ネットでの買い物が日常化した昨今では、自分が販売者になる物販を始める人が増えています。
物販は、特別な資格がなくてもできるので、スキマ時間を使って副業で行う人も少なくありません。
今回は、そんな物販事業についての解説です。メリットやデメリット、始める手順や注意点、成功のコツをわかりやすく紹介するので、ぜひ参考にしてください。
物販とはどんな事業?
早速、物販とはどのような事業かについて基本的なことから解説しましょう。物販とともによく話題にのぼる「せどり」や「転売」との違いについても掘り下げます。
物販とは?
物販とは、その名の通り「物」を「販売」するビジネスです。メーカーや卸、ネットショップや家電量販店などの実店舗などから仕入れた商品をおもにネット経由で販売し、利益を得るというものです。ハンドメイドなど自前で製造した商品を売るケースもあります。
転売やせどりとの違いは?
物販は、よく「せどり」や「転売」と混同されますが、結論からするとほぼ同義だと考えて構いません。
ただし、物販では新品を扱うケースが多いですが、せどりや転売は、中古品も数多く販売します。また、転売については物販と比べるとあまり良いイメージがもたれません。人気商品やレア品、限定品などを市場価格の数倍の値段で売るなどして荒稼ぎする行為が、しばしば批判の的になっているからです。
物販の代表的なスタイル4選
続いて、物販の代表的なスタイルを4つ紹介しましょう。
・ネットで仕入れてネットで販売する
・実店舗で仕入れてネットで販売する
・ハンドメイドをネットで販売する
・輸入販売する
ネットで仕入れてネットで販売する
物販でもっともオーソドックスなのが、ネットで仕入れた商品をそのままネット経由で販売するというスタイルです。
パソコンやスマホがあれば、自宅にいながらでも物販が可能なため、もっとも多くの人が選択するやり方になります。仕入れに出向くと交通費が必要ですし、自宅まで運ぶ手間も必要です。それよりネットから商品を見つけて仕入れ、それをフリマアプリやオークションアプリ、自前のECサイトなどで販売すれば、支払いやカスタマー対応などもすべてネット経由でできるため非常に楽です。とくに副業で物販をする方にはおすすめです。
実店舗で仕入れてネットで販売する
続いて、実店舗で仕入れてネットで販売するスタイルもあります。
・ディスカウントショップ
・家電量販店
・リサイクルショップ
・ホームセンター
・ドラッグストア
といった店舗が主な仕入れ先になります。
ただし、商品リサーチに時間がかかったり、欲しい商品が必ず手に入るとは限らず、時間や交通費がかかったりする点がデメリットです。
ハンドメイドをネット販売する
趣味で何らかのアイテムを自作している人は、それを物販事業化するケースもあります。
本業となると、量産する必要があったり、ユーザーの要望に色々と応えなければならなかったりするため、一人で行うのはハードルが高いかもしれません。しかし、あくまで副業として行う場合は、収入が増え、人に買ってもらうことでやり甲斐にも繋がるので楽しめるのではないでしょうか。
輸入販売する
輸入販売は、最初に紹介したネット経由で仕入れ販売するスタイルの一種です。ただあえて別枠で紹介したのは、国内のショップから仕入れて販売するのとは事情が異なるからです。
海外から買い付けるとなると、語学力(翻訳アプリもありますが)が必要ですし、外貨での決済となります。利用する運送会社も国内とは異なるうえ、税関についての知識も必須です。何より商品が届かないとか、破損していた、偽造品だったなどのトラブルに対処するのも国内に比べると面倒でしょう。
国内で入手できない商品や海外限定の人気モデルなどを仕入れることができれば、高額で売れるメリットがあります。しかし、初心者がいきなり輸入販売に手を出すのは、上記の理由からあまりおすすめしません。
物販のメリット
次に物販事業を行うメリットについて解説しましょう。
具体的には以下の3点になります。
・だれでも始めやすい
・初期費用が少なくて済む
・スキマ時間を利用できる
だれでも始めやすい
物販の仕組みは比較的シンプルですし、特別な資格がなければできないビジネスでもないため、その気になればだれでも始めることができます。
パソコンとスマホ、プリンター、通信環境、在庫スペースさえ確保できれば自宅で始めることが可能なため、他のビジネスに比べると手軽でしょう。
初期費用が少なくて済む
すでにパソコン、スマホ、プリンターがあり、自宅で始めるのであれば、初期費用も非常に少なく抑えることができます。
あとは、仕入れ費用と商品の梱包に必要な資材コスト、さらに送料や販売先のプラットフォームに支払う販売手数料などがあれば事足ります。一般的に何らかのビジネスを始めるとすると初期費用や運転資金に数百万円単位のお金が必要で、自己資金では足りず、借金をして始めるケースも珍しくありません。それに比べるとリスクを抑えてスタートできる点は、大きなメリットでしょう。
スキマ時間を利用できる
物販では、稼働時間帯や曜日が細かく限定されるわけではありません。日常のスキマ時間でこなすことも可能なため、仕事や家事、育児とのバランスをとりながらでもできるのは大きな利点といえます。
物販のデメリット
続いて物販デメリットについて解説しましょう。
具体的には、以下の2点です。
・ライバルが多い
・在庫リスクがある
ライバルが多い
物販はだれでも始めやすいだけあって、ライバルが多いです。特定のメーカーや卸業者、クリエイターなどとのつながりがあり、他の物販事業者があまり販売できない商品が扱えるなら話は別です。ビンテージ品や中古でも保存状態が良いものやレア品なら高く売れる可能性があります。しかしそのようなケースは稀でしょう。
日常的に入手しやすい商品は、取扱業者も多くなるため価格競争が激しくなります。すると資金力のある業者がどうしても有利になるので、個人ではなかなか太刀打ちできません。ビンテージやレア品といっても品数が限定されているため、継続的にビジネスとして成立させるのは容易ではないでしょう。したがって、いざ始めてみると想像していたよりも大変と感じることがあります。
在庫リスクがある
物販のセンスが問われるのは、いかに売れる商品を売れる分だけ無駄なく仕入れることができるかという点にあります。
物販市場は、さまざまな影響によって売れ筋や価格が変動しやすいです。例えばあるインフルエンサーにポジティブなイメージで紹介された商品は、一気にバカ売れすることがあります。そのタイミングでその商品を仕入れていれば大幅に利益が獲得できるかもしれません。しかし、同業他社の製品に不良品が発生すると、非がなくてもその煽りを受けてまったく売れなくなることもあり得ます。
すると、不良在庫がたまって資金繰りが苦しくなる恐れがあります。この辺りの読みや駆け引きがうまくできないと、行き詰まるリスクがあるでしょう。
物販の手順
ここからは、物販を始める手順について解説します。
具体的には、以下のような流れになります。
物販ができる環境を整える
↓
商品を仕入れる
↓
値決めして販売する
↓
梱包して発送する
↓
収支計算をして納税する
物販ができる環境を整える
まず物販ができる環境を整えます。
物販のスタイルにもよりますが、一般的には以下のようなものが必要です。
・パソコン・スマホ・プリンター
・販売方法を決める(フリマアプリ・ECサービス・自社サイトなど)
・仕入れ先の開拓
・在庫スペース
・梱包資材
・運送方法や運送会社を決める
・納品書・領収書などの伝票
・会計システム
・古物商許可(詳しくは後述)
商品を仕入れる
物販の主役となる商品を仕入れます。
できるだけ複数の仕入れ先を確保することが大切です。仕入れ先を絞りすぎると、商品が枯渇するリスクがありますし、他でもっと安く入手できる場合に損をします。
値決めして販売する
商品を仕入れたら、そこに利益を乗せて販売します。
ライバルの出品価格や市場動向、送料や梱包材、販売手数料などの経費を考えて利益を確保できる商品価格で販売することが大切です。
梱包して発送する
商品が売れたら、すみやかに梱包して発送します。
運送中の破損を防ぐために頑丈に、また送料を抑えるためには極力コンパクトに梱包しなければなりません。
発送手段もさまざまなものがあるため、低コストでトラブルに強い方法(損害賠償やトラッキングできるなど)を選択するようにします。
収支計算をして納税する
物販では、取引や出費があるたびに、それらを帳簿に記載し、年度末には収支計算をして納税しなければなりません。
とくに副業で行う場合は、年間の所得が20万円を超えた時点で確定申告の義務が発生するので気をつけてください。
物販の注意点
ここで物販を行うにあたっての注意点を紹介します。
慣れるまでは大変
物販は、とくに未経験だと一連の作業に慣れるまで時間がかかり、ストレスを感じることがあるかもしれません。
生活スタイルや自宅内のスペースの使い方が変化するので、同居する家族がいる場合は、理解が得られるように十分な話し合いとルール決めをしておく必要があります。
例えば、早朝の同じタイミングに複数の注文が入り、その日は出張でいつもより早くに家を出なければならないとします。パートナーも子供を保育園に送ってから仕事に行かなければならないとすると、いかがでしょう。それでも決められた期日に商品を送り届けるのは必須です。ペットを飼っている場合は、アレルギーや臭い対策で在庫スペースに立ち入らせないようにする必要もあります。喫煙も同様です。
こうしたことを想像すると、自分なりの適切なスタイルを確立しコツが掴めるまでには、それなりの時間が必要になるでしょう。
古物商許可が必要になることがある
先ほど少し触れましたが、中古品を継続的に販売する場合は、「古物商許可」が必要です。違反した場合は、法律で罰せられる可能性もあるので注意してください。
必要書類を用意して最寄りの警察署に申請(必要書類の提出と19,000円が必要)をすれば、だれでも入手できます。詳しくは警視庁のホームページを参考にしてください。
参考:【警視庁】古物商許可
物販で成功するコツ5選
最後に物販で成功するコツを5つ紹介しましょう。
・回転率の高い商品を選ぶ
・リサーチに注力する
・スモールスタートを心がける
・お客様を大切にする
・商品を大切に扱う
回転率の高い商品を選ぶ
在庫をためず、継続的に利益を得るためには、回転率の高い商品を選ぶことが大切です。
回転率が高いとは、仕入れてから売れるまでの時間が短いということです。回転率が低いと不良在庫となり、商品が劣化したり、資金繰りが厳しくなったりするので注意が必要です。
リサーチに注力する
物販では、何が、どこで、いくらで、どのくらい売れるか、また仕入れることができるかという情報をリアルタイムで把握しておくことが重要です。
そのためには、広範囲にわたってまめにリサーチする必要があります。例えば同じ商品でも、メルカリとAmazonではまったく価格が異なるケースが珍しくありません。売れる数や回転率も異なります。1円でも安く買えるところから仕入れて、1円でも高く売れるところで売る、というのが基本です。
スモールスタートを心がける
物販は、最初から手を広げすぎると多くの場合、失敗に終わります。
物販は、始めやすくてやめやすいという点もメリットです。とくに副業の場合は、無理をしすぎず、うまく行かなければいつでもやめられるようにしておくことも大切なリスク管理です。選んだ商品の売れ行きが芳しくなければ、柔軟にジャンルを変更するのもよいでしょう。
しかし、最初から大きく儲けようとして大量に仕入れると、融通が効かなくなって苦しむのは自分です。あくまでもスモールスタートを心がけ、軌道に乗り始めたら徐々に手を広げるようにしてください。
お客様を大切にする
物販は、お客様に気に入られてこそ成功します。
商品説明、梱包と発送、その後のお礼メールやクレーム処理にいたるまで、常にお客様の立場に立って、丁寧かつ親切な対応を心がけてください。まずは、自分が買いたいと思えるお店づくりをするのが基本でしょう。
商品を大切に扱う
物販では、お客様は直接商品を手に取って吟味することができません。そのため、手元に届いた時に「もっと綺麗だと思った」「イメージと違う」と思われることのないように、仕入れたらしっかりと手入れをし、最高に綺麗な状態で画像を撮影、丁寧に梱包して発送するようにしてください。
くれぐれも傷や汚れを隠して売ることのないように気をつけてください。一度失った信用を取り戻すのは極めて難しいので、誠実さが何より大切と心得ておく必要があるでしょう。
まとめ
物販は、だれでも始めやすいビジネスのため副業にもおすすめです。自分がセレクトした商品やハンドメイド作品が売れた時には、感動しますし、大きな達成感を味わうこともできるでしょう。
ただし、物販はライバルが多いので、無理をせず、地道に堅実に準備と対策をしたうえで始めるようにしてください。