eBayなど海外ECサイトを利用した商品輸入ビジネスを行う場合、関税の仕組や消費税を考慮した仕入れを行う必要があります。商品によっては、輸入する際に多額の関税が徴収されるので、あらかじめ仕組みを理解しておかないと、十分な利益が得られなくなります。
本記事では、輸入ビジネスで必ず関わる関税の仕組みと、その計算方法について解説します。実際に海外から商品を輸入する前に、関税について理解し、準備を万全にしてeBay輸入ビジネスを行いましょう。
【eBay輸入】関税について
eBay輸入では、商品を購入し現地から日本国内へ輸送する過程で、税関による商品確認や税金の徴収を受けます。通関作業は輸入ビジネスに大きく関わるので、まずは通関・関税・課税対象額の基本的な内容を理解しましょう。
通関について
通関とは、関税の徴収、物品の安全確認や知的財産権のチェックなど、輸出入の許可を得るための手続きのことです。
関税の仕組み
関税は、海外から輸入した商品にかかる税金です。国内で商品を購入した時にかかる消費税と同様に、日本の経済を回す大事な役割があります。
また、もし大量生産された海外産の安い商品に関税がかからなければ、国内の高い商品は市場での価格競争に負けて、国内産業にダメージが生じます。関税には国内の産業を守る機能もあるのです。
課税対象額の計算方法
関税は輸入商品が国内でどのように扱われるかによって区別されます。個人的に楽しむためなのか、国内販売を目的とした転売ビジネスとして利用するのか、改めて違いを確認しましょう。
例えば、eBayで200ドル(約26,000円)のカバンを購入したとします。輸送料や保険料は合わせて50ドル(約6,500円)、課税対象額にかかる関税率は10%です。
・個人使用目的の場合
商品代金の60%分が課税対象額となります。
200ドル×60%=120ドル(約15,600円):課税対象額
120ドル×10%=12ドル(約1,560円):関税額
・商売目的の場合
商品代金にプラスして、輸送料や保険料などの合計金額の60%が課税対象額となります。
(200+50)ドル×60%=150ドル(約19,500円):課税対象額
150ドル×10%=15ドル(約1,950円):関税額
このように同じ商品を輸入する場合でも、使用目的により関税額は変わります。
非課税になる輸入について
個人的な使用目的で商品を輸入する場合、購入価格を抑えることで非課税にすることができます。
個人使用目的の輸入では、課税対象額は商品価格(輸送料、手続き料は含めない)の60%を指します。そして、課税対象額が10,000円未満の場合、非課税扱いとなります。
つまり商品価格が16,666円以下(16.666×0.6=9,996円)だと関税を払う必要はありません。個人的な趣味の物を購入する際は、商品価格をしっかり確認しましょう。
海外輸入にかかる費用
関税以外にも、eBayで購入した商品を海外から国内に輸入する場合、商品代金に加えて以下のお金がかかります。
- 輸入消費税
- 通関手数料
- 輸入代行費用
・輸入消費税
海外から商品を輸入して、国内で販売する際に支払う税金のことです。
・通関手数料
通関では、各種書類のチェック、関税や消費税の計算など事務手続きが発生するため、手数料がかかります。
・輸入代行費用
海外から商品を輸入する場合、一般的に輸送代行業者を利用します。輸入代行費用は通関の書類手続きや輸送手続きに対して、業者に支払われます。
商品別の関税率について
関税率は商品品目により、無税から20%以上まで存在します。同じ品目でも素材などによって税率が変化するので、商品を仕入れる前に素材などの詳細を確認しましょう。
関税率10%を越える品目
対象品目一例
- 革製の靴(甲の一部に革を使用したもの):60%または1足あたり4,800円のうち、どちらか高い方
- チーズ:22.4%~(モッツァレラ等29.8%、プロセスチーズ40%など)
- 毛皮のコート:20%
- 菓子類:10%~(チョコレート菓子10%、砂糖菓子25%など)
関税率10%以下の品目
対象品目一例
- じゅうたん(綿、羊毛、人口毛):6.3~8.4%
- アクセサリー:5.2~5.4%
- 釣り用具:3.2%
- ミネラルウォーター:3%
無税の品目
対象品目一例
- パソコン、デジタルカメラ
- Blu-ray、CD
- 書籍、雑誌
- 化粧品
簡易関税について
関税率の他に、課税価格によって税率を分ける仕組みがあります。課税合計額が20万円に満たない場合、上記の関税率ではなく簡易税率が適用されます。
ただし品目によっては、一般関税率がかかるジャンルもあるので注意してください。見落としていると損をする危険性があります。
簡易税率に当てはまらない品目一例
- 革製品
- 穀物、穀粉など
- たばこ
- 豚肉、牛肉の調整品
参考:少額輸入貨物の簡易税率表
eBay輸出入で把握しておかないと危険性が高い禁止品目について
通関では、品目と関税率の他に、国内への輸入や国外への輸出が禁じられていたり、危険性がある商品のチェックが行われます。日本の税関で輸出入が禁止されている品目は、以下の参考リンク(税関公式サイト)より確認してください。
禁止品目一例
- 麻薬、覚せい剤など
- 児童ポルノに抵触する商品
- 著作権、特許権に反する模造品
- 拳銃などの銃火器
- ワシントン条約に該当する生き物
なお、海外の税関で輸出入が禁止、規制されている品目は各自で確認してください。
参考:税関公式サイト
輸出時の消費税免税について
輸出販売をする際、セラーは仕入れ時にかかる消費税を免除する制度(輸出免税)を利用することができます。輸出免税の基本と制度の適用範囲を確認しましょう。
輸出免税について
海外に向けて輸出するセラーは、国内で商品を仕入れる際に消費税を払います。しかし、輸出先である海外からは、法律上消費税を徴収することができないため、セラーに不利な取引となってしまいます。
輸出免税はこのような問題を解決するための制度で、セラーが税務手続きを行うことで、仕入れの際に支払った消費税の還付を受けることができます。
輸出免税の適用範囲について
輸出免税が適用される取引範囲としては、下記の場合が当てはまります。
- 国内から海外の受け取り人に向けて、商品や財産の受け渡しがあった場合
- 国内外間で通信や郵便取引があった場合
ECサイトで商品を販売して海外バイヤーに向けて輸出する行為は、輸出免税の適用範囲内なので、制度を利用しましょう。
輸出免税の対象額について
輸出免税による還付金は、仕入れ時の商品代金をもとに算出されます。
例えば、国内で4,000円のカバンを購入した場合、消費税で400円が徴収されます。しかし、海外で同商品を6,000円で販売しても、消費税を徴収することはできません。上記の条件で輸出免税を適用すると、400円が免税対象として還付されます。
1回の取引では消費税による売上への影響はそれほど多くないですが、数多くの取引を行う場合、免税による収益アップが望めます。
eBay輸出と還付申請書類について
輸出免税を受けるためには、還付申請書類の作成と申請手続きを行わなければなりません。書類は個人か法人か、また取引の種類によって大きく3つに分かれています。
- 法人の場合
- 個人の場合
- 事業者が国内外どちらとも取引している場合
法人の場合
課税期間の末日(事業年度の終わり)の翌日から2か月以内に、下記書類3点を所轄の税務署長へ提出し、登録申請します。
- 課税期間分の消費税および地方消費税の確定申告書
- 仕入控除税額に関する明細書(法人用)
- 付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書
個人の場合
課税期間の翌年3月末日までに、下記書類2点を所轄の税務署長へ提出し、登録申請します。
- 課税期間分の消費税および地方消費税の確定申告書
- 付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書
事業者が国内外どちらとも取引している場合
セラーが海外に向けた輸出と国内販売の両方を行っている場合、還付される消費税と納付する消費税の計算が同時に行われます。
「課税期間分の消費税および地方消費税の確定申告書」内で還付消費税・納付消費税両方を入力し、差額分を還付または納付します。
eBayの米国での売上税について
eBay輸入ではアメリカとの取引が頻繁に行われます。そして、アメリカで商品を販売した場合、売上税が徴収されます。
eBayでの売上税の仕組みについて
アメリカではECサイトで商品の売買が行われた際に、州ごとに決められた売上税(商品価格に対して課税される)をバイヤーから徴収する仕組みがあります。州政府が売上税を管轄しており、州によって税率は異なります(0~10%)。
売上税はECサイト上で自動的に計算されるため、セラー側で特別に操作する必要はありません。
eBayでの売上税に関する決まり
eBayで商品を販売する際に、意図的に売上税の高い州を外して販売する行為は禁止されています。また、eBayの代わりにセラーが売上税を徴収して、納税する行為も禁止されています。
eBayでの売上税を免除されるプログラムについて
eBayには税免除プログラムが存在しますが、一般的なセラーは利用できません。慈善団体や再販業者など、一部のセラーのみが利用できます。
関税の計算方法
eBayなどの海外ECサイトで購入した商品を輸入する際、一般的に輸入代行業者や転送業者を利用します。代行業者に商品輸入を依頼すると、通関で必要な手続きや関税の計算も代行してくれるので、通関手続きになれていない輸入初心者でも気軽に利用できるメリットがあります。
MyUSは国内セドラーの間で人気のある転送会社です。MyUSを利用して輸入する際に必要な関税計算の説明と、トラブルが起きたときの対処法を解説します。
MyUSの利用方法
eBayで商品を購入した後、商品は一旦MyUSに送られます。商品がMyUSに到着したら、eBayで購入した際の商品価格をMyUSに申告します。
MyUSにログインして、「MY SUITE」をクリックしてください。「View All」をクリックすると、STATUSの欄に赤い▲マーク(Action Required)が出ており、価格入力が求められます。
VIEW欄の「>」をクリックすると、操作ページが出てきます。
「PACKAGE DETAILS」内の「VALUE PER UNIT」に商品1個あたりの価格を入力してください。入力価格はeBayでの購入価格となります。
購入したすべての商品価格を入力したら、「SUBMIT ITEM VALUES」をクリックしてください。
最終確認画面が表示されるので、「YES, SUBMIT VALUES」をクリックしてください。
MyUSは、申告した商品価格からインボイス(通関の手続きに必要な書類)を作成するため、商品価格は正確に入力してください。
代行業者によっては、個人輸入か商業輸入かを入力する必要がある場合があります。国内で商品を販売するつもりなら、商業輸入を選択してください。
間違えたときの対処法
いくら気を付けていてもミスはあるもので、「価格を打ち間違えた」、「1個当たりの価格入力を合計金額で入力した」など、後になって気づく間違いも起こり得ます。
価格の入力ミスに気が付いたら、すぐにMyUSに価格訂正を申請するメッセージを送ってください。一度入力した価格はMyUSページ上では修正できないので、注意してください。
MyUSホーム画面の「HELP」をクリックします。
画面下部にある「CONTACT US」をクリックすると、メッセージ入力欄が表示されます。
First Name(名)、Last Name(姓)、Email Adress(メールアドレス)、Suite Number(自身のMyUSのID)を入力します。「How Can we Help?」の欄は「My inbound package(s)」を選択します。メッセージ欄に入力する英文は、「価格を間違えたので、正しい価格に修正してください」という内容にしましょう。
メッセージでは、Package IDを忘れずに入力してださい。Package IDはMyUSホーム画面やメール内で確認できます。
アンダーバリューについて
仕入れにかかる金額は誰しも抑えたいと考えるところですが、価格申告で意図的に低い値段を入力する行為(アンダーバリュー)は脱税行為となります。関税の計算は商品品目、数量、取引記録から算出されるため、価格を偽って申請したとしても簡単に発覚します。
代行業者が価格入力ミスに気付いて知らせてくれることもありますが、時には代行業者もミスに気付かないまま取引が進んでしまう危険性もあります。アンダーバリューにならないよう、価格入力の際は注意を払いましょう。
まとめ
eBay輸出入で関与する税金について解説しました。
お金に関する情報はビジネスをする上では必須の内容です。関税や消費税は、代行業者やeBay上で自動的に計算されるので忘れてしまいがちですが、知識として持っておきましょう。
ビジネスは大まかにするのではなく、利益計算をしっかり行い、細かく管理しましょう。