「仕入れに関する専門用語について知りたい」
「仕切り価格の計算方法がわからない」
「そもそも仕切り価格とは?」
仕入れで重要な用語について把握できていますでしょうか?
仕入れをするときには、さまざまな専門用語や販売価格の計算が必要になります。特にメーカーや卸売業者と円滑な取引を行うために専門用語は欠かせません。しかし、種類が多くよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、以下の内容について解説していきます。
- 仕入れに必要な専門用語とは
- 仕切り価格について
- 仕切り価格の計算方法
専門用語を知っておかないと取引先から相手にされないこともありますので、本記事をとおしてしっかり学んでいきましょう。
仕入れに関する専門用語とは
仕入れをするにあたって卸業者やメーカーと直接やりとりをする際には、専門用語を把握していることが必須です。お金が絡むことなので、「知らなかった」「よく分からない」では済まされません。この記事では仕入れに関する基本的な言葉をご紹介していきますので、ぜひ最後までお読みください。
定価の専門用語「上代」
まず「上代(じょうだい)」という言葉についてご説明します。
上代とは、簡単にいうと商品の販売価格という意味です。「商品定価」や「メーカー小売希望価格」とも呼ばれます。「定価」ではなく「上代」という言葉を使っている人がいれば、その人は業界人と判断して間違いありません。
仕入れ価格の専門用語「下代」
続いて「下代(げだい)」という言葉についてご説明します。
下代とは、卸値や仕入れ価格という意味です。つまり下代(卸値)が低く、上代(定価)が高いほど利益は大きくなります。卸業者やメーカーから仕入れるときに提示された下代に対していくらの上代を付けるのかが、商売を担ううえで大切なポイントとなります。
下代の他に「卸単価」や「仕切り」などと呼ばれることもありますが、一般的に多く使われているのは「下代」になります。
仕入れ価格の割合の専門用語「掛け率」
続いて「掛け率(かけりつ)」という言葉についてご説明します。この言葉も「上代」や「下代」と同様、業界でよく使われる専門用語です。
掛け率とは、簡単に説明すると商品の販売価格に対する仕入れ価格の割合のことです。例えば「8掛け」の場合は、定価が10000円だとすると仕入れ価格は8000円ということになります。業界においては、商品の仕入れ価格を知りたいときに「仕入れ値はいくらですか?」と聞くよりも「掛け率はいくらですか?」と聞く方が一般的です。
掛け率はその業界や仕入れ先によってさまざまです。上代の何%でその商品を買えるのかを把握する為に、必ず仕入れ元から掛け率の確認を取るようにしましょう。
上代と下代、掛け率についてもっと詳しく!
商品が消費者の手元に届くまでには、様々な流通経路を経由しています。その過程を詳しく知るにあたって「上代」「下代」「掛け率」といった言葉は特に重要です。ここからはこの3つの業界用語を、その言葉の由来とともに更に詳しくご説明していきます。
上代と下代が使われる理由
「上代」と「下代」という言葉は、昔の商人たちの間で使われていた隠語からきています。何故わざわざ隠語を使用していたかというと、お客さんに売り値や仕入れ値の話をしていると悟られないようにするためです。それが現代の商人たちの間でも受け継がれて「上代」や「下代」という言葉が使われています。
上代と下代は掛け率で求める!
「掛け率」についてもう少し詳しくご説明します。
先ほどもご説明したとおり、上代と下代を計算するときに欠かせないのが「掛け率」です。その掛け率には2通りの表示方法があります。
まず1つ目は、「8掛け」といった数字と掛けという言葉を組み合わせた表し方です。そして2つ目は、「80%」といった%で表す方法です。
定価が10000円で卸値が8000円の商品の場合、「掛け率8掛けの商品」と言われることもあれば「掛け率80%の商品」と言われることもあります。
どちらの呼び方を使用するのかは業界によって違いますので、取引先に合わせて使い分けるといいでしょう。
掛け率の計算方法
掛け率は実際に商談をする時は「〜掛け」と呼ばれることが多いです。掛け率が50%の場合には5掛け(ごがけ)、掛け率が45%の場合は45掛け(よんじゅうごがけ)と言います。
そして下代を求める時は、この掛け率を利用すれば簡単に計算できます。例えば上代10,000円の商品の掛け率が5掛けだった時の計算式は、
10,000(上代)×0.5(掛け率)=5,000円(下代)
このように○掛けの○の数字を、小数点以下に当てはめることで簡単に下代を求めることができます。
次に掛け率を知りたい時の計算方法も解説します。
5,000円(下代)÷10,000(上代)×100=50%(掛け率)
こちらの計算式も覚えておくと便利です。状況に応じて使い分けられるようにしましょう。
上代と下代はどう決める?
商品を仕入れて販売するときに、上代や下代があらかじめ決まっている場合があります。
上代が決まっている場合、掛け率と下代を参考に商品を仕入れる必要があります。下代と掛け率をよく計算して、決められた上代の金額になるように調整します。
下代が決まっている場合、下代と掛け率を計算すれば上代を設定することができます。掛け率は取引先によって違いますので、上代(販売価格)は小売店によって違ってきます。
「仕入れ」とは、小売業者などが販売目的で商品を購入することです。利益を多く出すためには、この「仕入れ」が重要な役割を担います。
仕入れを行う際に使われる言葉として「原価率」という言葉があります。原価率は、その言葉のとおり売り上げに対する原価の比率のことで、掛け率と違って必ず%で表されます。例えば定価が10000円で卸値が8000円の商品の場合、原価率は80%になります。
上代と下代の相場はいくら?
上代と下代の相場は業界によってさまざまです。業界によって大体の掛け率が決まっており、食品だと「7掛け」衣料品だと「5掛け」などが一般的です。
ですが、掛け率は交渉によって変更できる場合もあります。こちらの実績を見て交渉してくれる業者もいれば、まったく取引に応じてくれない業者もいます。
掛け率が下がれば下がるほどこちらの利益が上がりますので、少しでも交渉の余地があればどんどんチャレンジしていきましょう。
単価の分類について
上代は「定価」、下代は「卸値」であるとご説明してきましたが、それでは「単価」とは上代下代どちらに分類されるのでしょうか。
正解は、上代下代どちらにも分類されます。上代における「単価」の場合、「販売単価」や「売上単価」という使い方をします。「販売単価」は販売したい値段の最小単価のことで、「売上単価」は実際に販売した値段の最小単価のことを指します。
下代における「単価」の場合、「卸単価」という使い方をします。「卸単価」とは、卸売りする際の値段の最小単価のことを指します。
大事な書類は上代と下代を使い分ける
小売店と卸売店の間では、掛け率や手数料などについて必ず契約書が交わされます。この契約書に書かれた内容を元に、上代や下代を設定していくことが基本です。
契約書以外にも取引先と交わす重要な書類として、請求書や見積書といったものがあります。請求書とは商品が購入された際に、相手に料金を請求する際に用いられる書類です。
卸売側から小売店側へ請求する際は、卸売単価に数量をかけて請求するため、下代の金額をもとに計算します。
見積書とは購入を検討している商品に対して、どれくらいの値段で購入したいのかを提示するための書類です。
そのため見積書においては上代もしくは下代が設定されている場合と、上代と下代両方が設定されている場合があります。
上代と下代を意識してお得に仕入れよう!
上代も下代も日常生活においてはあまり耳にしない言葉ですが、業界で暮らす人にとっては欠かせない言葉です。上代や下代の相場を理解していれば、消費者として小売店から購入する際に値切りを行う目安にもなります。上代と下代を意識して、よりお得に商品を購入していきましょう。
仕切り価格とは?
「仕切り価格」という言葉をご存知でしょうか。こちらも「上代」や「下代」や「掛け率」と同じく、業界においてとても重要な専門用語です。ここからはそんな「仕切り価格」という言葉の意味について詳しくご説明していきます。
仕切り価格はネット価格と呼ばれることも
「仕切り価格」とは簡単に言うと、商品の製造元から卸売業者などの問屋へ売られた際の価格のことを指します。これに対して問屋から小売店に販売するときの価格を「卸価格」といいます。
業界によってはこの「仕切り価格」のことを「ネット価格」と言ったり、下代や卸値と同じ意味で使う場合もありますので注意が必要です。
ネット価格とグロス価格の違いは?
ネット価格と一緒に覚えておきたいのがグロス価格。ネット価格とグロス価格の違いは以下の通りです。
・ネット価格→諸経費を含まない価格(仕切り価格)
・グロス価格→諸経費を含む価格(仕入れ価格)
少し分かりにくいですが、間違えないように注意しましょう。
ネット価格について詳しく!
「ネット価格」と聞くとまるでインターネットの価格のような感じがしますが、流通業界においてはメーカーから購入したときの価格のことをいいます。例えば商品を定価より値引きして販売する場合、ネット価格以下の値段まで値引きしてしまうと赤字になってしまいますので注意が必要です。
下代にも似ような言葉がある
「下代」とは仕入れ価格のことを指します。業界によっては「卸値」や「仕切り価格」とも呼ばれます。メーカーから直接仕入れを行っている小売店などでは、この3つの言葉は同じ意味として扱われています。
不動産業界では指値価格と呼ばれることも
不動産業界においての仕切り価格の定義は、価格を指定しないで注文を委託し、取引が成立したときの価格のことを指します。
反対に最初から価格を指定された状態で委託を行う際には、その価格のことは「指値価格」と呼ばれます。
仕切り価格はどのように計算するのか
「仕切り価格」という言葉の意味は上記で述べたとおりです。では次は仕切り価格の計算方法についてご説明していきます。
仕切り価格は定価と掛け率から求めます。例えば定価が10000円の商品の場合、8掛けであればその商品の仕切り価格は8000円になります。
掛け率は販売店によって違いますので、お得意先のA社は6掛けだけども、販売量の少ないB社は8掛けとして販売されていたりします。
その場合、定価が10000円だとするとA社の仕切り価格は6000円、B者の仕切り価格は8000円ということになります。
同じ定価であったとしても、お店によって仕切り価格が違ってくるので注意が必要です。
エクセルで計算をする
エクセルを使うと、関数を使い効率的に仕切り価格を求める事ができます。使用する関数は次のように入力します。税込みの価格をA列、仕切りの価格をB列とした場合は以下のような関数になります。
掛け率を7掛け、消費税率を10%と仮定します。
=int((A1-int(A1*7/110)*0.7)という式を使います。
内税になる場合は次のような関数になります。
=int(int((A1-int(A1*7/110)*0.7)という関数になります。
物によっては消費税率が8%となるのでその場合は、110を108に変えると計算ができます。
仕切り価格の消費税は各業者で負担をする
消費税は商品を購入した時、何かのサービスを受けた時に課税されるものですが生産者、卸売業者、小売業者にも課税されています。
消費税の納税をする時の仕組みは、消費者の代わりにスーパーなどの小売り業者、そこに商品を卸している卸業者、生産者の方が先に負担をして納税をします。
消費税は各業者も納税している
普段買い物をしていると消費者だけが納税をしているように見えるかもしれませんが、実は販売されるまでに関わる各業者もそれぞれ消費税を負担しています。
生産者から卸売業者、卸売業者から小売業者、そして小売業者から消費者この取引の際に全てに消費税が課税されています。
このように小分けにして納税されている消費税が、最後にまとめて消費者が支払っている商品代金と共に加算されてきます。
取引上での「仕切り価格」の使い方と例文
仕切り価格の意味はここまでに記載した通りとなりますが、実際に行われている取引ではどのように使われているのか。
「仕切り価格」という言葉を、ビジネス用語の視点から例文を交えて使い方を見ていきましょう。
流通業界ではどのように使われるか
例文①
「仕切り価格の高騰が続いている為、定価を上げるしかなくなった」
例文②
「為替レートが変動し、輸入している商品の仕切り価格を見直す必要がある」
例文③
「中間に入る業者が増えると、仕切り価格が下降傾向になる」
流通業界ではこのように使われています。
不動産業界ではどのように使われるか
例文①
「当初の予想よりもマンションの販売額が伸びないので、赤字を避けるために仕切り価格を設定して販売しなければならない」
例文②
「2,500万円で販売ができ、仕切り価格が2,100万円なので400万円の利益になる」
例文③
「1,500万円を仕切り価格としていたが、不動産業者より1,200万円に下げるように打診が来た」
不動産業界ではこのように使われています。
仕切り価格と卸価格と定価の違いって?
これまで「仕切り価格」という言葉の意味とその計算方法についてご説明してきました。その中で「卸価格」や「定価」など仕切り価格と同じような意味の言葉も何度か登場しました。
ここからはそんな似たような言葉たちの意味について、それぞれ詳しくご紹介していきます。
卸価格は諸経費を含まない
「卸価格」とは簡単に説明すると、商品が卸問屋から小売店に販売されたときの値段のことを指します。
卸価格といえば一般的に卸単価のことを言いますので、購入する際に発生する送料などは含まれません。そのため、仕切り価格と卸価格を比較した場合、製造元から直接購入する仕切り価格よりも卸価格の方が高い値段になっていることがあります。これは卸問屋を経由するため、その分利益が上乗せされているためです。
製造元と交流があり直接購入できる場合は、卸問屋から購入するよりも安くなる場合があります。
定価はお店がお客に提示する価格のこと
「定価」とは簡単に説明すると、商品が消費者に販売される際に定められている価格のことを指します。
「メーカー希望価格」や「オープン価格」などといった表記がされていることがありますが、原則として「定価」は定められた金額以外の値段にすることは禁止されていますので、この2つの言い回しは「定価」とは違う意味を持ちます。例えば新聞や書籍などは定価が定められており、日本全国どこでも値段が同じです。
では「メーカー希望価格」とは何なのかというと、メーカー側が希望する値段の基準値のことを指します。この場合、小売店側がその希望価格をもとに実際の単価をいくらにするのか一任されているというかたちになります。
一方「オープン価格」とは、メーカー側が希望の値段を提示しておらず、小売店側が自由に決める商品の値段のことを指します。
いずれも小売店が消費者に商品を販売する際の価格に関する言葉ですので、仕切り価格とは全くの別ものです。
仕入れ値は諸経費が含まれる
「仕入れ値」とは簡単に説明すると、商品を仕入れる際に支払った料金のことを指します。卸価格と同じような意味合いですが、厳密に言うと卸価格と仕入れ値は全くの別の意味になります。
卸価格の説明のときに送料は含まれないと説明しましたが、仕入れ値は仕入れたときにかかった送料も含みます。よって仕入れ値は、卸価格と送料などの諸経費を合算した金額になります。
さらに、似たような言葉で「仕切り価格」という言葉もありますが、こちらも送料などの諸経費は含まない価格なので「仕切り価格」よりも「仕入れ値」の方が高い金額になることが多いです。
卸価格とは卸問屋から購入した際に使われる言葉ですので、直接メーカーから商品を仕入れた場合には「卸価格」よりも「仕入れ値」が安くなるという場合もあります。
仕入れ価格は仕入れ値と同じ意味
「仕入れ価格」とは仕入れ値と同じ意味です。商品を仕入れる際にかかった購入価格のことを指します。この価格は仕入れ値と同じように、購入する際にかかった送料などの諸経費を合算した金額のことをいいます。「仕切り価格」と字面が似ていますが、仕切り価格は諸経費を含めない金額のことなので、間違えないように注意が必要です。
「仕入れ価格」と「仕切り価格」では卸問屋から購入しているか製造元から直接購入しているかという違いもあります。もし仕入れ価格が卸価格よりも低い値段になっていたら、仕切り価格と間違えていないか確認するようにしましょう。
仕切り価格の相場はいくら?
ここからは仕切り価格の相場についてお話していきます。
仕切り価格はその商品ごとに様々です。よって商品ごとの仕切り価格の相場も違ってきます。卸問屋を通過して仕入れられた商品であれば、小売店によって定価に対しての掛け率が違ってきます。それぞれの業界ごとや、販売方法などによって料金設定が違ってくるので、一概に商品別で比較するのは困難とされています。
そんな中でも販売価格が安いものから高いものまで、代表的な商品を例に挙げて仕切り価格の相場をご紹介していきます。
車は高級車や軽自動車などで違いがある
一般的に車の価格においての費用割合は、メーカー希望価格の60%が原材料と人件費になります。残りの20%が開発費などの諸経費、10%がメーカーへの手数料、10%がディーラーへの手数料となっています。つまり、自動車ディーラーの仕切り価格は、1掛け程度であるということです。
しかし、これは一般的な例ですので、例えば高級車や軽自動車の場合ではまた話が違ってきます。軽自動車の場合だとこのディーラーに対しての仕切り価格が非常に低くなり、逆に高級車の場合は高くなります。
家電製品はお店によって変動する
エアコンなどの家電製品などは、店によって仕入れ価格にかなりの変動があります。仕切り価格については、概ね標準価格の70%から75%が設定されています。
家電製品の値段はほとんどがオープン価格などで表記されており、小売店によって掛け率が大きく違うので比較がしにくいです。値引き交渉をする際には上記のパーセントを参考に、だいたい7掛け程度を目安にするとよいでしょう。
建材は定価よりも仕切り価格が安いことが多い
システムキッチンなどの建材は、時期や地域によって仕切り価格が大きく変動します。システムキッチンの掛け率は、一般的には3掛けから6掛けとされています。
建材は他の商品と比べて流通量が少ないので、仕切り価格は定価よりも安くなることが多いです。
システムバスなどにおいても、一般的に35%から45%程度が相場となっており、トイレも50%程です。
リフォームなどする際には、定価が決まっていないので営業の言い値で値段が決定されることがあります。そのような事態に陥った際に困らないように、ある程度建材についての掛け率を頭に置いておくと便利です。
アパレルの仕切り価格の相場は商品によって変わる
アパレルの仕切り価格は50〜60%が一般的です。
ただし海外から輸入されているインポートブランドの場合は40〜50%、オリジナルブランドに至っては30〜40%となります。
アパレルの場合、商品によって仕切り価格が、3〜6掛けと大幅に変動しますので注意しましょう。
専門用語を正しく理解して役立てよう!
いかがでしたでしょうか。
今回は「仕入れ」や「仕切り」などといった専門用語についてご説明しました。
業界人と話すときにこういった専門用語を知らなければ、足元をすくわれる可能性があります。損をしないためにも、ある程度知識として専門用語を認識しておくと便利でしょう。
この記事を読んで少しでも専門用語の知識を身に付けていただけましたら幸いです。