洋服や食品は要注意!個人輸入における関税とその注意点

海外サイトでお気に入りの商品を購入したり、輸入した商品を国内で販売したりといった、個人輸入に興味をお持ちの方は多いことでしょう。

しかし、個人輸入を行うとなると、関税や消費税を計算する必要がありますし、通関手続きなどの知識も必要になってきます。また、商品によっては税率が安くなったり、免除されたりする場合もあるところ、そのような知識がなければ損をしてしまう可能性もあります。

そこで今回は、個人輸入に興味をお持ちの方に向けて、個人輸入における関税とその注意点について詳しくご紹介しようと思います。ぜひ参考にしてくださいね。

目次

個人輸入とは?

関税の解説に入る前に、個人輸入についての基礎知識を確認しておきましょう。

個人輸入には、「個人使用目的」と「販売目的」の2種類があり、その性質や特徴は全く異なります。ここでは、この2つの違いについて解説します。

「個人使用目的」での個人輸入

個人使用目的での個人輸入とは、輸入を行う個人が自分で利用することを目的とした輸入です。個人使用目的での輸入には、課税価格の優遇があります(後ほど説明します)。

あくまで輸入者本人による使用が目的なので、家族や友人へのおみやげやプレゼントといった譲渡目的の輸入や、友人や知人との共同輸入などは個人輸入として認められません。

また、個人使用目的で輸入した商品を、輸入後に店舗(実店舗、ネットショップ、オークション、フリーマーケットなど)において第三者へ販売することは法律で禁止されています。

「販売目的」での個人輸入(小口輸入)

販売目的での輸入とは、国内で輸入商品を販売することを目的とした輸入です。中でも、個人による少量の商品輸入は「小口輸入」と呼ばれ、一般的な大規模輸入と区別されています。

小口輸入は、個人使用目的での輸入のような課税価格の優遇はありません。また、輸入や国内販売の際には品目ごとに様々な法規制があり、輸入量が制限されたり、輸入そのものが禁止されたりすることもあります。

個人輸入ビジネスは「小口輸入」

副業などで人気の「個人輸入ビジネス」は、個人輸入の中でも販売目的の個人輸入=小口輸入に分類されます。

個人輸入ビジネスでは、個人がAmazonをはじめとする海外の通販サイトやネットショップから仕入れたり、海外のメーカーや販売店に直接出向いて買い付けたりした商品を国内で販売することになります。

少額輸入貨物の簡易税率

ここでは、個人輸入でよく利用される「少額輸入貨物の簡易税率」について解説します。

少額輸入貨物の簡易税率とは

海外から商品を輸入する際、

・一般貨物または郵便小包を利用
・課税価格の総額が20万円以下

の各要件を満たしている場合は、「少額輸入貨物」と見なされ、一般税率とは別に簡易税率が適用されます。これにより簡易に税額が確定するので、迅速な手続きが可能になります。

参考:税関 少額輸入貨物の簡易税率

簡易税率が適用されない品目

ただし、少額輸入貨物であっても、簡易税率が適用されないものもあります。

【簡易税率が適用されない品目の例】

・加工した穀物
・ミルク、クリーム、バターなど
・ハム、ベーコン、コンビーフなど
・たばこ関連品
・革製品
・ニット製衣類
・履物
・乾燥した豆類

これらのカテゴリーに属している商品は、すべて一般税率の適用対象です。

参考:税関 少額輸入貨物の簡易税率

個人輸入の関税はいつ払うの?

個人輸入した商品の関税はいつ支払うのでしょうか?

関税を支払う時期

基本的に、関税は輸入手続きのときに納付します。

ただ、輸入手続きは通関業者が代行するのが一般的なので、関税はその業者に支払うことになります。DHLやFedExなどの国際宅配便の場合は、配達の際にドライバーによって集金されます。

消費税を支払う時期

海外からの輸入品にも日本の消費税が課されます。

基本的に消費税は関税と一緒に納付します。ただし、課税価格が1万円以下で関税が免除されるときは、消費税も同じく免除になります。

個人輸入にかかるその他のコスト

個人輸入にかかるその他のコストには以下のようなものがあります。

・通関手数料…通関作業の代行手数料
・国際送料…日本への配送料

個人輸入にはさまざまなコストがかかるので、しっかり確認しておきましょう。

個人輸入で関税がかからない場合とは?

個人輸入においては、以下のように関税がかからない場合があります。

・関税率0%の品目を輸入した場合
・課税価格が1万円以下の場合(個人使用目的)

ひとつずつ見ていきましょう。

関税率0%の品目を輸入した場合

以下のような関税率0%の品目を輸入した時は、当然関税はかかりません。

・腕時計
・機械類
・電気機器
・パソコン
・カメラ類
・楽器
・ブルーレイディスク
・楽譜、ポスター、複製画
・書画、版画、彫刻
・香水、オーデコロン、口紅
・自動車、オートバイ
・スポーツ用品

詳しい内容は税関のホームページで確認して下さい。

参考:税関 主な商品の関税率の目安

課税価格が1万円以下の場合(個人使用目的)

個人使用目的で輸入する場合の課税価格は「海外小売価格×60%」ですが、課税価格が1万円以下の場合は原則免税になります(ちなみに、課税価格とは、税金を課す対象となる金額のことです)。

つまり、海外小売価格が16,666円以下であれば、課税価格が1万円以下になるため関税がかからないのです。

参考:税関 課税価格の合計額が1万円以下の物品の免税適用について

全ての品目が免税になるわけではない

たとえ個人使用目的での輸入で課税価格が1万円以下でも、免税にならない品目もあります。

たとえば、

・洋服、衣類
・革靴、革製品
・スキー靴
・酒、タバコ

などの品目は免税とならないため、注意が必要です。

関税率は輸入する国で変わる

関税率は輸入する国によって変化します。

EPA締結国からの輸入品は関税が安くなる

EPA(経済連携協定)とは、FTA(自由貿易協定)を軸に、物品及びサービス貿易の自由化などの協力に関して、2以上の国や地域間で締結される包括的な協定のことです。

このEPAを結んだ国同士は、輸出入の際に特別な優遇税率が設定され、通常よりも低い関税率が適用されます。

日本のEPA締約国は以下の通りです(2023年2月現在)。

・シンガポール
・マレーシア
・タイ
・インドネシア
・ブルネイ
・フィリピン
・ベトナム
・インド
・モンゴル
・オーストラリア
・メキシコ
・チリ
・ペルー
・スイス
・アセアン全体
・TPP11(CPTPP)
・EU
・英国
・米国
・RCEP
・TPP12(署名済)

参考:税関 EPA等交渉の状況

EPA税率の調べ方

EPA税率の調べ方を覚えておきましょう。

税関の実行関税税率の欄には、基本の関税率、WTO協定関税率の他にEPA関税率も載っています。

参考:税関 輸入統計品目表(実行関税率表)

日本関税協会の「WEBタリフ」では、国や地域を指定したり、統計番号やキーワードなどから関税率を検索できるため便利です。

参考:日本関税協会 WEBタリフ

個人輸入で関税を安くする方法とは?

個人輸入をするなら、関税は安いに越したことはないですよね。ここではその方法をご紹介しましょう。

課税価格や商品の合計価格を抑える

個人使用目的で輸入する場合、課税価格が1万円以下であれば関税が免除されることは先ほど説明しました。そこで、商品を購入する際は、できるだけ課税価格が1万円以下になるように工夫しましょう。

また、商品代金の合計価格を20万円以下に抑えた場合も関税が安くなるときがあります。なぜなら、総額が20万円を超えると輸入申告が必要となり、併せて課税対象の商品チェックも厳しくなることで関税を支払わなければならない可能性が出てくるからです。

決済は現地通貨払いで

海外旅行先でのショッピングの際や、海外サイトを利用して商品を購入する際などに、「現地通貨払い」か「円払い」のどちらにするか聞かれることがあります。

このとき円払いを選択すると、店舗側に円のレートを決められてしまうことがよくあります。そして、そのレートがクレジットカード会社のレートよりも高かった場合、総額がアップしてしまいますから、関税を支払う必要も出てきてしまいます。これでは関税の免除を受けるために購入金額を調整したのが無駄な努力になってしまいます。

以上のことから、海外の商品を輸入する際は、ドルやユーロなどの現地通貨によって決済するようにしましょう。

海外ショップのメルマガに登録する

海外ショップの公式サイトのメルマガに登録しておくと、セールや送料無料などのお知らせが届くようになります。

この手のお得情報をこまめにチェックし利用すれば、少しでも購入価格を抑えられるようになりますし、結果として関税の減免にも繋がります。

転売する場合は「個人使用目的」と見なされないように注意

販売目的で個人輸入したのに、「個人使用目的」と見なされた場合、関税法違反として過少申告加算税を課される危険があります。

このような事態を避けるためにも、以下のような方法で販売目的だとしっかりアピールしましょう。

・国際宅配便伝票の「commercial use」にチェックする
・宛先を屋号やショップ名にする
・輸出入者符号(輸出入実績を記録する税関システムの管理番号)を取得する

個人輸入をする際に注意が必要な品目

個人輸入をする際は、いくつか注意が必要な品目があります。ここでは、特に「衣服類」と「食品類」について解説しましょう。

注意が必要な品目【衣服類】

衣服類は関税が高いだけでなく、輸入・販売に関する法律の規制が厳しい品目でもあります。中でも、革製品とニット製品は税率が高く、簡易税率が適用されない品目なので注意が必要です。また、ワシントン条約の保護対象となる野生動物の革などを使った商品は輸入禁止なので気を付けましょう。

さらに、有名アパレルブランドなどのコピー商品を輸入すれば、「商標法」違反として税関で没収されることがあります。また、輸入した衣服類を販売するのであれば、「家庭用品規制法」や「家庭用品品質表示法」などの法律を遵守しなくてはなりません。

注意が必要な品目【食品類】

海外から食品を輸入する場合は、食品検疫所へ輸入の届出を行う必要があります。また、届出後は税関で審査を受けなくてはなりません。審査を合格して初めて輸入許可を得ることができる仕組みになっているのです。

その他にも、食品の輸入・販売には「食品衛生法」も関わってきます。食品は人体に与える影響が大きいため、他の品目に比べて輸入・販売のハードルが高くなっています。

個人輸入は工夫次第で関税を安く抑えることもできる!

今回は、個人輸入の関税とその注意点についてご紹介しましたが、いかがでしたか?

個人輸入には、「個人使用目的」と「販売目的」の2種類があり、その性質や特徴は全く異なります。転売などを行う「個人輸入ビジネス」は、個人輸入の中でも販売目的の個人輸入となります。もし、個人使用目的で輸入した商品を転売すれば、法律違反になりますので十分注意しましょう。

関税の求め方も、輸入の目的や商品の種類によってその方法が異なりますので、しっかり理解しておく必要があります。また、関税を安くするためには、課税価格や商品の合計額を抑えたり、決済を現地通貨で行ったりするなどの工夫が効果的です。通常よりも関税率が安くなるEPA締結国から商品を輸入するのもひとつの方法でしょう。

このように、個人輸入は工夫次第で関税を安く抑えることも可能です。今回ご紹介した情報を参考にして、ぜひ個人輸入に挑戦してみてくださいね。

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この記事を監修した人

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