仕入れや販売など、お金のやり取りをその都度やり取りしていると、請求書や納品書のやり取りが煩雑になりがちです。
いつも同じ取引先とやり取りしているのであれば、相殺処理という便利な仕訳方法を活用することができます。今後お金のやり取りを行う上で、相殺処理の仕方を学んでおくことは便利です。
ただしいくつか注意するべき点もあります。
仕訳の際混乱しがちな売掛金と買掛金の違い、そして相殺して入金処理を行う際、どう帳簿に明記するのかその方法を詳しくご紹介します。
ビジネスに必須!簿記の基本・仕分けのルールを覚えよう
お金のやり取りが発生する商売において、また税務署への申告にも必要となる帳簿の記入において、簿記の基本は必須です。
お金の流れを理解するためにも、まずは簿記の基本ルールを覚えましょう。
勘定科目とは?どんなものがあるの?
帳簿をつける場合、パソコンショップだとパソコンを販売、スーパーだと野菜や肉などを販売していますので、それぞれの商品名で帳簿をつけると分からなくなってしまいます。
そのため、誰が見ても分かるように共通の名称で記入することが基本です。
この名称のことを「勘定科目」といいます。
いくつかご紹介すると、何か購入する際に使うお金は「現金」、レジスターや机、エアコンなど仕事に必要なものは「備品」、電話は備品ですが、電話をかける際に必要となる料金は「通信費」、営業や配達に使う自動車やオートバイがあれば、これは備品ではなく「車両運搬具」と表記します。
こうすることで、会社の中でのお金の流れがすぐに分かるようになっています。
相殺処理に必要な勘定科目については、また改めてご説明しますので、ここでは帳簿を記入する際には、勘定科目をまず覚える必要があることを知っておいてください。
負債は借金ではなく負の財産
商売をする際、例えば会社を建てる時などは、銀行でお金を借り入れます。また仕入れをする時に使うクレジットカードも、一時的ですが未払いの状態なので、これも借金です。
こういった商売に必要なお金で、将来的には支払わなければならないお金のことを負債といいます。
これらの負債は、会社が負っている債務ではありますが、それと引き換えに仕入れた商品などが手元にありますので、会社にとっては財産に含まれます。そのため、これらの負債にも勘定科目があり、「借入金」や「買掛金」といった名称がそれぞれついています。
仕分けの基本!借方と貸方とは
簿記では、必ずお金が動く時には、それと同じ額の勘定科目が発生すると考えます。そのため、常に勘定科目が発生した時に、それが資産(借方)になるのか、負債・純資産(貸方)になるのかを理解しておかなければなりません。
例えば、5,000円の仕入れを現金でしたとします。この場合増えた資産は5,000円分の商品なので、
仕入5,000/現金5,000
となります。現金は仕入れ分の純資産が減ったということです。そして商品の売上げが現金で20,000円入ってきた場合、仕訳は、
現金20,000/売上20,000
となります。現金が増え、その分会社の資産も増えているのでこのような仕訳になるのです。
常に資産である借方と、負債・純資産の貸方はイコールになるということを、まずは覚えてください。
お金のやり取りの多くは「掛け取引」?
「掛け取引」とは簡単にいうと「ツケ払い」のことです。
取引をしている会社とで、何度も取引があり、「この会社はきちんと代金を支払ってくれる」と信頼関係ができると「掛け取引」が可能になります。つまり商品を先に渡し、代金は後日回収に伺いますので支払ってください、という約束で取引をするものです。この場合、商品のやり取りの際には現金が発生しません。
ただし帳簿上では、現金でやり取りをしているのと同じように、取引については記入しなければなりません。
こういった掛け取引の場合、取引先の名前で「得意先元帳」という帳簿を作り、そちらにも記入して管理します。
帳簿における「掛け」とは?
「掛け」(=ツケ払い)は、大きな金額が動く企業間の取引では一般的です。
一般の消費者である私たちは、スーパーやコンビニなどで商品を購入する際、その都度支払います。
ただし企業間だと何百万という現金を、取引の度にやり取りしていたら、その手間もかかりますしセキュリティ面でも大変です。そのため支払いの期限を前もって決めておき、その間に行った取引を記録して、後日回収、もしくは支払いをする「掛け」による取引をしているのです。
この掛けには「売掛金」と「買掛金」という2つの勘定科目があります。
売掛金は「売る側」の債権のこと
売掛とは、商品を相手に渡しますが、その時点ではお金を受け取らず、掛けにすることをいいます。ただし商品のやり取りはしていますので、その代金は一時的に「売掛金」となります。
つまり売掛金とは、商品を販売した側が、将来的に受け取ることになる売上債権ということです。
通常は取引の度にお金をやり取りしますが、毎回お金を振り込んだり振り込んでもらったりといったことになると、振込手数料などがその都度かかります。売掛にしておけば、代金の支払いはまとめてになるので、振り込む手間や手数料を減らすというメリットがあります。
買掛金は「買う側」の債権のこと
買掛金は、商品を購入する際に先に商品を受け取り、代金は後で支払うことをいいます。つまり商品を購入した側が、将来的に支払うべき債権のことになります。
こういった支払いがその場で発生しない取引については、「ツケで仕入れをする」または「掛けで仕入れをする」といった言い方をしますが、帳簿上では「買掛金」という勘定科目になります。
売掛金とは逆の仕訳になりますが、売掛金と同じ掛取引です。売掛金と同じく、期限を決めて支払いをすることで、振込の手間や手数料を削減できるメリットがあります。
掛けが発生した時の仕訳の方法
現金でのやり取りの場合は、先にご紹介したように、支払いで減る現金や、売上げで資産が増える現金という仕訳になりましたが、掛けの場合はどのように仕訳をすればいいのでしょうか。
ここでは「売掛金」「買掛金」という勘定科目を使った掛け取引の帳簿の記入の仕方を、詳しくご紹介します。
商品を掛けで仕入れた時の仕訳について
商品を仕入れした時の仕訳は、現金であれば、5,000円の商品を仕入れた場合、
仕入5,000/現金5,000
となりました。今回は現金ではなく、掛けで購入したとします。つまり現金は動いていないので、支払いは「買掛金」となります。仕訳は、
仕入5,000/買掛金5,000
となります。つまり仕入れが資産として増加したと同時に、買掛金という負債が増えたということになります。
商品を掛けで相手に売った時の仕訳について
今度は逆に、掛けで相手に商品を売った側の仕訳について見ていきましょう。5,000円の商品を販売し、代金は現金でもらった場合は、
現金5,000/売上5,000
という仕訳になりますが、今回は代金は掛けになっていますので、
売掛金5,000/売上5,000
となります。つまり商品を販売した時点では、実際の資産は増えていませんが、将来的には入金されますので、入る見込みの売上ということでこの仕訳になります。
買掛金と売掛金が支払われる時の仕訳
買掛金は「支払うべき義務のある債権」で、売掛金は「受け取るべき権利のある債権」ということはお分かりいただけたかと思います。それでは実際にこれらの債権が支払われた時には、どのような仕訳になるのかを見ていきましょう。
掛けで5,000円の商品を購入した側は、現金で代金を支払った場合、
買掛金5,000/現金5,000
となり、負債が0になりました。一方代金を受け取った側は、
現金5,000/売掛金5,000
となりますので、売上が増えました。これで掛けはどちらも0になります。
これが掛け取引の仕訳の基本となります。
売掛金と買掛金の処理を効率的にする「相殺処理」の方法
掛けの取引は、お互いがそれぞれの義務や権利を理解した上で行う取引ですが、先にご紹介したような掛けのやり取りをして、その都度期限が来たら現金で支払うという方法は、金額が大きくなるとかなり面倒です。
そこで効率的にお互いがやり取りするために、便利な方法として「相殺処理」というものがあります。
毎回同じところとやり取りをしている場合、金額は違っても毎回同じやり取りをしていると、「これ支払った?」「もうもらったんじゃないの?」となります。それに加え、大きな金額を現金でやり取りするのも大変です。
「相殺処理」とはどんなものなのか、またその処理の方法について、詳しくご紹介します。
相殺処理とはどんな方法?
相殺処理とは、取引をしている同一の企業と自社、双方で発生している債務を、同じ額だけ消滅させる処理のことをいいます。
相殺処理では、現金が発生するわけではありませんが、会計上では負債を減らすことになります。つまりお互いに負債を減らすことになるだけでなく、売上回収の手間もなくなるので、お互いにメリットが大きい処理といえます。
互いの合意により相殺処理が出来る
支払いは基本的に取引の度に行われますが、同じ相手と複数の取引が継続的に行われている場合などに、都度の支払いを行わず、期限を決めてその間の取引代金をまとめて支払う方法があります。
この方法だと手数料や手間を最小限にでき、円滑な取引ができます。また、金額が大きくなるほどセキュリティ面のリスクも増え、対策を講じないとならないため、それを最小にできれば大きなコスト削減になります。
自分がサービスやモノを提供した場合、将来的に支払われる代金を「売掛金」といいます。自分は相手に支払いを求める債権があります。
自分がサービスや物を購入し、将来的に支払う代金は「買掛金」といいます。自分は相手に支払いを行う債務があります。
両者で売り買いの双方の取引があれば、当事者間で合意をすることにより、お互いの債権債務を同額で相殺させたり、減額させたりできます。
これが「相殺処理」です。この方法ならお互いの債権債務を消滅させるだけなので帳簿上の処理だけで済み、お金を動かす事による手数料や税金などのコストを削減することができます。原則的に相殺処理をするには当事者間の合意が必要になります。
ただし一定の条件の下では、合意が必要なく一方的な相殺も出来ることもあります。
条件とは、①当事者間で互いに債権があること。②金銭など同じ目的の債権であること。③ともに支払期限をすぎた債権であること。などです。
相手側の”期限まで支払いをしない権利”は侵せませんが、自分の”期限まで支払いをしない権利”を放棄して期限前に相殺処理をすることは可能です。
相殺処理の仕訳の方法
掛け取引をしている相手が同じである場合に、相殺処理が可能です。
例えば30,000円の商品を取引しているA社があるとします。そこから仕入れもしていますが、こちらの商品も購入してもらっている場合、仕訳は以下のようになります。
A社から30,000円の商品を仕入れて、その支払いを掛けにした場合、
仕入30,000円/買掛金30,000
という仕訳になります。そして同じように今度はA社に30,000円の商品を販売し、その代金は後日支払う掛けにしたとします。仕訳は、
売掛金30,000/売上30,000
となります。つまり同じA社にツケで支払う代金と、ツケにして回収する代金があるということです。
今回これがどちらも同じ30,000円なので、将来支払うべき代金(買掛金)を、将来回収する代金(売掛金)で処理が可能です。
買掛金30,000/売掛金30,000
これでお互いに代金の回収や支払いがなくなり、スムーズに取引が完了します。これが相殺処理です。
状況に合わせた相殺処理の応用の仕方
相殺処理をすることで、双方の取引がスムーズになることはお分かりいただけたかと思いますが、毎回取引が同額でやり取りされるわけではないため、以下のようなこともあり得ます。
同じくA社とのやり取りで、A社から50,000円の仕入れをして、代金は掛けとした場合、仕訳は以下のようになります。
仕入50,000/買掛金50,000
またA社に商品を販売し、代金は掛けにしましたが、今回は30000円でした。仕訳は以下のようになります。
売掛金30,000/売上30,000
同じ取引先ですが、今回は金額が違うので、一部しか相殺ができません。それでも相殺処理は一応可能なので、仕訳は以下のようになります。
買掛金30,000/売掛金30,000
ただし20,000円分の買掛金が残っていますので、この分は支払う必要があります。この場合、同じ日に支払うとして、現金で不足分を支払うことにした場合、仕訳は、
買掛金20,000/現金20,000
となります。もしくはその20,000円分、仕入れをしても問題はありません。そうなると、仕訳は、
買掛金20,000/売掛金20,000
となります。現金で10,000円を支払い、10,000円分仕入れて売掛金にした場合の仕訳は、
買掛金20,000/現金10,000
売掛金10,000
としても問題はありません。金額が同額でなくても、相殺処理は可能ですが、実行する際には、必ず先方に通知しなければなりません。
相手とのトラブルにならないよう、適切なタイミングで相殺処理を行うようにしましょう。
相殺取引を行うメリット
相殺取引を行うメリットは、キャッシュフローが安定することにあります。これは相殺取引を行うことで支払額が減るためです。他にも手元にあるお金を動かす必要がなくなるので、お金の移動管理が不要になります。
また掛取引を行うと、支払いが遅れたり代金の貸し倒れといったトラブルが起こる可能性があります。トラブルが続くとキャッシュフローが悪化してしまいます。このようなトラブルでも、相殺取引を行うことで悪化を防ぐことができます。
相殺取引をするデメリット
相殺取引をするデメリットは、売り手と買い手の事務負担が増えてしまうことにあります。さらに事務負担が増えるのはこれだけではなく、債権や債務のある取引先を毎月確認しないといけません。
また取引先ごとに決めている支払い日によって、資金操りが難しくなるデメリットもあります。例えば取引先の支払日が月末で、自社の支払日が15日の場合、取引先からの入金が減ってしまうのです。さらに買掛金と売掛金の担当者がそれぞれ異なっていれば、連携が取りづらくなります。
このように相殺取引を行うためにはデメリットが生じるので、慎重に進めていく必要があります。
請求書で相殺はできる?相殺処理で必要となる基礎知識
相殺処理は、お互いに掛けが発生した時点で行う処理であることをご紹介しました。
ただしこの場合だと、購入までのやり取りで、お互いに見積もりや納品書、請求書といった書類をお互いに毎回やり取りしなければなりません。請求書の段階で、金額を相殺できれば便利ですよね。
そこでここでは、請求書での相殺処理について詳しくご紹介します。
請求書で相殺処理をするにはどうしたら良いのか
請求書を用いた相殺処理は一般的に行われていることです。互いに債権・債務を有している場合、双方の合意によって相殺はできます。
例えば自社と相手に20万円ずつの債務があった場合、お互いに合意していれば請求書を交換するだけで債務を消滅させられます。また、債務に金額差があっても、残りはお金で清算すれば相殺させることは可能です。
手間もコストも大幅に減るため、請求書による相殺は双方にメリットのある方法です。
相殺処理がある場合請求書はどう記載するか
相殺処理がある場合、請求書には相殺した金額を引いた金額だけでの表記をしてはいけません。請求書に元の請求金額を明記し、相殺金額としてマイナスの金額の記載をします。
さらにその相殺金額は、いつ行われたどんな取引で発生したものなのかも、合わせて明記しなければなりません。もしくは請求金額は元のものをそのまま記入し、別紙などに相殺金額を明記し、「振込はこの金額を差し引いた額でお願いします」としても構いません。
これはお互いの帳簿に、相殺したやり取りを明記するためにも必要なことです。帳簿で仕訳をする際にも、相殺された処理については、きちんと記入しましょう。
相殺処理の領収書は何を書けばいい?
>相殺処理を請求書で行うときには、以下の3つを必ず書く必要があります。
- 相殺前の取引金額
- 相殺された金額
- 相殺後の支払金額
書く場所や形式に決まりはありません。一般的には以下のように記される事が多いです。
- 備考欄として記す。
- 相殺する前の取引金額の下に相殺された金額と相殺後の支払金額を記す。
- それぞれ相殺前の取引金額と相殺後の支払金額を記した別々の請求書を用意する。
書きやすさ管理のしやすさ、どれも一長一短なので状況に応じて使い分けると良いでしょう。
相殺金額はどうやって示すといい?
請求書に相殺金額をただ記すだけだと分かりづらいので、相殺金額の最初に「-」や「▲」をつけると良いでしょう。これは法律や明文化された決まりがあるわけではありませんが、商慣習上の一般的な記し方です。
共通のものを用いれば相手にもわかりやすいので、原則は商慣習に従うようにし、相手からなにか指定された書き方があれば、優先してそちらを使いましょう。
相殺取引の記録は残しておいた方がいい?
相殺取引の記録は必ず残しておきましょう。記録を残しておかないと後に二重請求などのトラブルの原因になりかねません。いくら信用できる相手でも、記憶違いを起こす可能性はあります。
お互いが帳簿に記録を残しておけば、もし記憶違いをしていてもそれが証拠になります。
相殺処理では領収書も必要になることがある?
基本的に請求書は、取引の度に発行されるものです。ただし相殺処理をした場合、いくつかの取引が一つにまとめられて請求書一通が作成されるということになります。
そうなると取引については、明細でしか確認できませんので、大きな金額のやり取りの場合は取引があった上で相殺処理をしているという証明が必要となり、領収書を出してくださいと言われることもあります。
ただし取引の実情が分かれば問題ないので、簡易的なものでいいとされており、金額によって添付が必要な収入印紙を貼る必要はありません。
相殺領収書とはなにか?基礎知識や書き方も解説!
ここまで請求書による相殺について見てきました。次は相殺領収書について確認していきましょう。
こちらでは相殺領収書について、以下のことを解説していきます。
- 通常の領収書と相殺領収書は何が違うのか
- 相殺領収書はいつ出すべきなのか
- 相殺領収書は必ず出すものなのか
- 相殺領収書はどう書くのか
通常の領収書と相殺領収書は何が違うのか
通常の領収書はお金を受け取った人がお金を受け取った証明として領収書を発行します。対して相殺領収書は、受け取る金額と払う金額を相殺したことを証明するために発行するものです。
さらに、あくまで書類や手続き上の話なので、相殺領収書では実際のお金のやり取りは行われません。そのため、金額にかかわらず収入印紙も不要です。
相殺領収書はいつ出すべきなのか
相殺領収書発行について法律上の取り決めはありません。原則として、一方の会社が相殺領収書を発行した場合、それと交換する形でもう一方の会社も相殺領収書を発行します。
相殺はお互いの支払いを同額で相殺する手続きなので、片方が領収書を発行したとしても相殺の証明としては不十分です。互いに発行しあって初めて相殺の証明書として有効に機能します。
また、明細書の備考欄に相殺である旨を記して、領収書の交換の手間を省く場合もあります。
相殺領収書は必ず出すものなのか
相殺領収書は法律上の取り決めがないため、相殺処理をしたからといって必ず出さなければならないものではありません。しかし、相殺領収書がないと証拠になるものがなくトラブルになる場合があるので、発行する機会は多いです。
特に大企業では、内部統制や情報伝達の不備がないように相殺する場合は相殺領収書が必須であるケースがほとんどです。
払った払わないの水掛け論になってしまわないためにも、相殺領収書は大切な書類です。
相殺領収書はどう書くのか
相殺領収書は同額を相殺するため、双方で同じ金額を書き、相殺処理を行ったと明記し交換をします。
しかし、双方で債権・債務の金額が異なる場合は少し複雑です。相殺するのはもちろん同額ですが、債務の多いほうが超過分を振り込みます。その際に振込金の金額と相殺した金額、一部相殺である旨を領収書に書きます。
例:自社の債務が20万円。相手の債務が30万円のとき一部相殺する場合
自社 → 30万円の領収書と10万円をもらう。(この際に ①20万円が相殺されたこと ②振込金額が10万円であること を記したものをもらう)
相手 → 20万円の領収書をもらう。(この際に ①20万円の相殺領収書であること を記したものをもらう)
請求書で相殺取引!仕組みや流れを解説!
次は請求書を使った相殺処理の仕組みや流れを確認していきましょう。こちらでは以下のことについて解説していきます。
- 相殺は信用で成り立っている仕組み
- 相殺の具体的な流れ
相殺取引は信用で成り立っている仕組み
相殺処理は互いの持っている売掛金(支払債権)や買掛金(支払債務)を相殺する処理です。要はお互いの貸し借りをなしにする方法です。
掛金はすぐに精算する必要がないため、信用は必要不可欠のものとなります。ですがお互いに売掛金と買掛金がある状態ならば、お金で支払うのはコストも手間もかかるので、相殺してチャラにしようというのが相殺取引です。
相殺の具体的な流れ
例として自社が30万円買掛金、相手も同じく30万の買掛金を持っているとします。本来ならば自社が30万円を払い、相手も30万円を払いますが、大変面倒です。
そこで、お互いの買掛金を相殺すれば現金の授受をせずに債務を相殺できます。なお、どちらかの買掛金が多い場合は、超過分を払えば残りは相殺することも可能です。
覚えておきたい!相殺をする時の注意点
相殺領収書を発行する際は、以下の2点に注意してください。これらを忘れてしまうとトラブルの元になることもありますので必ず覚えておきましょう。
自分も相手も領収書を発行する
相殺処理をする際に相手と自分、両方で領収書を発行すれば、双方の債権・債務が消滅したことを証明できます。
自分の債務が消滅したことを証明するために領収書を発行してもらうのも大切ですが、相手の債務の消滅も証明出来るように自分も領収書を発行しましょう。
そうしないと、あとから二重請求を受けたり、逆にこちらの間違いで二重請求をしてしまったりというトラブルが起こり得ます。二重請求だとしても領収書がなければ証明ができずに、二重支払いをすることになってしまいます。
通常の取引では当然、領収書のやり取りはありますが、掛取引の相殺は実際にお金が動かないので領収書のやり取りが疎かになりがちです。双方で確実に領収書を発行し合えるように、相殺処理をする前からきちんと取り決めをしておくことが大切です。
原則的に相殺領収書に印紙は必要ないけれど…
通常取引の領収書では、取引金額が高額になると印紙の貼り付けを必要とする場合があります。
一方、相殺領収書は、取引金額がいくらでも原則的に印紙を貼る必要がありません。
金銭の受取書に相当する文書は、そこに記載されている取引金額が一定金額を超えてしまうと、印紙税という税金がかかることが印紙税法で決められています。
しかし、相殺ではお金のやり取りをしないため、その領収書は金銭の受取書に該当しません。通常の取引では印紙を貼り付けしなければならない金額の取引の領収書だとしても、相殺では印紙は必要ありません。
一部相殺の領収書では印紙が求められる場合もある
一部相殺とは一部の金額について相殺し、残りの金額を金銭などで受領する相殺処理のことです。
一部相殺において発行する領収書を1枚で済ませる場合は、金額欄には相殺後に残った金額を記載する必要があります。
残った金額は、実際に金銭の授受が行われた金額です。それは一般の領収書と同じ扱いとなり課税対象となるため、記載金額が一定を超えると印紙が必要となります。
記載金額が50,000円未満の場合は、印紙税は課税されません。
記載金額が50,000円以上の場合は、金額に応じた印紙を貼り付ける必要があります。
参考:印紙税|国税庁
但し書きはの記載は忘れずに
相殺領収書を発行する際は、但し書きとして「相殺」と記載することを忘れてはなりません。それが相殺領収書であることは、但し書きでしか示せません。
但し書きといえど「相殺」と書かれていない領収書は、一般の取引の領収書と区別ができないので、相殺領収書として認められません。
相殺領収書として扱われないと、それは一般の領収書と同じであるということになり金額に応じ、印紙を貼り付け印紙税も払わなければなりません。
たかが但し書きと思わずに、但し書きにはきちんと「相殺」の二文字を忘れないように記載しましょう。
帳簿付けが楽々!クラウド会計ソフトのおすすめ
請求書などの書類を見ながら、手書きの帳簿で記入するのは、仕訳などの問題もありかなり面倒な作業です。そこでおすすめなのがクラウド会計ソフトです。
データがネット上で保管されるので、パソコンが万が一クラッシュしても心配ありませんし、データ共有ができるので、会計担当者がすぐに入力でき、作業が簡略化できます。
さらに自動仕訳の機能は、簿記などの知識がなくても分かりやすく、遠隔地にある支店などでデータを入力してもらい、本店でまとめるといったことも簡単です。
登録しておけば、銀行口座やクレジットカードの請求、交通機関の利用履歴などもソフト上で確認できます。
またデータをまとめて税理士にチェックしてもらうといったこともすぐできるので、会計の現状を常に確認できるなど、便利な機能が備わっています。
ここでは、便利なクラウド会計ソフトのおすすめをご紹介します。
会計ソフトとして歴史あり!「弥生会計オンライン」
ソフトウェア会社として長い歴史があり、「やよいの青色申告オンライン」のパッケージソフトの販売は1987年からで、多くの企業が使っていることでも有名です。
ただしクラウド系会計ソフトとしては、freeeやMFクラウドよりも後発で、データ連携がまだ少なく、元々会社でやよいの青色申告オンラインを使っている場合はいいのですが、全く0から使い始める場合は、不便な部分もあることも理解しておく必要があります。
レシートなどを読み込んで仕訳する機能があり、スマホから入力することも可能で、Macにも対応しています。
やよいの青色申告オンラインの利用料は、セルフプラン、ベーシックプラン、トータルプランがあり、全て年会費のみです。セルフプランは全ての機能を1年間無料で試すことができます。
セルフプランにはサポートがありませんが、サポートは会計ソフトに対してのもので、仕訳など税務関係での質問は受け付けていないので注意が必要です。
まとめ
会計における相殺処理について、ご紹介しました。帳簿での処理は難しいと考えている方もいらっしゃるかと思いますが、それほど難しいことはなく単純な処理です。
債務をなるべく早く回収するために有効な方法なので、できるだけ活用していきましょう。
また会計処理の作業を簡略化するためにも、今回ご紹介したクラウド会計ソフトをぜひ合わせて活用してみてはいかがでしょうか。