あなたが今、ECサイトを立ち上げてビジネスを展開したいと考えているのであれば、まず第一に知らなくてはならないのは、ECサイトのさまざまなビジネスモデルです。
ECサイトが誕生してから20年近くが経ち、その形態はビジネスのニーズに合わせて次々と分岐していきました。
言うまでもなく、どのビジネスモデルにもメリットとデメリットがあります。
あなたがECサイトを運営したいのであれば、既存のビジネスモデルをきちんと理解し、自身がやりたいことと照らし合わせたうえで、最適なモデルを選ぶ必要があります。
この記事では、そんなあなたの助けとなるべく、各種ECビジネスモデルの紹介や、実践的な知識を解説していきます。
Eコマースとは何か
EC、すなわちEコマースとは、日本語では電子商取引と言います。その定義はシンプルで、インターネット上で行われる取引全般を指しています。
ある企業がオンラインで商品を販売しているのであれば、それはEコマースです。
Eコマース業界の中で世界的に最も知られているのはAmazonでしょう。日本国内では、それに続いて楽天市場が挙げられます。
Eコマースの沿革
Eコマースの原型とされているものは、1979年に誕生しました。
マイケル・アルドリッチがテレビとコンピュータを電話線で繋ぎ、「実際の店舗に行かなくても買い物ができる」というオンラインショッピングモデルを開発したことが、今日のEコマースの元となったのです。
その後、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズなどによって、コンピュータがどんどんパーソナルなものになっていき、Eコマースが一般層に浸透する土台ができました。
そして1994年にはジェフ・ベゾスがAmazonを立ち上げ、100万種類の本をオンラインで販売するという試みを始めたのです。
やがてAmazonは本だけでなく、あらゆるものを取り扱うECサイトとして、世界で最も有名になっていきました。
2000年代の前半あたりから、Eコマースの普及は加速していきます。
オンライン決済のPayPalが浸透したこともあり、それまで以上にお金のやり取りが簡単になり、企業がオンライン事業に進出しやすくなったのです。
そこから2021年の現在に至るまで、Eコマース市場は拡大の一途です。そしてこれから先も、当分は市場は拡大していくことが予想されています。
Eコマースにまつわる統計
世界のEコマース市場の売上高は、2023年までに700兆円以上に達すると予測されています。
2020年の新型コロナウイルスの影響で、アメリカのEC化率は20%以上に伸びました。
2021年中には、オンラインで買い物をする人が53.9%にまで増加するとされています。
同様に、世界でも2021年中には21億人以上の人々が、オンラインで商品やサービスを購入するようになると予測されています。
さらに詳しく統計を見ると、男性よりも女性のほうがオンラインショッピングをする機会が多く、使っている金額も多いです。
一方、18歳から34歳までの、いわゆるミレニアル世代は年間2,000ドルをオンラインショッピングに費やしており、他の世代と比べてEコマース経由での消費が最も多くなっています。
ECサイトのビジネスモデル
この項では、ECサイトの基本的なビジネスモデルを解説していきます。
といっても、これから紹介するモデルはECサイトに限ったものではなく、多くのビジネスに共通しているので、ぜひ参考にしてください。
BtoB
BtoBは「Business to Business」の略で、企業が他の企業を相手に行うビジネスのことです。BtoBでECサイトを運営する場合、以下のようなタイプが考えられます。
- クローズド型:既存の顧客のみに対応する
- マルチ型:不特定多数の企業を対象にする
- マーケットプレイス型:受注や配送などをASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)に任せる
BtoC
BtoCは「Business to Consumer」の略で、企業が個人に対して商品やサービスを提供するビジネスのことです。
このBtoCがECサイトの形態としては最も一般的でしょう。
Amazonや楽天市場のようなショッピングモール型から、アディダスや無印良品のような自社型まで、いろいろなタイプがあります。
実店舗を特定の地域に構えている企業は、このモデルのECサイトを立ち上げることによって、顧客となる対象を全国に広げることができます。
また、24時間いつでも販売することが可能になります。
CtoC
CtoCは「Consumer to Consumer」の略で、個人が他の個人ユーザーに対して商品やサービスを提供するビジネスのことです。
ECサイトでいえば、メルカリやYahoo!オークション、ラクマなどがこれにあたります。
企業ではなく一般の消費者が自身の持ち物をサイト上で販売し、別の一般消費者がそれを購入していくのです。
販売されるものはさまざまです。法律で売買が禁じられているものでなければ、基本的にどのようなものでもやり取りされていると考えてよいでしょう。
CtoB
CtoBは「Consumer to Business」の略で、一般消費者である個人が企業に対して展開するビジネスのことです。
近年になって働き方に多様性が生まれ、特別なスキルを持っている個人が、それを企業に対して売り込むビジネススタイルが育ってきています。
たとえば、専業主婦(夫)が副業としてWebデザインを受注したり、プログラミングスキルなどを提供したり、といったことです。
そのためのいわば仲介の場として、CtoBのサイトが少しずつ成長している状況です。
DtoC
DtoCは「Direct to Consumer」の略で、メーカーや生産者が販売業者などを介さず、直接的に一般消費者に販売するビジネスです。
このビジネスモデルを採用している企業としては、Appleやアディダスなどが挙げられます。
いずれの企業も、中間に業者を介在させないことでコストを削減し、高品質で低価格な商品を提供するという狙いがあります。
現在の代表的なECビジネスモデル
Eコマースのビジネスモデルは、時代と共に進化を続けてきました。
この項では、その結果として現在の代表的なモデルを6つ紹介します。
モデル1:ECサイトの活用
ECサイトの強みは、顧客を全国に持つことができることです。また、実店舗を持つ必要がないため、経費があまりかからないのもメリットでしょう。
おかげでビジネスを始めやすく、利益も出しやすいのです。
とはいえ、自社ECサイトを立ち上げた場合は、集客のための広告費が必要になるほか、Webマーケティングのノウハウも必須です。
そういったことが煩わしい場合には、Amazonや楽天市場といったモール型のECサイトに出店する形をとるのがよいでしょう。
ただしこちらの場合も出店料や販売手数料などのコストはかかります。
現在では自社でECサイトを構築すること自体は、既存のサービスを使うことで比較的簡単に実現できるようになりました。
したがって、自社ECサイトでビジネスを展開するか、モール型のECサイトに出店するかの判断基準は、集客やマーケティングに自信があるか否かとなってくるでしょう。
モデル2:実店舗からECサイトへの展開
まずは実店舗で実績を出し、そのビジネスをECサイトに展開していくことで、売上を大きく伸ばすことができます。
たとえば、すでに地方の名物として名が通っている商品であれば、ECサイトにおいても最初から集客を見込むことが可能でしょう。
このモデルで注意すべきなのは、ECサイトを立ち上げたことで、実店舗の売上が下がってしまう可能性があるということです。
実店舗とECサイトとで事業部が異なる場合、これは社内で問題として取り上げられることになるかもしれません。重要なのは、自社全体のトータルの売上を重視する姿勢です。
実店舗ですでに知名度を得ているのであれば、モール型ではなく自社ECサイトを選んだほうがよいでしょう。
なぜなら、自社ECサイトのデメリットである集客の難しさなどを考える必要があまりないからです。
モデル3:モール連携
一つのECサイトが軌道に乗った場合、さらに販路を拡大していくこともできます。
たとえば、すでに成功した自社ECサイトを持っている場合、さらにAmazonや楽天市場に出店し、それらを同時に運営していくのです。これがいわゆるモール連携です。
モール連携をすることで、売上を劇的に伸ばしていける可能性が生まれますが、もちろんデメリットも存在します。
各モールへの出店コストや手数料の問題、そして販路が複数になれば、それだけオペレーションが大変になるといったことです。
このあたりは、自社のリソースを鑑みながら決めていくことになります。
また、モール連携にはリスクヘッジができるというメリットもあります。
何らかのシステムトラブルなどで自社ECサイトかモール型ECサイトのどちらかが利用不可になっても、片方が残っていればそちらで販売を続けることができるからです。
この点は、ビジネスが大きくなっていればいるほど、心強いものとなるでしょう。
モデル4:OtoO
OtoOは「Online to Offline」の略で、ECサイトから実店舗へと顧客を誘導する施策や仕組みのことを指します。たとえば、以下のようなシステムが該当します。
- ECサイトと実店舗でポイントを共有する
- スマートフォンで実店舗の在庫状況がわかる
- ECサイトでクーポンコードを発行し、実店舗で使えるようにする
こういった方法により、実店舗の新規顧客を増やし、売上をさらに拡大させていこうというわけです。
ただし、効果がやや限定的であることがデメリットとなります。クーポンを発行しても、新規顧客を見込めるのはその有効期限の間だけです。
また、あまりにも頻繁にクーポンを発行してしまうと、景品表示法に抵触します。
モデル5:オムニチャネル
オムニチャネルとは、大きなコストをかけて顧客情報や在庫情報などすべてのデータベースを統合し、実店舗とECサイトの垣根をなくすビジネスモデルのことです。
これにより、顧客満足度を上げ、販売促進を狙っていこうというものです。
オムニチャネルの実例としては、以下のようなものがあります。
- ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取れる
- 実店舗にない商品を、店舗内にてECサイトで購入できる
- 実店舗で買った商品を、オンライン上で返品処理できる
こういった仕組みを作ることで、ユーザーにとって非常に利便性の高いショップとなり、それにより顧客満足度が飛躍的に高まることが期待できるのです。
モデル6:越境EC
越境ECとは、ECサイトを多言語対応にすることで、販売する範囲を日本から全世界に広げる施策のことです。
これにより、理論上あなたのショップにとって、世界中のほとんどの人々が潜在顧客となるわけです。
ただし、以下のような課題もあります。
- 海外での集客が難しい
- 配送に時間も手間もかかる
- 国によって浸透している決済システムが異なる
たとえば中国に展開するとなるとGoogleは使えないため、SEO対策は日本とは別物になります。
このほか、クレジットカード決済は一般的でないため、中国国内の状況に応じたものを用意することが必要です。当然、配送の問題もあります。
越境ECは難易度の高いビジネスモデルなので、まずは国内に絞り、そこで大きな成功を収めてから海外に進出するのがよいでしょう。
知っておきたい「フロント業務」と「バックオフィス業務」
Eコマースを運営するためには、顧客がアクセスするECサイトの運営を中心としたフロント業務と、在庫管理や出荷といった「モノ」の流れを担うバックオフィス業務があります。
以下で詳しく見ていきましょう。
フロント業務とは
フロント業務は、ECサイトの運営、すなわち商品企画や仕入れ、そしてマーケティングなどを主とする業務です。
顧客が何を求めているのかをリサーチし、同時にライバルの動向も欠かさずチェックすることで、常に「少しでも多く売る」ことを目指すのがフロント業務の役割です。
たとえば、価格を安くしたり、商品ページを魅力的にしたりと、自社の商品力やブランド力を高め、少しでも顧客に商品を購入してもらえるような取り組みを行っていきます。
他にも考えるべきことは山ほどあります。たとえば、決済方法ひとつとっても、ターゲットが10代であればクレジットカード以外のコンビニ決済などに力を入れる必要がある一方で、シニア層がターゲットであれば銀行振込を検討すべきでしょう。
こういったことも広い意味でマーケティング戦略のうちに入ります。
ECサイトの売上を上げるにはSNSの活用が必須となってきています。下記の記事では、SNSの活用方法や事例が詳しく解説されているので、是非チェックしてみてください。
参考:SNS活用はECサイトに必須!?売上を上げる活用方法や事例を徹底解説
バックオフィス業務とは
バックオフィス業務は、商品の在庫管理や梱包、発送、さらには発送後の消費者からの問い合わせへの対応などを含めた、商品という「モノ」の実際の動き全般を担う業務です。
フロント業務の功績によって多くの注文が入ったとき、バックオフィス業務がスムーズに動ける状態になければ、それらの注文をさばき切ることはできません。
顧客との売買契約を「実際に問題なく完結させる」ために、バックオフィス業務を洗練させることは必要不可欠な仕事となります。
的確な処理を行うために、バックオフィス業務はしばしば、ECサイトとシステム上で業務を連動させる必要があります。
たとえば、注文が入るたびに在庫数を1つ減らす、という流れをシステムで自動化させることで、ミスを少なくすることが可能になります。
このあたりのシステム構築を自社ECサイトで行うには、それなりのコストがかかることは想像に難くないでしょう。
しかし、それに投資し、ミスする可能性を少しでも減らすようにする価値は十分あります。
Eコマースにおける売り手のメリット
この項では、Eコマースにおける売り手のメリットをまとめて紹介します。
地理的な制限がない
Eコマースはインターネット上のサービスであるため、日本国内のみならず、海外の人々も潜在顧客になり得ます。
つまり、世界中の市場で自社商品を販売することができるのです。
たとえ地理的に不便を抱えている地域に自社の拠点があったとしても、Eコマースであれば問題なくビジネスを展開することが可能です。
インターネットの普及に伴い顧客が増加
インターネットが普及したことによって、潜在顧客の数は膨大になりました。特にスマートフォンが普及してからというもの、Eコマースはさらに加速度的に発展しています。
いつどこにいても商品を注文することができる、というメリットは絶大で、今やECサイトでの注文を行うデバイスの過半数はスマートフォンなどのモバイル機器となっています。
店舗代がかからない
実店舗を持つと、大きなコストがかかります。土地代はもとより、建物の維持費や光熱費など、さまざまな支出があるからです。
しかし、Eコマースであれば非常に安価にショップを開くことができます。資金が少ない人や、店舗を持った経験のない人でも簡単に開業でき、リスクも比較的少なく済みます。
購買データを売上に繋げやすい
Eコマースにおいては、誰が何を購入したのかというデータを収集・管理することが容易であるため、それを活用した販売戦略を練りやすいというメリットもあります。
顧客それぞれに合った適切なマーケティングを行ったり、メールマガジンを送信したりといった継続的なコミュニケーションをとることにより、リピーターを増やすことが可能になるわけです。
動画などを使って商品を詳しく説明できる
Eコマースは顧客と直接相対することができないため、実店舗と比べて商品の説明をするのが難しいと思われているところもありますが、必ずしもそうとは限りません。
ECサイトでは、文章や写真、動画をふんだんに使うことができますので、たとえば実際に使っているところを事細かに表現するといった工夫により、むしろ実店舗ではできないような説得力のあるアピールをすることもできるのです。
また、実店舗と違ってECサイトを訪問する顧客は、自宅のソファなどでリラックスした状態で商品を見ている場合が多いです。
そのため、説明の内容をきちんと受け取ってもらえる可能性が高いことも、Eコマースの強みとなります。
Eコマースにおける買い手のメリット
この項では、Eコマースにおける買い手のメリットをまとめて紹介します。
どこでも買い物ができる
Eコマースを利用すれば、いつでも、どこでも自由に買い物をすることができます。居住地や時間帯にとらわらず、常にオンラインで商品を吟味し、注文することができるのです。
小さな子供のいる家庭や、外出の難しい高齢者にも優しいサービスであると言えます。
低価格なものが多い
Eコマースには低価格な商品が多い、というのもメリットの一つです。これは、実店舗と比べて運営コストを下げられるがゆえに実現できていることです。
また、Eコマースはショップごとの価格を比較することが容易です。最安値をつけているショップを探しやすいという点でも、お得に買い物をすることができます。
好みに合った商品やショップを探しやすい
Eコマースは時間や場所の制約がないため、買い物をする際には自分の好きなタイミングで好きなだけ商品を見て回ることができます。
また、ショップ内の検索機能も充実しているので、気になる商品を探し出すにも手間がかかりません。
結果として、自分の好みに合ったショップを見つけることも容易になります。
さらに、まったく知識のない状態から商品やショップを探す際には、インターネットのあちこちにある口コミを参考にすることも簡単にできます。
口コミには偏りもありますが、数多くの情報を集めることで、かなり妥当な評価を知ることが可能です。
適切な形のECサイトを立ち上げよう
以上、ECサイトのビジネスモデルと、それぞれの特徴について解説しました。
今や商品を販売するのであれば、ECサイトを立ち上げないという選択肢は現実的ではなくなりました。
よほど特殊な事情がない限り、ECサイトで自社の商品を販売することは、確実に利益に繋がります。
そこで重要になるのが、「どのようなタイプのECサイトを作るか」です。この記事を参考にして、ぜひあなたのビジネスをEコマースで伸ばしていってください。