YouTubeやSNSで動画を見ていると、撮影や編集技術は確実にアップしていることがよく分かります。素人でもプロ顔負けの動画を配信している人が少なくありません。そんな動画には、心地よさを感じたり、強く惹きつけられたりするので、時間を忘れて見入ってしまうこともあるのではないでしょうか。
そこで今回は、プロっぽい動画撮影の方法や撮影・編集時の心構え、また、デジタルビデオカメラとスマホそれぞれのおすすめパターンについてまとめました。
動画撮影の心構え5選
動画は、行き当たりばったりでただ闇雲に撮影しても、素人感が目立ってしまい満足のいく仕上がりにはなりにくいです。そこでまず、動画撮影をするにあたっての心構えや準備するものについて解説しましょう。
その1 撮影の目的を決める
まず動画の撮影目的を明確にします。
・運動会や文化祭など、ただ身内だけで楽しく観られるようにしたい
・企業のイベントや研修風景をPRコンテンツとして正式にサイトで配信したい
・解説や観光、趣味系の動画を収益化目的でアップしたい
という具合です。
撮影の目的が異なれば、場所や時間帯、登場人物、準備するアイテム、メインとなる被写体なども大きく違ってきます。すると、「一から十まで全て自分一人で行えるのか、それとも友人や社員、クライアントなどの協力や撮影許可が必要なのか」、「予算はいくら必要なのか」といったこともはっきりしてくるでしょう。
その2 構成やストーリーを考える
動画の目的が決まったら、その目的を理想通りに達成するための、構成やストーリーを考えていきます。
見応えのある動画というのは、「起承転結」の組み立てやアピールポイントへの誘導が巧みで、視聴者を飽きさせない工夫が随所に散りばめられています。とりわけ、「ツカミ」にあたる動画の「起」の部分は非常に大事で、冒頭で惹きつけられない場合は、最後まで見てもらえない可能性が高まります。
よって、インパクトのあるシーンはもちろん、全体のストーリーをできるだけ明確にした上で撮影にのぞみ、必要なシーンを絶対に取りこぼさないようにすることが大切でしょう。
さらに、例えば10個の場面を撮影するとしたら、「どの動画を、どんな順番で、どの位の長さ使うのか」、「テロップはどこに、どんな表現で挿入するのか」といった組み合わせや見せ方までをイメージしながら撮影できれば、動画の仕上がり具合は、ワンランクもツーランクもアップするに違いありません。
その3 撮影機材を決める
動画をどのような機材で撮るかも非常に重要です。
多くの方は、「スマホが手軽でいい」と考えるかもしれません。しかし、それ以外にも録画に特化したデジタルビデオカメラや、「GoPro」に代表される小型で軽量なアクションカメラも、使ってみる価値は大いにあります。後述のように、それぞれのメリットを知って使い分けるのもよいでしょう。
その4 アクセサリーを揃える
とくにスマホを使う場合は、スマホ単独よりも専用のアクセサリーをうまく活用すると、よりクオリティの高い動画が撮影できます。
スマホをどのように動かしても常に画面を水平に保てるジンバルや、定点撮影に使える三脚は、とても便利です。とくに三脚については、従来からあるタイプのほか、脚部分を自在に変形させてフェンスなどに巻き付けて使えるタイプなど、さまざまなタイプが販売されています。
質の良い動画は手ブレがありません。スマホを手で直にもって撮影すると、どうしても画面揺れが起こり、視聴者に不快感を与えてしまいます。よって、上記のようなアクセサリーは、必需品と考えてください。
その5 動画をアップするプラットフォームを決める
動画をどのプラットフォームで配信するかも、あらかじめ決めておくとよいでしょう。
YouTubeやFacebookなら横向きで撮る方が画面を有効に使えますし、TikTokやInstagramなら断然、縦方向がおすすめです。方向を無視して撮影してしまうと、いざ配信する際に後悔することになりかねないので注意してください。
動画編集の心構え3選
続いて、撮影した動画を編集する際に留意する点について解説しましょう。同じ動画でも、編集の仕方次第で仕上がりは月とスッポンほど違ってきます。すべては本人の知識やセンス次第ですが、ここで挙げる心構えがあると編集作業の進め方も変わってくるはずです。ぜひ参考にしてください。
その1 お手本となる動画をじっくりと観察する
まずお手本となる動画を見つけて、それをじっくり観察することから始めてください。自分が観ていて心地いいと感じたり、何度も視聴したくなったりするもので構いません。
何に惹きつけられるのか、どこが面白いのか、BGMの種類や曲が変わるタイミング、曲数、テロップ、動画全体の長さなど、ユーザーではなく作り手の目線になって観てみると、気づけなかった点が数多くあることが分かるでしょう。
パターンの違う動画を複数観察しながら、比較するのもよいかもしれません。できれば1度ではなく、2度3度と見返してみたり、気になる点や素敵だと思うシーンは何度もリプレイしたりするのもおすすめです。
動画では、場面の切り替えが1秒違うだけでも見え方が大きく異なる場合がよくあります。テロップも長すぎるとくどさが出るので、使うワードや文字数にも十分に気を配る必要があるでしょう。
「自分ならどんなシーンから始めるのか」、「テロップの大きさや内容はどのようなものにするのか」など、作り手の判断やセンスをリスペクトしながらも、それらをすべて鵜呑みにするのではなく、自分の感覚を試す意味でシミュレーションするのも有効です。
その2 最初から完璧を狙わない
矛盾するように聞こえるかもしれませんが、最初から完璧に仕上げようと無理をしすぎないことも重要です。
なぜなら、完璧主義に陥るといつまで経っても配信することができず、そのうち編集自体に疲弊して挫折する恐れがあるからです。それよりも最初は下手でもよいので、まず最後まで編集を行なって配信することを目標にしてください。
人気の長編漫画でも、30巻の主人公の顔と1巻のそれとでは、まるで別人のように異なるケースがよくあります。正直なところ、改めて見てみると最初の方は上手くないな、という感想を持つこともあるでしょう。
これと同じで、動画も後で見返してみると恥ずかしくなるくらい不出来な点があるものです。しかし、繰り返すことでスキルが磨かれますし、成長を見守りながら付いてきてくれる視聴者もいるので、過度に心配しないでください。
それより自分が編集していて楽しければ、その気持ちは必ず視聴者にも伝わるはずです。それを忘れないでワクワクしながら仕上げることを心がけてください。
その3 自分に合ったアプリを見つける
編集の心構えの最後は、自分に合った編集アプリを早く見つけることです。
スマホの場合、iPhone搭載の「iMovie」のようにデフォルトで装備されている編集機能もあります。しかしそれ以外にも、プロ顔負けの編集を可能にする優れたアプリが数多くリリースされている点に、ぜひ注目してください。
無料でダウンロードして使えるものも多数あるので、操作性に優れ、編集目的に合った機能が充実しているアプリを早い段階で見つけて、うまく活用することをおすすめします。もちろん、いくつかを併用しながら絞っていくのもよいでしょう。
編集だけでなく、ノスタルジックでレトロな柔らかい映像が撮れるものや、夜間撮影に特化したもの、料理を美味しそうに撮れるものや美顔加工に優れたものなど、撮影の段階から特殊な機能を使えるタイプも珍しくありません。実際に使用感を確かめてみるのもおすすめです。
デジタルビデオカメラが向いているパターン
軽量で人気のアクションカメラ「GoPro」を含む、デジタルビデオカメラでの撮影がおすすめのシーンやパターンについて見ていきましょう。
ズームを駆使したい
スマホに比べてズーム機能が格段に優れているのが、デジタルビデオカメラのメリットです。
スマホだとズームが中途半端でストレスを感じたり、手ブレを起こしたりしやすいですが、デジタルビデオカメラは、このズーム機能が大変優れています。
「運動会で観客席から子どものアップをしっかりと収めたい」、「スピーチ大会で登壇者の姿をはっきりと映したい」といった場合に便利です。
手ブレを抑えたい
とくに「GoPro」は、世界中でプロのカメラマンや活躍する人気ユーチューバーからの評価が高く、走ったり飛んだり踊ったり、スポーツをしながらでも手ブレが起きにくく、迫力ある映像が撮れるので、おすすめです。室内よりも、屋外で撮影することが多い方には、うってつけでしょう。
暗い場所でも高画質で撮りたい
スマホの場合は、暗い場所での撮影には限界があります。その点、ナイトモード搭載のデジタルビデオカメラを使うと、夕方や明け方、光が差し込みにくい場所でも、高画質の撮影が可能です。
長時間撮影がしたい
機種にもよりますが、一般的にスマホに比べるとデジタルビデオカメラの方がバッテリーは長持ちします。動画は、写真と比較してもかなりの容量が必要になります。高画質で大量の動画を撮りたい場合なら尚更でしょう。
そこで、充電を気にせず長時間撮影したい方には、デジタルビデオカメラがおすすめです。長いものなら3~4時間強は連続撮影が可能なため、旅やドキュメンタリー、どうぶつ相手の動画など、途中で撮影を中断したくなかったり、カメラを停止できなかったりする場合には最適です。
スマホが向いているパターン
続いて、スマホが適しているパターンやシチュエーションについて解説しましょう。
手軽に撮影したい
どこにでも簡単に持ち運びができて、いつでも取り出して撮影できるのが、スマホ最大のメリットといってよいでしょう。
手荷物が多かったり、周囲に人がたくさんいたり、予期せぬシャッターチャンスの際は、非常に使い勝手がよいです。デジタルビデオカメラに勝るとも劣らぬ画質で撮影できる機種も多数あるので、クオリティの面でもさほど遜色はありません。
ズームを多用しない
料理動画やプラモデル、インテリア、アクセサリーなどの趣味や販促動画など、被写体までの距離が近くてズームを多用しない場合も、スマホがおすすめです。赤ちゃんの寝顔や遊びに夢中のペットを撮りたい場合でも、シャッター音を消せる無音動画アプリを使えば、起こしたり気を散らせたりする心配はありません。
スピーディーに配信したい
毎日のように動画配信をしたり、スポーツ観戦でリアルタイムの動画を一刻も早くアップロードしたかったりする場合などは、スマホが非常に便利です。手の込んだ編集が必要なく、画面のクオリティより撮ったそのままをいち早く見せる方に価値がある、という場合にうってつけです。
プロのような動画を撮影するコツ7選
プロ顔負けの動画を撮るためのコツを7つ紹介しましょう。
その1 短い動画を数多く撮る
まず動画は、一度に長時間撮影しようと欲張らないことです。
それより、10秒以内やそれ前後の短い動画をいくつも撮っていく方が、後で編集がしやすいうえ、場面転換が多くて視聴者を飽きさせない動きのあるコンテンツが作成できるでしょう。
動画を長く見せるというのは、それだけ稚拙で見劣りするシーンをさらけ出すリスクが増えることを意味します。その点、撮影技術が少々未熟でも、短く撮ってつなぐ方がある意味で誤魔化しが効くので、とくに初心者には強くおすすめします。
その2 BGMを流しながら撮影する
スマホ用の動画撮影アプリには、配信の際に使えるフリー音源を流しながら撮影できる「ミュージカム」のようなタイプもあります。編集でBGMを考えるより撮影現場で曲を流しながらの方が、完成した際のイメージが湧きやすいのでよいでしょう。
その3 手ブレを抑える
繰り返しますが、動画撮影において手ブレは最大の敵といっても過言ではありません。ひどい場合は、視聴者が酔ってしまうため、動画自体の評価や注目度が大きくダウンする恐れがあります。
ジンバルや三脚、動画撮影アプリの手ブレ補正機能を使って、極力画面揺れのないコンテンツを作成してください。アクセサリーがない場合は、スマホを片手で持ち、脇を締めながら撮影するとブレにくいです。
その4 アングルを工夫する
同じ角度から撮影するよりも、複数のアングルを見せる方が、迫力や新鮮味があり、動画としてのクオリティがアップします。
顔を撮るなら少し上からの方が高圧的に見えないため、好感を持ってもらいやすいです。画面のセンターに立つよりもやや左右にズレた方が、背景もよく見えて全体的に見映えがする場合もあるでしょう。日光の当たり方が違えば、被写体の印象もずい分と変化します。視聴していて素敵だと思ったアングルをいくつか覚えておいて参考にするとよいかもしれません。
その5 フォーカスを工夫する
アングルと共に大切にしたいのが、フォーカスです。ここ1番の訴求ポイントでは、しっかりと被写体をアップにすることが肝要です。ただし、中途半端な寄り方では、視聴者にストレスを感じさせることになるので注意してください。
その6 ホワイトバランスを調整する
動画撮影においては、ホワイトバランスも大事な要素です。映像は、太陽光や蛍光灯など、さまざまな光の影響で、白色が白く映らなくなってしまうことが頻繁に起こります。それを補正するのがホワイトバランスです。
動画は、画面が変わっても時間軸が同じケースが多いので、ホワイトバランスは一定にするのが好ましい場合が多いです。ただし、運動会や披露宴など、撮影が長時間に渡り、時間の経過とともに光の加減も大幅に変化すると考えられる場合は、オートでホワイトバランスを調整するのもよいでしょう。
その7 マイクにこだわる
音声がしっかりと聞き取れる動画は、観ていてストレスがたまりません。そのためには、スマホなどの機器に内蔵されているマイクだけでは、心もとないケースがあるので要注意です。
そこで、音源が離れていても集音しやすいガンマイク、出演者の声を聞き取りやすくするピンマイク、歌い手の声を拾いやすいスタンドマイクやハンドマイク、ゲーム実況に適したスマホ差し込み型のマイクなど、目的に合ったマイクを利用するのもよいでしょう。
まとめ
動画配信は、今や日常行為の一つになりつつあります。そのため、撮影技術が低いと視聴者にバレてしまい、せっかく配信したものの見向きもされない恐れがあります。
事前の準備や心構えを軽視せず、撮影時のポイントを押さえれば、素人でもプロに負けない動画が撮れます。最初からは難しくても、繰り返せば確実に上手くなるので、ぜひ根気よく、そして楽しみながら続けてみてください。