最近は、個人でも楽天市場やBASEなどにお店を出して物販ビジネスを始める人が増えてきましたよね。
ネットショップを開設するとなった場合、色々な手続きや作業が必要ですが、中でも大変なのが毎年の確定申告です。しかし、今まで確定申告をしたことがない方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、ネットショップを運営している方が行う必要のある確定申告について紹介します。
ネットショップ運営でも必要な確定申告
「確定申告」という言葉はよく聞きますが、一体どういうものなのかイマイチ分からないという方もいらっしゃいますよね。
そこで、まずは、確定申告とはどういうもので、なぜ必要なのかを解説します。
確定申告の必要性
私たちは働いて収入を得たらその収入額に応じて税金を支払わなければなりません。会社員であれば、会社が税額を計算した上で税金を支払ってくれるので、普通は確定申告の必要はありません。しかし、ネットショップを運営するなど、自分でビジネスを行う場合は、自ら納税の手続きを行う必要があります。
確定申告とは、自分が支払う税金を確定させるために過去1年間の収入を税務署に申告することです。確定申告をすることによって、自分が支払うべき税金の額が明らかになります。
確定申告をしないとどうなるか
確定申告をしないと、自分が支払わなければならない税額がわかりません。税金をきちんと支払わないと、延滞税が発生します。それだけでなく、すでに納めた税金が多過ぎた場合でも、返金してもらえなくなってしまいます。
また、まれに有名人の脱税がニュースになりますが、小規模なネットショップを運営している場合でも税金を支払わないと「脱税」になってしまいます。
専業と副業の場合の確定申告
ネットショップを運営する場合、どれくらいの収入があれば確定申告が必要となるのか気になりますよね。確定申告が必要となる収入の額は、ネットショップを専業として運営しているのか、それとも副業としてなのかによって異なります。
ここからは、専業の場合と副業の場合、それぞれについて確定申告が必要となるケースを解説します。
ネットショップが専業の場合の確定申告
ネットショップの運営を専業として行う場合は、1年間の所得が48万円以上で確定申告が必要となります。今までは38万円でしたが、令和2年度から10万円アップの48万円になりました。
ただし、ここで注意が必要です。所得が2,400万円以下なら基礎控除額(税金が免除される額)は48万円ですが、所得が2400万円を超えた場合は段階的に起訴控除額が減っていきます。そして、所得が2,500万円以上になると基礎控除はなしになります。
ネットショップが副業の場合の確定申告
ネットショップを副業として運営している場合は、所得が20万円以上になると確定申告が必要です。医療控除を受ける場合に確定申告する場合は、本業の収入だけでなく副業のネットショップで得た収入も記載する必要があります。
ネットショップ運営では帳簿の記入が必要
確定申告する際に必要となるのが「帳簿」です。しかし、ネットショップを始めたばかりだと、まだ帳簿をつけていない方もいらっしゃるでしょう。
しかし、ネットショップの規模が小さいからといって帳簿を付けないままというのはよくありません。
ところで、帳簿というのは、ネットショップでの取引を記録しているノートのようなものです。ある商品をいくらで仕入れて、いくらで何個販売できたかなど、あらゆる取引を記載しておきます。帳簿があると、ネットショップでの日々のお金の流れが見えてきます。そのため、確定申告が必要ない場合でも、取引におけるお金の流れを把握しておくために帳簿はきちんと付けておきましょう。
ネットショップ開設時に必要な開業届
ネットショップを運営するにあたって必要な手続きは確定申告だけではありません。開業届も提出する必要があります。
開業届は出しておく必要がある
ネットショップを開設したら、税務署に開業届を提出します。開業届書は税務署または国税庁のサイトからダウンロードできるので、記載して税務署へ提出しましょう。税務署への提出は持ち込みでも郵送でも大丈夫です。
よく「開業届を出すと、副業が会社にバレるのではないか?」と心配する人がいます。確かに、住民税の納税額に関する通知が会社に届けられて経理担当者に気づかれるケースはあります。しかし、住民税の納税額は確定申告してはじめて確定するものなので、開業届を提出した段階で副業が会社にバレることはありません。
開業届の提出と確定申告はネットショップ運営に必要なので、必ず行いましょう。
開業届を出していなくても確定申告はできる
「開業届を出さなければ確定申告はできないの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、開業届を出していなくても確定申告は行えます。確定申告は開業届を提出したかどうかとは関係なく行うものなので、開業届を出していないからといって確定申告の時期に焦る必要はありません。
確定申告に必要なネットショップの経費について
確定申告の際に気になるのが「経費」です。経費として計上できればその分だけ納付すべき所得税の額が軽くなるのですから、事業者としては見逃せない部分です。一般的には、事業に必要な事務用品の購入費や通信費などは経費に当たります。では、ネットショップの場合は、何を経費としてカウントできるのでしょうか。
ここからは、ネットショップの経費について解説します。
ネットショップの経費
ネットショップを開設すると、たくさんの備品を購入すると思います。例えば、商品を販売するためにパソコンを購入する方も多いでしょう。このようなパソコンの購入費は経費として認められます。
また、インターネット料金や事務所の賃貸料も経費になります。もしも自宅を事務所として使っている場合は、ネットショップとして利用している割合分を経費として計算できます。例えば、自宅の20%程度の面積をネットショップとして使用してる場合は、家賃の20%分を経費にできます。
ネットショップをオープンするにあたって、ネットショップ作成サービスを利用される方もいらっしゃいますよね。例えば、BASEやカラーミーショップなどは、無料または低価格でネットショップを開設できるサービスを提供しています。このようなネットショップ作成サービスを利用した場合に掛かる月額利用料や販売手数料も、経費として計上することができます。
ネットショップで経費にならないもの
残念ながら、何でもかんでも経費として認められるわけではありません。自分の髪を整えるための美容院代や洋服にかかった費用などは、経費としては認められません。ただし、ネットショップで洋服を取り扱っており、モデルを使った洋服の撮影に必要な髪の毛のセット代や洋服代は経費になります。
このように、何が経費に含まれるかは事業内容によっても異なります。目安は事業に必要か否かです。髪の毛のセット費用も事業に必要であれば経費になりますが、自分個人のためなら経費にはなりません。経費に含まれるかどうかは税務署のさじ加減次第と言えなくもないので、悩んだときは税務署に相談しましょう。
仕入れただけの商品は経費にならない
ネットショップで多くの人が悩むポイントとして、「仕入れた商品は経費に含まれるのか?」という疑問があります。実は、商品を仕入れただけでは経費には含まれません。仕入れた商品を販売して初めてそれが経費になります。
つまり、確定申告前に経費を増やそうと思って、大量に商品を仕入れることは意味がありません。どうしても商品を経費にしたい場合は、セールなどをしてお客さんに購入してもらいましょう。
また、商品を販売していなくても、仕入れた商品を経費に含められる場合もあります。例えば、インフルエンサーに商品をプレゼントしてInstagramで宣伝してもらえば、それは「広告宣伝費」という経費になります。
白色申告と青色申告について
確定申告には白色申告と青色申告の2種類があることをすでにご存知の方もいらっしゃるでしょう。しかし、ネットショップを運営する場合、どちらで申告した方が良いのか悩んでしまいますよね。
ここからは、白色申告と青色申告について解説します。
白色申告と青色申告の違い
白色申告と青色申告の違いを一言で言えば、「白色申告の方が簡単にできる、しかし、控除額は青色申告の方が大きい」となります。まだ所得が少ないうちは、手続きが簡単な白色申告の方がおすすめです。ネットショップの規模が大きくなってきたら、控除額の大きい青色申告を検討しましょう。
白色申告は単式簿記で記入できるので、経費の計算さえできれば確定申告が初めての人でも簡単です。一方、青色申告は特別控除が受けられたり、赤字を翌年に繰り越せたり、さまざまなメリットがあります。ただし、複式簿記での記載が必要なため、簿記3級程度の知識が必要です。
簿記の知識があまりない場合は、青色申告用のPCソフトを利用すると便利です。例えば、弥生会計が販売している「やよいの青色申告」は、パッケージ版とダウンロード版があるソフトですが、初心者でも操作が分かりやすいと評判です。
スマートフォンでレシートを撮影すると、アプリを通じてソフトに自動的に支出が追加されます。AIにより自動仕分けもできるので、毎月の入力作業が楽になりますよ。法人の申告には対応していませんが、個人でネットショップを運営するなら役に立つソフトです。
白色申告から青色申告へ変更もできる
今まで白色申告していた方が青色申告に変更する場合は、税務署への申請が必要となってきます。その際は、「青色申告承認申請書」という書類を提出します。ネットショップを開業するなら、開業届と一緒に青色申告承認申請書も提出するのがおすすめです。
青色申告承認申請書も開業届と同様に国税庁のホームページからダウンロードできます。記入の仕方も書いてあるので、見本を参考にしながら作成していきましょう。提出は窓口でも郵送でも行えます。
確定申告書の3つの提出方法
確定申告には、紙の申告書に記載する方法とオンラインで申告する方法があります。最近ではオンラインの「e-Tax」を利用して確定申告をする方も増えています。
ここからは、確定申告書の提出方法を紹介します。
分からないことを質問できる窓口提出
税務署の窓口まで確定申告の書類を持ち込むことができます。窓口まで持っていけば、書類をチェックしてもらえるだけでなく、書き方が分からない時でも教えてもらえるので便利です。しかし、確定申告の締め切り間際は窓口が大変混雑するので、余裕を持って提出するよう心がけてください。
ポスト投函もできる郵送による提出
確定申告には、税務署まで郵送する方法もあります。郵送であれば税務署まで足を運ばなくてよいので楽ですが、提出期限までに余裕を持って郵送する必要があります。申告書の控えが必要な場合は、忘れずに申告書と一緒に返信用封筒も同封しておきましょう。
確定申告書は郵便局から送りますが、その際は申告書を折り曲げずに入れられる角形2号の封筒を準備してください。切手がある場合はポストに投函しても良いでしょう。
オンラインで提出できるe-Tax
「e-Tax」は、インターネット上で確定申告ができるサービスです。まずは、会計ソフトを使用して確定申告に必要な金額を入力し申告書を作成します。ネットショップの場合は、梱包に必要な資材やパソコン、家賃などを経費に含めましょう。
また、「e-Tax」で確定申告する場合は、スマートフォンの「マイナポータルアプリ」もしくはICカードリーダーライターが必要です。マイナンバーカードを読み取って個人を認証する必要があるからです。マイナンバーカードの場合、確定申告する段階で何度か暗証番号を入力する必要もあります。
マイナンバーカードの暗証番号とは、マイナンバーカードを作成した時に自分で設定した番号です。入力を数回間違えると、市役所まで行って暗証番号を再登録してもらわなければならなくなるので、暗証番号を間違わないよう気をつけましょう。
「e-Tax」で確定申告を行えば、納税もインターネット上から行えます。クレジットカードも使えるので、早めに納税しておきましょう。
ネットショップ運営でも余裕をもって確定申告しよう
ネットショップを運営する上で忘れてはならないのが、確定申告。確定申告では収入や経費など多くの項目を記入しなければなりません。確定申告の期限ギリギリまで放っておくと大変なことになってしまいます。
確定申告で焦らないように、会計ソフトなどを利用して毎月ネットショップの運営にかかるお金の流れを把握しておくのがおすすめです。初めてネットショップを開設する場合は、通販サイトへの手続きや商品の準備など大変なことが多いですが、忘れずに開業届と青色申告承認申請書を提出しておきましょう。
また、白色申告・青色申告どちらで申告するかに関係なく、確定申告で分からないことがある場合は、早めに税務署に質問しておきましょう。