販売戦略を考える際に欠かせないターゲットマーケティングとは?

商品やサービスを売るための戦略を考える上で重要な考え方に「ターゲットマーケティング」というものがあります。漠然と「商品を売ろう」と考えみても具体的な戦略には結びつきませんから、基本的なマーケティングの考え方を知ることは非常に大事です。この記事では、ターゲットマーケティングの基本的な考え方や成功事例をご紹介していますので、是非参考にしてください。

目次

ターゲットマーケティングの目的とUPS

ターゲットマーケティングの解説を始める前に、マーケティングの目的について考えてみます。先に結論を言うと、「商品を購入する」ことに繋げることです。マーケティングには、商品を知ってもらったり、商品を好きになってもらったり、買いたいという気持ちになってもらったりといった狙いがありますが、それだけでは不十分で、「すぐにでも買いたい」と思わせることが必要になるのです。

購入行動に繋げるための「UPS」

商品を購入したいと思わせるために重要な考え方として「UPS」というものがあります。UPSは、Unique Selling Propositionの略です。日本語に訳すと「独自の売るための提案」となります。簡単にいうと、商品を販売するために、その商品でなければならない他にはない独自性をアピールすることです。

UPSをアピールするためのポイント

具体的にどんなマーケティングを行うかで考えてみると、UPSの見せ方には、以下の3つのポイントがあります。まず「オンリーワン」の商品であることをアピールすることです。様々な商品の広告を見ていると、「販売数、売上ナンバーワン」といった表現をよく見かけます。

しかし、これでは独自性のアピールになっていません。特許技術であるとか、独自の配合であるといった、他社に真似のできない点をアピールすべきです。

次に、具体的な効果をアピールすることです。先ほど「独自の配合」という例を挙げましたが、これだけでは消費者に、それによって得られる効果は伝わりません。「どんな効果があるのか」まで広告に入れ込むことが重要です。

最後に、購入する人の立場に立つことです。「売りたい」という気持ちが強すぎて企業側からのアピールポイントだけを羅列する広告は、消費者に受け入れられません。こういった場合は、実際に購入した人の「利用者の声」といった形で、商品の効果をアピールすると効果的です。

お客様のイメージを具体的に持つ

そして、商品を売れるものにするためには、買ってくれる人を具体的にイメージする必要があります。例えば、男性と女性の別や年齢などは誰でも考慮していると思いますが、もっと具体的に、どんな人に使って欲しいのか、どんな場面で使って欲しいのかを考えることが重要です。この記事の最後には、ターゲットマーケティングの成功例について紹介していますので、それも参考にしてください。

ターゲットマーケティングの考え方

ここからは、ターゲットマーケティングの考え方について、詳しく見ていきます。少子高齢社会となっている現在の日本では、モノが売れにくい状態が生じています。単に良い商品を作るだけでは売れないということは肝に銘じておくべきです。

マーケティングの重要性が高まっているといえます。人が欲しがる商品を、その商品が欲しい人に届ける取り組みが求められますから、ターゲットマーケティングの考え方をこの機会に身につけましょう。

ターゲットマーケティングとは?

ターゲットマーケティングというのは、ターゲットを絞って、そこに集中してマーケティングをすることです。これだけでは分かりにくいと思いますが、具体的なやり方としては、市場を分析して、細分化します。

そして、その市場の幾つかを選択して、そこに集中してマーケティングを行います。そして、その際には、4つのPといわれる製品、価格、プロモーション、流通を活用することが必要です。

ターゲットマーケティングにおける戦略の決定方法

もう少し具体化すると、まず環境の分析を行います。それを基に市場を細分化していきます。そして、細分化した市場の中で、どこをターゲットにするか決定します。

ターゲットを決定するにあたっては、市場の分析が不可欠です。以下のような事例があります。

事例の一つ目は、スーパーの販売価格です。あるスーパーでは、商品の価格を通常価格、特売価格、期間限定のさらに安い価格(期間限定特価)の3段階で販売していました。

分析してみると、通常価格ではあまり売れず、特売価格ではよく売れていました。しかし、期間限定特価では、想定より売れていなかったのです。そこで、このスーパーでは、期間限定特価を廃止して、特売価格で売る期間を延ばすことで売上を向上させました。安い価格で売らないことで、むしろ売上を伸ばすことができたのです。

もう一つの事例は、粉ミルクの販売です。分析の結果、粉ミルクは産院で使用した製品をそのまま使っている例が多いことが分かりました。そこで、産院で製品名をプリントした哺乳瓶の無料配布を行ったところ、粉ミルクの売上をアップさせることに成功しました。

このように市場分析が的確になされれば、マーケティングの戦略が立ちやすくなるのです。

セグメントマーケティングについては下記の記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。

参考:「万人に売る」から「市場を絞った特定層に売る」|売れる仕組み ビジネス・ソリューション

ターゲットマーケティングで得られるもの

ターゲットマーケティングを正しく行うことで得られるものは、主に以下にご紹介する2つです。

戦略を立てやすくなる、戦略が明確になる

先ほどのスーパーの例のように、市場のニーズを的確に分析すると、価格を上げても、むしろ売上を伸ばせる場合もあります。一方で、市場を分析した結果、価格を重視している顧客が多いということになれば、無駄な機能を削ぎ落として価格を下げた商品が売れるということもあるでしょう。市場を分析して、ターゲットを絞ることで、どのようなマーケティングを行うべきか、戦略を立てることが可能になるのです。

他社との無駄な競争を避けられる

この記事の最初の方で、自社の独自性をアピールするという話を書きましたが、市場を分析して、自社の製品の独自性とマッチしたターゲットに対してマーケティングをすることで、他社とは違った角度からのアプローチができるようになります。他社と直接の競争をしないことで、価格競争に巻き込まれることなく、十分な利益が確保できるようになるのです。

ターゲットマーケティングの方法を解説

いよいよ具体的なターゲットマーケティングの方法について、話を進めていきます。基本的な考え方は既に解説しましたが、3段階に分けて説明します。

簡単なターゲッティング

ターゲットマーケティングでは、この後でご紹介する3段階で分析する手法が多く用いられます。しかし、個人でネットショップを開設している場合など、緻密な分析をするにはデータが足りなかったり、時間や人手などの余裕がなかったりする場合もあるでしょう。そのような場合は、最低限のターゲッティングの考え方として、以下のような顧客の分析方法を取ることをオススメします。

まず、顧客の基本的な属性を考えます。性別や年齢、職業・年収、家族構成といったものです。そして、その人の悩みや願望について想像しましょう。これで顧客のニーズを予想します。顧客を具体的にイメージして、その人のニーズに合うように商品をアピールすることがポイントです。

市場の細分化(セグメンテーション)

ここからが、ターゲットマーケティングの3段階の説明になります。まず市場の細分化です。市場の細分化は、ターゲットマーケティングでは、一般的にセグメンテーションという用語が用いられます。

これは、市場をセグメントに分けることを意味します。セグメントというのは、一定の基準で分けたグループのことです。

具体的なセグメントの分け方としては、地理的な基準で分けるジオグラフィック基準、人の属性などの基準で分けるデモグラフィック基準、人の心理で分けるサイコグラフィック基準、人の行動で分ける行動変数基準といったものがよく用いられます。例えば、ジオグラフィック基準なら地域や気候、デモグラフィック基準なら性別や年齢、学生・社会人の別、サイコグラフィック基準ならライフスタイル、行動変数基準なら製品の使用頻度といったものです。

標的とする市場の選択(ターゲッティング)

セグメンテーションができたら、その中の一つ、あるいは幾つかをターゲッティングします。自社の強みが生きるように、自社の製品が売れやすい層を探す作業ということになります。この際の方法として、無差別型、差別型、集中型の3つの型があるとされています。

無差別型は、セグメントの違いとは関係なく、全ての層に同一の商品を供給するものです。このやり方では分析した意味が無いように思われるかもしれませんが、すべてのセグメントに受け入れられるような商品やサービスを開発することに意味があります。

差別型は、複数のセグメントをターゲットにしつつ、それぞれのセグメントにあった製品や販売方法を取るものです。製品のバリエーション展開をするような場合が、これにあたります。

集中型は、一つのセグメントに絞って、商品を開発・販売するものです。経営資源に乏しい中小企業に向いた方法ですが、狙い通りにいかなかった場合のリスクもあります。

自社の立ち位置を決める(ポジショニング)

ポジショニングというのは、他社とも比較した上で、自社の立ち位置を決めることです。例えば、価格や品質、デザイン性といった指標を設けて、他社の位置づけを分析、自社の独自性が生きるには、どんな立ち位置にすればいいか検討します。例えば、他社の製品が、価格は安いが品質は自社よりも低くデザイン性も悪いものだったとすると、自社では、「多少価格は高くても、高品質のデザイン性が高い商品を売り出そう」というポジショニングをすれば、他社と競合しないことになります。

マーケティングに欠かせない3C分析に関しては、下記の記事でも詳しく解説されています。合わせてご確認ください。

参考:3C分析とは?必要性や手順、フレームワーク、具体例などを解説 | ディグマル

失敗に繋がるターゲッティングとは?

ターゲッティングは、「やればいい」というものではありません。形の上では、一応ターゲッティングをしていたとしても、実際にはほとんど効果が出ない場合もあります。

ここでは、企業のブランディングを例に、失敗しやすいターゲッティングについて解説します。なお、ブランディングというのは、ブランドを浸透させたり、ブラントの価値を高めたりする戦略の全般を指す言葉です。

無差別型のターゲティングで失敗する

無差別型のターゲッティングは、失敗しやすいターゲッティングの代表といってもいいでしょう。無差別型のターゲッティングで成功した事例も無いとはいいませんが、無差別型のターゲッティングは、実際は、何らターゲッティングができてない例が多く、意味のないものになっているケースが多いのです。

無差別型のターゲッティングをした場合、結果として、散発的な戦略しか取れなくなったり、消費者の感性に響くメッセージを打ち出せなかったりして、結局のところ、大した成果が残せないことが多々あります。

特にブランディングの場合、消費者の感情にまで届くメッセージ性が重要になるので、「誰にでもアピールする」ことは、「誰にもアピールしない」ことと同じことになりがちなのです。

少なくともブランディングの場合には、自社ブランドの特性を踏まえて、そのブランドに共感する気持ちを消費者に与えられるか否かがポイントになります。その際には、「どんな人にメッセージを届けるか」は極めて重要で、無差別型のターゲッティングによることには無理があります。

男女の別、年齢別のターゲッティングで失敗する

男女の別と年齢別だけを基準にセグメンテーションを行って、ターゲッティングをするのも失敗の元です。少し考えれば分かるのですが、20代の女性、50代の男性といったところで、その内実は様々に分かれます。特に最近では価値観が多様化していて、ライフスタイルの選択も多様化していますから、その傾向が強くなっています。

例えば、20代の女性には、学生の人もいれば社会人もいます。結婚をしている人もいれば未婚の人もいます。子供もいるかもしれません。

これらの属性によって、ニーズは異なります。先ほどの無差別型のターゲティングほどではないにせよ、これだけ属性が異なる人を一緒にターゲッティングしようとしても上手くいくはずはないのです。

ターゲットを絞るために必要な視点

ここまでに書いた内容でお分かりいただけると思いますが、ターゲッティングをする上では、いかにしてターゲットを絞るかが極めて重要になります。ここからは、ターゲットを絞り込むために必要となる視点についてお話します。

投資した額に見合った利益を得られるか

ROIという言葉があります。Return On Investmentの略で、日本語では投資収益率や投資利益率と訳されています。簡単に言うと、その投資でどれだけの利益が得られたかという指標です。

この考え方は、ターゲットを選ぶ際にも使えます。例えば、あるターゲットに対してマーケティングの施策を行った場合に、売上が倍増したり、シェアが拡大できたりしたとします。このことは一見すると良いことのように思えます。

しかし、売上を倍増させるためにかかるコストが非常に大きいもので利益が全く増えていないとしたら、このマーケティングに価値はありません。大事なのは、売上を上げることではなく、利益を上げることだからです。

マーケティングのターゲットを選ぶ際には、マーケティングにかけた費用と、マーケティングによって増加する利益を勘案して、利益が最大になるように心がける必要があるのです。

このような視点を持っていれば、無差別型のターゲッティングが失敗に終わることが多いことも理解しやすくなるでしょう。無差別に多くの人の訴求するマーケティングのためには、莫大な費用がかかります。それに比して得られる利益はとても小さい場合が多いからです。

ライバルとの競争に勝てるか

次に解説する視点は、「ライバルに勝てるか」です。先ほど、20代女性にターゲッティングをすると失敗するという例を出しました。

例えば、同じように20代女性をターゲットにするアパレルブランドが2つあったとしましょう。1社は、20代女性に広くアピールするようにマーケティングをし、もう1社は20代独身OLにターゲットを絞ったとします。同じ費用をかけてマーケティングをしたとしたら、どちらの方が効果的なマーケティングになるでしょうか。

言うまでも無く、この場合、独身OLに的を絞った方が、集中的に費用をかけることができて、効果が上がるのです。ターゲットを絞り込むことの重要性は、「ライバルに勝つ」という点からも明らかです。

また、消費者目線で考えることも大切です。少し極端な例を挙げますが、ブラウスが欲しい女性層とスカートが欲しい女性層があったとします。

普通に考えれば、この場合のマーケティングは、ブラウスが欲しい層とスカートが欲しい層に向けて別々に行うか、一方に絞って行うことになります。

しかし、ここで幅広い層にアピールするために、「ワンピースなら、ブラウスが欲しい人もスカートが欲しい人も、どちらも買ってくれるのではないか?」と考えたとしましょう。

もちろん、このマーケティングは大失敗します。なぜなら、ブラウスが欲しい人はワンピースが欲しいわけではく、スカートが欲しい人もワンピースが欲しいわけではないからです。

当たり前のことを言っているように思えるかもしれませんが、消費者のことを考えず、「少しでも多くの顧客を取り込みたい」と考えると、これに似たような間違いを犯すことがあります。十分に気をつけて欲しい点です。

ターゲットを絞り込むということは、裏を返せば、ターゲット以外の顧客のことは無視するということになりますから、マーケティング戦略を立てる上では怖さもあります。しかし、この怖さのあまり、誰も欲しがっていないワンピースを売ろうとしても、売れない在庫を抱えるだけという結果になるのです。

リピート率を上げることができるか

リピート率を重視するというのも重要な視点です。リピート率は、商品を購入したことがある顧客数を、複数回商品を購入したことがある顧客数で割ることで求められます。

マーケティングにおいては、一度でも商品を買ってもらうことも重要ですが、繰り返し買ってもらうことは、もっと重要です。マーケティングを幅広い層に対して行うことは、商品のことを知ってもらうため、一度でも買ってもらうためには有効ですが、このような浅く広くのマーケティングでは、リピート率を高めることは難しいのです。

リピート購入してくれる顧客を増やし、リピート率を上げることが、長期的な売上、利益を上げることに繋がります。そのためには、ターゲットを絞ったマーケティングが有効なのです。

ターゲットマーケティングが成功した例

ここまでの内容で、市場を細分化して、ターゲットを絞り込むことの重要性はお分かりいただけたのではないでしょうか。そこで、この記事の最後は、具体的な成功例を紹介します。

地域性と顧客の属性で絞り込んだ「スターバックス」

日本でもおしゃれなカフェとして人気があるスタバですが、ターゲットマーケティングの成功例としても、大いに参考になります。スターバックスが他のカフェと違うところは、大都市のハイクラスのビジネスマンを対象にした点です。ターゲットを絞ることで、高品質の商品であれば高価格で提供しても受け入れられる環境を作りました。

既存の理髪店とターゲットを変えた「QBハウス」

現在では多少価格が上がっていますが、「10分1,000円の理髪店」として売上を伸ばしたのがQBハウスです。時間をかけて丁寧に調髪をして欲しい層ではなく、短時間でさっと髪を切りたい層にターゲットを絞り、低価格路線を打ち出すことで顧客を掴んでいます。他社との差別化を図るポジショニングの成功例とも評価できるかもしれません。

安くて良いものを提供する「無印良品」

デザインは基本的にシンプルで飾り気はないですが、品質は高く、値段は安く設定してあります。大雑把にいうと、このような商品を揃えているのが無印良品です。

高級な商品が欲しいわけではないけど、品質には拘りたいという顧客層にターゲットを絞っています。ただ単に安さを追求するのではなく、品質は維持した上で、手に取りやすい価格での提供を実現することで、狙ったターゲットに訴求する商品を開発して成功を収めています。

ターゲットを変更することで成功した「シーブリーズ」

シーブリーズというブランドの商品ラインナップは、かつては男性を意識したものが中心でした。それが、現在では女子高校生にターゲットを移すことで成功を収めています。

帆のマークやブランド名からも分かるように、海辺やスポーツ時に使用することを意識していた商品構成も、普段使いをメインにしたものに変わっています。これらの変更にともなって、パッケージのカラーリングなども女子高校生向けに変わりました。ターゲットを変更することで、売上を伸ばした例です。

従来の顧客層とは違ったターゲットを狙った「ポケットドルツ」

ポケットドルツは、小型の電動歯ブラシです。電動歯ブラシのメインとなるターゲットは、従来は、男性の年齢が高めの層でした。それをポーチに入る大きさにまで小型化して、持ち運びを可能にした結果、ランチタイム後に職場で歯を磨く女性層にアピールすることに成功しました。爪を伸ばした女性が使うことを考えて回転式のスイッチを採用するなど、ターゲットを絞って商品を開発したことが効果をあげています。

まとめ

ターゲットマーケティングについて解説してきました。商品やサービスを販売する上で、ターゲッティングをすることが極めて重要であることがお分かりいただけたでしょうか。この記事を参考に、ターゲットマーケッティングの手法を身につけて、的確な販売戦略を立案し、利益向上を実現させてください。

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この記事を監修した人

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