輸入貿易の基本!フリータイムとデマレージの違いと注意事項

島国である日本は、輸出入の99%(重量ベース)を海上輸送に頼っています。よって輸入者は、船を経由して陸揚げした貨物をいかに段取りよく自分たちやクライアントの倉庫に運び込むかがとても重要な業務になります。そこで覚えておきたいのが、「フリータイム」と「デマレージ」です。

港には日々多くの貨物船が到着するので、放っておくとあっという間にコンテナで溢れかえってしまいます。これを回避し、適切な輸入業務の運営に必要なのがフリータイムやデマレージ、またディテンションというルールです。これを知らないと、驚くほど多額の費用を支払うことにもなりかねません。

そこで今回は、これから輸入貿易を始めようとしている方向けにフリータイムやデマレージ、ディテンションの意味や注意事項について解説します。ぜひ参考にしてください。

目次

フリータイム・デマレージ・ディテンションとは

まずは「フリータイム」「デマレージ」「ディテンション」の意味とその計算方法について基本的なことを解説していきます。

フリータイム(無料保管期間)とは

通常、輸入船で港に届いた貨物はコンテナヤードに陸揚げして保管されます。輸入者がすぐに引き取るのが理想ですが、通関業務やトラックの手配などによりどうしても一定の時間を要します。そこでフリータイム(無料保管期間)を設け、一定の期間は無料で保管されるようになっています。フリータイムの期間は使うコンテナの種類や船会社、フォワーダーによって異なり、その期間を超過すると課金されます。

デマレージ(超過保管料)とは

フリータイムを超過した場合に課金されるのが、デマレージ(超過保管料)です。港には毎日のように続々と輸入船が到着し、ひっきりなしにコンテナが陸揚げされます。そのため、貨物の受け渡しをスムーズに行ってコンテナヤードのスペースを確保しないと、港は多くの貨物でパンクしてしまいます。そこでコンテナのピックアップが遅い輸入者には、デマレージが課されるのです。

デマレージには、ペナルティーの意味が込められています。日数が経過するほど累進的に金額が増えていくので、十分な注意が必要です。

ディテンション(返却延滞料)とは

通常、陸揚げされたコンテナは納入先に運搬されて中身の受け渡しが済むと、コンテナ保管場(Van Pool)に返却されます。しかし、諸般の事情で返却が遅れることがあり、フリータイムを超過した場合はその日数分だけ延滞料が課金されます。これがディテンションです。ディテンションも先ほどのデマレージ同様、コンテナ回収を遅らせたことへの罰則という意味合いから、日数の経過とともに累進的に増加していきます。

フリータイム・デマレージ・ディテンションの計算法

フリータイムとデマレージ、ディテンションの額は法で規定されていません。よって、船会社やフォワーダーによって額が異なります。輸入貿易というと、つい輸入品の代金と海上運賃に目が行きますが、フリータイムの期間やデマレージとディテンションの金額についても考慮しなければ大きな誤算が生じるリスクがあります。そこで、それぞれの日数の計算ルールを確認しておきましょう。

・フリータイムのカウント法
フリータイムは、「コンテナ搬入日の翌日の0時」からカウントされます。ここで注意すべきは「搬入日」の意味です。搬入日とは、輸入船の「入港日の翌日」のことです。つまり、フリータイムは入港日の翌々日の0時からカウントされるということです。さらに土日祝日はカウントされません。

・デマレージのカウント法
デマレージは、「フリータイムを過ぎた1日目」から課金され、土日祝日も含まれます。土日祝日の扱いがフリータイムとは異なる点に注意が必要です。

・ディテンションのカウント法
ディテンションは、「フリータイムを過ぎた1日目」から課金され、デマレージと同じく土日祝日も含まれます。

フリータイムを有効活用しよう

自分が輸入当事者であれば、フリータイムが何月何日までかを明確に把握する必要があります。そして、フリータイムを上手く活用して余分な経費がかからないように、搬出から輸送、コンテナの返却までの段取りを明確に決めておかなければなりません。

フリータイムの確認方法

それでは、フリータイムの期限を知るにはどのようにすれば良いのでしょうか。

フリータイムの確認作業は、アライバルノーティスの受け取りから始まります。アライバルノーティスは、船会社やその代理店によって発行される「輸入者に船の到着日を知らせる」重要書類です。輸入者はアライバルノーティスを受け取ることで、自分の貨物を積んだ船の入港日を把握します。その入港日の翌々日の0時からフリータイムがスタートします。

アライバルノーティスには運賃請求の役割も

ちなみにアライバルノーティスは、入港日の通知以外に海上運賃請求の役割もともないます。運賃は輸出者が負担するように思うかもしれませんが、輸入者にも負担義務はあります。アライバルノーティスに記載されている額を速やかに支払いましょう。でなければ、コンテナが陸揚げされても正式な輸入が許可されません。

適切な日程調整を

アライバルノーティスを受け取ったらすぐに行うことがもう一つあります。それは、フォワーダーに知らせて通関業務の準備を依頼することです。

通関業務に手間取ることは日常的によくあることです。だからこそ、一刻も早くフォワーダーに通知して準備にかかってもらう必要があります。通関が済まなければ輸入許可は下りず、フリータイムの期限は確実に減っていきます。そしてフリータイムを超過すれば、デマレージの支払い義務が発生するので大きな損失につながってしまいます。

さらに正式に輸入許可が出れば、すぐにコンテナを輸送できるように手はずを整える必要もあります。トラック・電車の日程や時刻、また輸送先の倉庫の空きスペースや受け取り準備は問題ないかといったことをしっかりと打ち合わせしておきましょう。このプロセスが上手くいかず、コンテナをフリータイム内に返却できなければ、次はディテンションの支払い義務が生じ、さらに大幅なコストがかかってしまいます。

フリータイムに関わる注意事項

頭の中では輸送計画ができていても、思わぬ落とし穴が隠れていることがあります。考えられるトラブルをあらかじめ認識しておくことで、回避できる問題もあります。フリータイム期間やその前後で考えられる問題点を整理しておきましょう。

初心者におすすめなのはフリータイムが長い業者

輸入貿易が初めてという方にとっては、本当にすべてが上手く行くのか不安がぬぐえないかもしれません。とくに事前の申請書類の不備があれば、たちまち輸入手続きはストップしてしまいます。それまでの段取りを船会社や代理店、フォワーダーの担当者らとよく打ち合わせしておきましょう。

とくにフリータイムについては、できるだけ長い業者を選ぶのがおすすめです。短ければ2日というところもありますが、ビギナーにはハードルが高いでしょう。また、冷蔵・冷凍食品、危険品の場合はとくにフリータイムが短くなるので、重ねて注意が必要です。

船荷証券(B/L)の記載ミス

先ほどのアライバルノーティスも重要ですが、さらに重要度の高い書類が「船荷証券(B/L)」です。これは、「輸送者が荷主から確かに貨物を預かったこと」を証明するもので、船会社が交付する有価証券の一種です。裏書すれば、第三者への譲渡も可能です。この船荷証券の記載内容にミスがあると、絶対に輸入はできません。

たとえ船荷証券が修正できても船会社側のマニュフェストが未修正である、など一つでも不備があれば手続きは進まないため、フリータイムは長いに越したことはないでしょう。

配送先との日程調整

コンテナの入港後、コンテナの返却日まで自分サイドで計画を立てていても、トラックや電車など輸送手段の手配が予定通り進まないことがあります。また、輸送先の倉庫でも天候不順や業者間のトラブルで、搬出するはずの荷物が残るなどして保管スペースが確保できないケースもありえます。

もちろん問題解決に全力を尽くすのは当然ですが、それでも予定通り搬出できない場合はフリータイムを有効活用してコンテナを一時保管しておく方法もあります。

長期休暇後は要注意

ゴールデンウィークなどの長期休暇後は要注意です。暦の上では休みでも船は関係なしに入港してくるため、通常のように処理されないコンテナがどんどん溜ってしまうからです。

代理店やフォワーダーは休暇後に溜った書類を一気に処理するため、混乱が生じてミスが頻発するリスクもあります。また、長期休暇後はトラック需要が高まるため、まとまった台数を確保するのが難しくなります。とくにフリータイムが短い冷蔵コンテナや危険品の場合は、早めに手配しておくなどの対策が必要でしょう。

フリータイムはどれくらいが相場?

では、フリータイムは一体どれくらいの日数が相場なのかを具体的に見ていきましょう。

フリータイムは5日が相場

この表からも分かるように、フリータイムの相場は5日程度です。短ければ2日、長ければ8日というケースもあります。これは船会社やフォワーダーによって異なりますし、コンテナの大きさにもよります。

フリータイムの起算日

フリータイムの起算日についてはすでに解説しましたが、今一度確認しておきましょう。フリータイムの起算日は、搬入日の翌日の0時でした。

しかし、厳密にいうと、この「搬入日」は「コンテナ」とコンテナ未満の「LCL」で異なります。コンテナの場合、搬入日は入港日の翌日です。一方、LCLの搬入日は入港日の翌々日になります。よって、LCLで輸入する場合、フリータイムの起算日はコンテナに比べて1日遅れることになります。

コンテナ(FCL)の場合

参考までにコンテナとFCLの搬入日とフリータイム起算日を図示しておきます。

LCLの場合

LCLの場合は以下のようになります。

フリータイムの延長法やデマレージの回避法

フリータイムは1日でも長い方が良いですし、デマレージはできれば避けたいものです。そのためのコツをご紹介しましょう。

フリータイムの延長法

フリータイムは、船会社やフォワーダーによって料金設定が決まっています。しかし、そこは商売です。交渉によっては、フリータイムを延長してもらえることもあります。

その際のポイントは海上運賃との調整です。海上運賃が安いとフリータイムが短く、海上運賃が高いとフリータイムが長くなるという考え方があります。必ずしもすべての場合に通じるものではありませんが、運賃を多めに払えばフリータイムの延長が可能になるかもしれないので、交渉の余地はあるでしょう。

ただしその際には、デマレージとディテンションの額も調べて、本当に運賃を高めにしてフリータイムを伸ばすメリットがあるかをよく検討してください。

デマレージの回避法

フリータイムが延長できない場合に、デマレージを回避する方法もあります。それは、保税運送により保税蔵置場に保管を依頼するというやり方です。これには税関の許可が必要ですが、認められれば一定期間保管してもらえます。

ただし、無料ではありません。保税蔵置場の料金は、1件につき定額750円+重量比例料金1kg当たり7円の合計額です。デマレージと比べてどちらが得かを調べてから利用を検討しましょう。

危険品のフリータイム

火薬物や高圧ガス、引火性液体類など危険品の場合は、フリータイムが極端に短くなる(2日など)ことが多いです。そこで、運送業者に相談してあらかじめ危険品専用の倉庫を確保しておく方法もあります。その場合は、デマレージを支払うのとどちらが得か、見積もりをとるなどして検討しておきましょう。

デマレージはどれくらい高額か?

フリータイムを超過するとデマレージが請求されます。そして、その額は累進的に増加すると述べましたが、果たしてどれくらいになるのでしょうか。また、船会社からすればそうせざるを得ない事情もあるようです。最後にその背景についても触れておきましょう。

デマレージは値上げ傾向か

デマレージの額は船会社によって異なりますが、今回は大手船主の「ONE(Ocean Network Express)」を例にとってみましょう。

この表からも分かるように、ドライタイプのコンテナ(20フィート)で1〜4日目は4,000円が、5~9日になると12,000円、さらに10日以上になると20,000円になります。しかも、これは1日ごとの価格です。

よって9日目まで来た時点で、すでにコンテナ1本につき「76,000円」が請求されます。それ以降は、1日ごとに20,000円加算ですからかなりのコストになるでしょう。加えて、2021年4月1日にこの料金体系に値上げされたばかりです。新型コロナウイルスの流行が影響しているかは定かではありませんが、今後業界全体として値上げ傾向になるかは注視していく必要があるでしょう。

デマレージが高額な理由

デマレージのあまりの高額ぶりに驚いた方も多いかもしれません。しかし、もしこのペナルティーがなくフリータイムがいつまでも続けば、輸入者のなかには安穏としてコンテナの運送を遅らせる者も出てくるでしょう。

すると、コンテナの回転率は下がり、船会社の経営を圧迫する結果になりかねません。船会社もボランティアではないので、それなりに利益を確保する必要があります。そんな船会社の立場になれば、限られたスペースで効率よく事業を展開するべく、デマレージ額を高めに設定してリスク管理するのもやむを得ないといえるでしょう。

まとめ

海上輸入の際にとても重要なフリータイム、デマレージ、ディテンションなどについて詳しく解説しました。とくに海上貿易の場合は、輸入元の事情や天候などによって計画通りに行かないことが少なくありません。コンテナを陸揚げしてからもさまざまな手続きが控えているため、すべての業務が無事完了するまでは決して気を抜けません。

輸入貿易をスムーズに行うには、船会社や代理店、フォワーダー、税関、輸送業者など関係機関との連携も何より大切といえるでしょう。フリータイムやデマレージについてもしっかりと確認し、関係書類に不備がないように注意して万全の体制で臨む必要があります。繰り返し行っていけば、だんだん慣れてきてコツも必ずつかめてくるに違いありません。ぜひチャレンジしてみてください。

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この記事を監修した人

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