自社のWebサイトを運営していくにあたり、競合他社のWebサイトがどのような戦略でコンテンツを生み出し、それらがそのようなパフォーマンスを発揮しているのかを知ることはとても重要です。そのためには、他社サイトに関する情報を収集・分析するツールが必要不可欠となります。
それらWeb分析ツールには、様々な方向性のものがあります。ターゲットとして設定した他社サイトの各ページのアクセス数を分析するものや、検索キーワードの表示順位を分析するSEO解析的なものなどです。それぞれ異なるアプローチであり、網羅的に「敵を知る」ためには、いずれも疎かにはできません。
この記事では、そういった競合他社のWebサイトを分析するツール・サービスの中から、代表的なものを紹介していきます。これらを活用することで、自社のWebサイトをどのように成長させていくべきか、その指標が明確になることでしょう。
他社サイトはどのようにアクセス数を稼いでいるか
Webサイトの運営は奥の深い仕事です。単純に自社の強みと考えているものを強調すればアクセス数を集められるというわけではなく、データに裏打ちされた「閲覧需要」をしっかり把握しなければなりません。
自社のみが幅を利かせている業界ならば、やりたいようにやるだけでも成り立ちますが、現実にはまず間違いなく競合他社というものが存在し、彼らもまた自身のWebサイトを運営しています。商品の質で打ち勝つだけでなく、その見せ方、情報展開の仕方においても勝利しなければならないことは、言うまでもありません。
そのためには、生きたデータをいかにリサーチするか、ということが課題となってきます。その一環として、他社サイトの運営状況を把握することは必須の任務となります。
競合他社サイトという厄介な存在
しかし、競合他社サイトの状況を把握すると言っても、何の知識もない状態では困難な仕事となります。
一人の閲覧者として、ターゲットとなる他社サイトを調べることはもちろん簡単です。そのサイト内で彼らがどのようなデザインを選択し、どのようなキャンペーンを打っているかを把握するのは、サイトを閲覧すれば一目瞭然です。戦略の方向性を理解するだけなら、それで十分でしょう。
ですが、そういった他社サイトの動きをもとに、それを自社サイトに活かすためには、彼らのやっていることが実際にどのような成果をあげているのか、まで把握できなければ不十分です。単に競合他社がやっているから自社でも同じことをやる、という発想では、本当に価値のあるものを取り込めている保証がありません。
他社サイトがやっていることは、どのような結果を出しているのか?彼らの選んだデザインはお客様を適切に誘導しているのか?打ち出しているキャンペーンはきちんと利益を生み出しているのか?
大切なのは、こういった内部の数字ですが、いち閲覧者の立場で他社サイトを眺めているだけでは、それらの情報は一切入ってきません。そこに踏み込むことができずに、表面上の物事にのみ踊らされている担当者の方も、少なくありません。
競合他社サイトを分析する必要性
大切なのは、競合他社サイトが展開しているものが「実際のところどのような結果を生み出しているのか」を調べることです。そしてそれを自社サイトと比較し、自社が現在抱えている弱みと強みを把握したうえで、どのようなサイトを構築すればお客様に刺さるかを浮き彫りにすることです。
それを把握できて初めて、自社が採るべき戦略が見えてきます。課題と対策を挙げ、優先順位をつけ、それらを改善するためのチームを組織します。そうすることで、Webサイトのどこをリニューアルすべきなのか、どのようなキャンペーンを打つことが有効なのかといったことが明確になるのです。
そういったリサーチを行わずに、ただ競合他社サイトを閲覧した印象だけを根拠に課題を抽出してみたところで、そこには本質的な価値はありません。見た目に振り回されて、闇雲に自社サイトを変更したところで、思うような効果を生み出すことは難しいでしょう。そのような仕事は、適切なマーケティングとは到底呼べません。
競合他社サイトを分析するメリット
この項では、競合他社サイトを分析することの具体的なメリットを解説していきます。
注目を集めるサイトのノウハウをインプットできる
まず、どのようなサイト形成がお客様の注目を集めるのか、というデータをインプットできることが挙げられます。インターネットの世界においては、コンテンツはとうの昔に、一生かけても消費することのできない量に到達しています。その中にあって、自社がターゲットとするお客様の注目を集め、多くのアクセスをしてもらうためには、サイトの魅力という点で競合より抜きん出る必要があります。
具体的には、検索エンジンでより上位に表示されること(機械のアルゴリズムに好まれること)。そして、アクセスしていただいたお客様を掴んで離さない、魅力的なコンテンツを用意すること(人間に好まれること)。この2つが両輪となります。
そのためには、競合他社サイトを形成するどのような要素が集客効果を生んでいるのか、という情報をしっかりと集めることが重要です。正しい分析を行うことで、このあたりがデータに裏打ちされたかたちで明らかになるのです。
競合他社のマーケティング戦略を深く理解できる
今やWebサイトは、企業のマーケティング戦略において欠かせない存在になっています。紙媒体やテレビの力が年々弱まっており、インターネットの影響力が増している現状においては、もはやWebでの露出こそがマーケティングの要であると言っても、過言ではありません。従って、Webサイトには、その企業が武器として用いていることのほぼすべてが詰まっています。
そのようなWebサイトを正しく分析すれば、競合他社がいかなるマーケティング戦略を採っているのか、そしてそのうちのどれが上手くいっていて、どれがそうではないのか、といったことが必然的にわかってきます。ただし、先述したように、Webサイトの上辺だけを眺めていても、本質は見えてきません。アクセス数の傾向など、データ面からきちんと理解することができなければ、生きた分析とは言えないでしょう。
そういったことを、外部のコンサルティング会社などに委託する場合もあります。それらの会社は、マーケティング調査を専門的に行っており、いわばWebリサーチのプロ。その意味では頼れるのですが、支払わなければならない費用も膨大で、そこがネックになることが多々あります。
他社サイトを自前で分析することができれば、余計なコストをかけることなく、必要な情報を得ることができます。積み上げれば長期にわたって活用できるノウハウとなるので、やってみる価値は十分にあると言えます。
競合他社の顧客像を知ることができる
適切な分析ツールを使いこなすことができれば、競合他社のWebサイトを訪れている顧客の年齢や性別、職業や居住地域といった情報まで、細かく調べることができます。また、どのようなキーワードでユーザーが彼らのサイトに辿り着いているのかを知ることで、潜在的なニーズを理解することもできますので、そこから新たなビジネスモデルのヒントを得ることもできるでしょう。
このような情報の入手を、先述したコンサルティング会社などに依頼すると、かなりの費用がかかってしまうところですが、自社で行うことができるのであれば、わずかな手間をかけるだけで同等の情報にアクセスすることができます。やらないという選択肢はありません。
競合他社サイトを分析する方法
では、実際にどのように競合他社サイトを分析していくのか、その手法を解説していきます。
比較する競合他社サイトの選定
インターネット上における「競合他社」とは、必ずしも自社と同規模の会社や、同じような商品を展開している会社に限られません。自社に辿り着くために検索して欲しいキーワードで上位に表示される会社は、基本的にすべて競合他社であると言えます。その中には、規模は小さくても、SEO対策をしっかり行っている会社や、扱う商品自体はまったく異なっている会社なども含まれている可能性があります。
競合他社サイトを探すには、次のような方法があります。GoogleやYahoo!といった検索エンジンで、自社商品に結びつくキーワードを検索してみます。
検索結果の上位に表示されているのが、インターネットにおいて競合他社と定義することのできるWebサイトとなります。検索結果1ページ目に表示されているサイトはチェックしておきましょう。
さらに関連サイトを把握したい場合には、Googleの検索フォームに「related: (URL)」と入力して検索します。すると、入力したURLと関連性の高いWebサイトが表示されます。
競合他社の集客状況や顧客情報のチェック
出回っている数多くのツール(無料のものも有料のものもあります)を使いこなすことで、競合他社サイトのアクセス数や滞在時間、ユーザーの属性、流入元といった、さまざまなデータを取得することができます。それらのデータは、自社サイトのコンテンツ制作の参考資料として用いることもでき、競合他社のビジネスモデルを分析し「敵を知る」ための貴重な機会ともなります。
競合他社サイトのアクセス数を知る1:アクセス数推定ツールの使用
アクセス数を推定してくれるツールには、大きく分けて2つの種類があります。
まず1つ目は、総アクセス数を推定するツールです。Webサイトにやって来るユーザーは、SNSやブログなど、あらゆる場所から来ているわけですが、このタイプのツールは、そうしたすべてのアクセス数を推定する仕様になっています。
2つ目は、いわゆる「オーガニックアクセス数」のみを推定するツールです。Webサイトのほとんどは、Googleなどの検索エンジンからの流入がメインになっていますが、これを「オーガニックトラフィック」といいます。このタイプのツールは、そのオーガニックトラフィックのみをカウントし、それ以外のアクセスを弾いたデータを算出します。
競合他社サイトのアクセス数を知る2:広告付きのページを探す
たとえばブログを運営しているブロガー達は、広告掲載を依頼する電子メールを受け取ることがあります。この情報を、誰でもアクセスできる「広告掲載」ページに記載しているケースがあります。一例としては、海外のサイトですが、geekwire.comなどがあります。
このサイトでは、毎月の訪問者数やページビュー、SNSアカウントのデータなどが網羅的に表示されています。このような情報公開は、大規模サイトだけではなく、中小の個人ブロガーも行っていることが多々あります。こういったページを見つけるためには、Googleで次のように検索する方法があります。
「site:(競合他社サイトのドメイン) 広告掲載(または媒体資料など)」
※英語で検索するなら「site: ●●●.××(ドメイン) advertise with us 」となります。
もし広告掲載に関するページが、Googleの検索エンジンにインデックスされている場合、検索結果にはその他社サイトへのアクセス数に関する情報が表示されるでしょう。
まれにアクセス数などの統計情報を媒体資料として公開しているサイトもありますので、その内容を確認すればより現実の数字に近いデータを収集することが可能になります。
ただし、すべてのWebサイトに広告掲載に関するページが存在するわけではなく、情報が公開されていたとしてもそのデータが最新のものであるという保証もありません。その点には注意が必要です。
競合他社サイトのアクセス数分析ツール
ここでは、競合他社サイトのアクセス数を把握するための分析ツールを紹介していきます。
eMark+
30万人以上のモニターユーザー規模を誇り、それらのデータから、Webサイト訪問者のユーザーの属性を細かく調査できるツールです。分析したいサイトを指定すると、訪問者数やページビュー数、検索流入キーワード、平均滞在時間、ユーザーの各種属性(年齢、性別、職業、所在地、結婚や子供の有無など)といった情報を網羅的に得ることができます。
有料版も販売されていますが、無料でも一部の機能を使うことができるので、今すぐにでも導入すべきツールであると言えるでしょう。初心者にも使いやすいインターフェースを備えており、また無料のセミナーも開催されているので、敷居の低さも魅力となっています。
参考:eMark+ | ビッグデータ×マーケティングで事業の成長を支援|株式会社ヴァリューズ
SimilarWeb
こちらも代表的な分析ツールです。世界中にパネルユーザーがおり、それらのフィードバックとクローリング等をもとにデータを収集・分析し、統計データを作成しています。やはり無料版と有料版があり、当然ながら有料版のほうが機能が豊富となっています。データをCSV形式で取得できる機能などが、有料版だけの機能として用意されています。
Google ChromeやFirefoxなどのブラウザに、アドオンとして組み込むことができるようになっているのも、利便性の点でセールスポイントの一つです。ページを閲覧しながらのデータ解析が可能となっています。
競合他社サイトのSEO分析ツール
ここでは、競合他社サイトのSEO対策について分析する際に役立つツールを紹介していきます。
SEOチェキ
競合他社サイトが、SEO対策としてどのような設定をしているかを分析するツールです。取得できる情報としては、titleタグ、meta descriptionタグmeta keywordタグ、h1タグ、内外のリンク、最終更新日時、ファイルサイズや読み込み時間、被リンク数といったものが挙げられます。
一通りのものは、調べ上げることができると言ってよいでしょう。特定のキーワードでの検索順位や、サイト内でどのようなキーワードが頻繁に使われているかをチェックすることもできます。
Gyro-n SEO
こちらも有力なSEO分析ツールです。特徴としては、自社サイトと競合他社サイトのSEOの状況を、日次で継続的にチェックする機能が挙げられます。この機能があれば、お互いのサイトが日々どのような推移をしているかがひと目で把握できるようになります。
他にも、キーワード検索の順位を日次チェックしたり、各ページのコンテンツ分析を行ったりといった基本的な部分もしっかり押さえています。3ヶ月の無料試用期間がありますので、まずはトライして、使い勝手を確かめてみるのがよいでしょう。
参考:デジタルマーケティング支援ツールならGyro-n【ジャイロン】 | デジタルマーケティングのGyro-n
まとめ
以上、競合他社サイトのアクセス数やSEO対策を分析する手法について、解説しました。
競合他社サイトを的確に分析することは、「敵を知り、己を知る」の第一歩です。表面的な情報に踊らされることなく、具体的にどのコンテンツがどのような効果を生み出しているかを把握することで、様々なノウハウを得ることができ、自社のサイトに活かすことができるようになります。
他社サイトの分析も自社サイトの改善も、常に立ち止まらずに継続し続けることが大切です。Webの世界の状況は常に変化を続け、特にGoogleのコアアップデートは大きな影響力を持っています。
一度分析と改善を終えて満足していては、効果も半減です。日々試行錯誤を繰り返すことで、初めてそのコストに見合う結果を得ることができるのだということを、肝に銘じておきましょう。