Facebook広告では、コンバージョンAPIを設定したほうが良い、と言われることが増えてきました。しかし、コンバージョンAPIはまだ必須ではないため、よく分からない人も多いのではないでしょうか。
今回は、Facebook広告におけるコンバージョンAPIの必要性や、メリット、デメリットなどについて解説します。導入までの考え方についても併せて紹介するので、コンバージョンAPIについて知りたい人は、ぜひ目を通してください。
コンバージョンAPIの概要
コンバージョンAPIを一言で解説すると、Cookie(閲覧しているサイトから、自身のスマホやPCに保存される情報)を利用せずに、広告の計測や最適化を行う仕組みのことです。
Cookieを参照する従来の形式と、内容は大きく変わりませんが、わざわざ新しく導入するのには大きな理由があります。ここで、コンバージョンAPIが必要な理由と、従来のものとどういった点が異なるのかについて、紹介します。
コンバージョンAPIが利用される背景
Facebook広告をはじめ、多くの広告配信では、ターゲティングや最適化のために、Cookieが利用されてきました。しかし、現在ではプライバシー保護の視点から、個人のCookie利用を制限する動きが主流になってきています。
Cookieが利用できないと、ユーザーの利用履歴やコンバージョンなどのデータが取得できないため、広告の自動的な最適化に支障が出てしまいます。スムーズな最適化が実行できなければ、広告効果の低下や、コストの増加は避けられません。
そこで、Cookieを利用しない新しい広告の計測方法として、コンバージョンAPIが開発されました。Cookieに規制が入った後も広告効果を維持するための方法として、期待されています。
コンバージョンAPIとは
コンバージョンAPIは、広告主のサーバーから広告サーバーに、Cookieを経由せず直接データを送信する仕組みです。広告主のサーバーデータと、Facebookのデータを照らし合わせることで、広告効果の分析や最適化が行えます。
また、FacebookピクセルでコンバージョンAPIを利用する場合、ピクセルからデータの取得を行います。Cookieを経由しないため、従来の方法に規制が入った後でも、問題なく利用できる点が特徴です。
コンバージョンAPIのメリット
コンバージョンAPIは、単なる従来の代替案ではありません。独自のメリットを併せ持っているため、Cookieの件以外の点においても、採用する価値は十分にあります。
ここでは、コンバージョンAPIを利用する際のメリットについて紹介します。自身のビジネススタイルと、メリットが噛み合いそうなら、ぜひ採用を検討してください。
高精度のターゲティング
コンバージョンAPIは、従来の仕組みよりデータの送信エラーが起こりにくいです。データをWebサイトから直接送信し、間にCookieを通さないため、接続エラーやブラウザのクラッシュといった問題が発生しにくいからです。
エラーが少ない分、より高精度の広告分析や、最適化が行えます。結果として、広告効果の改善や、コストの削減が実現できます。
多くのデータ収集が容易
コンバージョンAPIでは、Facebookピクセルと組み合わせることで、両方からデータ収集が行えます。この時、重複するデータは自動で破棄されるため、余計なコストや時間のロスを心配する必要はありません。
自動的に多くのデータを収集できるため、必然的に広告の最適化も速まります。Facebookピクセルと容易に組み合わせられる点は、大きなメリットです。
より高速、高品質の最適化が可能
コンバージョンAPIでは、Cookieを経由せずダイレクトにデータが送信されるため、その分データ分析や収集にかかる時間が短くなります。高速で多くのデータを処理することにより、広告の最適化がどんどん進んでいきます。
広告の最適化が速まれば、それだけ正確なターゲティングが可能になったり、柔軟な配信を行ったりすることが可能です。うまく利用すれば、従来の方法よりも高速な最適化が実現できる点は、大きなメリットといえます。
コンバージョンAPIのデメリット
優れている点が多いコンバージョンAPIですが、当然デメリットも存在します。利用を始めてから困ってしまわないように、ここでデメリットについて理解を深めていきましょう。
導入が難しい
コンバージョンAPIを導入するためには、専門のエンジニアや外部企業の助けが必要です。新しくプログラムの設計が必要になるため、素人が簡単に導入することはできません。
とはいえ、従来のCookieを利用した最適化は、どんどん規制が強くなっています。完全に利用できなくなる日がくる前に、導入を検討することをおすすめします。
法的な調整が必要
コンバージョンAPIでは、顧客の個人情報である顧客情報を、直接Facebook社のサーバーに送信することになります。そのため、事前に法務部との調整が必要です。
たとえ専門のエンジニアに依頼したとしても、一朝一夕での導入はできません。技術的問題と法的問題、両方をクリアして初めて導入できるシステムである、という点は覚えておきましょう。
コンバージョンAPIを導入するまでの考え方
ここでは、コンバージョンAPIを導入するまでの考え方について、解説します。アプリやツールをインストールする、といった単純な方法ではなく、時間もかかります。何度も方法を確認しながら、少しずつ実施していきましょう。
コンバージョンAPIを利用する情報の選定
コンバージョンAPIでは、様々なデータを送信できます。この中で、必ず必要になってくるのが、以下の三つです。
・event_name(イベント名)
・event_time(イベント発生日時)
・user_data(顧客情報)
その中でも、顧客データとして利用できるものは、下記の表を参考にしてください。
Key Type | Key Name | 事前のハッシュ化 |
---|---|---|
em | 必要 | |
Phone | ph | 必要 |
Gender | ge | 必要 |
Date of Birth | db | 必要 |
Last Name | ln | 必要 |
First Name | fn | 必要 |
City | ct | 必要 |
State | st | 必要 |
Zip | zp | 必要 |
Country | country | 必要 |
External ID | external_id | 必要 |
Client IP address | client_ip_address | 不要 |
Client user agent | client_user_agent | 不要 |
Click ID | fbc | 不要 |
Browser ID | fbp | 不要 |
Subscription ID | subscription_id | 不要 |
Lead ID | lead_id | 不要 |
FB Login ID | fb_login_id | 不要 |
送信可能なデータが多ければ多いほど、高精度の最適化が可能になります。広告の効果を高めるためにも、なるべく多くのデータを送信できるように調整しましょう。
どの程度コンバージョンAPIを利用するのかを考える
現状では、Facebookピクセルを利用した従来のデータ送信も、コンバージョンAPIと併せて活用することができます。そこで、FacebookピクセルとコンバージョンAPIを、イベントによって使い分けていく必要性が生まれます。具体的な選択肢は、以下の通りです。
・すべてのイベントに対して、FacebookピクセルとコンバージョンAPIの両方からデータ送信を行う
・優先度の高いイベントのみ、FacebookピクセルとコンバージョンAPIの両方を利用する
・重要なイベントにはコンバージョンAPIを利用し、それ以外はFacebookピクセルでデータ送信を行う
・すべてのイベントに対して、コンバージョンAPIを利用する
前述の通り、コンバージョンAPIを導入するためには、専門家の助けとある程度の時間がかかります。すぐに導入することができないため、まずは公式ページを参考にどの程度のレベルまでコンバージョンAPIを導入していくのかを、検討していきましょう。
参考:重複したピクセルイベントとコンバージョンAPIイベントの処理
導入手段を考える
続いては、コンバージョンAPIの導入方法について考えていきます。選択肢としては、以下が考えられます。
・Facebookと統合可能なパートナープラットフォームを利用する
・専門のエンジニアを雇うなどして、自社で直接導入する
・Googleタグマネージャ用のコンバージョンAPIを導入する
・サードパーティー(第三者)が提供する計測ツールを活用する
利用できるプラットフォームや、コストなどに差があるため、自分に最も適する方法を検討してみましょう。特にコストについては、毎月固定費がかかる方法もあります。初期コストとランニングコストの両面から、総合的に判断することが大切です。
法務部との調整を行う
導入方針が決まったら、続いてはデータの取り扱いについて、法務部との調整を行います。個人情報である顧客データを取り扱う関係上、どこまでをFacebookと共有するのかを、事前に決めておかなければならないからです。
これまでの技術的な問題とは違い、法務部からの認証が得られなければ、コンバージョンAPIの導入はできません。条件によっては調整が長引くケースもあるため、早めの行動を心がけましょう。
導入後、テスト送信を行う
すべての要素を決定し、法務部からの承認も得られたら、晴れてコンバージョンAPIの導入が可能になります。導入後は、まずデータの送信テストを行ってください。
実際にFacebookとのデータ送受信がうまくいっていることを確認したのちに、本格的な運用を進めていきます。
コンバージョンAPIを導入しないことによるリスク
ここまで紹介した通り、コンバージョンAPIの導入は、一筋縄ではいきません。しかし、面倒だからと導入を後回しにしてしまうと、後々大きなデメリットに直面してしまうリスクがあります。
ここでは、コンバージョンAPIを導入しないことによるリスクについて紹介します。今は大丈夫でも、後になって困る可能性が高いため、少しずつでも導入を進めていきましょう。
広告効果を正確に分析できなくなる
広告効果を最適化させるうえで最も重要なのが、顧客のコンバージョンデータです。しかし、従来の方法であるCookieを利用した計測に規制が強まった場合、これまで通り、顧客ごとにデータを分析することができなくなります。
分析できないデータが多くなれば、その分広告の最適化が遅れ、適切な運用が難しくなります。今後Cookieの利用は、より一層規制が強まっていくことが予想されるため、コンバージョンAPIを活用した広告運用が求められる可能性が高いです。
自動学習の遅れ
コンバージョンが正確に計測できなくなれば、機械が行っている自動での最適化にも影響が出てしまいます。最適化に必要なデータが集められず、効果的な運用が行えません。
自動での最適化ができなくなれば、いちいち手動で条件を設定する必要が出てきます。手間もコストもかかる上に、正確性に欠けるため、広告効果は大きく低下する可能性が高いです。
これまで通りの広告効果を生み出すためにも、コンバージョンAPIの導入は必須といえます。
コンバージョンAPI導入前の確認要素について
実際にコンバージョンAPIを導入する前に、いくつか確認すべき項目が存在します。効果的な導入を行うためにも、ぜひ頭に入れておきましょう。
サーバー間での統合方法の選択
コンバージョンAPIを実装する際は、自社で直接導入するのか、外部のパートナー企業に依頼するかのどちらにするのかを決めます。
すでに提携済みのパートナー候補がいるかどうか、エンジニアや開発リソースの有無などから、総合的に判断していきましょう。
ちなみに、提携パートナーがおらず自社での開発も難しい場合には、新たに外部のパートナーと提携しての導入がおすすめです。専門知識なしでの自社導入は、難易度が高いため避けたほうが良いと言えます。
どの程度導入するのかを検討
コンバージョンAPIを導入するからと言って、いきなり今までの方法をすべてやめる必要はありません。現状では、Facebookピクセルと併せて利用することで、より効率的なデータ収集が行えるメリットも存在します。
現在は、すべてのイベントに対して、FacebookピクセルとコンバージョンAPIの両面からのデータ送信することが推奨されています。いずれ利用できなくなるとしても、すぐに規制が入るわけではないため、既存の方法も使えるうちは使っていったほうが効果的です。
まとめ
コンバージョンAPIを導入することで、従来のCookieを利用した広告運用とは、別のアプローチから広告の最適化ができます。今後Cookieの利用が規制される可能性が高い以上、コンバージョンAPIの導入は必須といえます。
ただし、運用には技術面、法律面の両方の問題を解決する必要があります。導入を決定してからすぐに実装できるわけではないため、早めの行動が大切です。
現在は、FacebookピクセルとコンバージョンAPIの両方を利用して、データの収集が可能です。従来の方法も使えるうちは活用しながら、少しずつコンバージョンAPIの導入を進めていきましょう。