輸入ビジネスには商品代金や送料の他にも、税金や保険料などの各種諸掛がかかります。今回は、輸入にかかる諸掛の項目と、仕訳方法を解説します。
輸入諸掛りについて知る前に、そもそも諸掛りとは何?
諸掛り「しょがかり」と読み、2つの種類があります。(英語表記はFreightage related expenses)2つの種類の使い分けは自社負担か?取引先の負担か?によって仕訳方法が異なり、諸掛りを扱う上で【その費用を誰が負担するか?】が重要なポイントになってきます。
2つの種類のうち、ひとつは仕入時の費用に使用する【仕入諸掛り】、そしてもうひとつは商品販売時の費用に使用する【売上諸掛り】です。ここで指す費用は、商品の仕入れや売り上げ時に係る運送費用や送料のことを指します。
仕入諸掛り
仕入諸掛りは、負担を自社がするのか?取引先がするのか?で使用する勘定科目(会社を出入りする現金につけられた見出しのようなもの)が変わります。
負担が自社の場合(当方負担)は、新たに仕入諸掛費の勘定を作成し、独立した費用の勘定とする。
または、仕入勘定に算入した仕入原価を含めて記帳します。
負担が取引先の場合(先方負担)は、後日取引先に請求するか、立替分を買掛金と相殺して買掛金の科目から控除します。
ただし、経費を一時的に自社が負担し勘定科目に立替金を使用し、仕入諸掛りを取引先が負担する約束をした場合に限ります。
商品の仕入や、材料購入の際の輸送に関わる運送費・包装費などを処理するための勘定科目である仕入諸掛りですが、商品購入に付随して発生する費用や海外から輸入した場合の関税・保険料なども仕入諸掛りとして扱うことができます。
売上諸掛り
売上諸掛りも負担を自社がするのか?取引先がするのか?で使用する勘定科目が変わります。
負担が自社の場合は、売上高での相殺はできませんが、発送費や荷造り費などの勘定科目で処理することができます。
負担が取引先の場合は、立替金の勘定科目を使用し後日取引先に請求、または立替金を売掛金と合算して請求することができます。
しかし、これも仕入諸掛りと同様に売上諸掛りを取引先が負担する約束をしたうえで、経費を一時的に自社が負担した場合に限ります。
売上諸掛りは、商品を販売した際に発生する運送費や包装費などを処理する勘定科目ですが、使用する勘定科目は仕入諸掛りと同様に自社・取引先のどちらが負担をするかによって決定されます。
輸入にかかる費用・輸入諸掛りとは?
輸入にかかる基本的な費用は9項目あります。
輸入にかかる費用・輸入諸掛り(1)商品代金
まずは輸入する商品の代金です。
(2)国際輸送料
船や航空機で国際輸送するための送料や作業料金もかかります。
(3)保険料
国際輸送はトラブルが多いため保険は必須です。
(4)国内送料
輸入した後の国内配送料も加味しなければいけません。
(5)通関手数料
通関手数料は、配送業者が代行してくれた通関作業に対する料金です。輸入における通関手数料の上限は法律で11,800円と定められていました。そのため、現在でも配送業者の通関手数料は大体11,800円です。
(6)関税
関税とは、安い海外製品が売れて国内製品が売れなくなることを防ぐために設定された「輸入品にかけられる税金」のことです。
関税は、輸入した商品代金と送料・保険料の合計額に対して課税されます。関税の計算方法は以下のとおりです。
関税=(商品代金+送料+保険料)×関税率
ただし、商売目的ではなく個人使用目的で輸入する場合は、商品代金の60%が課税価格となります。そのため、関税の計算式は以下のようになります。
関税=(商品代金×0.6)×関税率
関税率は品目ごとに異なります。詳細は税関のホームページで確認できます。関税率は毎月更新されています。
(7)消費税
また、輸入者には消費税も課せられます。
そもそも消費税とは、国内で商品・サービスを消費した際に消費者に課せられる税金です。本来は消費者一人一人が国に納付すべきものですが、手間を省くため、購入者が支払った消費税相当額を販売者が一時預かり、確定申告時にこれを一括して納付する仕組みとなっています。
しかし、海外から輸入する際は、仕入れ先に支払うのは商品代金のみで消費税は支払いません。そうなると、消費税がかからない分、国内から仕入れるより海外から仕入れる方が安くなる可能性があります。輸入した方が安いとなれば、国内から仕入れる業者が減り、国内産業が停滞する恐れがあります。このような不都合を避けるために、輸入者には輸入消費税が課せられています。
輸入消費税は「商品代金+送料+保険料」の合計価格の1,000円未満を切り捨てたものと、関税の100円未満を切り捨てた額の合計金額に対して課税されます。
輸入消費税率は、一般の消費税と同じです。
(8)税関検査代金
税関でX線検査などが必要な貨物を輸入する場合は、1~2万円程度の検査代金も負担しなければいけません。
(9)食品検疫関連費用
食品など人の口に入る可能性のある商品を輸入する場合は、食品検疫が必要になります。検疫には3~5万円程度の料金がかかります。
【輸入諸掛り内訳】費用の確認書類
輸入にかかる費用は、インボイスや通関業者の請求書で確認できます。
輸入諸掛
輸入にかかる各種経費の合計金額を輸入諸掛と言います。
輸入諸掛りで押さえておきたい船便の諸掛について
船便で輸入した場合は、上記の諸掛に加えて以下の費用がかかります。
THC
コンテナ1つを満たすほど大きな貨物をFCL貨物(Full Container Load)と言います。FCL貨物はコンテナヤード(CY)で貨物の受け渡しが行われますが、その際に「THC」という作業料金が発生します。
CFS Charge
コンテナ1個分に満たない小さい貨物をLCL貨物(Less than Container Load)と言います。LCL貨物はCFS(コンテナフレートステーション)で貨物の受け渡しが行われ、その際に発生する作業料金を「CFS Charge」と言います。
ECHC
コンテナを自分の倉庫に回収する場合は、回収作業料金「ECHC」が発生します。
D/O Fee
また、船会社に荷渡し指図書(D/O)を発行してもらうのにも「D/O Fee」という料金がかかります。
その他
その他にも、コンテナの返還が遅れた場合は返還遅延料、貨物の引き取りが遅れた場合は貨物留置料が発生します。
輸入諸掛の仕訳
輸入諸掛の勘定項目や仕分けのコツを解説します。
輸入諸掛りの勘定項目
商品代金・送料・保険料・関税・通関手数料などの勘定項目は、全て「仕入・仕入高」とするのが一般的です。
ただし、消費税だけは会計処理の仕方によって勘定項目が異なります。税抜処理をしている場合は「仮払消費税」、税込処理をしている場合は「仕入」とします。
輸入諸掛の計上時期
国内仕入れの場合は、商品を受け取った時点で仕入れとして計上するのが一般的です。
しかし、輸入仕入れの場合は貿易条件によって計上時期は異なります。一般的には相手国側で船積みが完了した時点を基準とするケースが多く見られます。
仕入諸掛を自社負担した場合の勘定方法
一般的には費用を決算時の仕入勘定に含ませたまま、振替処理を売上原価に行い、仕入の勘定科目で処理されています。
また、決算の際に未販売の商品にかかった仕入諸経費を繰延仕入諸経費に振り替えを行い、翌期の資産に繰り越す必要がありますが、仕入諸掛りの勘定科目で処理することもできます。
例(一般的な方法)
商品を¥500,000で取引先から仕入れ、運送費の¥5,000を自社負担として現金着払いで支払う。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | ¥505,000 | 買掛金 | ¥500,000 |
現金 | ¥5,000 |
例2(仕入諸掛りの勘定科目を使用した場合)
商品を¥500,000で取引先から仕入れ、運送費の¥5,000を自社負担として現金着払いで支払う。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | ¥500,000 | 買掛金 | ¥500,000 |
仕入諸掛費 | ¥5,000 | 現金 | ¥5,000 |
仕入諸掛を取引先負担にした場合の勘定方法
運送費を自社で立替え、取引先が最終的に負担する契約に該当するのが仕入諸掛りを取引先が負担する場合です。この場合は、買替金もしくは立替金の勘定科目で処理するのが一般的です。
例
商品を¥500,000で取引先から仕入れ、運送費の¥5,000を自社負担として現金着払いで支払う。立替えた¥5,000の運送費を買掛金と相殺する。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | ¥500,000 | 買掛金 | ¥500,000 |
買替金 | ¥5,000 | 現金 | ¥5,000 |
売上諸掛を自社負担した場合の勘定方法
売上諸掛りを自社負担する場合は、仕入諸掛りの自社負担の場合と違い、売上高とは分けて発送費の勘定科目で別で処理します。仕入諸掛りの仕入原価に加算する方法と混同しないように注意しましょう。
例
商品を¥500,000で取引先に掛け売り、運送費の¥5,000を現金で支払う。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | ¥500,000 | 売上 | ¥500,000 |
発送費 | ¥5,000 | 現金 | ¥5,000 |
売上諸掛を取引先負担にした場合の勘定方法
仕入諸掛りの取引先負担の場合と同様に、運送費を自社で立替え取引先が最終的に負担する契約に該当する場合ですが、売上諸掛りの場合は、売上金または立替金の勘定科目で処理します。取引先負担の場合、売上諸掛りと仕入諸掛りでは使用する勘定科目が異なってきます。
例
商品を¥500,000で取引先に掛け売り、運送費の¥5,000を現金で支払う。運送費の¥5,000は売掛金として処理する。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | ¥500,000 | 売上 | ¥500,000 |
売掛金(立替金) | ¥5,000 | 現金 | ¥5,000 |
輸入諸掛はたくさんある
輸入諸掛は意外とたくさんあります。輸入前に利益計算する際は注意してください。