ネットショップではさまざまなものが売られていますが、中でも多いのが中古品を扱うショップです。中古品をネットショップで売る場合、基本的に「古物商許可」が必要ですが、販売方法によっては必要ないケースも多く、初心者にはやや複雑かもしれません。
さらに、ネットショップでの中古品販売には、古物商許可の他に届け出が必要なものもあり、「これ、高く売れそう」という思いつきで販売すると、あとで面倒事に巻き込まれることもあります。
この記事では、ネットショップで古物商許可が必要なのはどういうケースかを明らかにしながら、申請方法、他に必要な届け出についても説明していきます。
まず「古物(こぶつ)の定義」を知るところから
世の中には、中古品を扱うさまざまなショップがあります。リサイクルショップ、古着屋、古本屋、中古CDショップ、中古車販売など、こうした商売を行うには古物商許可が必要です。
古物商の「古物」、これは「ふるもの」ではなく「こぶつ」と読み、以下の3つで定義されています。
- 一度は使用されたもの
- 使用されない状態で取引されたもの、新古品
- 上記の物品に少し手を入れたもの
この定義だと、やや漠然としてわかりにくく感じますが、古物営業法によれば、「一度でも使用された物品は古物」になります。
境界線は「一般消費者の手に渡ったか」にあり、未使用でも、一般消費者の手に渡れば「新古品」として古物になるのです。
転売するには基本的に古物商許可が必要になる
古物とは何かをもう少し補足すると、法律で次の13種類に分類されています。
- 美術品類:彫刻、書画、絵画、工芸品など
- 衣類:洋服類、和服、その他衣類
- 時計・宝飾品類:貴金属、装身具、宝石類
- 自動車(部品含む):中古車、ホイールなどの部品
- 自動二輪車および原動機付自転車(部品含む):中古のオートバイ、カウルなどの部品
- 自転車類(部品含む):中古自転車
- 写真機類:デジカメ、一眼レンズカメラなど写真機類、レンズなど
- 事務機器類:オフィス機器全般
- 機械工具類:工作機械、土木機械、工具類
- 道具類:家具、雑貨、楽器など
- 皮革・ゴム製品類:鞄、靴など
- 書籍:中古本、マンガ、雑誌など
- 金券類:商品券や乗車券など
古物商はこの13種類の中から扱う古物を決めますが、複数の種類を一度に取り扱うことも可能です。
中古ブランド時計やアクセサリーに加え、中古ブランドバックを扱いたいなら、法律で定められた「時計・宝飾品」 と「皮革・ゴム製品」を扱う許可が必要です。
- 古物を買い取って、販売する
- 古物を買い取って、修理して販売する
- 古物を買い取って、部品などを販売する
- 古物を買い取らないで、売った後に手数料を貰う(委託売買)
- 古物を別の物と交換する
- 古物を買い取って、レンタル事業に使う
- 国内で買った古物を、販売目的で海外に輸入する
- こうした行為をネット上で行う
以上の場合は古物商許可が必要になってきます。
個人用に買ったものは、基本的に古物商許可が不要
古物商許可が必要ないケースを、以下にまとめてみます。
- 自分で使っていたもの、バザー、ネットショップなどで売る(条件あり)
- 自分のものをオークションサイトに出品する(こちらも条件あり)
- プレゼント等、無償でもらったものを売る
- 相手から手数料等を取って回収したものを売る(古物以外の許可が必要かも)
- 自分が売った相手から、売ったものを買い戻す
- 自分が海外で買ってきたものを売る
自分で使っていたものを売る場合、古物商許可は不要というケースが多いのですが、ここは少し注意が必要です。
というのも、例えば中古品をオークションに出品する際、その商品を入手する時点から「オークションサイトに出品して差額を得ようとした」、つまり転売目的なら商売として中古品の売買を行うことになります。この場合、商品の仕入れ段階で古物商許可を持っている必要があります。
また、自分が個人用として海外で買ってきたものを売る際、古物商許可は不要です。ただし、海外からの輸入業者を通して仕入れたものを売る際には、古物商許可を求められる可能性が高いため注意が必要です。
商売で中古品を取り扱う場合、古物商許可が必要なのか不要なのか、判断に困る状況も多々あります。そんなときは、無駄に悩むより、警察または古物商許可の手続きを行う行政書士に相談することをオススメします。
古物商許可に関する3つの疑問
中古品をビジネスとして転売したり、交換したりする個人・法人を古物商と呼びます。
- リサイクルショップで仕入れた雑貨をメルカリで転売
- 知人から買い取ったスニーカーを古着屋で販売
- ブックオフで仕入れた古本をヤフオクで転売
- リサイクルショップ、古着屋を開業する
これらはすべて古物商にあたり、古物を貸してレンタル料をもらったり、知り合いから預かった古物を代行して販売する取引も古物商です。こうしたビジネスを行う際に必要なのが、「古物商許可」です。
許可なしに中古品を転売すると逮捕されることも
では、古物商許可を取らずに中古品の転売、レンタル等を行うとどうなるのでしょうか?この場合「無許可営業」にあたり、古物営業法違反として処罰の対象になります。その内容は「3年以下の懲役、または100万円以下の罰金」となっているため、くれぐれも注意してください。
そんな大げさな、と思うかもしれませんが、実際、無許可でチケットをオークションサイトで転売した人が、警察に逮捕されたこともあるのです。ネットショップの場合、無許可営業していないか監視している利用者もいるため、軽く考えるのはとても危険です。中古品の転売、レンタル等のビジネスを考えているなら、古物商許可は必須です。
盗品の転売を防ぐために古物商許可がある
なぜ、古物商に営業許可が必要かというと、盗品の流通防止・早期発見という狙いがあるからです。
盗んだものを換金しようとすると、誰かに販売しなくてはいけません。誰でも販売できると追跡が難しくなりますが、許可制にして警察が管理することで、盗品を転売しにくくしているわけです。
無許可での転売は、あらぬ疑いをかけられるもとにもなりかねないので、必ず古物商許可を取得しましょう。
古物商が遵守すべき項目
古物商には次の3つの義務があります。「本人確認義務」「古物台帳への取引記録義務」「盗難品等の不正品申告義務」です。
その上で、いくつかの遵守義務があるため、以下にまとめておきます。
- 交付された「古物商許可プレート」を店舗や事務所の見やすい場所に掲示する
- 管理者を決め、営業所ごとに1人ずつ置く
- お客様からの買取、また委託を受けた場合、相手の身分を確認し、取引内容と共に帳簿に記録する(盗品や不正品の疑いがあれば警察に申告)
- 行商、競り売りの際には、必ず古物商許可証を携帯する
- 古物の買い受け、交換、委託を行うには、営業所または取引相手の住所で行う
- 他人に名義貸しは禁止
扱う品目によっては、売却時に相手に身分証明の提示を求めなくてはいけないなど、細かい規定もあります。
古物商許可が必要な場合、どこから手をつければいい?
古物の転売、レンタル等のビジネスをしようと考え、扱う古物に古物商許可が必要だとわかったら、どこから手をつければいいのでしょうか。
古物商許可の申請は警察に行うため、管轄の警察署に相談するようにします。その場合、「生活安全課防犯係 古物商担当者」が相談先になります。
新規で古物商許可の許可申請を行う旨を伝え、必要書類を教えてもらうところから始めてください。
警察へ事前相談しておけば申請はスムーズに
警察での申請をスムーズに進めるためのポイントは、「事前相談すること」です。ウェブサイトで必要書類を調べ、用意して、申請書を提出してもいいのですが、事前相談がないと戸惑う担当者もいます。
事前相談で必要書類を確認し、こちらの名前を伝え、一緒に担当者の氏名もチェックしておけば、「先日、相談させていただいた……」と話を進めやすくなるでしょう。また、都道府県、各警察署によって、添付書類、申請の手順が若干異なるローカルルールもあるため、事前相談を行ったほうがベターです。
書類に不備があると、何度も警察署に足を運ばないといけませんが、事前相談しておけば、1回で受理してもらえる確率が高くなります。事前相談で訪れた際、担当者が不在のこともあります。その場合、別の人に相談するのではなく、面倒でも、担当者がいる時間帯に改めて訪問したほうがいいでしょう。
古物商許可の種類と申請方法
古物商の営業形態には「古物商(1号営業)」「古物市場主(2号営業)」「古物競りあっせん業(3号営業)」の3種類があります。複雑に感じるかもしれませんが、ネットショップで古物の売買を行うだけなら、「古物商(1号営業)」の許可だけでOKです。
「古物市場主(2号営業)」は、古物商だけで参加できる古物の売買、交換を行う市場の営業許可で、「古物商(1号営業)」と「古物市場主(2号営業)」は警察への申請が必要です。「古物競りあっせん業(3号営業)」は、インターネットオークションでの古物売買をあっせんする営業で、これは許可申請ではなく届け出だけで済みます。
古物商許可申請に必要な書類
では、古物商許可の申請には何が必要なのでしょうか。ここで注意したいのは、個人許可の申請と法人許可の申請の2種類あることです。
それぞれ、必要な書類は以下の通りで、営業所の所轄警察署に申請書を提出します。都道府県警察のホームページから、許可申請書と添付書類のフォームは入手できます。
個人許可 | 法人許可 | |
許可申請書 | ○ | ○ |
住民票の写し | ○ | ○(※) |
略歴書 | ○ | ○(※) |
登記事項証明書 | - | ○ |
身分証明書 | ○ | ○(※) |
誓約書 | ○ | ○(※) |
定款の写し | - | ○ |
※役員または管理者のものが必要となりますので申請先の所轄庁に確認してください。
参考:警視庁 古物営業
警察で申請するときの8つのポイント
申請に必要な書類は、作成の日付が申請日から3か月以内と決まっています。
また、申請書の提出から交付まで、審査機関として土日を除いて約40日、案外時間がかかりますので、書類が揃ったら、なるべく早めに提出してください。
提出日の予約
書類を揃えて警察に出向いたものの、担当者が不在の場合もあります。別の人に渡してもいいのですが、その場で確認することがあるかもしれないので、古物商許可の担当者に渡すのがベストです。
そのために、まず管轄警察署の生活安全課に連絡し、古物商許可申請書類提出の予約を入れます。要件を伝えれば、担当者がいる日時を調整してもらえるはずです。
また、申請書の受付は平日の日中のみとなっています。
想定問答を用意する
申請書一式を警察署の担当者に提出すると、その場でいくつか確認されることもあります。
仕入れはどうするのか、営業所はどうするのか、など基本的な内容ですが、受け答えに詰まらないように、想定問答をいくつか準備しておいたほうがスムーズに進みます。
申請時に必要なもの
もし、申請書等に不備があったり、必要な書類等を忘れたりすると、警察署に出直すことになります。
担当者に与える印象も悪くなってしまうので、不備、忘れ物のないようにしてください。下に持っていくものをまとめておきます。
1.古物商許可申請書類(正本・副本)
2.申請手数料 19,000円
※都道府県公安委員会によっては「県の証紙」を購入する必要があります。東京都は会計窓口での現金払いです。都道府県公安委員会によっては「古物商許可申請手数料納付書」が必要になることもあります。
3.身分証
免許証、保険証など本人確認に必要な書類です。法人申請の場合は社員証なども持参するとよいでしょう。
4.印鑑
申請書に記載ミス等があった場合や、担当者から訂正を求められた場合は訂正印で対応できます。法人申請の場合、可能であれば「法人代表者印」も持参するとよいでしょう。
5.委任状
申請者本人以外、あるいは法人代表者以外が申請に行く場合に必要です。
日付記載のタイミング
申請書の1枚目にある「日付」ですが、これは事前に記入するのではなく、担当者のチェックが終わってから、その場で記入するようにします。担当者のチェックによって不備を指摘されると、その日に提出できない可能性もあるからです。
手数料の納付
無事に申請書が受理されたら、その場で申請手数料の「19,000円」を納付します。受理後、現金で会計窓口に支払いますが、事前に証紙の購入を求められることもあります。都道府県公安委員会が定める支払方法に従ってください。
審査期間は約40日
めでたく申請書が受理されたとしても、すぐに結果はわかりません。警察の標準処理期間は「その翌日から起算して、土日を除く40日」となっているからです。
また、審査期間中に、警察が営業所にポストや表札の設置が可能かを確認に来ることもあります。提示していない場合、あらかじめ用意しておくとよいでしょう。
交付の案内
審査が終了し、古物商許可証の交付準備が整ったら、警察署から電話で連絡があります。日程を調整し、管轄警察署の生活安全課防犯係で「古物商許可証」を受け取ります。
交付時に必要なもの
古物商許可証を受け取る際も持参するものがあるので、事前に準備しておきましょう。
1.法人代表者印
法人の代表者が交付に行く場合に必要です。
2.認印
交付に行く人の認印を持参します。
3.身分証
身分確認のために免許証、保険証などを持参します。
4.筆記用具
交付の際、古物営業について警察担当者より説明があるため、メモ用に必要です。
5.委任状
法人の代表者以外の人が交付に行く場合に必要です。
ネットショップだけに必要な届け出がある?
無事に古物商許可証の交付を受けたら、晴れてネットショップを営業できると思いますが、実は、ネットショップで古物販売をする場合、他にいくつか届け出が必要になります。ポイントは2つなので、最後にまとめておきましょう。
2020年4月から改正古物営業法が全面施行されている
2018年4月の古物営業法の一部改正により、2020年4月から、古物商許可は都道府県単位の許可ではなく、全国共通の許可になっています。
以前は、東京都で古物商許可を取得しても、神奈川県で事業を行うには、神奈川県の警察に古物商許可を申請する必要がありました。
現在は、ある都道府県で許可を受けていれば、他の都道府県に営業所を開設するにしても、現地の警察に届出をすればいいのです。
注意したいのは、この法律が施行される以前(2020年3月31まで)に古物商許可を取得していたケースです。
この場合、2020年4月1日までに、「主たる営業所」として1か所の届出が義務付けられていました。新しい法律が施行後、そこが拠点となるためです。
もし、この「主たる営業所届出」を行っていなかった場合、古物商許可は失効とみなされ、そのまま事業を続けると古物営業法違反になってしまいます。
「主たる営業所届出」をせず、失効している場合は、改めて古物商許可を申請しなければいけません。
ネットショップ開業にはURL届出が必要
ネットショップとして古物商を営んだり、オークションサイトで継続的に多くの商品を出品するには、警察署にショップのURLを届けなくてはいけません。
ネットショップ開設から2週間以内に、プロバイダの登録者・ドメイン・発行元が確認できる「変更届出書」を管轄警察署へ届け出ます。手数料は無料となっています。
1.管轄警察署へURL開設の届出
ホームページを開設してからでないと受理してもらえません。
2.受理番号の入手
東京都は警察から受理番号を発行、他は公安委員会へのURLを伝えられるなど、場所によって違いがあります。
3.必要記載項目のチェック
「許可を受けた方の氏名・会社名の記載」「古物商許可番号の記載」「許可を受けた公安委員会の記載」の3点を記載します。
4.東京の場合、公安委員会のホームページから開設の届出
※東京以外の道府県は「3.」までの手順で完了します。
古物商許可が必要かどうか、早めに確認をしよう
最初に述べたように、ネットショップで古物を転売、レンタルしたりする際、古物商許可が必要なケースと、不要なケースがあります。申請から交付までは、それなりの時間、また手数料等もかかるので、自分の場合は古物商許可が必要かどうか、早い段階で確認することをオススメします。
また、ネットショップならではの手順として「URLの届出」もあります。不備があったまま営業すると、古物営業法違反になってしまうので、念入りな準備を行ってください。