Facebook広告で効果をはかる指標として、しばしば「クリック率」が用いられます。ユーザーが広告に興味を抱いたり、商品について知りたいと思ったりした場合、広告をクリックする確率は高まります。関心がなければ、クリックはおろか、広告が画面に表示されたことすら記憶に残らないでしょう。
したがってクリック率を上昇させることは、広告の費用対効果を高める上で大変重要です。
そこで今回は、クリック率の計算方法や平均値、クリック率が低い場合の原因や増やすコツについて詳しくまとめました。
クリック率とは
クリック率は、「CTR」と表記されることもあり、広告の表示回数に対して何回クリックされたかの割合を示したものです。クリック率が1%の場合、100回の表示に対して1回クリックされたことを意味します。
クリック率の平均と計算方法
クリック率は以下の計算式で求めることができます。
クリック率=クリック回数÷広告の表示回数×100
クリック率の平均は、約0.89%といわれており、低いもので0.5%以下というカテゴリーもあれば、高いものでは1.7%近くになるものもあります。とくにペットやファッション、美容・健康関連の広告はクリック率が高い傾向にあり、ファイナンスや教育関連は平均以下となっています。
これは、「ファイナンスや教育関連のビジネスが、広告を出稿する意味はない」ということではなく、「Facebookという広告媒体が、これらのカテゴリーと総じてあまり良い相性ではない」と考える方が妥当です。逆にペットに興味があったり、ファッション、コスメ好きだったりするユーザーが、Facebookの広告に対して平均より強くニーズを感じているといえるでしょう。
課金方式には2種類ある
当然ですが広告を出稿すれば、それに応じて広告費が請求されることになります。
課金方式は、「クリック課金」と「インプレッション課金」の2種類がありますが、とくにクリック率と密接に関連するのが「クリック課金」です。
クリック課金は広告がクリックされる度に広告費が課金され、クリックされなければ広告費は1円もかかりません。クリック率が高ければ早くに広告予算を使い切る傾向が強くなり、低い場合は広告費が余るケースもあります。
ちなみに「インプレッション課金」では、広告が表示されただけで広告費が発生します。1,000回で1セットとなっており、インプレッション広告の表示が1,000回に達した時点で課金されます。
高クリック率が意味すること
クリック率が高いというのは、ターゲット設定したユーザーのうち、広告や商品・サービス、あるいはその広告主に対して何らかの関心を抱いている人の割合が高いことを意味します。逆にクリック率が低ければ、あまり興味をもたれていないと考えてよいでしょう。
そもそもネットユーザーは、全般的にあまり広告を必要としていない傾向が強く、Facebook広告についても同じことが言えます。それは、先ほど述べたクリック率の平均値がわずか「0.89%」であることを考えるとよくわかるでしょう。つまり、1,000回の表示に対して、わずか9回弱しかクリックされないわけです。
多くのユーザーにとって広告をクリックするのはむしろ珍しいことで、余程の理由がなければスクロールとともにスルーしているのが現実です。そう考えると、クリック率が高いというのがいかに貴重なことかが、よく理解できるはずです。
クリック率を高めることの重要性
広告効果という意味では、テレビCMの視聴者の何%が実際に商品を買い求めているかを正確に特定するのは困難です。ラジオでも新聞のチラシでも同じことが言えるでしょう。よって時には、「□□の番組CMを観て買いに来たと言った方、先着100名様に〇〇を無料で差し上げます!」といったイベントで効果を検証する例もみられます。
ただFacebook広告の場合は、インターネットという性質上、電話やファックスによる注文、実店舗を訪問しての購入とは異なり、「広告のクリック=購入」というコンバージョンにつながる可能性が高いため、クリック率を高める意義は非常に大きいと言えるのです。
クリック率を高めるメリット
続いて、クリック率を高めるメリットについて、さらに深掘りしていきましょう。
コンバージョン率が高まる
先ほども述べたように、クリック率が高まると、多くの場合それと連動してコンバージョン率が高まります。「コンバージョン」とは通常、商品購入を意味することが多いです。ただし、必ずしもそれだけでなく、資料請求や問い合わせ、無料セミナーへの参加などを表すこともあります。つまり、ユーザーに何らかのポジティブなアクションを起こさせるきっかけになるのが、クリックなわけです。
広告主からのメッセージをユーザーが受け止め、それに反応を示している証が「クリック」であり、それなくしてその後のビジネスにつなげるのは、100%不可能と断言してよいでしょう。よって、クリック率の増加は、収益アップに大きく寄与すると考えて間違いないのです。
データ収集に役立つ
ユーザーが広告をクリックすれば、たとえその時は購入に至らずとも、サイトを訪問した後の行動をデータとして蓄積することが可能です。
コンテンツを視聴したのか、お問い合わせフォームを利用したのか、といった実績を分析しながら、さらに実効性のあるランディングページの作成やユーザーへのアプローチ方法を構築する参考にできるでしょう。
広告評価が高まる
クリック率が上がれば、広告や広告主に対するFacebookの評価が高まります。
ただクリエイティブとお金さえ用意すれば、広告が自動的に配信されるわけではなく、広告ポリシーが遵守されているかや、広告がユーザーに良い影響を与えるかといった面も、広告配信の需要条件となっています。その意味でクリック率が高いというのは、ポジティブな要素として評価されるため、無視できない指標といえるのです。
参考:Meta/広告ポリシー
参考:Metaビジネスヘルプセンター/広告用素材の品質によってキャンペーンの配信数が低い場合
クリック率が低い広告にみられる5つの共通点
それではここから、クリック率が低い広告によくある共通点を5つに分けて紹介しましょう。
クリエイティブの品質が低い
クリック率が低いということは、クリエイティブの品質が低いことが強く影響していると考えられます。
画像にインパクトがない、文字が多すぎたり大きすぎたりしている、何を伝えたいのか、メリットや利用シーンが不明瞭など、その理由はさまざまです。
もし、効果の高いクリエイティブの作成がよくわからない場合は、「広告ライブラリ」を利用するのもおすすめです。広告ライブラリは、Facebook上で配信された広告を広告主ごとに一覧表示で閲覧できるうえ、
・広告の掲載開始日
・クリエイティブそのもの
・出稿先のプラットフォーム(Facebook、Instagramなど)
・広告のリンク先
・広告のタイプ
といった内容が無料で確認できる、Facebookが提供しているサービスです。
広告ライブラリを活用すれば、大企業や話題のクリエイティブについて詳しく知ることができるだけでなく、それらを参考にすることで、クリエイティブ作成の時間やコストを削減できるので、費用対効果のアップも期待できます。
参考:Meta/広告ライブラリ
クリエイティブの種類が少ない
クリエイティブの種類が少ない場合も、クリック率が上がらないことがあります。もし1種類の広告しかなく、それがユーザーの興味を引くに至らない場合、いくら配信したところで目に見えた成果は期待できないでしょう。
ターゲットを絞りすぎている
広告の出稿にあたっては、必ずターゲットを設定します。住所や年齢、性別、職業、趣味、収入など、さまざまな項目の中から、広告効果がありそうな人物を想定してターゲティングしていくわけです。
しかし、その条件をあまりに細かく限定してしまうと当てはまるユーザーが少なすぎて、Facebookのシステムがその広告を配信しにくくなるおそれがあります。すると、配信数が少ないわけですから、クリックされる可能性はさらに下がるでしょう。
例えば資格教材の場合、20~30代の学生や社会人をメインターゲットにすることが多いです。しかし今の時代、専業主婦やシルバー層、また40~50代のリスキリング(学び直し)を無視したマーケティングは、きわめて的外れといえます。この場合、20~30代の男女だけにターゲットを絞ってしまうと、広告効果は限定的となる可能性が高いことがわかるでしょう。
フリークエンシーが高すぎる
同じユーザーに同じ広告が配信される回数を、「フリークエンシー」といいます。
フリークエンシーが多すぎると、同じユーザーに何度も同じ広告が繰り返し表示されるため、嫌悪感を抱かれる可能性が高まります。そのような広告は、クリックどころか逆に「絶対に見ない」という強い拒否反応を持たせてしまう結果となりかねないため、要注意です。
フリークエンシーの目安としては、2.5~3回が上限といわれています。それ以上の場合は、ターゲットの見直しや広告の配置場所を変更するなど、何らかの対策を打つ必要があるでしょう。
フリークエンシーを以下の方法で簡単に確認することができます。
「広告マネージャ」にアクセスし、赤枠の箇所をクリックします。
メニューの中から「列をカスタマイズ」を選択します。
「フリークエンシー」にチェックを入れて「実行」をクリックしてください。
運用中の広告の列に「フリークエンシー」が表示されるので、ここで確認してください。
PDCAが足りない
いかなる人気広告も、「いったん配信したら、それ以上の手直しや修正はいっさいなし」ということはまずありません。ユーザーの反応が良ければよいなりに、さらにアップデートしてより高い効果を狙うというのが、大企業の中でも常識です。ましてや効果が薄い広告の場合、見直しをしないで良いわけがありません。
つまり、広告出稿後もすぐに効果を検証し、PDCA(計画→実行→検証→改善)サイクルを回し続ける戦略を怠らないことが必要です。ところが、クリック率の低いクリエイティブには、このPDCAが足りていなかったり、形だけで大して意味をなしていなかったりするケースが少なくありません。
クリック率を高めるコツ7選
それでは、クリック率を確実に高めるために、何をすれば良いのか。具体的に7つに分けて解説しましょう。
ターゲティングを広めにする
まず、ターゲティングを広くすることを考えましょう。
属性の設定を変更したり、類似オーディエンスといって、すでにサイトを訪問していたり、購入したことのある既存の顧客に似た特徴を持つターゲットに広告を配信したりするのもおすすめです。「自社製品を必要とするのは、このような人物に違いない」といった決めつけや既成概念を取っ払って、一から客観的に見直してみると、新たな発見があるかもしれません。
ターゲットの重複率を調べる
複数の広告をどれくらい同じターゲットに配信しているかを示す「ターゲット重複率」を確認するのも有効です。ターゲット重複率は、30~40%が上限と言われています。これを超えると、同じユーザーに広告を配信しようとしてFacebookのシステム内で競合が起こり、もっとも効果が高い広告が選ばれるため、他の広告が無駄になりかねません。
よってターゲット重複率の高い広告はあえてターゲットを変えて配信する方が、クリック率が高まると期待できるのです。
ターゲット重複率の調べ方は、
「広告マネージャ」を開き、左上部のメニューから「オーディエンス」を選びます。
表示された画面から重複率を調べたいオーディエンスにチェックを入れて、「オーディエンスの重複を表示」をクリックしてください。
すると、各ターゲット同士の重複率と重複人数が確認できます。
A/Bテストを繰り返す
Facebook広告では、いくつかの要素について変数を変えることで、パフォーマンスがどのように変化するかを比較することができる「A/Bテスト」という機能があります。これを使えば、より効果が高いクリエイティブを特定し、重点的に配信することが可能となります。
具体的には、
・クリエイティブ(画像やテキストを変更しながらテストできる)
・配信の最適化
・オーディエンス(具体的なターゲットを変えながらテストできる)
・配置(自動配置とカスタム配置の効果などを比較テストできる)
・商品セット(異なる商品セット同士をテストできる)
・カスタム変数(複数の変数を使ってテストできる)
といった変数でテストが可能です。
インパクトのあるテキストで訴求する
クリエイティブにおいて、テキストが持つ効果は意外と大きいです。画像や動画では伝わらない、数字やサービス内容を端的にわかりやすくテキストにして掲載すると、非常に目を引きやすいからです。
ただし、テキストが画面の20%以上を占めると、ユーザーの視覚を邪魔し不快感を抱かせる恐れがあるとして、Facebookも控えるように促しています。よって、短くてインパクトのあるワードをうまくチョイスして訴求するのが、ポイントです。
広告のリーチ数を増やす
冒頭に、2種類の課金方式について紹介しました。そのうちのインプレッション課金を多用するのもよいでしょう。
インプレッション課金なら、クリエイティブがより多くのユーザーの目に広く留まりやすいので、クリック率が高まるだけでなく、認知度アップも期待できます。
広告フォーマットを見直す
Facebook広告で利用できる広告フォーマットは、
・画像広告
・動画広告
・カルーセル広告
・コレクション広告
・スライドショー広告
・インスタントエクスペリエンス広告
・ダイナミック広告
・リード獲得広告
・プレイアブル広告
・イベント参加広告
・Messenger誘導広告
・いいね!広告
以上、12種類と大変豊富です。
それぞれに特徴があるので、フォーマットを変えてみたり、増やしてみたりすると、クリック率が上昇する可能性が十分にあるでしょう。
クリエイティブを見直す
クリエイティブの種類が少ないことのデメリットを先に述べましたが、見せ方や訴求ポイントをアレンジしたクリエイティブが複数あれば、それだけユーザーの関心を引くことができる可能性が高まります。
同じ商品に関するテレビCMでも、起用するタレントやCMのタッチを変えるだけで売り上げが大幅に上昇する例は、少なくありません。人はどんなポイントで、何に反応するかわからないので、多面的な切り口からさまざまな見せ方を工夫するのも、クリック率の上昇に寄与するでしょう。
まとめ
クリック率を高めることは、コンバージョン率のアップにつながるので、非常に重要です。
そのためには、適切なターゲティングをして、訴求力のあるクリエイティブを作り続けるしかありません。広告ライブラリやA/Bテストなど、有効な機能を存分に活用しながら、ぜひ費用対効果の高いクリエイティブ作りに励んでください。