お店やネットショップで仕入れた商品をネットで販売し、その利ざやを稼ぐせどり。売れればすぐに利益になるためチャレンジしている人も多いのではないでしょうか。
せどり初心者は基本的に新品を取り扱うことが多いですが、経験と実績を積むと商品の品揃えを増やしたい、安く仕入れたいなどの理由から中古品に目を向ける人も出てくるでしょう。
しかし、ここで注意してほしいのが、中古品を商品として取り扱うときは古物商としての営業許可を取得しないといけない点です。なぜ中古品に限って、このような規制があるのでしょうか。
この記事では「せどりで扱う品物の幅を広げたい」「自分でお店を開業したい」とお考えの方に向けて、以下の点について解説いたします。
- 古物商とはどんな職業なのか
- 許可証を取得するメリット・デメリット
- 許可証の取得方法
- 古物取扱いの心得
古物商許可は古物取扱いのプロとして、信頼を集めながら稼ぐ手助けをしてくれます。ぜひ最後までご覧になってください。
古物商とはどんな職業?
まずこの項目では、古物商とはそもそも何なのか解説していきます。古物商とは「古物営業法」という法律に従って許可を受けて、古物営業を営む人や企業を指します。古物営業法で言う「古物」とは、次のいずれかに該当するものです。
- 一度使用されたもの
- まだ使用されていないが、使用のために取引されたもの
2.はいわゆる「新古品」と呼ばれるものです。未開封・未使用の状態であっても、取引されたら法律上「古物」扱いとなります。
そして古物商が営む古物営業とは「古物の売買・交換、または委託を受けて売買・交換を行う」業態のことで、例として以下のものが該当します。
- リサイクルショップ
- 古本屋
- 古着屋
- 中古CD、DVD、ゲームソフト販売
- 金券ショップ
許可が取得できない9つの欠格要件(欠格事由)
古物商の許可は個人、法人問わず取得できますが、以下に挙げる要件に当てはまる場合は許可を取ることができません。
- 破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者
- 犯罪者
- 暴力団員、元暴力団員、暴力的な不法行為をするおそれのある者
- 住居が定まらない者
- 古物商許可を取り消されて5年を経過しない者
- 許可取り消しとなり、聴聞から処分決定までの間に返納してから5年を経過しない者
- 古物商または古物市場主の業務を適正に実施できない者として国家公安委員会規則で定めるもの
- 未成年者
- 管理者の業務を適正にできない者を管理者に選んでいる場合
詳細は各都道府県警察のホームページなどをご確認ください。
古物商許可証が必要か不要か判断する方法
古物商許可が必要か不要かの判断基準は、先に紹介した「古物商」に該当するかどうかになります。つまり、以下の両方に当てはまる場合は、許可が必要になります。
- 品物が「古物」
- 取引方法が「古物営業」
ただし、一度使用されたものや、使用目的で取引されたものであっても、すべて「古物」と扱われるとは限りません。
取り扱う品物が以下の品目に該当しなければ「古物」として扱われません。
- 美術品
- 衣服
- 時計・アクセサリー
- 車
- バイク(原付含む)
- 自転車
- 写真機
- 事務機器
- 機械工具
- 道具
- 皮革・ゴム製品
- 書籍
- 金券
こちらも詳細は各都道府県警察のホームページなどをご確認ください。
古物商許可証を取得する5つのメリット
この項目では、古物商許可を取得することによって得られる5つのメリットについてご紹介します。
古物市場での仕入れが可能
許可を取得するメリットの1つ目は、「専門の市場への立ち入りが可能になること」です。市場とは、古物商許可を取得している者だけが入れるプロの市場です。
リサイクルショップでは大量の商品を店頭に並べるために、古物を大量かつ安価で仕入れる必要があります。せどりの場合はライバルより売値を低く設定したいので、利益を出すためには安く仕入れるルートの確保は必須です。大量に安く仕入れができる古物市場への入場キップとなる古物商許可証は、手間とお金をかけても取得する価値があると言えます。
市場で不用品の売却も可能
古物商許可を取得するメリットの2つ目は、「古物市場を利用して不用品を売却処分できること」です。市場はあなたが売れないと見切った商品でも、他に必要とする業者が現れることを想定して買い取ってくれる可能性があるからです。
リサイクルショップは客のニーズに対応するため、さまざまなジャンルの商品を揃える必要があります。しかし、それは同時に不良在庫を抱えるリスクを背負うことにつながります。これは古物商を営むうえで避けられないことなので、あらかじめ不良在庫の処分ルートを確保しておくことが大事です。ここでも古物市場が役立ちます。
売れない商品を売却する場合、市場も不人気の品と分かって買い取りをします。そのため客への売値に比べて安く買い取られがちで、利益は見込めません。しかし、売却できる可能性はエンドユーザーに向けて販売するよりも高いので、売れないと判断した商品は積極的に売却して、売れる見込みがある商品で店頭を埋めるようにしましょう。
ビジネスチャンスの拡大
古物商の許可を取得するメリットの3つ目は、「ビジネスチャンスが拡大すること」です。古物商の許可を取得していないと、古物に該当する品目については新品しか取引ができません。もし取引をすると、罰則や行政上の処分の対象になります。
改めて先程ご紹介した13品目を見てみると、かなり広範囲の商品について中古品を扱うことができず、ビジネスとして考えると大きく損をしていると言えます。その点、古物商の許可を取得すれば、法的な規制に縛られずに多くの商品を取り扱うことが可能です。商品は多く取り扱えるに越したことはないので、申請費用は投資と割り切って許可を取得した方がより多くのビジネスチャンスに出会えるでしょう。
古物商としての信頼度が上がる
古物商の許可を取得するメリットの4つ目は、「古物商としての信頼度が上がること」です。
公的な許可を得ていたり、免許を持っていたりする人は、専門的な知識や技術などを習得している印象がありますよね。これは古物商でも言えることで、もしあなたが許可を得ていれば、一般客は「物の価値が分かる人」としてあなたを見ますから、買取・売却がスムーズに進むことが期待できます。
また、許可を得て営業をしていれば「まっとうな営業をしているお店とその主人」と判断され、銀行などから融資を受けたいという時にも有利に働くことがあります。
人からの信用はあってありすぎということはありません。許可ひとつ取るだけで専門家であることを印象づけられますので、早めに取得するのが得策でしょう。
節税効果がある
最後にご紹介するメリットは「節税効果」です。古物商の許可の有無によって、売上にかかる税金が違ってきます。
古物商の許可を取得しないで得られた売上は、「雑所得」として扱われるケースが多いです。一般的なせどりはこちらに該当します。
一方で古物商の許可を取得した場合は事業として認められるわけですから、売上は「事業所得」として扱われます。
雑所得は売上金額すべてが課税対象に、事業所得は(売上金額-仕入れ額)が課税対象になります。
ある商品を1,000円で仕入れ、10,000円で売れたとします。所得にかかる税率を10%とした場合、許可の有無による納税額の違いは以下の通りです。
雑所得の場合
全売上額に税金がかかるので、10,000円×10%=1,000円
事業所得の場合
売上金額ー仕入額に税金がかかるので、(10,000-1,000)×10%=900円
商売が繁盛して売上が増えるほど、納税額の差が顕著になります。節税は法律にもとづいて納税額を抑えるテクニックですから、活用しない手はありません。一生懸命稼いだお金を1円でも多く自分の手元に残すためにも、古物商の許可は取得することをおすすめします。
古物商許可証を取得する3つのデメリット
この項目では、古物商許可証を取得することによる3つのデメリットについてご紹介します。
すでに申し上げた許可証を取得するメリットの大きさを考えると大したことではないのですが、デメリットがあることもしっかり知っておくことが重要です。
申請手続きが複雑
申請に必要な書類には添付書類と申請用紙があり、種類や枚数がとても多いです。
詳細は後述しますが、個人ですべて行うことは不可能ではないものの、それなりの手間と時間を要します。
時間の確保が難しい、または自分で手続きするのが不安な方は、行政書士に相談するとよいでしょう。
取得に時間と費用がかかる
申請に必要な費用は概算で以下の通りです。
- 警察署で支払う申請手数料 19,000円
- 公的書類の取得費用(郵送で取得した場合の概算)
- 住民票 300円
- 身分証明書 300円
- 定額小為替発行手数料 300円(3枚分)
- 切手代(82円切手6枚) 492円
住民票、身分証明書に関する費用は地域によって異なる場合があります。法人の場合は他に法人登記簿の取得が必要で、600円程度かかります。また役員が複数いる場合は全員分の住民票と身分証明書が必要です。
古物取引の手間が増える
許可を取得するとさまざまな義務が課せられ、取引と記録の手間が増えます。
古物商の三大義務については後述いたします。
古物商許可証の取得方法を4STEPで解説
この項目では、古物商許可証の取得までの流れについて順を追って説明します。
条件を確認する
はじめに、以下に挙げる全員が前述の欠格要件に当てはまらないことを確認します。
- 申請者
- 管理者(申請時に決めるお店の店長となる人)
- 役員、監査役(法人の場合)
役員、監査役は複数人いるときは全員が対象となります。ひとりでも当てはまると不許可となります。また、個人で取得した許可証で法人として古物を取り扱うと、無許可営業で罰せられます。
事前に相談
欠格要件を確認したら、次は警察署に前もって相談します。所轄の警察署で、「古物の営業に必要な書類を揃えたい」と伝えましょう。
事前相談には以下の3つのメリットがあります。
相手からの印象が良くなる
事前に相談し、名乗っておくことで、申請時に「先日ご相談された○○さんですね」とスムーズに手続きに入れることが期待できます。
心の準備ができる
電話越しとはいえ、担当者と話をすることで、こちらの気持ちの準備がしやすくなります。
一度の申請で受理されやすくなる
事前に必要書類を確認しておけば書類不足で改めて警察署に出向くことがなくなります。記入漏れなどはその場で訂正できることもあるので、一度の申請で手続きが完了する可能性が高くなります。
また、事前相談をする場合は必ず担当者に直接相談してください。不在の場合、担当でない方が対応してくれるかもしれませんが、担当者以外の人だと申請手続きの内容を十分に把握していないことがあります。こちらとしては確実な回答をもらいたいので、担当者がいるときを聞いて改めて相談するのがよいです。
添付書類を揃える
警察署への事前相談が終わったら、申請時に添付する書類を集めます。必要な書類は次の通りです。
- 住民票(本籍地が記載されたもの)
- 身分証明書
- 略歴書
- 誓約書
ここで言う身分証明書は、免許証や保険証のことではありません。破産していないなど欠格要件に該当しないことを証明するもので、本籍地の市区町村役場で取得します。
略歴書、誓約書の様式は都道府県ごとに異なります。申請する都道府県の公安委員会のホームページから様式をダウンロードするなどして使用してください。
この4点は申請者、管理者、(法人申請の場合は)役員の人数分を用意します。ただし、申請者または法人役員が管理者を兼ねる場合でも、用意するのは各1通だけで大丈夫です。
また、法人の場合はさらに以下の書類が必要です。
- 定款(奥書きしたもの)
- 履歴事項全部証明書の写し
準備した添付書類は、発行日や作成日が申請日から3ヶ月以内のものに限ります。申請書類が用意できたら、早めに届出をしましょう。
申請書を作成する
古物商許可申請書は所轄の警察署まで取りに行くか、都道府県公安委員会のホームページより申請書をダウンロードして手に入れます。
もし、自分で申請手続きをするなら警察署に取りに行く方が効率的です。なぜなら、警察署に取りに行った時点で、以下の要件を満たすことができるので、準備から申請までの流れがスムーズになることが期待できるからです。
- 生活安全課防犯係の古物商担当者に直接会う
- 申請のアポを取る
- 注意点などを聞く
東京都で必要な書類は以下の通りです。
- 古物商許可申請書
- 送信元識別符号書
法人で申請するときは、さらに代表者等の届出が必要になります。
なお、用意する書類は自治体ごとに若干の違いがありますので、事前に確認をお願いします。
記入を終えたらコピーを取ります。提出する書類は原本とコピーのあわせて2部です。都道府県公安委員会によってはコピーの提出は省略できることがありますので、事前に確認しておきましょう。
さらに自分用にもコピーを取っておけば万全です。
書類を提出する
書類は担当者に渡したいので、あらかじめ所轄警察署の生活安全課防犯係にいる担当者に連絡し、予約を入れます。古物商許可申請の書類提出に行きたい旨を伝えれば、日程を決めてくれます。なお、申請書の受付は平日の日中に限られます。
申請に行くときは、以下の物を持って行きます。
- 古物商許可申請書類(原本・コピー)
- 添付書類(住民票、身分証明書など、申請日から3ヶ月以内のもの)
- 申請手数料 19,000円
- 申請に行く人の身分証(免許証や保険証など)
- 印鑑(記載ミスを指摘された際、訂正印として使用)
また、申請手数料は支払い後いかなる理由があっても返金されませんので、提出前にもう一度書類を確認してください。
古物商許可申請は、手続き後審査が完了するまで1ヶ月少々かかります。提出したら焦らず結果を待ちましょう。
許可証取得後に課せられる「古物商の三大義務」
古物商許可証を取得すると「古物商の三大義務」と呼ばれる義務が生じます。
本人確認義務
義務の一つ目は「本人確認義務」です。古物商は古物を買いとる場合、相手の本人確認をする義務を負います。
本人確認を徹底する目的は、盗品販売の抑止や盗品が発見された場合に売却した人の情報から犯人の特定につなげることです。
盗品の流通を防ぐために、古物商は売りに来た人の以下の4つの項目を確認しなければなりません。
- 氏名
- 住所
- 職業
- 年齢
古物台帳への記録義務
義務の二つ目は「古物台帳への記録義務」です。盗品捜査の情報を得るため、古物商は以下の4点をを記録し、3年間保存する義務を負います。
- 住所、氏名、年齢
- 取引内容
- 取引日
- 古物の概要
不正品申告義務
最後の義務は「申告義務」です。古物商は取引品に盗品の疑いがある場合、すぐに警察へ通報する義務を負います。これも目的は盗品の流通を防ぐためです。
通報を怠った場合、営業停止命令や許可の取り消し処分が科せられる可能性があります。また盗品と知ったうえで買い取った場合は、古物商も罪に問われることがあるので注意してください。
まとめ
古物商許可証を取得することで、国から「古物取り扱いのプロ」のお墨付きがもらえ、ビジネスチャンスが拡大するメリットは大きいです。申請も自分でできますので、ぜひチャレンジしてみてください。
そして、晴れて「古物取扱いのプロ」になったら、法令を遵守して健全な古物営業を行うよう心がけましょう。