YouTubeに質の高い動画を投稿するために、性能の良いビデオカメラが必要と思っている方は、案外多いかもしれません。しかし、その心配は無用です。スマホがあれば、だれでもある程度クオリティの高い動画を撮影することができるからです。
ポイントを押さえて、コツさえつかめば、人気ユーチューバーが配信しているような、綺麗で迫力のある、面白い動画が、必ず撮れます。
そこで今回は、スマホを使ってYouTube動画を撮影するメリットや事前に準備すること、上手く撮るコツ、おすすめの動画編集アプリについてまとめました。
スマホで撮影するメリット
まず、スマホを使ってYouTube動画を撮影するメリットについて説明しましょう。
手軽に撮影できる
スマホがこの世に誕生して約14年以上経った現在、国内のスマホ保有率は、9割に届きそうなところまできました。内訳を見ると、10、20代は98%、30〜50代で約90%、70代でも80%弱に至ります。しかもその大半の人たちは、外出時に財布や自宅の鍵と同じくらいの感覚でスマホを携帯しているといってよいでしょう。
全てのスマホにカメラ機能がついており、もれなく動画撮影も可能です。散歩や通勤・通学、各種イベントやレジャー、セミナー、仕事現場など、実にさまざまなシーンにおいて、ごく簡単に動画撮影ができます。2度と見られない美しい風景やパフォーマンス、大切な人との出会いや別れなど、スマホがあればこそ手元に残しておける貴重な映像も少なくありません。この手軽さは、スマホをおいて他の機材では決して真似できないでしょう。
撮った動画は、いつでもYouTubeに投稿できますし、多くのユーザーの賛同を得て、視聴回数や「いいね!」、チャンネル登録者数が伸びれば、収益を得ることが可能で、大きな満足感も得られます。かつては自分が撮影した動画を配信するなど、まったくの他人事と思っていた人でも、気づけばれっきとしたユーチューバーと化している、というケースも決して珍しくありません。
費用対効果が高い
わざわざデジタルビデオカメラを購入するとなると、かなりの出費を覚悟しなければなりません。しかしスマホカメラを使う場合、追加経費は必要なく、いつでも撮影したいと思った瞬間から使えるので、費用対効果が非常に高いといえます。
もしビデオカメラを使うしか手がないとすると、動画を撮りたいと思っても経済的なハードルが高く、そこまでして撮りたくもないという人も多いでしょう。すると結局撮らず終いとなり、大きな楽しみを失うことにもなりかねません。その点を大きく補っているのが、スマホと言っても過言ではないのです。
スマホで撮影する前に準備すること
スマホで動画撮影をするにあたって、事前に準備しておくべきことについて解説しましょう。
構成を考える
YouTubeにアップして、ユーザーから一定の評価を得ようと思えば、ただ好きな動画を闇雲に撮影するだけでは限界があります。1度や2度なら視聴してもらえても、素人臭さが目につき、中身の薄い内容にすぐ飽きられてしまうでしょう。すると、登録はおろか高評価を得たり拡散してもらえたりする可能性は、極めて低いと考えてください。
クオリティの高い動画や人気ユーチューバーのバズる動画に共通していえるのは、「しっかりとした筋立てに裏打ちされた構成が、きちんとなされている」点です。起承転結の流れがあり、アピールしたい内容や「オチ」が、最適なポイントに分かりやすく仕込まれているのです。
すると見ている側は、自ずと次はどうなるのかとワクワクしたりドキドキしたりします。知りたかったことや期待していた演出が想像を超える形で画面上に現れると、気持ちがスッキリとして満足感を得られるため、リピーターやチャンネル登録につながるでしょう。
冒頭で動画のあらましを早送りで紹介したり、締めの部分で動画の総括、次回の宣伝などを挿しこんだりしておくのもおすすめです。触りや前振りがあって期待感を持たせつつ、クライマックスへといざない終わり良くしておくと、ちょっとした映画やドラマ、落語や漫才を堪能した後のような後味の良さが残るに違いありません。ユーチューバーには、そんな演出家や脚本家の要素が求められることを知っておきましょう。
ターゲットを設定する
動画は万人受けしようとすると、焦点がぼやけて軸もブレるため、要注意です。誰からも興味を持ってもらい高い評価を得るというのは、100%無理です。それより、年齢や趣味趣向、どのような情報を求めている人に向けて配信するのか、そのパーソナリティや属性をあらかじめ明確に設定しておいた方が、動画の撮影や編集の方針が固まりやすいでしょう。
例えば美しい庭園や山道の散策動画を撮る場合、ただ決められたコースを順番通りに見せるのと、花や樹木などの植物を重点的に映すのとでは、コンテンツのもつ特性が大きく異なってきます。後者の草花を詳しく紹介する動画に仕立てれば、ガーデニングや花好きの人たちが多く視聴して、同じ指向の趣味仲間にも拡散してくれる可能性が広がるでしょう。その人たちから寄せられたコメントを参考にして次の動画を作成すれば、さらに多くのユーザーと強いつながりが持てるようになるかもしれません。
くれぐれも「好きな鉄砲、数打ちゃ当たる」式にならないように、的を絞った動画作りを心がけてください。
バッテリー対策をする
とくに屋外で動画撮影する際は、バッテリーの減りに十分注意する必要があるでしょう。写真と違って、動画の場合は容量が多く必要になるため、バッテリーの減りが非常に早くなります。
一旦撮影に入ると、過度に集中するあまり、バッテリーのことなど頭から吹き飛んでしまうことがよくあります。すると、もっとも重要なシーンでバッテリー切れを起こしてしまう、という残念な事態に陥りかねません。よって、充電器を常に携帯するように習慣づけておくことをおすすめします。
アクセサリーを準備する
スマホ撮影には、専用のアクセサリーをうまく活用することも非常に有効です。
具体的には、ジンバルと三脚、そして照明です。
ジンバルにスマホをセットすれば、どんな角度にしても水平に維持できるうえ、片手での撮影が可能になります。動画の質を大きく下げる要因の一つに「手ブレ」があります。いくら素材が良くても、動画自体の揺れが酷いと、視聴者は酔ってしまうため、途中離脱や低評価の原因になりかねません。そこでジンバルや三脚を使えば、スマホを固定できるので、画面揺れリスクがなくなるのです。
動画の質を向上させるためには、照明の活用もおすすめです。スマホの周りを円状に囲むようにセットできるリングライト、卓上のLED照明などを使うと、被写体を明るくはっきりと映し出せるので、見映えがします。画面が暗い動画は、ユーザーから拒否される確率が高くなるので、十分に注意してください。
スマホを使った動画撮影シーン
スマホを使った動画撮影のシチュエーションを5つに分けて解説しましょう。
室内その1 自分以外が被写体の場合
動画初心者にとっては、住み慣れた自宅や普段から馴染みのある自分の部屋が、撮影現場として最適かもしれません。
その際、被写体が自分以外になるケースと自分になる(自撮り)ケースに分けられます。まず自分以外で、赤ちゃんやペットを撮る場合、いかに自然体で撮影できるかが、成否を分けるポイントになるでしょう。
そこでおすすめするが、スマホ撮影専用の「無音アプリ」です。写真でも動画でも、とくに静かな所での撮影は、シャッター音が邪魔になることが多いです。せっかく眠った赤ちゃんが起きてしまったり、可愛く戯れたり遊んでいたりする犬や猫がカメラに気を取られて動作が不自然になってしまうという具合です。
無音アプリを使うと、シャッター音を100%消すことができるので、周囲に気づかれずに動画を撮影することが可能となります。コンサートやスピーチの撮影にも便利でしょう。
室内その2 自撮りする場合
次に、被写体が自分の場合を考えていきましょう。
解説系やコスメ、ネイルなどの紹介動画の場合、卓上で顔をアップにして自撮りするケースが多いでしょう。この際、顔の写りが、動画のクオリティを大きく左右するので、照明を使っての演出が効果的です。
とくに、瞳に灯りを写し込む「キャッチライト」を利用すると、表情がイキイキとして元気に見えるので、視聴者にポジティブな印象を与えることができます。それには先ほど紹介したスマホの周囲にセッティングするリングライトが、おすすめです。女優やモデルを撮影する際にもよく使われる照明効果なので、ぜひ覚えておいてください。
室外
室外での撮影は被写体が増えたり広範囲に渡ったりするため、室内に比べると動きが激しく、大きくなる傾向にあります。すると、動画の天敵ともいえる「手ブレ」の発生率が格段にアップするので、気を付けなければなりません。
歩いたり走ったりするならジンバルを、自分がスマホを持てない場合なら三脚をうまく使って、画面を安定させることに努めてください。
また、意外とおろそかになりがちなのが、音声です。人の話し声や自動車、トラック、建設現場などの騒音が、動画の邪魔となることがよくあります。スピーカーをオフにしたり、小さくしたり、周囲の雑音を最大限遮音できるマイクを用意したり、編集でカットしてBGMや効果音で誤魔化すなどの工夫が必要です。
夜間の撮影
天体や夜祭り、花火、朝焼けなど、夜間や早朝に撮影したい場合、スマホのデフォルト機能だけでは、満足のいく動画を撮影することが難しいでしょう。その際は、夜間撮影に特化した専用アプリがあるので、ぜひ使ってみてください。iPhoneなら「夜カメラ」、Androidなら「夜撮カメラ」などがおすすめです。いずれも無料で利用できるので、費用対効果も高いです。
ゲーム実況
ゲーム実況動画もYouTubeでは人気コンテンツの一つなので、ゲーム好きならぜひとも挑戦してみたいところでしょう。
これもスマホを使って簡単にできます。ただし、実況系は、話し手の声がはっきり聞こえることがマストな無条件となるため、スマホ差し込み式のマイクなどを用意するようにしてください。
上手に撮影するコツ
初心者でも上級者のように上手く撮影できるコツを3つ紹介しましょう。
ゆっくり動かす
動画撮影の際、意外に盲点となるのが、スマホを動かすスピードです。
撮影にあたっては、必ず視線の動きがスマホの動きより先行します。するとどうしても目で被写体を捉えるスピードに合わせてスマホを早く動かしてしまいがちになります。
しかしそのスピードは、実際に画面で見ると非常に早く映るため、演出上はマイナスです。自分ではゆっくりすぎると感じるくらいが、ちょうど良いでしょう。肩の力を抜き、リラックスした状態で呼吸を止めずに撮影する余裕をもってください。
映り込みに注意する
人混みで撮影する際に注意すべき点として、人や看板などの映り込みがあります。気を付けていても撮影場所やタイミングによっては、どうしても避けられないケースがあります。
盗撮や特定の人を狙った悪意のある撮影でなければ、問題になることはあまり考えられません。しかし、動画を配信するということは、無意識であっても肖像権やプライバシーを侵す可能性があります。ことによっては、訴訟の対象にもなり得るという自覚を持ってください。この点は人によって考えや解釈が大きく異なるので、十分に配慮する必要があります。
また看板などの文言についても、動画のコンセプトに合わないとかモラル上不適切なものについては、人の顔も含めてあらかじめぼかしやモザイク処理しておく方が無難でしょう。
音声と明るさに気を配る
音声と明るさの不具合は、動画の質を大きく損なう要素です。
例えば音声なら、先ほどゲーム実況の項でも述べましたが、解説者や出演者の声を明確に拾うことが必須となります。
スマホ差し込み式マイクでも、
- 1方向からの声を拾うなら単一指向性
- 2方向の音声をキャッチするなら双指向性
- 360度の声を拾いたい場合は全方向性
以上の3種類を使い分けるのが良いでしょう。
つまり、自撮りは単一指向、インタビューは双指向、複数での会議や飲み会などの動画の場合は、全指向が、おすすめです。
明るさについては、無理に人工照明を使う必要はありません。室内でも室外でも、自然光をうまく取り込めば、それだけで十分な明度が確保できます。ただ、天候や時間帯によっては、明るさが足りないケースもあるので、人工照明でほどよく補うのも効果的です。
太陽光が強い場合は、被写体を太陽の前にして映す逆光に注意する必要があります。逆光は、顔や文字などが影になって画面に全く映らなくなる現象です。スマホを固定するならスマホの裏側が太陽に向くように、人が撮る場合は背中を太陽に向けて撮るように、心掛けてください。
動画編集アプリを使おう
撮った動画をそのまま編集できるのも、スマホの良さです。専用のアプリが数多くリリースされているので、お気に入りを見つけて上手く活用してください。
本記事では、初心者でも使いやすい人気アプリを2つ紹介しましょう。
iMovie
iPhoneユーザーなら、一度は試してみる価値ありというのが、デフォルトで装備されている「iMovie」です。
動画のトリミング、テロップやBGM、効果音の挿入といった編集に必要な機能が一通り備わっているので、初心者にはうってつけです。
スマホは画面が小さく、キーボードもマウスもないため、パソコンと比べると編集作業がしにくいのが、現実です。よって操作性が良くてシンプルなiMovieなら、ビギナーでもマスターしやすく、編集に対する苦手意識を持たずにすむので安心でしょう。
PowerDirector
スマホを使った動画編集で圧倒的に人気なのが、「PowerDirector」です。
動画のカットやトリミング、BGM挿入はもちろん、スロー・逆再生、クロマキー合成など、一歩踏み込んだ編集技術が活用できます。Android、iOSともに無料で使える点も、初心者におすすめです。
まとめ
スマホの便利さや機能性は、さまざまな面で実感しますが、その一つが動画撮影です。
とくに最近の機種は、画質も機能も年を追うごとに良くなっているので、動画撮影に使わない手はありません。頭で考えるよりも、まずは色々と試し撮りして動画撮影の面白さを体感してみてください。その上で、人気ユーチューバーの動画を作り手目線で観察、分析すると、今までにない発見があるに違いありません。