高すぎる!?靴を輸入する際にかかる関税を徹底解説
革靴は関税率も高く小額免税の適用もないので、個人で購入する場合であっても、高い関税を払うことになります。革靴を輸入する際には、関税に関して正しく知らないと、思わぬ高額の関税に驚かされることになりかねません。この記事で、靴の関税に関する最低限必要な知識を身につけてください。
靴を海外から輸入する場合に発生する関税等について
革靴を輸入する場合は、小額輸入の免税がありません。もう少し細かく解説すると、一般的には課税価格が1万円までの物品の輸入は関税・消費税が免税になります。さらに、個人で使用する目的で輸入する場合には、商品価格に0.6を掛けたものが課税価格になるので、16,666円までは非課税になります。
しかし、これには例外があって免税にならない物品もあり、その免税にならない物品に革靴は含まれています。これが革靴の関税が高くなる理由です。
参考:税関HP
革靴に課される関税
靴に課せられる関税については、その用途や素材などで細かく関税率が定められているのですが、革靴の場合は「金額の30%または1足4,300円のうちの高い方」です。
最低でも4,300円が課税されるのですから、かなり高額といえます。
ちなみに、これはWTO加盟国からの輸入の場合の関税率になります。輸入元の国によって関税率が変わる場合があるので、気をつけましょう。
靴の種類によって変わる関税
靴の関税は素材等によって細かく分かれています。たとえば、「本底がゴム製又はプラスチック製」の「スポーツ用の履物及びテニスシューズ、バスケットシューズ、体操シューズ、トレーニングシューズ、その他これらに類する履物」については、WTO税率で8%です。
これは、税関のHP「実行関税率表」に掲載されています。まずは、素材や用途によって関税が変わる場合があることを把握しておいてください。
実際に計算してみると?
ここまでの記述を前提に、革靴の関税を計算してみましょう。WTO加盟国から個人使用の目的で2万円の革靴を輸入したとします。
まず、個人使用目的の場合なので、課税価格は購入価格に0.6を掛けたものになります。そして、関税率は30%です。
(20,000×0.6)×0.3=3,600
これが一次的な計算結果で、これと4,300円を比較します。高い方が適用されるので、関税は4,300円です。ちなみに、今回の計算には関係しませんが、実際に課される関税は100円未満は切り捨てです。
輸入消費税も加算される
そして、忘れてはいけないのが消費税です。消費税は課税価格に関税を足したものの10%です。ただし、課税価格+関税の額は1,000円未満で切捨てになります。
この場合は、
12,000+4,300=16,300 となりますが、1,000円未満で切り捨てして、16,000円が課税標準額となります。
その10%を計算します。
16,000×0.10=1,600
なので、消費税額は1,600円となります。さらに今回の計算には関係しませんが、実際に課される消費税は100円未満は切り捨てとなります。
関税などの支払い方法
関税等は、国際郵便の場合、配達してくれる郵便局員に支払うことで荷物を受け取ることができます。このとき取り扱い手数料200円も発生します。郵便以外の国際宅急便などを利用した場合も基本的には同じ手続きになりますが、発生する手数料は配送業者によって異なります。
海外から靴を輸入する際に税金を安くする方法
これまで見てきたように、海外から靴、とくに革靴を輸入しようとすると、かなり高い関税が課されることを覚悟しなければいけません。
海外製の革靴は正規の輸入代理店がある場合や、並行輸入品として国内で販売されている場合もありますが、欲しい商品がない場合もあり、価格は本国で購入する場合よりもかなり割高です。ここでは、海外から個人輸入をする際に税金が安くなる方法、ただし必ず安くなるというものではないので、正確には「安くなるかもしれない」方法について解説します。
配送業者によって関税の有無が変わることがある
海外から商品を発送してもらうには、国際郵便を使う方法と、FedExやDHLのような国際配送を行っている業者を使う方法があります。このうち、国際郵便を使った場合には、関税が事実上課されない場合が多くあります。国際配送業者の場合は、ほぼ間違いなく関税がかかります。
これは、国際配送業者の場合は確実に一つ一つの荷物をチェックしているのに対して、配送量が多い国際郵便ではチェックされないケースが多いことに原因があるといわれています。そこで、海外のショップに注文をした際に、国際郵便を使うようにお願いすると、事実上関税を課されずに済む場合が多いです。
アメリカの場合、日本の郵便局に当たるものはUSPS(アメリカ合衆国郵便公社)というので、USPSで発送してもらえないかショップに依頼してみるといいでしょう。
ショップへの依頼の仕方
ショップに依頼する際には、関税の課税を避けたいからと依頼するのはやりにくいので、送料を安くしたいといった形でお願いするのがいいでしょう。海外発送に慣れているショップなら、これで察してくれます。
以下は、eBayの発送方法であるGlobal Shipping Programを使わずに送ってくれないかと頼んでいる例です。
Dear seller.
I want to buying this item.
But, the cost of eBay Global Shipping Program is very high.
Please ship it via USPS First-Class Package International Service.
Thank you.
代わりの発送手段として挙げている「First-Class Package International Service」というのは、USPSの低額の小包の配送サービスです。このサービスを使うと、到着までの日数は長くなりますが、安く送れます。重さや大きさの制限もあります。
また、アメリカの国内では荷物の追跡が可能ですが、国外に出るとできません。荷物の紛失の可能性を少しでも減らしたい場合は、追跡オプションを付けるか、他のサービスを利用しましょう。
そして、革靴の高い関税を避けるためには、品名にLeather Shoesとは書かない方がいいでしょう。Casual Shoesなどの表記にしてもらうと課税される可能性を減らせます。
ちなみに、「GIFT」と書いておくと課税されないという話もあります。けれども、東京税関のHPでは「課税価格の合計額が1万円を超える輸入郵便物については、個人使用の物品や贈与品(GIFT)であっても関税及び消費税等が課税されます。」と記載されていて、明確に否定されています。
支払いの方法
支払いにはPayPalを利用するといいでしょう。なお、eBayの場合「Contact seller」からショップと連絡を取ることができますが、ここにはメールアドレスが書き込めない仕様なので、@をatmarkと文字で表現するといった工夫が必要になります。取引が上手くいけば、最初から関税分も価格に含まれるeBayのGlobal Shipping Programを使うよりも、安く商品が手に入ります。
なお、eBayでは規約上、直接取引は禁止されています。上記のような取引はアカウント停止などになる危険性もあるので、この点は承知した上で自己責任で行ってください。
このような危険性を避けるためには、一度eBayのシステムを普通に使ってPayPalで決済して、PayPalの取引詳細に掲載されている相手方のメールアドレスにメッセージを送るという方法があります。この方法なら、eBay側に発覚する危険性を減らすことができます。
革靴の関税について更に詳しく知る
革靴の関税について、もっと掘り下げてお話しします。外国製の革靴を個人輸入すると、安く買えたはずなのに、結局関税を含めると国内で買うのとあまり変わらなくなってしまうことは、よくあります。その理由をお伝えします。
一般的な革靴の関税率について
革靴は小額免税の制度の適用を受けませんし、簡易税率の適用もありません。個人で輸入する場合でも一般税率が適用されます。
具体的にはWTO加盟国からの輸入の場合、「購入価格の30%または4,300円のいずれか高いほう」です。これが一般的な革靴の税率ですが、一口に革靴といっても細かくみると色々なケースがあります。
革靴の関税率を決める2つの要素
革靴の関税を決める要素には、大きく分けて2つあります。一つは、「どの国から輸入したか」、そしてもう一つはどのような革靴か、つまり「革靴の特性」です。
まず一つ目の、「どの国から輸入したか」です。この記事は、WTO加盟国からの輸入であることを前提に書いていますが、WTO加盟国間での税率を協定税率と呼びます。
協定税率は、WTO非加盟国からの輸入よりも税率が安くなっています。これ以外にも、更に低い税率が定められたEPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)もあります。
なお、日本が2021年1月現在で締結しているEPA・FTAは21あります。これらの条約加盟国からの輸入であれば、関税が安くなります。
そして、革靴の特性も関税を決める要素になります。実行関税率表に細かく製品が区分されています。
具体的な区分の基準としては、靴の本底と甲の材質(革やゴム、プラスチックなど)、スキー靴やスノーボードブーツとその他のスポーツ用の履物といった靴の用途、くるぶしを覆うものか否かといったものがあります。もう少し詳しく見ていくと、本底というのは地面に直接触れる部分のこと、甲はアッパーとも言われる靴底を除いた上の部分のことです。
スポーツ用の靴については、とくに説明は要らないかもしれませんが、スキー靴やスノーボードブーツは関税率が別に定められています。また、くるぶしを覆う長さがあるか否かで関税が変わってくるのも、意外に感じる人が多いのではないでしょうか。
くるぶしを覆う靴
くるぶしを覆わない靴
更にいうと、つま先を覆うトーキャップというパーツがあるか否かでも関税が変わります。
トーキャップで覆われた靴
靴は、このような様々な基準で細かく区分され、関税率が変わってきます。以下に実行関税率表の一部を載せておきますから、どのような区分がなされているか見てみてください。
番号の桁が増えるほど、細かな区分になっていきます。
参考:税関 実行関税率表
関税率を調べられるサイト「webタリフ」
関税率を調べるには、実行関税率表を参照する方法もありますが、日本関税協会が提供してくれている「webタリフ」というサイトを使う方法もあります。内容的には基本的に同じものなので、どちらか自分が見やすい方を使えば大丈夫です。
参考:webタリフTOPページ
webタリフの場合、統計番号やキーワードで検索することができるので、こちらの方が少し便利かもしれません。実際に関税率が確認できる画面は、以下のような表になっています。
「品名」が靴の特性に当たります。輸入国については、直接国名が書かれていない場合もありますが、WTO加盟国やEPA締結国のように税率区分ごとに記載があります。
靴の関税を調べるための補足知識
webタリフや実行関税率表を調べる上で、疑問に思われるかもしれない語句について補足しておきます。まず、「コンポジションレザー」です。これは、革のクズや繊維をシートなどに加工したものです。「革製またはコンポジションレザー製」といったように、革そのものとは区別して扱われます。
次に「紡織用繊維」は、紡いで糸あるいは織って布にする繊維のことです。難しい言い方ですが、布全般を指します。
最後に、「共通の限度数量以内のもの」です。これは、関税割当制に係わる用語です。関税割当制というのは、一定の数量までは低い関税での輸入を認めるものです。事前の申請が必要で、基本的に個人輸入には関係しません。
革靴を個人輸入する際の注意点
ここからは、革靴を輸入する際に気をつけたいことについてお伝えします。ここまでの内容と一部重複する点もありますが、革靴を輸入する際には大切な知識なので、復習のつもりで読んでください。
注意点その1 高い関税率
何度も伝えていますが、革靴の関税はかなり高いです。革製品の中でもとくに高く、皮製のハンドバッグや衣類などは多くが関税率10%台に留まっているのに対して、革靴は30%または4,300円の高い方です。
また、革靴に当たるか否かの判定も厳しく行われることも多く、靴の一部に革が使われているだけで高い税率を課されることが往々にしてあります。革靴には小額免税や簡易税率の適用もないので、高い関税を支払うしかないのも辛いところです。とくに、個人輸入した商品を並行輸入品として転売したいと考えているような人は、関税の点を計算に入れておかないと、期待した儲けが得られないことになるので注意してください。
注意点その2 計算が間違っているケースも
関税の計算が、間違っていることもあります。個人使用の目的で輸入する場合、商品価格に0.6をかけたものが課税対象となる金額ですが、商用での輸入の場合は、0.6をかけることもなく、輸送費・保険料も含んだ金額が課税対象となります。これはかなり大きな差になります。
このような間違いが起こる原因としては、インボイスの記載の仕方によって、商用の輸入であると税関で判断されてしまったことがあり得ます。関税の徴収額に間違いがあった場合、「再審査の請求」という不服申し立て手続きが用意されています。インボイスの訂正も必要になるので、まずは荷物の発送業者に連絡を取ってみてください。
注意点その3 州によって税金が発生する場合も
これはアメリカから輸入代行業者を使って輸入する場合の注意点です。アメリカでは州によって、その州の中で販売された物品に、8%から9%くらいの州税がかかる場合があります。
たとえば、フロリダ州にある代行業者を使ってフロリダ州にあるショップから購入すると、州税が発生します。一方でオレゴンのような無税の州もあります。代行業者を使って商品を輸入する場合は、ショップの所在地や代行業者の所在もチェックするようにしましょう。
スニーカーの個人輸入について
この記事では、主に革靴を念頭に置いて解説しましたが、最後はスニーカーの個人輸入について説明します。
スニーカーもマニアが多い分野なので、国内では手に入りにくいレアな商品を海外のショップで買ったり、輸入した商品を転売して儲けたりしたいという方は参考にしてください。
スニーカーを個人輸入するメリット1
海外ショップで直接購入することには、幾つかのメリットがあります。まずはそれを解説しましょう。
一つ目のメリットは、安く手に入る可能性が高いということです。海外のブランドでも日本に出店しているケースは多くありますが、出店にかかる費用や人件費、輸送費、関税などが経費として発生します。
これらの負担があるため、本国で販売されている価格よりも、日本で販売されている価格の方が何割も高いことがよくあります。個人輸入の場合でも関税や輸送費は発生しますが、それでも国内で買うより安い場合も多いです。
スニーカーを個人輸入するメリット2
もう一つのメリットは、日本では未発売の商品が購入できるということです。海外限定のモデルやカラーは、そもそも日本のショップの店頭には並びません。
日本で買えない商品をゲットできるのは、個人輸入の最大の魅力といえるでしょう。たとえば、以下のような商品があります。
アメリカ国旗をあしらったAir Force 1 も日本未発売です。
スニーカーを個人輸入するにあたっての注意点
スニーカーを輸入する際にも関税がかかります。とくに、素材に革を使ってあるものであれば、革靴扱いになることもあり、高い関税がかかります。
革を使っていないスニーカーの場合、革靴ほど高い関税率にはなりませんが、WTO加盟国からの輸入の場合で、8%の関税です。革靴と比べれば安く感じますが、とくに転売して儲けたいと考えている人は、関税がかかることは計算に入れておきましょう。
商用ではなく個人使用の目的の場合は、購入価格の0.6掛けが課税対象になるというのは、革靴の場合と同じです。輸入消費税も発生します。
もちろん、輸送費も発生します。これらの費用が発生することも忘れないようにしてください。
スニーカーを購入しやすい海外のサイトをご紹介
最後に、スニーカーを購入するのに便利な海外のサイトを幾つか紹介します。海外のサイトでも日本語に対応しているところもあり、価格も円で表示されている場合もあって、国内のサイトとあまり違いを気にせずに購入できるサイトもあります。関税などを含めた価格で表示してくれているところもあります。
配送にかかる日数や配送料などは、そのサイトを運営しているショップがどの国にあるのか等によって変わってきます。配送日数や送料は、個別に確認する必要があります。
・LUISAVIAROMA
日本語サイトがあります。表示価格には関税等が含まれています。送料(Express便)は€31です。
参考:LUISAVIAROMA
・KITH
日本の渋谷にもKITH TREATが開店していますが、KITH TREATはアイスクリームショップの印象が強い店舗です。
もともとはアメリカのセレクトショップで、スニーカーやアパレルに強いショップです。
参考:KITH
・Farfetch
こちらも日本語サイトがあります。ご注文金額が一定金額以上で配送料が一律になります(無料ではありません)。
参考:Farfetch
・SSENSE
日本語サイトあり。トップページにはファッションに関するコラム記事が掲載されているので、興味がある人はそれを読んでいるだけで楽しいかもしれません。
参考:SSENSE
・Foot Locker
ニューヨークに本社、世界28カ国で店舗やウェブサイトを展開している大手販売業者です。規模が大きなショップなので、レアなモデルを探しているような場合は、まずチェックしたいサイトです。
参考:Foot Locker
・dressINN
スニーカーをはじめとするシューズ類から、ウェア、アクセサリー、化粧品の類まで購入することが出来ます。日本語サイトもあります。dressINN以外にも、swimINNやrunnerINNといったスポーツ別のサイトも運営しているので、さまざまな商品を探せます。
参考:dressINN
まとめ
革靴などの靴の輸入について、主に関税のことを中心に解説してきました。革靴の関税はかなり高いです。ただ、一般税率よりもWTOの協定税率は低く、EPAやFTAを締結している国からの輸入では更に低くなります。事前に知っておくことで関税を安く出来る場合もあるので、この記事の知識を生かして、少しでも安く欲しい革靴を手に入れてください。