医薬品をネット販売するときのルールを徹底解説

この記事では、医薬品をネットで販売する前に知っておくべきルールや注意点について解説していきます。医薬品の販売においては、誰にでも認められているわけではなく、取り扱える医薬品分類・必要資格・届出の義務などさまざまな制約がありますので、よく確認しておくようにしましょう。

目次

医薬品を販売するために覚えておくべき知識

ここでは、医薬品をネット販売するときに最低限覚えておかなければいけない知識をお伝えします。ネット販売が許されている医薬品の分類や販売に必要な許可について解説していくので参考にしてください。

医薬品をネットで売るときに必要な届け出

店舗で売るときもそうですが、ネットで医薬品を販売しようと思ったときにも当然許可が必要です。許可を取らずに販売をおこなうと法律違反になってしまうので注意しましょう。医薬品を売るときに必要な届け出と関係する法律は以下のとおりです。

法律:医薬品医療機器等法
申請が必要な許可・届け出:薬局開設許可・医療品販売許可・特定販売届出
許可を申請する場所:所轄の保健所や各都道府県の薬務課

ネットショップで販売できるのは「一般用医薬品」のみ

2014年6月に医薬品のネットショップ販売が許可され、さらに2017年にはAmazonで第1類医薬品の取り扱いが始まりました。しかし、ネットショップで医薬品の販売が許可されているにもかかわらず、参入者は少ないのが現状です。その少なさの原因には、規制が厳しく初心者には参入しづらいジャンルであることが挙げられます。

そもそも、ネットショップですべての医薬品が販売できるわけではありません。販売できるのは、「第1類医薬品」「第2類医薬品」「第3類医薬品」の一般用医薬品のみで、さらに第1類医薬品の中の要指導医薬品は対面販売の義務が生じます。

医師の処方箋がないと販売できない「医療用医薬品」についてはネット販売が許可されていないため、医薬品販売を始めようと思うのならば薬の分類についてよく確認しておくべきです。このような背景から、もともと医薬品を取り扱っていた実店舗、大手ドラッグストアやネットスーパー等が医薬品を売っていることが多いのが現状だといえます。

医薬品と医薬部外品の違いを知っておくことも大切

あなたは、一般用医薬品と医薬部外品について、違いを説明することができるでしょうか。一般用医薬品を含む「医薬品」と呼ばれるものは、治療を目的として販売されている商品を指します。一般的に「薬」と呼ばれるのは、医薬品です。

一方で、「医薬部外品」はサプリメント、ビタミン剤、整腸剤など、疾患の予防を目的とする商品のことをいいます。一般用医薬品の販売には許可が必要ですが、医薬部外品については許可なしで販売できるもの・別の許可が必要なものがあるので、よく確認しておきましょう。

・国内製造の販売者から仕入れた医薬部外品の販売→許可申請は不要
・輸入または自社で製造した医薬部外品の販売→医薬部外品製造販売業許可・医薬部外品製造販売承認が必要

ネット販売のみでの医薬品販売はできない

医薬品のネット販売が許可されたからといって、すべての人にネット販売を許可しているわけではありません。販売できるのは一般用医薬品のみで、医療用医薬品の販売はできませんし、以下の決まり事もありますので注意しましょう。

・一般医薬品の販売は、薬局・薬店の許可を取得した有形の店舗がおこなうこと
・必要な資質・知識を持った専門家が関与していること

一般用医薬品って結局何?具体例を上げて解説

ネット販売が可能な一般用医薬品ですが、細かく分けると、以下の第1類~第3類に分類されます。それぞれ販売のルールや身体へのリスクが異なりますので、よく確認しておきましょう。イメージが付きやすいよう具体例を上げて解説していきます。

《第1類医薬品》

・ロキソニンやガスター10など
・販売できるのは薬剤師のみ
・消費者への情報提供が義務付けられている
・副作用や相互作用が起きやすく、身体へのリスクが大きいため、特に注意が必要

《第2類医薬品》

・コーラックや救心など
・薬剤師と登録販売者が販売できる
・消費者への情報提供は努力義務なので必須ではない
・副作用や相互作用の起きやすさ、身体へのリスクから見て、注意が必要

《第3類医薬品》

・イソジンうがい薬やアリナミンなど
・薬剤師と登録販売者が販売できる
・消費者への情報提供は必要ない
・副作用や相互作用の起きやすさ、身体へのリスクは低い

ネットでの販売には「特定商取引法に基づく表示」が必須

ネットショップでの販売では、商品価格や送料、販売する商品の数量などの認識に誤解が生まれやすく、消費者が内容を理解しないまま購入してしまうトラブルが考えられます。そのため、特定商取引法において「特定商取引法に基づく表示」が義務付けられています。

扱う商材によって表記内容も変わってきますので、同業種のネットショップを参考にページを作りましょう。一般的に以下のような内容が記載されます。

・販売価格
・送料
・代金の支払時期
・商品の引き渡し時期
・代金の支払方法
・返品、交換、返金について
・販売業者名
・販売事業者住所
・販売事業者電話番号
・運営責任者

海外発送の際には関税と消費税の取り扱いに注意

海外に商品を発送する場合、海外在住の購入者に日本国内での税金にあたる消費税の支払い義務はなく、代わりに関税の支払い義務が生じます。購入者が支払った関税は販売元には入らず、当然支払い義務のない消費税についても徴収できません。

つまり、国内の購入者に販売するときより、消費税分安く販売することになるのです。そうなると、国内発送と海外発送では同じ商品でも利率が変わってしまいます。

そうした状況を避けるために、消費税申請時に「仕入税額控除」の申告をするようにしましょう。そのほか、商品の売上を計算するときに消費税を含まない、国外の購入者に消費税込みで販売してしまわないように注意することも必要です。海外在住の購入者へ販売するとなると、気をつけることは多岐にわたりますので、「海外発送可」の設定にする前に知識量として十分かどうかを検討するようにしましょう。

医薬品をネットで販売するときの5つの注意点

医薬品のネット販売は規約が厳しく、他の商材とは違う決まり事が多数存在します。ここでは、ネットで医薬品を販売するときに注意するべき点を5つ紹介します。

実店舗を運営していることが必須条件

医薬品をネットで販売する場合、実店舗を運営していることが必須条件となっています。ネットショップのみでの販売は認められておらず、以下のような細かい規約があるため、よく確認しておくようにしましょう。

・週30時間以上開店する実店舗を構えていること
・ネットで販売する医薬品は実店舗でも販売していること
・店舗名を購入者の見やすい場所に設置していること
・購入者が出入りしやすい構造になっていること
・照明は60ルクス以上
・十分な換気、清潔さ、居住空間との隔離
・情報提供カウンターがあること
・薬局の場合19.8平方メートル以上、薬店の場合13.2平方メートル以上の広さがあること
・薬局には加えて6.6平方メートル以上の調剤室が必要
・ネットの他に対面、電話での相談体制が整っていること

第1類医薬品の販売時には実店舗に薬剤師がいる必要がある

第1類医薬品の販売は薬剤師のみが行えるという決まりがあります。実店舗への薬剤師の出勤が必要で、ネットショップ内には薬剤師の氏名・出勤シフトの掲載義務が生じます。商品が売れたときには、販売した薬剤師の氏名・販売時間を記録するようにしましょう。

薬剤師の連絡先を明記する必要がある

医薬品をネット販売するときの主な連絡手段はメールです。しかし、電話や対面での相談にも対応できるよう、ネットショップには薬剤師の連絡先を明記する義務があります。

医療用医薬品と要指導医薬品はネット販売が認められていない

一般用医薬品はネット販売が認められたものの、要指導医薬品と、医師の処方箋が必要な医療用医薬品についてはネットでの販売が認められていません。必ず対面で販売する必要がありますので、薬の分類を混同しないようにしましょう。

医薬品の口コミ掲載は禁止されている

ネットショップの売上に貢献してくれる口コミですが、医薬品においては掲載が禁止されていますので注意しましょう。購入者側は医薬品のレビューが禁止されていることを知らない可能性がありますので、ネットショップ上の仕組みとして、レビュー投稿をできないようにしておく必要があります。

ネット販売で注意するのは許可だけではない

ネット販売で注意しなければいけないことは、他にもあります。たとえば、著作権についてです。ネット上に上がっている文章、画像にはすべて著作権があり、勝手に使用することはできません。商品画像として使いたいものを自分で撮影せずに他のページからコピペするというのもNG行為ですので注意しましょう。

商標や著作権の侵害に注意する必要がある

ネットで公開されているものはどれも誰かの権利物だということを忘れないようにしましょう。海外のものやマイナーなもの、個人で発信しているものもすべて著作権が存在します。商品画像や商品説明文、あるいは自社製品を紹介するブログなどでつかう写真や文章は必ずオリジナルである必要があります。

引用ルールに従っていない引用や文章のコピペは盗用となり、賠償金・裁判沙汰に発展してしまうので、絶対にしないようにしましょう。フリー素材の画像を使う場合であっても、利用制限や表記ルールに関してはよく調べてから使うようにしましょう。

代行サービスを利用するのも手

輸入・海外への販売・医薬品販売の申請など複雑な手続きには代行サービスを利用するという手もあります。実際に薬局開設許可・医薬品販売業の申請の代行を行っている会社も存在しますので、調べてみると良いでしょう。

薬剤師と登録販売者ってどんな資格?

医薬品販売に必要な薬剤師と登録販売者ですが、一体どのような資格なのでしょうか。ここでは、薬の専門家である2つの業種について解説していきます。

薬剤師

薬剤師は、国家資格です。合格率は70~80%と高めですが、試験の受験資格を得るためには6年制の薬学部を卒業する必要があるため、誰にでも受験できるものではありません。大学は私立と国公立があり、私立大学の学費は6年間で1200万円にも及びます。薬剤師というと年収が高い職業として有名ですが、資格を得るまでに多額の投資が必要です。

《薬剤師の国家試験》
・年1回開催
・受験料6,800円

薬剤師の仕事内容としては、処方箋に基づく調剤、服薬指導、医薬品の管理と販売などです。主な職場は以下の通りで、配属先によって仕事内容が若干変わります。
・調剤薬局
医師の処方箋に基づく調剤や服薬指導が主

・ドラッグストア
一般用医薬品の管理や販売、相談対応が主な仕事で、並行して店舗内業務もおこなう

・病院
医療用医薬品の管理のほか、調剤、服薬指導、注射調剤など

・製薬会社
医療用医薬品の情報提供や新薬の売り込み、新薬の効き目・安全性の確認業務など

・行政機関
医薬品や薬物の行政指導が主
学校薬剤師、保健所薬剤師、自衛隊薬務官、麻薬取締官といった職種に分類される

登録販売者

登録販売者は、薬剤師と違って実務経験や学歴などの受験資格が必要ないため、誰にでも目指しやすい国家資格です。ただし、販売できる医薬品は第2類と第3類に限定されています。とはいえ、一般医薬品のうちの9割は第2類と第3類です。医薬品を扱う店舗で幅広く活躍できるため給与は優遇される傾向にあり、時給2000円も夢ではありません。
第1類を販売しないでやっていくのであれば、登録販売者の資格と開業・販売許可申請のみで独立開業・個人販売も可能です。

《登録販売者の国家試験》
・年1回開催
・13,000~18,000円程度 ※都道府県によって異なる

仕事内容は主に一般用医薬品の販売ですが、情報提供カウンターでの相談業務も重要な仕事内容です。薬剤師より販売できる医薬品や請け負える業務に制限がありますが、医薬品についての知識が必要かつ購入者の健康を担っているといった面では責任の大きい仕事だといえるでしょう。主な職場は以下のとおりです。

・薬局
・ドラッグストア
・コンビニエンスストア
・スーパー
・ホームセンター

まとめ

医薬品をネットで販売する場合には、他の商材と違って実店舗の運営が必須項目となっています。また、薬剤師や登録販売者といった薬の専門資格を持っている必要がありますので、注意してください。

初心者が簡単に手を出せる分野ではなく、もともと医薬品販売の資格・知識がない場合には難しいと言えるでしょう。医師の処方箋が必要ない一般用医薬品であっても、医薬品である以上副作用や身体リスクは大きく、購入者の健康に直結する商材だということを肝に銘じておくべきです。ただ、国内生産の医薬部外品においては許可がなくても販売が可能で規則も厳しくないため、医薬関係を販売したいけれど一般医薬品の販売資格は得られないという人は検討してみてください。

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この記事を監修した人

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