独立開業は勢いが必要ですが、1年以内に廃業してしまう事業も少なくありません。もちろん起業にはリスクが伴うため、十分な準備期間を経てから事業をスタートさせるでしょう。たくさんの知識を得た上で独立する人も数多くいます。
しかしどれだけ多くの準備期間を活用しても廃業するケースがあり、逆に思い付きで事業を始めた人が継続できることもあります。さて、この差は一体どこにあるのでしょうか。起業して失敗する理由は大体似通っているので、意識すれば良いスタートを切ることができます。
自営業は楽ではない
自営業は簡単に始めることができますが、継続する難しさについても学ぶべきです。確かに自分が経営者となれば人間関係に悩むことも無く、軌道に乗れば楽しく商売ができるかもしれません。
毎日疲れた顔で出勤しなくて良いのです。好きなようにストレス無く生活できたらどんなに楽しいでしょう。
しかし自営業だからこその大変さも忘れてはなりません。単に楽しそう、簡単そうというイメージで事業を始めようと思っているなら今すぐその考えを払拭して下さい。
まずは現実を知ること。一度立ち止まって、自営業の難しさについて考えてみましょう。
廃業の多さを知ろう
開業しても1年以内に約半分が廃業し、5年以内であれば1割程度しか事業を継続できていないというデータから読み取れるように、開業しても継続することは難しいのです。10年前の近所の個人店を思い浮かべてみて下さい。
よっぽどの老舗でない限り撤退しているのではないでしょうか。身近な事例からも分かるように、長年続けることは難易度が高いのです。
仮に100人開業すれば1年以内に50人は廃業し、5年以内であれば90人以上が撤退します。どれだけ入念に準備をしても継続の難しさは変わることがありません。これが自営業の現実です。
なぜ自営業は失敗するのか?
自営業はなぜ失敗するのでしょうか。簡単に言えば「全部が上手く行かないから」です。
開業前にはきっと想像力を働かせることでしょう。理想とする客数や売上、ざっくりとしたお店のイメージやレイアウト。自信があれば「きっと繁盛店になるだろう」という妄想をする人もいるでしょう。
ここが理想と現実のギャップとなり、現実に打ちのめされることになるのです。想定外の出来事が起こったり予想をかなり下回る結果になることで「こんなはずじゃなかった」という気持ちが生まれます。
多くの個人事業主は資金に余裕がありません。想像していた以上の出費によって事業を継続することができなくなり、結果的に廃業を選択しなければならない状態へと追い込まれます。
しかし個人が失敗する理由は大体似ています。逆に言えば、ここを意識すれば失敗しにくいのです。
想像以上に人が来ない
開業すればお客さんが勝手にやってくると思っていたら大間違いです。開店初日に1人も来ないことだってあるのです。
人はそう簡単に習慣を変えません。行き慣れたお店で用が足りるなら、わざわざ得体の知れない個人店に出向く必要はありません。ましてや、狭い店舗や少ない人数の空間は「変なものを売り付けられるんじゃないか?」「入ったら何も買わずに退店しにくい」と警戒されてしまうものです。
そもそも今は、インターネットの発達で簡単に物が買える時代です。実際に出向かなくてもネットショップを利用すれば欲しいものが手に入るし、商品の詳細は事細かく調べることができます。一部のジャンルに特化した専門店だとか激安店、早急に欲しい物や実物を見る必要がある物ではない限り、店舗で購入するメリットはそこまで多くありません。
これがチェーン店だったらどうでしょう。既に完成されたイメージや認知力があるため想像しやすく、新しい店舗だとしても客足は途絶えません。その点で、個人店は不利だと言えるでしょう。
売上が想像以上に少ない
個人経営者はある程度の売上を見込んで開業しますが、実際は予想をかなり下回ることも多いです。低めに設定した売上であっても同じで、実際は思っている以上に少ない金額になり経営者を悩ませます。
想定していた以上の経費がかかることもあるでしょう。実際の光熱費や管理費は経営を始めてみないと具体的な数字は出ません。
売上が少なければ、マイナスになることだってあります。個人経営には予想外の事態が多くあるのです。
想定外の出費
自営業を始める前に経費のことを考えたでしょうか。売上や客数、とういうお店にしたいかと言う目先の目標ばかりを考え、実際にかかる経費については疎かにしがちです。
店舗経営には必ず出費がかかります。仕入れはもちろん、店舗継続のための管理費や光熱費、家賃だってかかります。これを上回る売上を安定的に出す必要がありますし、そのためには定期的に来店してくれるお客様を増やさなければなりません。
開店すれば固定客が勝手に付くと考えていたら大打撃を食らいます。実際に経営してみると来店数を増やすことがどれほど難しいか知ることになるでしょう。出費についても開業前に想像してみるべきです。
自営業が失敗するとどうなる?
自営業が失敗したらどうなるか想像してみて下さい。成功する未来しか思い描いていないのなら大変危険です。
職は無い、再就職して一から仕事を覚えないといけない、開店や廃業によって貯金もない、人も離れていく。このような未来を考えたことはあるでしょうか。
お金が無ければ趣味にも使えず息抜きもできません。失った資金を取り戻すためだけに仕事をしないといけないのです。失敗した時のことも考えてみましょう。
事業に失敗した後
自営業に失敗するとお金が必要なので、結局は会社勤めに戻ります。ただし再就職についても現実を知るべきです。
長年同じ会社に勤めてきた人は特に想像するべきです。一度でも転職経験のある人なら再就職の難しさは理解できるでしょう。
人は学歴や経歴で判断されます。よっぽど有能でスキルも高くコミュニケーション能力の高い人材なら問題はないかもしれません。しかし自分もそういう人材だと過剰評価ではなく自信を持って言えるでしょうか。
更に年齢が上がれば再就職は難しくなります。自営業に失敗したという事実も場合によっては伝える必要があり、面接官の印象にも関わってきます。また、トラック運転手に転身する人も多いようです。
最悪の場合は、社会復帰できない人もいます。自営業に失敗すると悲惨な人生が待っているのです。
自営業を失敗する人には共通点がある
独立開業までできても継続することはとても難しく、多くの人が廃業に追い込まれています。実は自営業に失敗する人には共通点があるのです。
失敗したくて開業する人はいません。この共通点を意識して廃業しないように意識を改めましょう。
自営業を続けることが難しいのは事実ですが、夢があることもまた事実です。今は一人でも将来は人が増えて大きな会社に成長するかもしれません。そのためにも生き残ることを考えましょう。
金儲けの経験・スキルがない
何事にも、経験やスキルは有利に働きます。自営業で失敗する人には経験とスキルが圧倒的に足りないのです。ここで注意して欲しいのは「仕事で得た経験・スキル」ではなく、「金儲けの経験・スキル」です。
漠然と開業すれば何とかなると考えてはいませんか。もし本当に何とかなるのなら世界中の人が全員開業するでしょう。
お金が欲しいのはあなただけではありません。「金儲けの経験・スキル」が無ければ生き残ることはできないのです。
本を読んだだけで理解できた気になる
参考になる本はたくさん出版されていますが、そもそも本には成功者の話しか書いていません。ビジネスの世界は少しずつ変化しています。当時と同じ方法を真似しても成功できるわけではありません。
本に全てを預けるぐらいなら、実際に経営に身を置いている社長に話を聞く方が何倍も有益な情報を得ることができます。会社員として働いている人は自社の社長を思い浮かべて下さい。経営はメリットだけではないことが分かるはずです。
成功してしまえば、成功した理由を後付けすれば良いのです。だから本を参考にしてその通りに実践しても実績は出ません。
もしもあなたが成功して本を出版したとしましょう。その本に書いてあることを他人が真似て同じ成果が出ると思いますか。立地や条件など何もかもが異なるのに、誰かの成功例は参考にはならないはずです。
知識として取り入れることはとても大切ですが、それを鵜呑みにして実行しても失敗するだけです。本はあくまで参考程度に頭に入れておきましょう。実際の経営の場では臨機応変な対応が必要不可欠なのです。
自営業で成功するには?
自営業で成功するにはポイントがあります。これを意識することで格段に生き残る確率が上がります。
ゴールから逆算した物事を考える
ゴールから逆算した物事を考えるスキルを身に付けましょう。経営は利益があるからこそ続けられるものです。その利益を得るためにどういった策を実行すれば良いのか検討しないままではお金は増えません。
人は自分に甘いようにできています。最初に設定したゴールを下回る結果が予想された時点で、そのゴール自体の難易度を下げてしまいます。
10万円の売上を望んでいたのに8万円で満足してしまう、これでは本来はだめなのです。10万円というゴールを設定したのなら100%達成できるようにその間の進捗具合を検討しなければなりません。必要なことを書き出し余裕を持って取り組めば必ず達成できます。
細かい数字を設定しシミュレーションする癖を付けるようにしましょう。予測しながらその通りに実行していくだけで良いのです。
年齢に関係なく若々しい
成功している経営者は表情が生き生きしていて元気な印象を受けます。それだけエネルギー値が高くパワフルで、経営以外にも趣味を持ち全力で取り組んでいる人が多いです。
会社が大きくなるとその分人付き合いが増えます。お客様や仕入れ先はもちろん、場合によっては異業種交流会に参加して情報を得たり人脈を増やしたりすることもあるでしょう。
こういった場ではやはり明るい表情の人に惹かれるものです。生き生きしている人は新しい人脈を呼び込むことができます。
リスクを考えられる
経営には想定外のことが起こります。ここで大切なのがリスクを考えた決断ができるかどうかです。
成功しない人の多くは、大事な場面で失敗を恐れて行動しません。ここを間違えるから後々失敗につながってしまうのです。
勢いも大切ですがリスクを考えられることはとても重要です。リスクを徹底的に調べて大丈夫だと確信した時に決断できる人は生き残ることができるのです。
ロジカルな考え方ができる
セミナー等で参考になる話を聞いてもロジカルに考えられないと上手くいきません。根拠もないまま商売を始めてしまうと思ったよりも成果が上がらず廃業に追い込まれます。具体的な数値や目標を設定することが第一段階なのです。
基本的なことですが、実際の現場を想像せずに事業を始める人の多さに驚かされます。商売は感情や理想だけでは継続できず、理論的に考えて確実に売上を伸ばさなければなりません。
適当な指数では全く意味を持ちません。確かにそれで成功できている人もいますが、ほぼ100%の人が失敗するでしょう。
数字にこだわりすぎない
先ほどとは矛盾に感じるかもしれませんが、成功者は数字にこだわりすぎません。ロジカルに考えることが大事なのは確かです。ただし数字を第一優先にしては先に進めません。
目標を立てその通りに実行していくことで売上を伸ばすことができますが、「もし達成できなかったら」といったネガティブな思考が出てきたら実行すらできません。実際に行動できれば過去のデータが残り、次に活かすことができるのです。
感情に支配されない
人には感情があり、時にはそれが邪魔になることもあります。しかし成功者は感情と上手く向き合うことができます。
自営業は特に自分の気持ちが直接関わってくるので、せっかく明確な目標を立てても「気分が乗らないから明日にしよう」と言い訳をしてしまいがちです。このような逃げ方が癖になってしまうと本来なら達成できたはずの売上にも届かず、悪循環になります。感情に左右されていては継続した商売をすることはできません。
その点、会社員であれば気分が乗らなくても出社し仕事に取り掛かれるでしょう。強い意思を保てない方は自営業には向いていません。
背水の陣タイプか情熱タイプ
成功者は背水の陣タイプか情熱タイプに分けられます。背水の陣タイプは「やらなければならない状況の人」であり、情熱タイプは「仕事が好きでやりたくて仕方がない人」です。どちらも強い気持ちが働いており、そのエネルギーが事業の継続へつながります。
流れや軽い気持ちで事業を始めてしまうと最終的に逃げが生じます。成功するためには仕事を続けるための強い気持ちが必要なのです。
自分のことを理解できている
自分のことを100%理解できている人は経営に強いです。成功者は自分のことを理解できています。第三者の視点で行動を予測し、上手くいくための方法を常に考えています。
成功するために必要なのは才能だけではありません。自分のことをよく理解し、持っているポテンシャルを最大限に引き出すことが成功する秘訣なのです。
投資意識を持てる
当たり前のことではありますが、時間と金銭面で投資ができるかどうかは大切です。行動できない人が多くいる中起業に踏み切ったことは凄いことですが、戦略を立てても時間と金銭面で投資ができなければ意味がありません。
成功するためにどのような行動を起こせばいいのか、プラスの考え方で常に模索する必要があります。リスクを考えながら実行に移せる人が成功するのです。
人から応援されている
成功者は周りに応援してくれる人がたくさんいます。これは人柄にも関わってくる部分で、応援したくなる人は周りの気持ちも動かします。
自分自身のことも応援するべきです。途中で迷いが生じるくらいなら自営業は止めておいた方が賢明です。応援してくれる人が多ければ多いほど、困ったときには力になってくれるでしょう。
失敗を恐れない
誰しも失敗することは怖いものです。しかし成功しか経験せず人生を進んできた人がいるのでしょうか。
失敗は悪いことだけではありません。要は繰り返さなければ良いのです。
なぜ失敗したのかを考え、次に活かすことで改善が見込めます。失敗したままにしていては勿体ないです。必ず状況を分析して次につなげることが大切です。
お金にこだわる
経営を続けるためにはお金が必要です。お金にこだわる姿勢を続けることでより多くの収入を望めるでしょう。
たとえ1円でも貪欲に追い続けるべきです。お金に対する執着心が無ければ強い気持ちでビジネスを継続することはできません。生き残るためにはお金に対して貪欲にあるべきです。
誰に対しても謙虚
成功して調子に乗っていては誰に恨まれるか分かりません。思わぬ落とし穴が生まれ、今まで築いてきた財産を全て失うことになるかもしれません。最悪の場合には状況が真逆に変わり地獄を味わうことにもなります。
お金を多く稼いでいるから偉いわけではありません。横暴な態度を取る人は嫌われます。常に謙虚な姿勢を忘れないようにしましょう。
失敗してもリスクを負わないようにしよう
ここではノーリスク4原則を紹介します。事業が成功するか失敗するかは誰にも分かりません。
同じ条件でビジネスを始めても、立地や地域の経済状況、ライバル店の数によって運命が変わります。仮に失敗してもリスクを負わないためにはどのようにすれば良いのでしょうか。
在庫を持たないようにする
個人経営では特に100%売れる商品を探すことは至難の業で、もし売れなければ大きな損失につながります。在庫を持つのは安定的に売れるようになってからで良いのです。
メーカーから仕入れて売るのか、売れた時点でメーカーから直接お客様へ届けてもらうかでリスクは大きく異なります。在庫を持たないことでリスクを抑え、失敗を恐れない経営へシフトしていけます。ビジネスが安定してきたら仕入れて売ることを検討しましょう。
多額の初期投資をしないこと
開業にはお金がかかりますが、最初に多額の資金を使ってしまっては今後が心配です。店舗のデザインや立地にこだわりすぎてお金を使いすぎないようにしましょう。
ビジネスを始めただけではお客様は思ったようには来店してくれません。安定的に来店してもらうためにはお店の信頼度や好感度を上げる必要があります。
失敗に耐えられるお金も残しておくべきです。いきなり店舗を持たなくてもレンタル事業を利用し、軌道に乗ってから改めて出店すればリスクを抑えられます。
副業からのスタート
会社員として働きながらできるビジネスもたくさんあります。副業をすることでビジネスの流れやテクニックを学ぶことができ、多くのスキルを身に付けられます。スキルゼロの状態から開業するから失敗するのです。
まずは副業として、取り組める時間の確保から始めましょう。無駄な時間を無くせば必ず自分の時間を見付けることができます。
始めようと思っているビジネスと関係のないジャンルからでも構いません。どの業界にも役に立つ経験を得ることが目的なのです。
収入源をたくさん作る
今のうちに多くの収入源を作っておけば、失敗した時にもお金は残ります。一から収入源を見付けることはとても難しいです。様々な方面でお金を得られる仕組みを作ることでリスクを抑えられることができます。
一つのビジネスでは深刻な不景気になってしまえば耐えられません。多方面から安定的な収入を確保して、どのような状況にも対応できるように収入源を見付けておくべきです。
まとめ
せっかく始めるなら長く続く経営をしたいですね。自営業を始めるだけでも凄い決意ですから、その勢いは大切にして欲しいものです。
要は廃業する人とは違う行動をとれば良いわけです。人間は似たような行動をとりがちですが、今回紹介した内容を頭に入れておけば、借金だけが残り孤独な人生を歩むことにはならないはずです。常に意識できるように心掛けましょう。