くまポンなどのクーポンサイトを利用したことはありますか?
最近では一時期の勢いを失ってきているとはいえ、このようなクーポンサイトを利用すれば非常にお得に買い物ができるので、現在でも多くの方に利用されています。そして、それはクーポンを販売する側にとっても引き続き大きな需要があることを意味しています。
では今回はクーポンを販売する側の視点から、是非とも知っておきたいクーポンサイトの仕組みと、メリットやデメリットについてご説明したいと思います。
共同購入クーポンとは?
「共同購入クーポン」とは食用品などのモノや、宿泊・レジャーなどのサービスをインターネット等を通して事前に格安で購入してもらうタイプのクーポンです。
販売業者は短時間で大量のモノやサービスを販売する事ができるために、時には50%以上の割引をする事もありますが、購入する際にはもちろん最低購入数や購入可能数が決まっている場合が多いです。
2008年にアメリカでGroupon社がこのサービスを始め、日本では2010年からサービスが始まり急成長しました。
しかし、そのすぐ後2011年明けにグルーポン・ジャパンを通して販売されたおせち料理が商品見本と違いすぎた事がニュースでも大きく取り上げられ、またそれを機にクーポンに関わる様々なトラブルが相次いで発覚したために、現在では「共同購入クーポン」の市場の成長は止まっています。
しかし、このサービスの基になっている「フラッシュマーケティング」というWebマーケティング手法は現在でも幅広い業界で有効に活用されています。ですから「共同購入クーポン」についても、良く理解して正しく使用すればお店側にもお客様の側にも引き続き大きなメリットがあるサービスだと言うことができます。
共同購入クーポンがもたらす効果とは?
ではこの共同購入クーポンはそもそもどのような目的で考えられたのでしょうか?その答えはずばり「マーケティング」です。
「マーケティング」とは企業などが顧客のニーズを知り、求められる商品やサービスを作り、顧客がその価値を効果的に得られるようにする活動のことを指します。
ですから企業やお店が共同購入クーポンを利用する時に期待する主な効果は新規顧客が開拓される事であり、その顧客が引き続き何度も商品やサービスを利用してくれることによって販売が増えることにあります。
その他に期待される効果として、クーポンによる値下げで一時的に競合他社との競争力をアップさせることや、新しい商品の認知度が高まる広告宣伝効果、また突然のキャンセルなどによる損失を防げることなどもあります。
どのようにクーポンが販売されていくのか?
少し前であればクーポンと言えばチラシやフリーペーパーなどに印刷されて配布されていたチケットというイメージでしたが、現在ではインターネットやSNSアプリなどを利用したWebクーポンの利用も増えていて、特に若い人たちの間で定着しつつあります。
この共同購入クーポンは様々なクーポンサイトで販売されており、そこでお得なクーポンを購入することができます。
さらにこの共同購入クーポンには「交流型」と呼ばれるタイプも存在します。
「時間内に○○人の購入者を集めると○○円になる!」というミッションが決まっていて、制限時間内にこのミッションを達成すると非常に安い値段で購入できるようになります。このゲームのような楽しさと相まって、購入希望者はどんどん友達を巻きこんで行き、SNSアプリなどで商品のクーポン情報が拡散され、購入者の人数も増えて行くのです。
ちなみにミッションが失敗すると「失敗」となり、購入のために決済したお金は返金されます。どうしても欲しければ自分一人でも購入できますが、共同購入の場合よりも高い金額での購入になります。
もちろん細かい仕組みはそれぞれの共同購入サイトで違いますので、参加する際にはルールをよくチェックしておきましょう。
事前購入クーポンとは?
「共同購入クーポン」と似た言葉として、「事前購入クーポン」という言葉を聞いたことがありませんか?ではこの「事前購入クーポン」とは何でしょうか?
簡単に説明すると、これは事前に料金を払って有効期間内にクーポンを使用してサービスを利用するという形のクーポンになります。
分かりやすい例は、映画館の前売りチケットです。前売りチケットは当日券よりも割引されてチケットが販売されていますよね?店舗側としては見込み客や利益が確保できて嬉しい、お客側としては当日券より安く購入できて嬉しいというWin-Winの販売方法になります。
事前購入クーポンと共同購入クーポンの違いとは?
ではこの「事前購入クーポン」と「共同購入クーポン」はどう違うのでしょうか?
結論から言うと、両者に違いはありません。呼び方が違うだけで同じマーケティング手法のサービスとなります。
日本のALL COUPON(オールクーポン)などのウェブサイトでは「事前購入クーポン」と呼ばれていますが、カッコ書きで「共同購入クーポン」とも説明されており、同じものであることが分かります。
激安の共同購入クーポンで、店舗側はどのように利益を出すのか?
時には50%割引などの激安で販売されているクーポンもあるので、たくさんの利用者が飛びつく事もある共同購入クーポンですが、企業や店舗など販売する側にどれほど利益があるのでしょうか?
一例として飲食店の場合を考えてみましょう。計算の前提は以下の通りです。
- 100人の新規のお客様を集めたいのでクーポンを100枚販売する
- 5,000円のコースを50%割引の2,500円に設定してクーポンを販売する
- 共同購入型クーポンサイトに支払う手数料はクーポン販売価格の50%
- 原価率は一般的な数字とされている30%
では計算してみましょう。
まず定価5,000円のコースを50%割引の2,500円でクーポンサイトで販売します。
サイトより手数料が半額差し引かれて、1,250円が振り込まれます。
ではそこから原価である1,500円を引くとどうなるでしょうか?答えは-250円です。
利益どころか、クーポン1枚あたり250円の赤字になってしまいました。クーポン100枚で合計25,000円の赤字です。
もちろんクーポンの金額を50%割引ではなく30%割引程度に抑えておけば、赤字にはならず1枚あたり250円の利益を出す事ができます。しかしこの場合に問題になるのは「30%割引」と「50%割引」では購入者にとっての印象が違うということです。
当たり前のことですが、インパクトがあった方がお客様は購入してくれます。逆にインパクトが無ければお客様の注目を集められず、売れないので意味がありません。
ですから、お店側としては慎重に割引率を考える必要があります。
赤字が出たとしても、広告宣伝費として考えるとどうなるでしょうか?
普通に考えると赤字にしてまでクーポンを出す意味があるのか?と疑問になりますが、ここで思い出したいのは、「共同購入クーポンの大きな目的は新規のお客様を増やすことだ」というポイントです。つまりクーポンの販売は認知度を上げるための広告でもあるのです。
その観点で、他の広告を利用した場合の費用について考えてみましょう。先ほど例として考えた飲食店がオーソドックスな新聞の折り込み広告を出した場合にいくら必要になるか考えてみます。
計算の前提を以下の通りにします。
- 100人の新規のお客様を集めたい
- 折込チラシの平均的な効果は0.5%ほど(広告200枚につき1件の集客)
- 折込料+印刷料は1枚10円
- チラシに付けるクーポンの割引は10%(5,000円のコースで計算)
では計算していきましょう。
100人の新規お客様に来てもらうには、最低でも20,000枚の広告を出す必要があります。その場合は20,000枚×10円=200,000円です。
さらに広告に10%割引を付けていますので、その分の費用も上乗せされます。5,000円×100×10%=50,000円です。
ですから合計で250,000円の広告費がかかる事になります。
では先ほどの共同購入クーポンと比べてみて下さい。
- 折込チラシで100人のお客様を呼ぶための費用合計は250,000円
- 50%割引のクーポンを100枚出して100人のお客様が来た場合の費用合計は25,000円
なんと広告宣伝のための費用は10分の1になっています。
かなり単純化した計算なので実際にはもっと複雑になりますが、このように考えてみると例え赤字が出たとしても共同購入クーポンを利用することは有効であると言えます。
共同クーポンサイトを利用した場合のメリット
この項目では、企業や店舗が共同購入型クーポンサイトを利用する5つのメリットについて解説していきます。
集客ができた場合にのみコストが発生する
共同購入型クーポンサイトでクーポンを販売する場合、集客目標が達成された場合にのみ費用が発生します。これはどういうことでしょうか?
例えば100人を集客する目標で100枚クーポンを出す場合、90枚以上の申し込みがあった場合にのみ販売するという条件(目標)を付けることができます。もし目標件数の集客ができなかった場合にはクーポンは販売されないので、もちろんクーポンサイトにも手数料を支払う必要がありません。
このように集客ができた時にしかコストが発生しないという「リスクなしの広告」を出すことができるのです。
これは宣伝や広告に多額のお金をかけられない企業や店舗にとって非常に大きなメリットとなります。
ノウハウが無くても効果的な広告を出すことができる
新規に事業を始めた場合や独立したばかりの店舗などの場合、まだ地元のニーズに詳しくないでしょうし、広告宣伝に関するノウハウも持っていないという場合が考えられます。提供する商品やサービスに関しては自信があっても、それを多くの人に知ってもらわなければ売上も上がりません。
そんな時に有効なのが共同購入型クーポンです。このサービスを利用する際には、担当の営業マンにクーポンの価格設定方法、クーポンサイトに掲載する文章や写真撮影について相談できますし、集客やクーポンの販売なども全てお任せすることができます。
もちろんお願いする会社によってレベルの違いはありますが、広告宣伝のプロに初期費用なしでお任せできるというのは非常に心強いですよね。
そして、クーポンを購入してくれた方のほとんどは新規の顧客になります。そのお客様が商品やサービスを気に入ってリピートしてくれれば、常連のお客様になってくれるのです。これも非常に大きなメリットの1つです。
閑散期に来客を見込める
業種によっても違うと思いますが、例えば温泉旅館などの観光業界は1年のある期間が閑散期となり、ほとんど売上げが見込めないという場合があります。
このような時期にお客様を呼び込みたい場合にも共同購入型クーポンサイトはメリットがあります。販売するクーポンには利用期間がありますので、それを閑散期に設定しましょう。割引率を高くすればするほどお客様の目を引くことができ、集客を見込む事ができます。
たとえ赤字にならないギリギリの値段の割引を付けたとしても、全くお客様が全くいないために丸々赤字になるよりははるかに良いのではないでしょうか?
ドタキャン対策
ニュースでも話題になった事がありますが、予約したお客様が来ないというのはお店にとって非常に困る問題です。
では共同購入型クーポンサイトでクーポンを購入されたお客様はどうでしょうか?事前に料金を払っているために、キャンセルになる可能性は低くなります。
また、実際にキャンセルになったとしても問題はありません。クーポンサイトやお客様への返金はしませんので利益だけが残る事になります。
これもクーポンサイトを利用する大きなメリットになります。
クーポン以外のメニューで売上アップ
これは飲食店がクーポンを利用する際などに使われる方法ですが、クーポンで割引になるメニューにドリンク等を含めないという方法もあります。
クーポンに含まれていなくても、食事に行けば多くの人がドリンクも頼みますし、メイン料理が安い分、追加料理やデザートなどもオーダーするかもしれません。クーポンメニューに関しては利益は見込めないものの、利益率の高いドリンクなどの追加注文で不足分を埋め合わせられる可能性は十分に期待できます。
このような仕組みを上手に活用すれば共同購入クーポンにかかるコストをさらに圧縮でき、集客効果によって利益を上げることができます。
クーポンサイトを利用する場合のデメリットとその回避方法は?
もちろんクーポンサイトを利用する際のデメリットも存在します。
この項目では、クーポンサイトを利用する場合の5つのデメリットと、それらのデメリットを回避するために考えられる方法についても説明していきます。
新規顧客の増加=リピーターの増加とは限らない
先ほど考えたのは無駄なコストを減らして新規顧客を集客できるというメリットでしたが、これから考えるのはその先に起きることです。つまり、共同購入クーポンで集客したお客様はリピーターにはなりにくい傾向があるというデメリットです。
例えば高級ホテルの例を考えましょう。
値段が高いので普段は高級ホテルを利用しないお客様がいたとします。クーポンで安く泊まることができればきっと利用したいと思いますよね?こうして新規顧客の獲得になります。
では今度はその先を考えて下さい。そのお客様は次回以降もそのホテルに正規の金額で泊まることを考えてくれるでしょうか?つまりリピーターになってくれるでしょうか?
残念ながら多くの場合、お客様はクーポンを出している他の高級ホテルか、自分のお財布に合ったホテルを利用することになります。最初の利用でよほど満足させることができない限り、2回目に利用してもらうのは難しいのが現実です。
クーポンの多用によって評判が下がるリスク
高級ブランドでも年末セールを行う場合があるように、共同購入クーポンも年に1回程度販売するのであれば「商品や店舗を安く見られてしまう」という問題は少ないと考えられます。
しかし、短期間の間に何回も繰り返してしまえば話は別です。「クーポンありきで利用する商品・サービス」だと認知されてしまうからです。
そうなれば、もうクーポンを販売し続けるしかありません。クーポンを出しても利益がでるように商品の価格を上げたり、サービスの質を低下させたりしなければならなくなり、店舗の評判が下がり、来店するお客様の質も落ち、リピーターも離れていくという悪循環に陥ってしまう可能性が十分に考えられるのです。
集客を共同購入クーポンサイトに全く頼ってしまうのは、大きな危険を冒すことに他なりません。
悪い評判の口コミ効果
共同購入クーポンの強みとして、情報が多くの人に周知される口コミ効果があります。しかし覚えておかなければならないのは、良い評判以上に悪い評判の方がもっと多くの人に口コミで伝わってしまうというリスクです。
昔からあることわざに「悪事千里を走る」という言葉があります。悪い評判はたちまち遠くまで知れ渡ってしまうという意味です。通信手段が限られていた昔からそうだったのであれば、SNSが普及した現代では悪いイメージはさらに広く・遠くにまで知れ渡ってしまいます。
クーポンを利用したお客様からクレームが発生すると、そのお客様の感想がクーポンサイトに書き込まれたりSNSで友人や知人に拡散されたりして、考えられないほどの人に伝わって行く……ということも起こりえるのです。
来客してくださるお客様層を選ぶことができない
共同購入クーポンを購入して来店されるお客様の中には、割引された金額だけに引かれて一度だけ利用してみようと思う方も多くいます。ですからクーポンを販売する企業や店舗が獲得したい「リピーターになる可能性があるお客様」だけでなく、「1度限りの利用しか考えていないお客様」も多く呼び込んでしまうことになります。
そのように考えると、クーポンでの集客は「お客様層(ターゲット)に合わせたマーケティング」にはならず、「高コストで実りの少ない集客方法」になる可能性もあるのです。
提供する商品やサービスなどの質の低下
例え閑散期などにクーポンを設定したとしても、想像していた以上のお客様が来店するならどうなるでしょうか?店舗が対応しきれなくなってしまうケースも考えられます。
お客様が待たされる時間が長くなったり、提供される商品やサービスの質が低下したりするならクレームやトラブルの原因になり、やはり悪い評判が広まってしまう危険があります。
どのようにデメリットを軽減できるのか?
今まで考えてきたようなデメリットが考えられる共同購入クーポンですが、デメリットを軽減するための裏技も存在します。ではいくつかの例を紹介していきましょう。
クーポン用特別価格を設定する
例えば飲食店で考えてみましょう。通常10,000円で販売しているコースに若干のアレンジを加えて、「クーポン用特別コース」として12,000円の価格設定にしてしまいます。これなら割引率が大きくても原価はほとんど変わらないので、利益幅を増やすことができます。
しかし注意点もあります。お客様が12,000円の特別コースと通常の10,000円のコースがほぼ同じものであることに気付いてしまうと、悪い評判が立ってしまいます。ですから、慎重に計画を立ててから実行するようにしましょう。
割引率を下げる
共同購入クーポンの利用に際して最大のデメリットともいえるのは、利益が少なくなる(または出ない)ことです。それを軽減するためにはシンプルに割引率を下げることが考えられます。例えば50%引きではなく、30%引きに変更すればコストは減ります。もちろんその分売れ行きは悪くなる可能性があるので、注意して考える必要があります。
割引率以外の所でアピールする
共同購入クーポンサイトに掲載する際に、利用者にとって魅力的な写真を載せたり、商品やサービスを利用してみたくなるようなアピール記事を載せたりして工夫するなら、クーポンの割引率を下げても同じように購入してもらえる可能性があります。
このように工夫次第ではデメリットを減らし、メリットを生かせることが分かります。
クーポンの出し方でターゲットを絞り込む
さらにクーポンではお客様層が選べない(ターゲットを絞り込めない)というデメリットも工夫次第で軽減する事ができます。どんな工夫ができるのでしょうか?
それは、クーポンの内容でターゲットに訴求するという方法です。
共同購入クーポンサイトとしてはできるだけ多くの人にクーポンを販売したいので、「万人受けする内容」を「出来るだけ安く」掲載するように提案するかもしれません。しかし、その方法では集客はできますが狙ったお客様にターゲットを絞ることができません。
クーポンを利用するお客様の中には、2回目以降も利用してくださる良いお客様も必ずいらっしゃいます。ですから、そのようなお客様をターゲットにしたクーポンを販売することでリピーター獲得率を上げていくのです。
一例として、個人のレストランの場合を考えてみましょう。
クーポンサイトとしてはコストパフォーマンスの高いメニューを中心に掲載したいと思っています。そちらの方が確実に売れるからです。しかしお店側としては落ち着いた雰囲気でゆっくり食事を楽しんでもらえるお客様を集客したいと考えています。
そのような場合にはどうすれば良いでしょうか?一つの方法は、高価なコース料理を中心にしてクーポンを掲載することです。そうすればお店の期待している「落ち着いてゆっくり食事を楽しみたい」お客様層に来ていただくことができます。
このようにクーポンサイトと店舗側では集客の目的が違います。どちらの目的にもきちんとした意味がありますので、バランスのとれたクーポンを掲載して、無駄のない集客を行うようにしましょう。
まとめ
現在はあまり成長がみられない共同購入クーポンですが、依然としてお客様にとっても店舗にとってもメリットの大きいサービスとなっています。
この記事でお話したメリットとデメリットを慎重に考慮して賢く使えば、今でも非常に有効なマーケティング方法だと言えます。