転売は違法なの?転売の定義と実情を解説します!

転売という言葉に、なんとなくネガティブなイメージを持っている人は多いでしょう。近年はニュースでも眉をひそめてしまうような、度の過ぎた転売事例がよく取り上げられます。一部に非良心的な転売者がいることで、全体のイメージを損なっているのは否めません。

ですが結論から言うと、転売という行為自体にはまったく違法性はありません。いたって真っ当な商取引の一形態です。この記事では、まず転売の定義を解説します。その上で転売が違法となるケースと、それを避けるための注意点を見ていきます。

目次

転売ってどういう意味?

転売という言葉は近年、社会的に見て大きく2つの面を持っています。

ひとつは「転売ヤー」に代表される、社会的に迷惑をかける行為というマイナスのイメージです。もうひとつは副業として、簡単に取り組めて稼ぎやすいというプラスの側面です。

この2つが混在することで、転売に対する適切な理解や距離感を見失っている人が多いと言えます。この項では、基本に立ち返って、そもそも転売とはどんなものなのか、そのの定義から見ていきましょう。

転売は商売のやり方のひとつ

大枠で見ると、転売とは商形態のひとつです。辞書の定義をそのまま引用すると、「買い取ったものを、さらに他に売り渡すこと。また売り。」となります。

「買い取ったもの」という部分の解釈がポイントです。これはすでに市場に出回っていて、誰でもお金を払えば買えるものと考えておくと、転売の定義がわかりやすくなります。

新品・中古品に関わらず、一度市場で売買されたものを手に入れ、それを再度売ったら転売となると考えておけばだいたい間違いないでしょう。

転売と販売の定義の違いとは

販売は懐の広い言葉なので、明確に定義するのは簡単ではありません。ただ、転売との線引きを考えたときに、専門の業者などから仕入れを行っているかどうかがポイントになります。業者やメーカーから直接仕入れたものを売る場合は、一般的には「販売」と定義されることが多いでしょう。厳密に言えば、業者からの仕入れに関して特に資格は必要なく、個人で携わることができます。

なお、ECショップなどで取引をする際は、業者から仕入れて売る形を「物販」市場から仕入れて売る形を「転売」と区別される傾向にあります。

転売そのものには違法性はない

ここまででわかる通り、販売と転売の明確な差は、仕入れ先の違いだけと言えます。そのため、転売という行為そのものにはまったく違法性はありません。あくまでも問題になるのは「転売ビジネス」のやり方です。具体的には、大きく分けてマナー面と、法律違反2つです。これについては後ほど詳しく解説します。

転売と区別がつきにくい商取引の定義を解説

販売や転売以外にも、商取引のやり方を指し示す用語はいくつかあります。この項では、その中でも転売と混同されやすいものを2つ紹介します。

「せどり」ってどういう意味?

転売にまつわることを調べていると、「せどり」という言葉に行きあたることが多いでしょう。率直に言って、転売とせどりに関しては、内実としてほとんど差はありません。どちらも市場に出回っているものを仕入れて、それを再度売りに出すというビジネススタイルです。

違いがあるとすれば、せどりには明確な語源が存在する点です。元々せどりと呼ばれる商行為は、古本屋に眠っている稀覯本(手に入りにくい珍しい書物)を、本の背表紙などで判別して探しあてることに由来しています。

ただし、現代では新品・中古や種類を問わず、転売を代用する言葉として幅広く用いられています。実店舗に赴き、販売価格とネット上の平均価格の差異を調べる、「店舗せどり」などの応用形もあります。

当然ですが、せどりを大元の狭い意味合いで用いているケースもあります。解説などを参考にするときは、文脈に注意して読み解く必要がある用語だと言えるでしょう。

「アフィリエイト」ってどういうもの?

アフィリエイトは直接の売買取引に関わるものではありません。ブログなどで商品の宣伝をして、スポンサーが支払う広告費から、成果に応じて報酬をもらうというビジネススタイルです。

代表的なのは、「クリック報酬型」と「成果報酬型」です。「クリック報酬型」とは、商品ページにつながるリンクをクリックしてもらうだけで、一定の収入が発生する仕組みになっています。一方、「成果報酬型」はその商品やサービスが宣伝ページを経由して、売買成立まで至ったときに報酬が支払われます。

商取引に関連した稼ぎ方ではありますが、自分自身で売り買いに携わることはありません。その点で、転売とはまったく違うビジネススタイルだと言えるでしょう。

転売につきまとうマナーの問題

ネット上の取引が主流となった昨今では、「転売ビジネス」は素人でも手を出しやすい副業として注目を集めています。しかし、敷居が低い分、商取引に関わる上での最低限のモラルを守れない人も少なからずいるのが現状です。

近年で悪評を浴びた転売事例には以下のものがあります。

  1. コンサートチケットなどの転売

    昔から「ダフ屋」と呼ばれる違法なチケット転売者はいました。それをネット上で大規模に、組織的に取り組めるようになったことで、買い占めなどの悪質行為が横行しました。結果的に、チケットを心からほしい人が、法外な価格で買わざるを得ない事例が相次ぎ、現在では法規制の対象になっています。

  2. マスク・消毒薬などの転売

    社会情勢などで一気に需要が高まると予測された商品を、先んじて買い占めてネットで高く売りさばくケースも増えました。マスクはその代表例ですが、生活必需品であるため、一時、ネット上での転売に法規制がかかる事態にまで発展しました。

  3. 高額ゲーム機などの転売

    SwitchやPS5など市場で品薄の人気商品を、あの手この手で実店舗で買い占めてしまうケースも、よくニュースで取り上げられています。店舗内でのトラブルも増え、さまざまな対策がなされていますが、根本的な解決には至っていません。

こうした事例の根っこにある問題は、本当に必要としている人が適正な価格で購入することが難しくなる点です。

「転売」にまつわる悪いイメージの本質とは?

需要のあるところに商品を運び、適切な値段で売るというのが商売の本質です。買い手は自身でほしいものを探しに行く時間が省ける分、上乗せされた代金を納得して支払うというのが正しい取引の形です。

転売というビジネススタイルは、やり過ぎると適切な供給を妨げ、市場価値を不当に釣り上げる行為となります。しかし、現状では悪質なケースのすべてが法で取り締まれるわけではありません。

だからと言ってそれを良しとするのは、商売の本質を忘れたやり方と言わざるを得ません。高利貸しのように、人の弱みにつけ込んで不当な利益を得ていると思われても仕方のない一面があります。

もちろん、商売の基本が「安く仕入れて高く売る」でもある以上、適切な範囲で利益を追求するのは間違いではありません。ただし、転売においては、マナー面での判定が厳しくなることを意識しておくべきでしょう。

購入者側にちょっとでも取引に不満があると、「楽して儲けている」「不当に利益を釣り上げている」「買い占めなどで迷惑を及ぼしている」などと思われかねません。それを避けるためにも常識的な範囲で、誠実な転売を行うよう心がけましょう

転売で違法となるケースを解説!

転売においては、明確に法規制がかかっているケースもあります。当たり前ですが、違反すれば逮捕され、法律上の罪に問われます。ここでは5項目に分けて、具体的に違反となるケースを見ていきましょう。

古物営業法違反に該当するケース

転売で引っかかりやすいのが古物営業法違反です。盗品の売買を防ぐのが主な目的ですが、中古品の販売を許可なく行った場合もこれに該当します。

中古品を継続的に取引する場合は、警察から「古物商許可」という資格を取る必要があります。古物営業法で定義される古物には13の区分があります。一般的に転売という形で流通している商品の大半は、古物商許可があれば扱うことができます。

転売において注意すべきは、新品・中古の定義になります。自分で新品のものを小売店などから直接仕入れて売る場合は、古物商許可は必要ありません

一方、他の誰かが購入したものを買い取り、それを売る場合は、たとえ未使用であっても中古扱いになります。自分は新品しか扱わないから大丈夫と考えていると、思わぬ落とし穴にはまるケースがあるので注意しましょう。

参考:古物営業法施行規則・第二条

迷惑防止条例違反に該当するケース

迷惑防止条例は、各都道府県が別個に定めているものです。そのため、具体的な内容は少しずつ異なりますが、総じてチケットや乗車券などの高額転売は禁止行為とされています。いわゆる昔ながらのダフ屋行為を取り締まる条例です。

また、2019年からチケット不正転売禁止法が施行されています。その結果、法令違反で逮捕され、刑罰を受けるケースが増えています。

チケット不正転売禁止法違反に該当するケース

チケット不正転売禁止法が制定されたことにより、明確にチケットの転売は違反行為となりました。ただし、あくまでも不正転売を目的に購入し、継続的に取引をしている悪質なケースに限られます。

もともと自分で行くつもりだったけれど、急用で行けなくなった場合などは、そのチケットを転売することは可能です。ただし、不定期でも同様の行為を繰り返していると、継続的とみなされる場合もあるので注意しましょう。ちなみに、もともとの価格より安く売るのであれば、継続的であっても法には問われることはありません。

窃盗罪・詐欺罪に該当するケース

盗んだものを売るのは重大な犯罪行為です。また、盗まれたものと知りながら売ることも、同様に重い罪に問われます。一方、盗品と知らずに転売した場合は罪には問われませんが、トラブルに巻き込まれる可能性が高くなります。

意図的に商品情報を誤魔化したり、別の商品を送りつけたりすると、詐欺罪に該当します。また、不正転売目的ではないとうそをついてチケット類を購入した場合も、詐欺罪が適用されます。場合によっては二重の罪になることもあるので、このような行為に手を染めないようにしましょう。

転売が禁止、もしくは、規制されているケース

他にも個別に転売が禁止されていたり、古物商許可とは別の認可を得る必要があったりするケースがあります。

まず、医薬品の転売は薬機法によって禁止されています。医薬部外品や化粧品などの転売は認められていますが、薬効成分の表示が薬機法の広告規制に引っかかるケースもあります。半端な知識で取り扱うとリスクが大きい商材だと言えます。

酒類を継続的に転売する場合は、税務署で条件に該当する酒類販売業免許の取得が必要になります。許可を取らずに転売すると、酒税法違反で罰せられます。こちらも明確に転売目的での購入でなく、不定期の転売であれば罪にはなりません。飲みかけのものを転売すると食品衛生法に引っかかります。また、空き瓶に関してはアンティーク需要があるため、継続的に転売するなら古物商許可が必要です。

海外から輸入したものを転売するケースも注意が必要です。輸入には「個人輸入」と「小口輸入」の2つの形式があり、前者が個人の使用目的、後者が営利目的になります。小口輸入したものを転売するのは問題ありません。一方、個人輸入の場合は関税の減免措置があるため、転売すると虚偽申告に該当します。脱税とみなされて法で裁かれ、多額の追加徴税を受けるので注意しましょう。

また、小口輸入であっても、例えば海外の化粧品を転売するケースでは、個別に化粧品製造販売業許可が必要となります。違反した場合は薬機法で罰せられます。輸入品は他にも個別に認可が必要な例が多いので要注意です。

偽のブランド品と知りながら転売する行為も、商標法違反に該当するケースがあります。

安全で良心的な転売を行うための注意点

ここまで見てきたように、転売には知らなかったでは済まされない落とし穴があります。この項では、安全で良心的な転売を行っていく上での心構えを解説します。

古物商許可は取得しておこう

継続的に転売を行う場合、常に新品だけを取り扱うというのはあまり現実的ではありません。上でも触れたように、新品だと勘違いして古物に該当する商品を扱ってしまう危険もあります。

転売を行うと決めた時点で、古物商許可の取得に動く方が賢明です。なお、古物商許可は審査が厳しく、取得までに2~3カ月かかるので、事前にしっかり準備をしておく必要があります。

手続きが面倒であれば、行政書士を頼りましょう。3~5万円程度ですべての手続きを代行し、自身の転売スタイルに最適な形で許可を取ってくれます。

新しく制定される法律にもアンテナを張っておこう

チケット法の制定・施行や、マスクのネット上での転売禁止の例など、転売に関わる法律は常に移り変わっています。

例えば、2021年には「デジプラ法(取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律)」が制定されています。この法律によって、国側が運営者に対して悪質な出品の停止を要請できるようになりました。また、被害を受けた消費者が、販売業者の情報開示を要求できる権利も明示されています。

今後もこういった動きは増えていく可能性があります。常に新しい法律にアンテナを張って、知らないうちに法令違反を犯していないか注意を払いましょう

確定申告の義務を忘れないように注意しよう

たとえ副業であっても、転売での所得が年間20万円以上となった場合は、個別に確定申告をする義務があります。所得とは、転売事業で稼いだ収入から、必要経費を差し引いたものです。

年間所得が20万円を超えているのに確定申告をしなかった場合、脱税で罰せられるケースがあります。転売での稼ぎをきちんと計算し、申告漏れがないように注意しましょう。

商取引の本質を踏まえて、マナーから外れた行為は避けよう

売り手と買い手が互いに得する形が商取引の本質であり、理想です。法に触れることはなくとも、社会的に印象の悪いやり方は避けましょう。

ただでさえ転売は、「楽して儲けている」「不当に値を釣り上げている」「買い占めなどで迷惑を及ぼしている」など、色眼鏡で見られがちです。きちんと常識を持って、買い手にもしっかりメリットがある商取引ができているか、定期的に自問しながら取り組んでいきましょう。

胸を張って「転売に携わっています」と言えるように

この記事では転売の定義と、取り組む上での注意点を解説してきました。

昨今の転売はネット上で行われることが多くなりました。需要のある商品を、適切な価格で適切なプラットフォームに供給できるのであれば、転売は充分に世の中のためになる事業と言えます。

一部のマナーの悪い人の影響で、どうしても転売行為は良くない印象を持たれがちです。しかし、法令違反をせず、きちんとマナーも守っているのであれば、何も問題はありません。胸を張って転売に携わっていると言えるように、正しい知識を身につけておきましょう。

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この記事を監修した人

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