税価格が1万円以下であれば免税になります。したがって、商業目的ではなく個人使用目的で輸入しましょう。

ただし、個人使用を目的として輸入していても、あまりに高額な商品であったり、輸入量が多かったり輸入頻度が高かったりすると商業目的とみなされる可能性があります。一度商業目的とみなされると、過去にさかのぼって関税を請求されることがあるので注意してください。

国際郵便を利用する

前述の通り、国際宅配便は100%関税がかかるのに対して、国際郵便は関税がかからないことがあります。配送方法は国際宅配便ではなく国際郵便を指定しましょう。

販売元と直接交渉

最近は商品代金の決済時に関税も一緒に請求するECサイトが増えています。関税を先払いするケースでは配送方法を指定しても関税を回避できません。

しかし、このようなサイトでも関税の支払いを回避する裏技があります。それはECサイトのシステムを介さず、直接販売元と取引する方法です。無茶に思えるかもしれませんが、直接交渉する人は意外といます。直接取引に慣れているセラーであればすんなり了承してくれます。

交渉段階で、配送方法として国際郵便を利用したい旨をあらかじめ伝えておきましょう。直接交渉が成立したら、外部のメールやSNSでやり取りしましょう。決済にはPayPalを利用することが一般的です。

ただし、直接取引の交渉に応じてもらえない場合は当然あります。直接取引は、ECサイト運営が仲介しない分、未着・未払いなどのリスクがあるからです。特にECサイトにおけるカスタマー評価が低い場合は、交渉に失敗することが多くなるでしょう。

関税率の低い品目を優先的に扱う

前述の通り、関税率が高い品目は関税がかかる可能性が高くなります。

関税率が高い品目として一番有名なのは革製品です。レザー製品の多くは関税率が20%、毛皮をトリミングとして使用した衣類は国によっては関税率が40%も課せられる場合もあります。また、「本底が革製で革製ストラップが足の甲・親指まわりにかかる履物」と「甲の一部が革の履物(スポーツ用シューズ・スリッパは除く)」の関税率は60%です。

あとはスキー商品も関税率が高いです。スキー靴は27%、スキー・ボードブーツは20%の関税率がかけられます。

税率の低い品目と同梱する

どうしても関税率の高い商品を輸入したい場合は、関税率の低い商品と同梱して輸入すると、関税が安くなる場合があります。

複数のカテゴリにまたがって数種の商品を同梱して輸入した場合、一般的に税関は最も数の多い商品カテゴリの関税率を適用します。例えば、関税率10%の商品5つと、関税率20%の商品1つを同梱して発送してもらった場合、同梱商品全てに関税率10%が適用されます。つまり、革製品やスキー用品と一緒に関税率の低い商品を多数同梱して仕入れれば、関税率を下げることが可能なのです。

経済連携協定(EPA)を締結している国から輸入する

また、日本と経済連携協定(EPA)を結んでいる国から輸入すると、関税を抑えることができます。経済連携協定(EPA)とは、関税を可能な限り撤廃して両国の経済を発展させることを目的とした協定です。

2021年1月時点で、日本は以下の国と経済連携協定(EPA)を結んでいます。

・シンガポール
・メキシコ
・マレーシア
・チリ
・タイ
・インドネシア
・ブルネイ
・ASEAN諸国
・フィリピン
・スイス
・ベトナム
・インド
・ペルー
・オーストラリア
・モンゴル
・ニュージーランド
・カナダ
・アメリカ
・イギリス

経済連携協定(EPA)を結んでいる国の商品は、関税が低率、または免除となります。ただし、商品の原産国(製造元)と経済連携協定を結んでいないと、経済連携協定による関税率が適用されません。日本と経済連携協定を結んでいる国から輸入しても、その商品が経済連携協定を結んでいない国で製造されていた場合、通常の関税率が適用されてしまいます。

特別特恵制度(LDC)が設けられている国から輸入する

また、特別特恵制度(LDC)が設けられている国から輸入した場合も関税が安くなります。

特別特恵制度(LDC)は関税を撤廃する制度で、経済発展が遅れている国に設けられています。貧しい国の製品に対する関税を撤廃することで、その国の経済を発展しやすくすることが目的です。

特別特恵制度が設定されている国と地域は以下のとおりです。

・アフガニスタン
・アンゴラ
・イエメン
・ウガンダ
・エチオピア
・エリトリア
・ガンビア
・カンボジア
・ギニア
・ギニアビサウ
・キリバス
・コモロ
・コンゴ民主共和国
・サントメ・プリンシペ
・ザンビア
・シエラレオネ
・ジブチ
・スーダン
・セネガル
・ソマリア
・ソロモン
・タンザニア
・チャド
・中央アフリカ
・ツバル
・トーゴ
・ニジェール
・ネパール
・ハイチ
・バングラデシュ
・東ティモール
・ブータン
・ブルキナファソ
・ブルンジ
・ベナン
・マダガスカル
・マラウイ
・マリ
・ミャンマー
・モーリタニア
・モザンビーク
・ラオス
・リベリア
・ルワンダ
・レソト

輸入と関税は切っても切り離せない

輸入ビジネスをする上で関税は非常に面倒な障壁ですが、日本の産業を守るための税金なのできちんと支払いましょう。

関税をできるだけ抑えたい場合は、個人輸入で国際郵便を利用しましょう。

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この記事を監修した人

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