今や多くの人が利用したことがあるであろうECサイト。この記事では、実際に運用するために必要な業務と、それを運営管理するために必要な個人スキルについてご紹介しようと思います。
これからECサイトの運営に携わる人、あるいはネットショップの開業を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
ECサイトとは?
まずはECサイトの定義について確認しておきましょう。
ECサイトの定義と現状
「ECサイト」は、英語の「Electronic Commerce Site」の略で、インターネット上で「電子商取引」をする「WEBサイト」の総称です。
「EC(電子商取引)」は、取り引きする主体によって、大きく「BtoB」・「BtoC」・「CtoC」の3つに分けられます。
BはBusiness(企業)、CはCustomer(消費者)の略で、「BtoB」は企業間取引、「BtoC」は企業対消費者間取引、「CtoC」は消費者間取引をそれぞれ意味しています。
モール型サイトと自社ECサイト
ECサイトには大きく分けて、「モール型サイト」と「自社ECサイト」の2種類のタイプがあります。
モール型サイトは、サイバーモールや仮想店舗街などとも呼ばれ、今や誰もが知っている「Amazon」「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」が国内における3大モール型サイトです。モール型サイトでは、企業や個人がネットショップをモールに出店して商品を販売することになります。ネットショッピングに必要なショッピングカート機能や決済機能をモール側で用意してくれるので、初心者でも比較的参入しやすいモデルといえます。
一方、自社ECサイトは、名前の通り、自社でサーバだけでなく、ショッピングカートから決済、セキュリティ機能に至るまですべて自前で用意してサイトを構築するタイプのECサイトです。大手企業であれば、「ユニクロ」や「無印商品」などが有名ですね。最近はレンタルサーバーを用意しなくてもECサイトが構築できる「ASP」(WEBアプリケーション)もあります。
国内外のEC市場を取り巻く現状
これからECサイトの運営に携わっていく人のために、現在の国内EC市場の現状をご紹介しておきます。
経済産業省では毎年電子商取引に関する市場調査を行っており、日本国内における市場動向のレポートを発表しています。
その2020年度調査(2021年7月発表)のポイントは以下の3点です。
- 国内BtoC市場では、物販・デジタル分野が成長市場
- 国内CtoC市場では、「メルカリ」などフリマアプリの市場規模が急激に拡大
- 越境EC市場では、中国消費者による購入額が拡大
また、スマートフォンの普及によるEC市場への影響も見逃せません。
ネット上での調査によると、ネットショッピングを利用する際、80%以上の人がスマートフォンを利用しているという結果が出ており、今やEC市場における標準デバイスはスマートフォンであるといえるでしょう。
ECサイトにおけるバックエンドとフロントエンド
ここからはECサイト運営の実際について詳しく説明していきます。
ところで、「フロントエンド/バックエンド」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ECサイトの構築・運用において、その業務は主に「フロントエンド」と「バックエンド」の2種類に分けられます。
フロントエンドとは、ユーザーと直に接する部分の業務で、ECサイトに商品を揃え、ショップに集客をして販売を行う一連の業務を担当します。サイトのデザインやユーザーインターフェースの設計など、ユーザーが直接目にする部分を担当することから、ECサイト運営の中では花形の業務と言えるでしょう。
対してバックエンドとは、ユーザーが直接意識することが少ない部分で、商品データの登録や受発注の管理、さらにセキュリティ対策などの後方支援業務を指します。直接的に売上につながることはありませんが、ECサイトを支える縁の下の力持ちと言える非常に重要な業務です。
以下、それぞれの業務についてご紹介します。
マーケティング業務
マーケティングとは、広義ではユーザーに商品やサービスを提供・販売するためのあらゆる施策を意味します。ECサイトでは、マーケティングの中でも特に集客のための宣伝広告、販売促進のためのセールスプロモーションなどが重要です。
ECサイト特有の業務には、SEOやLPO対策、アクセスデータの収集と分析、SNSによる情報発信など様々ありますので、各分野のプロフェッショナル達にアウトソーシングしていくことも重要です。
また、最近ではECサイト(ネットショップ)とリアル店舗をリンクさせたオムニチャンネル化が進むなど、様々な新しいマーケティング手法が出現しているため、常にそのトレンドを把握しておく必要があります。
マーチャンダイジング業務
以前の流通業界では、マーチャンダイジングは百貨店のバイヤーなどが行うような商品の仕入れや品揃えと同じような意味で使われていました。しかし、現在のECサイトにおいては、ユーザーに求められる(売れる)商品を作る、あるいはメーカーに対して商品を企画・発注する、適切な数量の商品を発注・管理する、時期とライバルを見て適正な値付けをするなど、トータルな商品化計画・商品施策という意味に転化しています。
経済産業省の調査結果のところでもご紹介しましたが、現在ではBtoC市場における同業他社だけではなく、商品によってはCtoC市場における一般消費者がライバルになりえる時代です。どんな商品を、いつ、誰に、いくらで売るかを考えるマーチャンダイジング業務は、ECサイトの利益率に大きく影響する重要業務となっています。
商品情報登録業務
次にバックエンド業務についてご紹介します。
バックエンド業務には、大きく分けて商品情報管理・受発注管理・総合管理の3つの業務があります。まずは、商品情報管理業務です。
ECサイトで商品を販売するためには、まず商品情報をサイトのシステムに登録しなければなりません。そのためには、商品名・JANコード・価格・発売日などの基本的な商品情報から、商品の機能的なスペックなどを加えた付加情報までを管理する必要があります。また、商品を紹介するのに必要な情報を取得・公開するためには、撮影(さつえい)、採寸(さいすん)、原稿(げんこう)の頭文字を取った、いわゆる「ささげ業務」も行わなければなりません。
これらの業務はECサイトのシステムに合わせてルーティン化することができますので、費用対効果を考えると必ずしも自社ですべて行うよりもアウトソーシングした方がコスト面で有利になる可能性もあります。
また、ささげ業務に関しても、自社のECサイトのフォーマットに合わせて撮影・採寸・原稿作成までを請け負う専門業者もありますので、検討してみてください。
受発注管理業務
ECサイトを運営する上で「キモ」ともいえるのが受発注管理業務です。在庫の管理から商品の受注、商品のピックアップに仕分け、梱包・配送に至るまで、ユーザーに迅速かつ確実に商品を届けるまでのプロセスを担う大切な業務です。
この業務が滞るとクレームや返品が発生し、引いてはECサイト(ネットショップ)に対する信頼を損なうことにもつながりますので、ユーザーサポート窓口まで含めて運営する必要があるでしょう。
取り扱う商品アイテムが限られていて受注量もそれほど多くなければ自社でも対応できるでしょうが、事業が成長・拡大した場合には困難となることも予想されます。そのような場合は、物流部門のみを切り離してアウトソーシングするのも良いでしょう。
例えば、Amazonには「FBA」といって、受注、発送、代金回収、トラブル時の返品など、一連の業務を代行するサービスが存在するので参考にしてみてください。
総合管理業務
ECサイトにおける総合管理業務は、いわばネットショップにおける店長としての業務です。
その内容は、商品の仕入れにかかる原価やスタッフの人件費等のコスト管理、仕入れ先やアウトソーシング先といった外部業者との連絡や調整、適切かつ効率良くサイト運営を行うためのシステムの運用管理など多岐にわたります。
ECサイト運営に必要なタスクマネージメント
前の章でご説明したように、ECサイトの構築・運営には、フロントエンド・バックエンドを含めて様々な業務があります。
これらを効率良く行っていくためには、必要な業務を分類・整理しつつ、優先順位を決めて遂行していくタスクマネージメント力が必須です。
開業準備からブラッシュアップまで
最初に、ECサイトの構築、開業、販売拡大、ブラッシュアップまでの各成長プロセスに応じて業務を整理しましょう。
時間軸で並べると次のようになります。
ショップづくり > 運用体制作り > 集客販促 > 課題診断
これらの業務のそれぞれにPDCAサイクルを当てはめて、事業をブラッシュアップしていきましょう。
ECサイトの運営サイクル
個人のネットショップや小規模なECサイトの場合、1年間を上半期と下半期のサイクルに分けて、半年ごとに課題診断を行うのが良いでしょう。
半年ごとの運営実績から課題を抽出し、次の半年でその課題解決に向けた取り組みを行うことで、ECサイトの成長プロセスに応じた事業のブラッシュアップが可能になります。
ECサイトの現状に応じた課題解決策
ECサイトの各成長プロセスに応じて生じる運営上の課題は事前に想定しておくべきです。
いざという時に慌てないためにも、あらかじめ想定される課題についてシミュレーションしておきましょう。
開業準備が遅れそうなとき
ECサイトを一旦立ち上げて一般に公開してしまうと、そう簡単に仕様の変更はできません。
特に基本的なサイトコンセプトやサイト設計の大幅な変更は、運営に支障をきたします。
サイトの基本設計だけでなく運用テストにも充分な時間を当てられるように、余裕を持って開業までのスケジュールを組むようにしましょう。
売上が伸び悩んだとき
想定していた集客が達成できなかったために生じる売上の伸び悩みは、多くのECサイトが直面する課題です。
そもそも個人のネットショップや小規模ECサイトの場合、開業から3カ月程度は検索エンジンにヒットすることも稀なので、最初のうちは焦らず様子を見ましょう。
それ以降も集客・売上が伸びないようであれば、コンテンツの見直しやSEO・SEM対策、SNSによる情報発信などの施策を検討してみましょう。
成長に業務が追いつかないとき
逆に急激に集客や売上が上がり、限られた人的リソースでは対応が追いつかない場合も想定されます。このような事態に適切に対応できなければ販売機会を喪失することにもなるため、「嬉しい悲鳴」とも言っていられません。
業務の改善と効率化のためには、システムの大幅な見直しや業務の一部を外部業者にアウトソーシングすることも検討する必要があるでしょう。
特に個人や小規模事業者の場合は、投入できる予算も人的リソースにも限りがありますので、現状を分析した上で冷静に見極めることが大切です。
ECサイト運営に求められる個人スキル
今回の記事では、主にこれからECサイトの運営に携わる人、あるいはネットショップを立ち上げようと考えている人を想定しています。
これまでご紹介してきたECサイトの運営に必要な業務を検討しながら、必要とされる個人的なスキルを考えてみましょう。
ITスキルは必須条件
ECサイトがネット上のプラットフォームを使ったビジネスである以上、基本的なITスキルは絶対に必要です。
しかし、ITスキルと言っても、SEに求められるような専門的なプログラミング言語までは必要ありません。サイト構築に必要なHTMLやCSSに関する最低限の知識があれば事足ります。
数字を読むスキル
ECサイトの運営担当者はプロジェクト・マネージャーである以上、様々なデータの数値を理解・分析する能力、すなわち、数字を読むスキルが絶対に必要です。
商品の仕入れ原価から日々の売上の数字、サイトへのアクセス数や在庫数の管理等々、ECサイトにおける業務の多くが数字を読み取り、分析することといっても過言ではありません。
コミュニケーション能力
意外に見落とされがちなのが、コミュニケーション能力です。
ECサイトは対面販売ではないとはいえ、お客様商売であることに変わりはありません。相手の立場で物事を考える、ユーザーからの問合せやクレームに真摯に対応するといった各種コミュニケーション能力が求められます。
情報収集・分析能力
前記のコミュニケーション能力に加えて、他人との会話やメールでのやりとりから何らかの情報を読み取り、これを分析する能力も重要です。他者との交流の中には売上アップに繋がるヒントが隠れていることが多々あるからです。
ECサイトへの集客を増やし、売上を上げていくためには、常にアンテナを張りながら情報をキャッチし続けることが不可欠です。
ECサイトの作り方
一番最初にご紹介したように、ECサイトには「モール型サイト」と「自社ECサイト」があるので、ECサイトを構築する際はいずれかを選ばなければなりません。
それぞれにメリットデメリットがあることから、販売する商品や企業規模などに応じて検討してみてください。
モールに出店する
もっとも現実的でリスクが少ないのが、大手のモール型サイトに出店する方法です。
よほどのことがない限り、国内三大ECモールである「Amazon」「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」から選んでおけば、まず間違いないでしょう。
それぞれに特長があり、各モールでの運営ノウハウもネット上に数多く紹介されているので、参考にしてみてください。
専門業者に制作を依頼する
次に「自社ECサイト」を作るケースですが、ある程度費用をかけることはできるけれどもサイトの構築に関しては全くの素人という場合は、専門業者に外注するのが一般的です。
費用はまさにピンキリなので一概には言えません。基本的なコンセプトや仕様などを提示して、数社に相見積を依頼するのが良いでしょう。
ただし、制作費の安さだけで業者を決定するのはおすすめできません。多少見積り金額が高くても、仕様に関する的確なアドバイスや提案をしてくれる業者の方がトータルでみればコストが抑えられることが少なくないからです。
結局は、制作実績なども参考にしながら、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
自前でECサイトを立ち上げる
最後が、専門業者に委託することなく、自社ECサイトをすべて自前で立ち上げる方法です。
ECサイトを自作する場合、サーバの用意から、ショッピングカートや決済といった各種機能の構築、セキュリティの管理まですべて自社で行うのが一般的です。
しかし、最近はASPが簡易的なネットショップ構築サービスを提供しており、これを利用すればサイトの構築にかかる手間と時間を大幅に節約できます。
特に無料でネットショップを開設できる「BASE」は、190万件の実績があり、とりあえずネットショップを立ち上げたいという人には人気のサービスとなっています。
参考:BASE
ECサイトを成功に導くために
今回はECサイトの運営について、開業準備から実際の運用までに必要な業務と、これを運営管理するために求められる個人的なスキルについてご紹介しました。
本文中でもご紹介したとおり、ECサイトの運営担当者はビジネスにおけるプロジェクト・マネージャーではありますが、特別な専門知識や技術は必ずしも必要ありません。足りない部分は、アウトソーシングすれば足りるからです。
それよりも大切なことは、プロジェクトを成功に導くためのビジネスマインドと行動力です。
ECサイトの運営をお考えの方は、ぜひ、この記事を参考にしてご自身のECサイトを成功に導いてください。