この記事のテーマは、リピーターの増やし方です。商品を販売する場合もサービスを提供する場合も、リピーターの存在はお店の収益を大きく左右します。
新規に顧客を開拓することには限界があります。新規顧客の獲得に腐心するよりも、リピーターを増やすことに注力した方がコストはかかりませんし、経営が安定します。
ただ、一度来店していただいたお客様は、放っておいてもリピートしてくれるわけではありません。リピーターを増やすためには、そのための対策が必要です。是非、この記事でリピーターの増やし方をマスターしてください。
リピーターを増やすことの重要性
まずはリピーターを増やすことの重要性について解説します。
売上を伸ばす2つの方法
売上は、客数と顧客単価と購入回数をかけたもので計算できます。
売上=客数×顧客単価×購入回数
つまり、単純に考えると売上を2倍にするためには、来店するお客様を2倍にする、一度に購入してもらう金額を2倍にする、同じお客様に2回来店してもらうという方法があることになります。もちろん、それぞれの要素を1.3倍しても掛け合わせれば2倍以上になるので、どれか1つを2倍にすると考える必要はないわけですが、ここでは話を簡単にするために、1つの要素だけ増やすことを考えます。
そうすると、顧客単価が一定である場合で考えると、新規のお客様を獲得して客数を増やすか、リピーターになってもらって購入回数を増やすかの2つの方法が考えられることになります。問題は、この2つの方法のどちらを選ぶべきかです。
新規の顧客を開拓するには、宣伝広告費をかける必要があります。まずお店のことを知ってもらわなければ、来店するきっかけさえもないからです。これにはコストがかかります。これに対して、リピートしてもらうには、費用は小さくて済みます。来店時に次回リピートしたくなるような仕掛けをしておくこともできますし、宣伝広告もピンポイントで行えます。少ないコストで売上アップを望めるのが、リピーターを増やすことなのです。
情報過多の時代だからこそリピーターが獲得できる
現代は、情報が溢れている時代です。インターネットが普及して、居ながらにして多すぎくらいの情報が入手できます。商品を選ぶ選択肢も途方もないほどに与えられています。
例えば、ZOZOTWONで「ワンピース」と検索してみたところ、15万件ヒットしました。これだけの数があると、かえって選べなくなります。
商品の数が多すぎて、どの商品がいいのか比較検討することが難しくなります。こんな場合に、人がどんな行動を取るかを考えてみてください。
一度買った商品に満足していれば、「それをもう一度買おう」、「同じお店でもう一度買おう」という選択をする人が、かなりの数になるのです。例えば、スマホではiPhoneには根強い人気があります。
では、iPhoneは、他のスマホよりも圧倒的に機能が優れているのか、デザインが優れているのかというと、そうとも言い切れません。頑張って探せば、iPhoneと同程度の性能やデザインの製品も見つかるかもしれません。しかし、多くの機種の中から性能を細かに比較して、最善の機種を探すのは大変です。
そうなると、一度iPhoneを手にとって性能やデザインに満足している人は、改めて他の製品を比較検討せずに、またiPhoneを購入することになりやすいのです。このように、現代は、情報が与えられ過ぎているからこそ、一度顧客を掴んでしまえばリピートしてもらいやすい環境にあるといえるわけです。
リピートしてもらうための最初の一歩
ここまでの記述で、お客様にリピートしていただくことが極めて重要であることはお分かりいただけたのではないでしょうか。そこで、リピートしてもらうための最初の一歩について解説します。
リピートしない意外な理由
この最初の一歩とは何かを考えるためには、お客様がリピートをしない理由について考える必要があります。商品に不満がある、店員のサービスが悪かったなど、リピートしない理由にも色々と考えられますが、意外に多い理由としては、そのお店を忘れているというものがあります。
何か具体的な不満があってリピートしないというのではなく、お店の存在を忘れているため、そもそも行きたいお店の候補に挙がっていないというのが相当数に上るのです。つまり、リピーターを増やすための第一歩とは、「忘れられないようにする」あるいは「忘れているなら、思い出してもらう」ことなのです。
リピーターになってもらうための次なる一歩
したがって、リピートしてもらうためには、「忘れられない内に再度来店してもらうため」の対策が必要であり、「忘れてしまった人には、思い出してもらうため」の対策が必要ということになります。これが最初の一歩です。
それができたら、次の段階として、「自分のお店に来てもらう価値」を考える必要があります。お店を思い出してもらえたとしても、「もう一度行きたい」と思わせる要素がなければ、再来店には繋がりません。商品やサービスの質や価格、お店の雰囲気など、他店に負けないものを何か用意する必要があります。
リピーターを増やす対策を考える準備
リピーターを増やすための対策を具体的に考える前に、その前段階として必要な準備があります。ここでは、その準備について解説します。
ターゲットを絞り込む
リピーターを増やすための対策は、一度でもお店に来たことがあるお客様を対象にすることになります。ただ、そのお客様の中には色々な人がいますから、リピーターになってくれそうなお客様に絞って対策を行った方が効率的です。具体的な対策を検討する前に、来店頻度や購入価格などから対象となるお客様の絞込みを行いましょう。
お客様の意見を汲み取る
もう一つの準備は、お客様の意見を汲み取ることです。現状のお客様の不満点などを伺って、対策を検討する際の基礎資料とします。
具体的には、アンケートをとったり、過去のクレームを分析したりして、お客様の意見を知る努力をしましょう。アンケートは、単に書いて欲しいとお願いしただけでは、あまり数が集まらないことも多いので、アンケートを提出してくれたお客様には次回仕える割引券を進呈するといった方法も検討しましょう。
注意点としては、お客様の意見は大事にすべきですが、それに振り回され過ぎるのも良くないということです。数人のお客様の意見に従って、お店の個性を失わせるような変更をすれば、他のお客様が離れてしまう危険があります。お店の個性を保った上で、応えることができる要望に応えていくという姿勢が求められます。
リピーターを増やすための具体的な対策
ここからは、リピーターを増やすための対策の具体例をご紹介します。お店によって、採用しやすいものと、採用が難しいものがありますから、全てを採用する必要はありません。ただ、以下に挙げる対策はいずれもリピーターを増やす効果が期待できるものなので、できるものから導入していってください。
提供する商品やサービスを見直す
まずは販売している商品や提供しているサービスが、価格以上のものになっているか検討を行いましょう。リピーターとなってもらうためには、価格以上の商品・サービスを提供するよう努めることが必要です。価格の何倍もの価値がある商品やサービスが得られるのであれば、お客様は何度でも来店してくれます。
また、競合店との関係で、商品やサービスが他店に負けないものになっているかの見直しも合わせて行いましょう。他店に勝るものを提供しなければ、リピーターにはなってもらえません。自店独自の魅力に磨きをかけましょう。
見直しを行う際には、お客様から回収したアンケートなどを基にして、お客様のニーズと提供している商品やサービスが一致しているかを検討し直すことも必要になります。
商品やサービスのアピール方法も考える
商品やサービスを見直したとしても、商品やサービスそのものの変更はすぐにできない場合もあります。
このような場合は、商品やサービス自体を変えなくても、アピールの仕方を変えるだけで商品やサービスの魅力が伝わりやすくなります。
お店で扱っている商品やサービスに独自のこだわりがある場合は、それを積極的にお客様にアピールしていきましょう。
「一度食べてもらえれば、違いが分かる」、「手に取ってもらえれば、商品の良さが伝わるはず」そんなことを思っている人もいるかもしれませんが、食べてもらう、手に取ってもらうためには、アピールの仕方を工夫する必要があるのです。
例えば、商品やサービスに対するこだわりを、小冊子にして来店したお客様に持ち帰ってもらうようにすれば、それを読んだお客様に、また利用しようという気持ちになってもらえるでしょう。
会員証やスタンプカードを配布する
会員証やスタンプカードといった形で、繰り返し来店したことが分かる仕掛けをしておくと、お客様に愛着を感じてもらいやすくなります。
来店回数や購入金額に応じて会員ランクが上がるとか、スタンプカードにスタンプを集めることで特別なサービスが受けられるとか、繰り返し来店することに喜びを感じられる仕組みがあれば、自然とリピートしてくれるお客様は増えます。
友達紹介特典も効果的
来店していただいたお客様には、お店の良い評判を広めて欲しいものです。ネット上には口コミサイトなどもありますが、サクラによる書き込みがあったりして、あまり信憑性は高くありません。この点、直接の知り合いから勧められたのであれば、信憑性はかなり高くなります。
ただ、紹介する側にもメリットがあった方が、お友達をお店に連れてきてもらえる確率は上がります。例えば、お友達と同時に来店すると○%オフといった形にすれば、リピーターと新規顧客を同時に確保できたことになります。
リピーターになると参加できるイベント等を設ける
リピーターになることの特別感の演出をすることも効果的です。例えば、デパートなどでは、会員だけが入れる特別優待の日があったりします。
人は誰でも自分が特別扱いされることは嬉しいものです。リピーターだけが入れるイベントを設けるというのは、その一例です。
情報発信手段を効果的に活用する
インターネットが普及して、お店からの情報発信が容易に行えるようになりました。ブログやSNSなど利用できる手段は積極的に利用していきましょう。お客様に登録をしてもらえるなら、メルマガを利用する方法もあります。
ただ、セールスばかりを行っていると、むしろ嫌われてマイナス効果を生じることもあるので、読者にとって有益な情報を提供することを中心に考えてください。お客様とのコミュニケーション手段ともなり得るものなので、自分の日ごろの生活のことや趣味のことなどを載せてみるのもいいでしょう。
ただ、お客様の層によっては、会誌・会報のようなものを郵送でお送りした方が効果的な場合もあります。お客様に応じて、情報発信手段は変えてください。
特別感を演出できる仕掛けを考える
先ほど「リピーターになると参加できるイベント」について書きましたが、リピーターであることによって特別感を得られる演出は他にも考えられます。
例えば、飲食関係のお店なら、新メニューの試食会を行うのもいいでしょう。正式メニューに採用する前に常連さんの意見を聞けることになるので、お店の側にもメリットがあります。
もっと身近なものとしては、リピーターになると注文できる裏メニューといったものも考えられます。ただし、この手の特別扱いは、やり方を間違えると、リピーター以外のお客様を差別しているように受け取られかねないので注意が必要です。
ECサイトでリピート率を伸ばす方法は下記の記事でも詳しく解説されています。あわせてご確認ください。
参考:【超重要】ECサイトでリピート率を伸ばす方法とは?計算方法や平均リピート率も解説 | QUERYY(クエリー)
リピーターを増やす対策の業種別チェックポイント
この記事の最後は、リピーターを増やすための対策を業種別に解説します。採り上げる業種は、飲食業と宿泊業です。ただ、他の業種の場合も参考になる要素は含まれていますので、最後までお読みください。
飲食業の場合のチェックポイント
まずは何よりも料理の味が重要です。当たり前のことですが、不味い料理を食べるためにリピートするお客様はいません。ただし、材料費をいくらかけても美味しい料理を追求すればいいというわけではありません。値段とのバランスで、最大限美味しい料理が提供できるように努力しましょう。
また、料理の味は万人受けすればいいというものでもありません。無難な味の料理は、また食べたいとは思いません。多少好き嫌いはあるかもしれなくても、印象に残る味を目指すべきです。
そして、料理を提供するまでの時間も大事です。必要以上に待たされるお店は敬遠されます。
お店の全体的な雰囲気は、どんなお客様を集めたいかで変わります。やたらとオシャレな店でかえって入りにくいということもあり得ます。客層に合った雰囲気作りを心がけましょう。
これらの要素に問題がないことを前提として、リピーターになってもらうためには、定期的に通いたくなる仕掛けを考えるとよいでしょう。「毎月、○日と○日は、サービスデー」といった形にしておくと、その日にお店にことを思い出してもらうきっかけになります。
また、季節限定メニューなどの形で、新メニューを定期的に導入すると、一度は食べてみたいという気持ちになるので、足を運んでもらえます。
宿泊業の場合のチェックポイント
宿泊業の場合は、何よりも快適な空間作りができているかをチェックしましょう。業態によっては寝る場所を提供できれば最低限OKという場合もあるでしょうが、この場合でも、快適に過ごすことができたか否かが、リピートしてもらうためにはポイントになります。
観光地のホテルや旅館の場合は、宿泊していただいた後のフォローが重要になります。ご利用いただいた後にお礼のメールや手紙を送ったりして、お客様の印象に長く残ることがリピートしていただくことに繋がります。
観光シーズンの前にも、ご利用をお誘いするご案内を差し上げると効果的です。ホテルや旅館の利用頻度はあまり高くないのが普通ですから、何も対策をしないと忘れられてしまいます。お客様に覚えておいていただく、思い出していただくための対策を検討しましょう。
まとめ
リピーターの増やし方について解説してきました。この記事の最初の方でも書いたように、リピーターを増やすことによって、新規顧客を開拓するよりも低コストで売上をアップさせることができます。
新規の顧客開拓も重要であることは間違いありませんが、リピーターが増えることで、お店の経営は安定し、長期的なスパンで経営方針を考えることもできるようになります。この記事を読んだ方は、リピーター獲得のための対策の検討を、是非始めてください。