海外転売などで国外へ商品を輸出するには、輸出申告をする必要があります。貨物の状態・中身によっては申告に必要な書類が微妙に異なってくるため注意が必要です。また、輸出申告を通関業者に依頼する場合は、申告とは別に必要な書類がいくつかあります。
そこで今回は、これから輸出を始める事業者に向けて、輸出申告に必要な書類と手続き方法を解説します。
輸出申告とは?
海外へ商品を輸出するには、税関へ輸出申告を行い許可をもらう必要があります。これを通関といいます。
輸出申告に必要な書類
- 輸出申告書
- 仕入書(インボイス)
- 包装明細書(パッキングリスト)
- 輸出関連法令の許可書、証明書等
- 輸出免税物品輸出証明申請書、もしくは輸出申告書付表(消費税の輸出免税を受ける場合)
20万円以下なら申請不要
ただし、輸出する商品が20万円以下の場合は輸出申告は必要ありません。郵便局にある「税関告知書」を添付して発送すれば問題なく輸出できます。
通関業者の利用
通関作業は素人が一人でやろうとするとかなり大変です。そのため、通関業者に輸出申告の代行を依頼するのが一般的です。
通関業者に依頼するには、上記の申告書類に加えて以下の2種類の書類が必要になります。
船積依頼書(シッピングインストラクション)
シッピングインストラクションとは、簡単に言うと通関・船積み等の手続きやB/L(船荷証券)・D/R(貨物受取証)の記載事項に関する指示書です。
委任状
その通関業者に初めて依頼する場合は、委任状も必要です。業者によって委任状の形式は異なります。
輸出申告書
輸出申告書は税関のHPからダウンロードできます。
参考:輸出申告書
輸出申告書では、主に以下の内容を申告します。
- 貨物の記号、番号、品名、数量、価格
- 貨物の仕向地
- 仕向人の住所、氏名
- 貨物を積み込む船舶、航空機の名称、登録記号
- 貨物の蔵置場所
輸出申告書の書き方
申告書をダウンロードしたら、必要事項を記入してください。
申告書の作成は、黒字ペンもしくは黒字印刷で行う必要があります。言語は日本語と英語のみです。訂正する場合は間違った箇所を二重線で消して、その上に訂正内容を記入した上で、訂正印を押す必要があります。
参考:輸出申告書の記載例
仕入書(インボイス)
インボイスとは、商品の情報や取引条件が記載された証明書類です。日本では仕入書と呼ばれています。
インボイスの種類
インボイスには4種類あります。
- プロフォーマインボイス
- コマーシャルインボイス
- シッピングインボイス
- カスタムズインボイス
プロフォーマインボイスは見積書です。価格等の取引条件が確定するまで時間がかかる場合に、仮のインボイスとして作成されます。
コマーシャルインボイスは正式なインボイスです。輸出申告の際は、基本的にこのコマーシャル・インボイスを提出することになります。
シッピングインボイスは納品書・配送指示書です。請求書としての効力はなく、輸出申告では使えません。
カスタムズインボイスは税関向けの書類で、輸出先の国によって必要な場合があります。
インボイスの記載内容
- 差出人の氏名、住所、電話番号
- 受取人の氏名、住所、電話番号
- 発送手段
- 商品情報(具体的な品名、重量、数量、単価、品名ごとの総額、合計額)
- 外装を含めた総重量
- 原産国名
インボイスの記入例
インボイスのフォーマットは以下のページからダウンロードできます。
参考:インボイス 郵便局
ダウンロードが完了したら、必要事項を記入してください。原則として輸出先の国で通用する言語で記入する必要があります。ただし、貨物の合計額が20万円以上で、通関手続きを日本郵便に委任する場合は、英語で記入してください。
以下の画像はインボイスの記入例です。インボイス作成の際の参考にしてください。
包装明細書(パッキングリスト)
パッキングリストは、輸出貨物の梱包状況の説明書類です。
写真が必要
梱包状況は文章だけでは伝わりきらないため、パッキングリストには基本的に商品の写真かイラストを添付します。
パッキングリストの記載内容
- 差出人の情報
- 受取人の情報
- 船舶や航空機の名称、登録記号
- 出港場所
- 入港場所
- シッピングマーク(荷印)
- 貨物の重量
- 貨物の容積
シッピングマークの情報と容積以外は、大体インボイスと同じ内容です。
シッピングマークについて
国際配送は移動距離や配送期間が長く、複数の業者や組織が配送に関わるため、国内配送と比べると貨物の紛失等のトラブルが多くなりがちです。
そういったトラブルを無くすために、外装にはシッピングマーク(荷印)を記載します。
シッピングマークを見れば、配送業者はひと目で貨物の情報を確認できます。
重量と容積について
パッキングリストの重量・容積の記入項目の内容は以下のとおりです。
Net weight | 貨物のみの重量 |
Gross weight | 貨物と梱包資材の総重量 |
Measurement | 容積 |
送料を算出する際は、貨物と梱包資材の総重量と貨物の容積に280を掛けた値のうち大きい方を重量として計算します。
他法令の許可書、証明書
また、輸出する貨物が他法令(家畜伝染予防法や食品衛生法など)に該当する場合は別途許可書や証明書が必要となります。
法令で輸出が規制されているもの(許可が必要)
(1)外国為替及び外国貿易法、輸出貿易管理令
- 武器
- 化学兵器
- 麻薬
- 北朝鮮への奢侈品
- ワシントン条約該当物品
- 特定有害廃棄物
(2)文化財保護法
- 重要文化財又は重要美術品
- 天然記念物
- 重要有形民俗文化財
(3)道路運送車両法
- 中古自動車
(4)鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律
- 鳥獣類
- 鳥獣類の加工品
- 鳥獣類の卵
(5)狂犬病予防法
- 犬
- 猫
- あらいぐま
- きつね
- スカンク
(6)家畜伝染病予防法
- 偶蹄類の動物(イノシシ、ペッカリー、カバ、ラクダ、シカ、マメジカ、キリン、プロングホーン、牛など)
- 家禽(馬、鶏、あひるなど)
- 兎
- みつばち
- 上記の動物の肉、加工肉(ハム・ソーセージなど)
(7)植物防疫法
- 顕花植物(種、果実、加工品含む)
- 羊歯植物(種、果実、加工品含む)
- 蘚苔植物(種、果実、加工品含む)
- 有害植物(種、果実、加工品含む)
- 有害動物(昆虫、ダニなど)
法令で輸出が禁止されているもの
(1)大麻取締法
- 大麻草
- 大麻草製品
(2)覚せい剤取締法
- 覚せい剤
- 覚せい剤原料
(3)麻薬及び向精神薬取締法
- 麻薬
- 向精神薬
- 麻薬向精神薬原料等
(4)あへん法
- あへん
- けしがら
輸出申告は大変
輸出申告は必要書類も多く手続きが非常に面倒です。先ほども紹介しましたが、申告に必要な書類を列挙するとこんなにもあります。
- 輸出申告書
- 仕入書(インボイス)
- 包装明細書(パッキングリスト)
- 輸出関係の他法令の許可書、証明書等(貨物が他法令に該当する場合)
- 輸出免税物品輸出証明申請書、もしくは輸出申告書付表(消費税の輸出免税を受ける場合)
これらの書類をすべて揃えるのは非常に面倒ですが、輸出申告手続きを省略することはできないので、頑張って書類を揃えてください。書類さえ揃えば、あとは通関業者に依頼すれば速やかに通関できます。