せどりを行うなら、関係のある税金についての知識をもっておくのは非常に大切です。
納税義務があるにもかかわらず怠っていると、脱税とみなされたり、高い延滞税を支払わなければならなかったりするからです。
そこで重要なのが、事業所得について理解しておくことです。
今回は、せどりと事業所得の関係、確定申告のける白色申告と青色申告について詳しく解説します。最後に確定申告の注意点についても紹介するので、これからせどりを始めたいという方は、ぜひ参考にしてください。
せどりと税金について
せどりで一定の収入を超えると納税義務が生じます。
納税義務が発生する条件は、現在の立場によって異なりますし、申告方法により納税額や提出書類も違ってくるので注意が必要です。
そこでまず、せどりと納税について基本的なことから解説しましょう。
せどりで納税義務が発生する場合
せどりでは、年間所得が一定額を超えると納税義務が発生します。
ここでいう所得とは、せどりによる売上からすべての経費を差し引いた金額を意味します。
せどりは、商品を仕入れ、そこに利益を上乗せして販売、その差額で儲けるビジネスです。
一般的にせどりの経費は、仕入れ額が大半を占めます。他にも、商品をユーザーに発送する際の送料、ECサービスへの販売手数料、梱包資材や光熱費、仕入れの際の交通費やガソリン代などが経費になります。
確定申告で納税する
個人でせどりをしている人は、確定申告(白色または青色)で納税します。
詳しくは後述しますが、申告方法によって納税額や必要な提出書類、事務作業などに大きな違いが出てきます。
それぞれにメリットとデメリットがあるため、売上規模や現在の立場などを総合的に勘案して申告方法を選択することになります。
ただし、青色申告はクリアーすべき条件が複数あるので、スタートしたばかりの方にとっては難しいかもしれません。そのため、多くは白色申告から始めることになるでしょう。
本業および専業主婦や学生がせどりをした場合
確定申告は、現在の立場によって納税義務の発生条件に違いがあります。
具体的には、以下の2パターンに分かれます。
・本業および専業主婦やリタイヤ後のシニア・学生が行う場合
・会社員が副業で行う場合
まず、最初の本業や専業主婦やリタイヤ後のシニア・学生などが趣味の延長や小遣い稼ぎでせどりを行う場合、年間の所得が「48万円」を超えると確定申告義務が生じます。
会社員が副業でせどりをした場合
本業が別にあり、せどりを副業としておこなう場合は、年間所得が「20万円」を超えると確定申告義務が発生します。
事業所得と雑所得
せどりにおける所得は、「事業所得」と「雑所得」に分けられます。両者ついて詳しく掘り下げましょう。
事業所得とは
まずせどりで所得が事業所得と見なされるのは、個人事業主が開業届を税務署に出し、せどりを継続的に行って青白申告をする場合です。
判断の目安は、せどりを副業ではなく本業として行い、そこでの収入が生活基盤となっていること、また反復・継続しているかどうかという点になります。
雑所得とは
上記以外、つまり会社員が副業としてせどりを行う場合や、専業主婦や学生などが趣味の延長でせどりをし、白色申告をするケースの所得は、雑所得とみなされます。
確定申告の方法
それではここからは、確定申告について詳しく掘り下げましょう。
白色申告とは
白色申告は、始めて間もない個人事業主や、趣味の一環や小遣い稼ぎでせどりを行う専業主婦や学生などが、主な対象になります。
税額が控除されるといったメリットのある青色申告と違い、日々の売上金と経費について簡易的な帳簿をつけるだけで申告作業が済む点が、とくに初心者や簿記の知識に自信がない専業主婦、シニア、学生などにうってつけです。
売上から経費を差し引いた雑所得の額によって、課税金額も変わってきます。
ちなみに雑所得が、
・1,000円〜1,949,000円→5%
・1,950,000円〜3,299,000円→10% 【控除額】97,500円
・3,300,000円〜6,949,000円→20% 【控除額】427,500円
・6,950,000円〜8,999,000円→23% 【控除額】636,000円
・9,000,000円〜17,999,000円→33% 【控除額】1,536,000円
・18,000,000円〜39,999,000円→40% 【控除額】2,796,000円
・40,000,000円〜→45%. 【控除額】4,796,000円
といった具合で課税割合が違います。
つまり、例えば雑所得が100万円なら納税額は、5万円になります。
青色申告とは
税務署に「開業届」と「青色申告承認申請書」を提出すると青色申告が可能になります。
主なメリットとしては、
・複式簿記なら最大65万円または55万円の特別控除、単式簿記の場合は10万円の特別控除を受けられる
・家族の給料を必要経費にできる
・赤字を3年間繰り越すことが可能
・30万円未満の資産は、減価償却ではなく一括で経費計上できる
といったものがあります。
とくに特別控除が受けられるメリットは大きいでしょう。
ただし、貸借対照表と損益計算書を提出しなければ最大の控除を受けることができないので、確定申告時の事務作業が膨大になる恐れがあります。
会計ソフトで会計を簡易化可能
複式簿記ができれば、青色申告に必要な書類を作成できます。しかし、その作業には非常に時間を要するため、肝心のせどりに注力する時間が減ってしまいます。
せどりで一定以上の売上を得続けるためには、入念なリサーチと、コスパが良い優れた商品を仕入れることが不可欠です。よって、とくに一人で行う場合は、複式簿記で帳簿をつけたうえ、煩雑な貸借対照表と損益計算書を作成するのは大きな負担となるでしょう。
その業務を大幅に削減するには、会計ソフトの導入が有効です。日々の取引内容を決まった手順で入力するだけで、仕分けから決算書作成までもほぼ自動化できます。最初のうちは大変かもしれませんが、慣れれば非常にスピーディーに処理できるようになるで、取引規模が大きくなるほど利便性は確実に高まるでしょう。
税理士に委託する方法もある
せどりの取引規模が拡大してきたら、確定申告作業を軽減するやり方として選択肢が2つあります。
1つは、複式簿記による経理事務をこなせる専属の人材を雇うことです。
もう一つは、税理士に委託する方法です。
自身にとってやりやすい方で構いませんが、確定申告は期限が決まっていますし、何よりその内容に誤りがあってはいけません。そう考えると、税理士の方が安心でしょう。
ただし、顧問料が必要になるので予算に見合う相手を見つけることと、信頼できる相手かどうかをしっかりと精査する必要があります。
せどり所得の留意点
ここからは、せどりの所得規模によって留意しておくべき点について解説しましょう。
まず個人でせどりをおこなう人は、白色か青色のどちらで申告するか選択しなければならないことは、すでに述べました。
しかし、とくに個人事業主で青色申告をする場合でも、事業規模が大きくなるとそのままでは損をするケースが多分に出てきます。
そこで有効なのが、個人事業を「法人化」する方法です。その辺りの考え方を、税金を軸に説明しましょう。
消費税との関係
せどりに関連する税金は所得税だけではありません。年間の所得額が1,000万円に近づいてきたら消費税が課税されることを念頭に入れておく必要があります。
というのも年間の課税売上(税抜きの売上)が1,000万円を超えると消費税の課税事業者となり、消費税を納税する義務が発生するからです。
実は、この消費税を決まった間だけ免除してもらえる制度があります。
それは、課税売上が1,000万円より上回った時点で法人化したときです。法人化すると課税事業者かどうかを見定める基準期間の判定がリセットされて、消費税の課税が2事業年度延期されます。
現在消費税は10%のため、かりに課税売上が1,500万円の場合、消費税だけで500万円も支払う必要があります。これが2年間免除されるとすると、その額は相当なものになるので、個人事業主が青色申告を選択した後には、法人化するかどうかの選択肢も待ち受けていると認識しておいてください。
法人税との関係
個人事業主でいる方がメリットが大きい場合と、法人化した方が得なケースは、消費税だけではありません。
法人には法人税が課されますが、その額が個人事業主の所得税を下回ると考えられる場合は、やはり法人化を検討する方がよいでしょう。
具体的には、法人税率は「23.2%」のため、上述の「白色申告とは」の章で触れた所得税率が23%である8,999,000円までの所得であれば、個人事業主のままの方が得する可能性が高いです。
しかしそれ以上の所得となると、所得税率は33%以上に跳ね上がるため、法人化した方がメリットが大きいと考えられます。ちなみに資本金が1億円以下の場合なら、年間所得が800万円以下については法人税が15%となるので、8,999,000円以下の所得でも法人化した方が得なケースもあり得るでしょう。
先ほどの消費税に加えて、法人税の観点からも法人化すべきかどうかのタイミングは、しっかりと見定める必要があります。
法人化のメリットとデメリット
法人化した場合、上記の納税額の面で得になるだけでなく、社会的に信頼されやすいという利点もあります。
個人事業主より法人の方が、事業規模が大きく、実績も安定しているとみなされて銀行からの融資が受けやすくなります。
加えて、せどりは人気商品や手に入りにくい新商品などを不当に高額な価格で売りつける転売業者と勘違いされやすい現実があります。そのため法人化しておくと同じ商品を販売してもユーザーが安心して購入してくれる可能性が高まります。
ただ法人化には以下のようなデメリットもあるので注意が必要です。
・法人化手続きに費用がかかる(株式会社なら所定の手続きに22万円前後必要)
・社会保険料(「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」)を負担しなければならない
・役員報酬を1年間変更できない
・税理士に委託する場合は顧問料がかかる
という具合です。これらについても細かく見積もりを行っておかないと、法人化してから後悔する可能性があるので注意してください。
確定申告の注意事項
最後に、せどりの確定申告についての注意点を紹介しておきます。
フリマは確定申告が不要
せどりをする上で、よく話題にあがる疑問が、「フリマアプリでの所得は確定申告の対象になるのか」という点です。
結論からいうと確定申告の必要はありません。
というのも、フリマアプリは、あくまでも不要品を販売するに過ぎないため、そこで得た所得は課税対象にはならないからです。
ただし、宝石や骨董品など1点で30万円を超える場合は、納税義務が生じるため確定申告しなければなりません。
また、安価な商品でも悪質な転売行為を繰り返していると、フリマアプリ側からアカウント停止や、ユーザーの検索にヒットしなくなる圏外飛ばしに遭うリスクがあるので要注意です。
確定申告しいないとどうなる?
確定申告を怠ると、バレた時点でペナルティとして無申告加算税と延滞税が課されることになるので注意してください。
申告はe-taxがおすすめ
確定申告は、わざわざ税務署に出向かなくともオンラインで納税できる「e-tax」を利用すると大変便利です。
確定申告は、毎年2月16日頃からわずか1ヶ月以内と非常にスケジュールがタイトなため税務署は大変混雑します。そのため国税庁は自宅から曜日や時間帯に関係なく申告できるe-taxを推奨しているのです。
具体的には、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から行うことができます。
まとめ
せどりは、白色申告の場合、所得は雑所得になります。青色申告にすると事業所得になります。
青色申告は税額控除が受けられるなどのメリットがありますが、白色申告と比べると手続きが煩雑になるので可能かどうかを精査する必要があるでしょう。
また、事業規模が拡大した場合は、個人事業主ではなく法人化した方が得な場合があります。ただしこの場合も、個人事業主では必要なかったコストが発生するため、事前にシミュレーションをして確実な利点があるかを確かめるようにしてください。