Amazonの独自指標「ACoS」のわかりやすい活用法教えます!

どんな商売でも、広告を出して商品の認知度を高めることは非常に大切です。しかし広告にはお金がかかりますし、とりわけWeb上ではその費用や効果がわかりにくいです。

Amazonでは、そのサポートとして、様々な細かい指標を自動で計算してくれますが、その中にAmazon独自の指標であるACoSがあります。この数字は利益を確保するという商売の最大の目的に対して、明瞭な回答を与えてくれるので非常に重宝します。

この記事ではACoSの意義、混同しやすい指標との違いを解説し、有益な活用法について掘り下げていきます。これからAmazon広告を始めてみたい人、広告費の圧迫に悩んでいる人はぜひ参考にしてください。

目次

ACoSとはどういう指標?

ACoSとは、大雑把に言えば、売上全体に対する広告費の割合のことです。利益率(粗利率)と照らし合わせることで、非常に簡単に該当の商品が儲かっているのかどうかを判別することができます。詳しく見ていきましょう。

ACoSとは何?

ACoSとはAdvertising Cost of Saleの略称です。Amazonのスポンサープロダクト広告をはじめとするすべての広告形態に対し、それぞれキャンペーンでの売上、またはブランド全体の売上に対する広告費の割合を一目で判断することが可能な指標です。日本語表記だと「売上高広告費比率」となり、Amazon独自のものです。

その数値は、広告費を売上で割って算出します。わかりやすく式にすると以下の通りです。

広告費 ÷ 売上 = ACoS

もう少し具体的な数字に落とし込んでみましょう。ある商品に3,000円の価格をつけて売り、広告費が600円かかったと仮定すると、

600円÷3,000円×100=20%

となるので、ACoSは20%です。広告費が分子、売上が分母です。この構成を覚えておいてください。

読み方は決まっていない

ちなみにこのACoS、Amazonの内部でも明確な読み方が決まっていないようです。

文章に落とし込めば共通理解が得られやすいですが、口頭で説明するときに、音だけで意味が通じるか怪しい指標になります。なので字面ではなく、上記の文字列の意味を正確に理解しておくように心がけましょう。

ACoSの値に関連する粗利率

次にACoSと関連性の深い粗利・粗利率について、簡単にですが説明しておきましょう。

まず粗利とは、売上から商品原価を差し引いた金額のことです。式にすると以下のようになります。

売上-商品原価=粗利

こちらも具体的な数字で見ていきましょう。ある商品を3,000円で売り、その原価が1,800円ならば、

3,000円-1,800円=1,200円

となり、1,200円の儲けが出たことがわかります。これが粗利です。

そしてこの粗利の数字をもとに、粗利率を計算していきます。粗利率は、売上に対する粗利の割合を示す数値なので、以下の計算式で算出することになります。

粗利÷売上=粗利率

数字を当てはめていきましょう。

1,200円÷3,000円=40%

粗利率は大雑把な計算方法で、諸経費諸々込みで考えるともう少し小さい数字になることが多いですが、ひとつの商品を売った場合にどのくらいの割合で儲かるのかを簡単に確認できます。そしてACoSとの関連性で言えば、どちらも分母が売上になっていることに注目してください。

どちらも分母が売上の計算式なので、それぞれのパーセンテージをわかりやすく比較できます。簡単にまとめれば、粗利率>ACoSなら儲かる粗利率=ACoSなら損はしない粗利率<ACoSなら赤字と、一目瞭然で判断することが出来るので、ACoSという指標は優れものなのです。

Amazonの広告の種類と費用

ここまででACoSの概要は掴んでいただけたでしょうか?続いて簡単にですが、Amazon広告の種類と仕組みについて説明します。

現在Amazonで導入されている広告は、スポンサープロダクト広告・スポンサーブランド広告・スポンサーディスプレイ広告の3種類です。どれも基本的にはクリック課金システムを採用しており、安価な予算からでも始められるのが魅力です。詳細は参考リンクをご覧ください。

ごく簡単に説明すると、検索キーワードに対する入札金額と、そのキーワードによって販売者の広告がクリックされた回数によって、広告費の総額が決まります。手動で細かく設定できますし、日ごと、月ごとの広告費用の上限設定などもできます。費用が定額ではなく、クリックされた回数によって増減するので、設定した予算をオーバーした場合は、基本的にその時点で一時的に広告がストップする形になります。

リンク内記事の説明によれば、広告の種類によってはACoSの反映に最大48時間かかるとされています。どちらにせよあまり即時的・短期的な数字で見ても意味はなく、1~2週間のスパンで見ていくことになります。というのもこのシステムにおける売上は、クリックされた時点から2週間近く経って、再度商品ページを来訪し成約した、という場合も含まれるからです。

皆さんも普段から、全ての買い物が即断即決、なんてことはないですよね?一度商品の概要を見て、類似品のページと比較検討して、さらに数日熟考してから購入、なんてのは普通にありますから、最初のクリックの時点から成約までの期間に幅を持たせているわけです。なので短期的に見るより、2週間程度のロングスパンで見る方が、ACoSの数値は低くなり、同時により正確になっていると理解しておきましょう

参考:広告キャンペーンによる売上

Amazon広告で表示されやすいポイント

Amazonのようなモール型のECショップで、多くのお客様に来訪していただくには、広告での集客対策は避けて通れません。とはいえ、無闇に広告を打っても成果につながるとは限らず、効率的で刺激的なアプローチが必要となります。

Amazonにおいて、競合他社より上位に自社商品を表示してもらうには、広告ランクのシステムを理解しなくてはいけません。ちなみに、広告ランクは入札額×関連性で評価されます。

入札額は、単純にいくら検索キーワードに高く入札したかになりますが、関連性は複雑な要素です。最も大切なのは商品に対して「ターゲット」が明確か、「選択キーワード」が適切かですが、商品ページの説明の充実度や洗練度、カスタマー満足度なども関わってくるようです。関連性の数値が高ければ、入札額で劣っても上位表示される可能性がグッと高くなります。

その具体的なやり方については後述しますが、ACoSと結びつけて考えると、効果的に広告を掲載することが、そのまま数値を低減させることに直結することは頭に入れておきたいですね。中々上位掲載されないからとムキになって入札額を釣り上げていっても、クリック単価が上がるだけで費用対効果は上がるとは限らないので、それを把握するためにもACoSの数値動向を定期的にチェックすることは大切です。

ACoSの活用法

ここまでで、粗利率とACoSを照らし合わせてざっくり赤字黒字を判断できること、そして適切な広告掲載が出来ているか判断できることを見てきました。

繰り返しますが、商売の目的は利益を出すことです。しかしその追求のやり方は様々です。大きく分ければ安定利益か、拡大志向かになるでしょう。

最終的な利益率が30%あっても、売上トータルが10万円なら、利益額は3万円に留まります。しかし利益率10%でも、売上トータルが100万円あれば、利益額は10万円になります。

ACoSは非常に有用なデータですが、用いる人の目的次第で価値や適切な活用法は変わります。その認識を前提として、ここからはより具体的なACoSの利用法を掘り下げていきましょう。

ACoSの数値設定の万能な最適解は…ありません!

上ですでに結論めいたことを述べていますが、ACoSの適性値はケースバイケースです。とはいえそれで終わらせてしまっては指針になりませんので、ある程度条件付けをしながら考えていきましょう。

絶対の正解はないものの、20%前後が妥当なラインです

扱う商品の原価次第で変わってきますが、複数の商品を販売する場合は、トータルで見て20%前後にACoSの値が収められていれば、健全に運営できていると考えられます。

適切に広告を打っても商材そのものに訴求力がなければ売上を上げるのは厳しいので、それを見極めるうえでもACoSの値には注意を払いたいですね。

ACoSが低くなりすぎるのも考えもの

といってACoSの値が低すぎる状態で運営を続けるのも、販促力という観点からは問題があります。

仮に自分のブランドという、認知度が低く汎用性のないキーワードのみで広告配信していれば、本当にピンポイントでその商品を求めている人しか辿り着いてくれないので、純粋な利益額は中々増えていかないでしょう。広告予算を惜しんでいては、売上はいずれ頭打ちになります。

新規顧客を取り込むために、ブランドワードのみで入札していた状況でのACoSの値よりも目標水準を上げていきましょう。適度に競争力のある適切なキーワード入札を繰り返し、少しずつ商圏を拡大していきながら、ACoSの値が一気に増大し過ぎないように上手くバランスを取っていくことが大切です。

販売目標に合わせてACoSを設定しよう!

上でも触れたように、ACoSのデータの有効な扱い方は、最終的な販売目標によって少しずつ変わってきます。どんな商売でも、明確な最終目標がないものは失敗に終わる可能性が高いです。まずは最終目標をしっかり定めたうえで、いくつかのパターンにおける適切なACoS設定とその考え方を見ていきましょう。

ケースA:確実に利益を確保したい

最初は確実に利益が得られる範囲で広告を出すパターンです。単純に粗利率よりも低いラインでACoSの上限設定をすれば概ね問題ありません。

このパターンは、仕入れの数が限られていて、あまり商圏を広げるつもりがなかったり、限定品の売り切りを狙ったりする場合に有効です。堅実ではありますが、もしも商圏の拡大を狙っているのであれば、やや迂遠な方法になるでしょう。

(例)商品の利益率が50%なら、ACoS値を30%前後に調整する

首尾よく仕入れた商品が売り切れれば、確実に高利益率を確保できます。

ケースB:販売数を増やしたいが、損は出したくない

こちらはある程度商品とブランドの認知度を上げていくために、損が出ないぎりぎりのラインまで広告費を投入していくやり方です。

この方が売上高の増加が見込めますし、商品の回転率も良くなるでしょうが、いずれかのタイミングでACoSの設定を下げる必要が生じます。商材にが訴求力があるが仕入れが安定しないといった販促リスクの大きい場面で有効に働くでしょう。

(例)商品の利益率が50%なら、ACoSの最大値も50%に設定する

ある程度継続販売を前提にすると、目標より売れた数が多ければ黒字化の道が見えてきます。期間内での目標数を下回ってしまう場合は、広告費の削減を含めて、売り方をより工夫していく必要があります。

ケースC:損が出ても、長期的視野で認知度アップを優先する

長期的に大規模展開を目論んでいて、とにかく最初はインプレッションとクリック数を稼いで商品の露出を優先したい場合は、初期投資として赤字になっても広告費を注ぎ込むのが有効です。

とはいえ予算額はしっかり設定することと、その成果としての最終目標は決めておきましょう。そこが曖昧だとズルズルと無駄撃ちを続ける羽目になります。いずれにせよ、バランス感覚が問われます。ACoSの数値でも、一定のラインを超えないように、絶対防衛線は用意しておきたいところです。

(例)商品の利益率が50%でも、ACoSの50%以内への調整より認知度の拡大を優先する

ACoSを低く抑えるための取り組み

ACoSは広告のクリック率やそこからの成約率、トータルの売上をもとにフィードバックされるデータなので、下地のないスタート地点では、まずは手探りでも自身の目標ラインを定めて踏み出してみるしかありません。その上で、それぞれのスタンスと利益率の中で、適切なACoSの値を探っていくことになります。

この項ではその際に有効な、基本的なACoSの値を下げる方法をご紹介します。

商品ページを最適化して成約率を上げる

実店舗で言えば広告は門構えです。見た目が立派だととりあえず入ってみようか、という気持ちにはなりますが、実際に中を覗いて期待外れだったらどうでしょう?対人店だと、さすがに一度ドアを開けてすぐに踵を返すのは気まずいかもしれませんが、Webの場合はクリックひとつで気軽に離脱されてしまいます。

そのためには、期待を裏切らない、魅力的で適切な商品ページの構築が不可欠です。簡潔で見やすいデザイン、わかりやすく、けれど絶妙に心をくすぐる情報を充実させれば、商品の成約率は高まり、結果としてACoSを押し下げることに繋がります。

ページの最適化とは、具体的には、内容を具体的にする、立体的な写真を使う、情報を整理する、適切なキーワードを設定することです。絶対の正解はないですが、AmazonSEOにおいて上位評価されるために、常に売上動向を踏まえて、ブラッシュアップを図っていく姿勢が大切です。

また一部利用規約で禁止されている文言もありますので、そのあたりもしっかり注意を払っておきましょう。顔が見えないWeb上の商売だからこそ、信頼を裏切らないことはより重要です。

参考:禁止されている商品広告・禁止文言

入札キーワードのクリック単価を意識する

ひとつの商品を売り込むに際しては、複数のキーワードから広告ページに繋がるように設定するのが一般的ですが、一定の販売期間を経てACoSなどのフィードバックを得た上で、個々のキーワードに対する注力比率を最適化することで、効果的にACoSの値を下げることができます。

過去の実績で成約率の高いキーワードに多くの予算を設定して、逆にACoSの値が高いキーワードへの入札を停止したり、除外対象にしたりするのが有効な対処法です。その結果として、購入意欲の低い相手のクリック率を下げ、トータルでの成約率・成約数を高めることが可能になります。クリック数の割に成約率が低いと感じたら、キーワードを見直していくとよいでしょう。

ACoSとROASの違い

最後に、よく混同されがちなACoSとROASの違いについて見ていきましょう。

大きな違いとしては、ACoSがAmazon独自の指標であるのに対し、ROASは一般的な指標となっています。Amazonのパフォーマンス指標の中にもROASは組み込まれていますが、こちらではACoSと区別するため、数値をパーセンテージではなく、乗数で表しています。

一般的な場面でのROASはパーセンテージ表記になるので、そこは間違えないよう注意してください。

ROASとはどんな指標?

ROASはReturn on Advertising Spreadの略です。広告費に対してどのくらい売上を増やすことが出来たかを測定する指標になります。具体的には、広告費1円に対していくら売上を計上できたかの割合です。

ROASは売上÷広告費で計算されますが、これはACoSの逆数となります。なので当てはめる数字は一緒なのですが、分子と分母が入れ替わることで、計算された数字に対する読み取り方と用い方に多少の差異があります。

ふたつの違いと使い分けのメリット

ACoSの最大のメリットは、粗利率と照らし合わせることで直観的に利益が出るか否かを判別できる点にあります。なのでどちらかというと、販売を開始する前の段階、すなわち事前計画として用いるケースで有効活用できます。

ROASの場合、シンプルに読み取れるのは、広告費1円に対していくらの売上成果を達成できたかです。そのため、事業全体の成果を測定・総括する際に利便性が高い指標と言えます。

どちらも広告費の効果や成果を読み解く点では重要な指標になります。

まとめ

この記事をざっくりまとめると、こんな感じです。

・ACoSは粗利率との比較で使いやすい指標
・販売目的に応じて適切な設定率を考えていくことが重要
・商品ページの最適化が出来ているかのリトマス試験紙にもなる

Webマーケットでの販促活動には独特の難しさがありますが、AmazonにおいてはACoSに対する理解を深めることで、より効率的で適切な運営が可能になるでしょう。この記事が少しでも、そのための助けとなれば幸いです。

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この記事を監修した人

ビジネスのノウハウを実践ベースで徹底的に追求するのがアクシグ。
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