化粧品は需要が大きく、消耗品であるため高回転で売れる商品です。そのため、化粧品転売は非常に稼ぎやすいビジネスと言えます。しかし、輸入化粧品を扱う場合は注意が必要です。
今回は、個人で化粧品を輸入するために必要な許可・資格や、輸入化粧品販売に必要な資格と注意点を解説します。
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安易に化粧品輸入に手を出すべきではない理由
海外は日本と比べて物価が安く、日本では手に入らない商品がたくさん販売されているため、輸入転売ビジネスは非常に利益率が高いビジネスと言えます。
しかし、品目によっては輸入が禁止・制限されているものもあります。化粧品も輸入が制限された品目の1つです。
化粧品は輸入できない?
化粧品は輸入が禁止されているわけではありませんが、輸入・販売するには化粧品製造販売業許可が必要であることが医薬品医療機器等法により定められています。
個人使用目的での輸入の場合は許可は必要ありませんが、輸入量が多いと商業目的とみなされる場合があります。
化粧品の定義
医薬品医療機器等法では、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの」を化粧品と定義しています。具体的には以下のような商品が化粧品に該当します。
・メイク用品
・スキンケア商品
・香水
・石鹸
・シャンプー
・リンス
・歯磨き粉
「人体を美化させるもの・肌や毛髪を健やかに保つもの」でも、人体への効果が大きいものは化粧品ではなく医薬部外品に分類されます。例えば、以下のような商品が医薬部外品に当たります。
・育毛剤
・除毛剤
・染毛剤
・口臭剤
・制汗スプレー
・ベビーパウダー
・薬用化粧品
・薬用石鹸
・薬用歯磨き粉
医薬部外品も化粧品同様、医薬品医療機器等法で輸入が厳しく規制されています。
個人使用目的の範囲
前述の通り、個人使用を目的としている場合は、特に許可を取らなくても化粧品を輸入することができます。ただし、個人使用目的とみなされるのは、基本的に1品目あたり24個以内までです。それ以上は商業目的とみなされます。
また、異なるブランドでも同じ品目である場合は、合計数が24個以内でないと個人使用目的とはなりません。例えば、LANCOMEの化粧水20個と、Kiehl’sの化粧水10個を輸入した場合、化粧水の合計個数が30個となるため商業目的とみなされます。
ただし、内容量が60g以下(液体の場合は60ml以下)の場合は、1品目あたり120個以内であれば個人輸入とみなされます。
化粧品の輸入販売に必要な許可
化粧品の輸入及び販売に必要な許可・資格を紹介します。
化粧品の輸入資格
化粧品や医薬品・医薬部外品を販売目的で輸入する場合は、厚生労働大臣の許可を得る必要があります。
ただし、医薬品を自分で使用する目的で輸入する場合と医療関係者が治療に使用する目的で輸入する場合は、例外的に許可は必要ありません。地方厚生局に報告書を提出した上で発行してもらった薬監証明書を通関手続きの際に提示すれば問題なく輸入できます。
輸入化粧品の販売許可
また、輸入した化粧品の販売には化粧品製造販売業と化粧品製造業の許可が必要になります。
「自分で製造するわけじゃないんだから、化粧品製造業の許可は不要では?」と思うかもしれませんが、医薬品医療機器等法では、商品の保管・包装作業も製造工程の一部とされています。そのため、輸入した化粧品を自分で保管・包装する場合は、化粧品製造業許可も必要です。
ただし、保管・包装作業を外注する場合は、化粧品製造販売業の資格だけで十分です。
化粧品製造販売業と化粧品製造業の許可は、各都道府県の薬務課に申請すれば取得できます。許可を取得したら、同薬務課に化粧品製造販売届書を提出しましょう。
あとは税関に化粧品製造販売業許可証と製造販売届書の写しを提出すれば、化粧品を輸入販売できるようになります。
許可が取れなかった場合
化粧品の輸入許可が取れなかった場合、税関で止められて返送、もしくは破棄されてしまいます。代金を払っていても関係ありません。
輸入化粧品の販売事情
化粧品の輸入販売は、必要な許可や制限が厳しいため、非常に困難です。しかし、メルカリやヤフオクなどを見ると海外の化粧品が大量に出品されています。
メルカリやヤフオクで海外の化粧品を販売しているセラーは3種類に大別できます。
(1)日本で販売されている海外の化粧品を転売している
(2)個人使用目的で輸入した化粧品を販売している
(3)許可を取って商業目的で輸入した化粧品を販売している
(1)と(3)に関しては何も問題ありません。問題は(2)です。
個人輸入品の販売はアウト
個人使用目的で輸入した化粧品の販売は立派な法律違反です。しかし、意外と法律違反をしているセラーは多く、そのほとんどが野放し状態です。
「じゃあ自分も個人輸入してから販売しよう」と思うかもしれませんが、今は数が多いからまだ見過ごされているだけで、今後まとめて検挙される恐れがあります。絶対に個人使用目的で輸入した商品を販売しないようにしてください。
化粧品の輸入代行
「自分で化粧品の輸入許可を取るのが面倒くさい」「でも輸入化粧品を扱いたい」という場合は、輸入代行という手があります。
輸入代行の注意点
ただ、輸入代行と言っても、輸入代行業者を利用して仕入れるのではありません。海外の化粧品を欲しがっている顧客の代わりに、あなたが輸入作業を代行してあげるのです。そして、代行手数料をもらいます。
輸入代行は、商品を仕入れて販売しているわけではないため、上で挙げた販売許可などは必要ありません。
輸入代行をする上で注意が必要なのは、関税です。関税の仕組みは非常に複雑で、同じ品目でもかかったりかからなかったりするため予測が困難です。
そのため、関税がかかる前提で料金を請求しましょう。もし関税が徴収されなかった場合は、後で返金すれば問題ありません。品目ごとの関税率は以下のページをご参照ください。
参考: 輸入統計品目表(実行関税率表)
化粧品の材料の輸入販売
輸入代行の他にも、化粧品の材料だけを輸入販売するという手もあります。材料の輸入には上記の化粧品の販売許可は必要ありません。
ただし、輸入した材料で作った「手作り化粧品」を販売することは違法です。メルカリなどでも手作りコスメの販売は規約で禁止されています。
石鹸の輸入販売
前述の通り、洗顔用・洗体用の石鹸は化粧品に分類されるため、輸入販売に許可が必要です。しかし、許可が不要な石鹸もあります。
石鹸の製造・販売に必要な許可
洗濯用・台所用など「人体への作用がない石鹸」に関しては化粧品ではなく雑貨に分類されるため、上記の販売許可が必要ありません。
商品説明・広告表現の注意点
ただし、石鹸を雑貨として販売する場合は、「お肌に良い」「美容効果がある」など、身体に好ましい影響がある旨の表記ができません。雑貨カテゴリで出品していても、体への影響がある旨の記述があると化粧品とみなされてしまい、無許可販売で違法になります。
石鹸輸入の注意点
洗濯用の石鹸などは、無許可で輸入しても問題なく通関できます。しかし、納品書の表記によっては化粧品・医薬部外品とみなされて没収される恐れがあります。
輸入する際は、販売元に「洗濯用」「台所用」など細かい記載をしてもらってください。
化粧品の並行輸入
化粧品を個人で輸入販売する場合は、正規輸入ではなく並行輸入という形になります。
並行輸入とは?
並行輸入とは、一言でいうと「メーカーの正規ルート以外のルートを通してなされる輸入」です。個人でメーカーから販売許可を得ることは困難であるため、個人輸入は基本的に並行輸入です。
並行輸入そのものは法律で禁止・規制されてはいませんが、メーカーによっては並行輸入を禁止している場合もあります。注意してください。
並行輸入の適法条件
ただし、並行輸入も以下の3条件を全て満たさないと違法になります。
(1)合法的に輸入している
(2)日本と海外の商標権利者が同一である(密接な関係がある)
(3)商品の品質が正規品と同一である
注意が必要なのは(3)です。国内に出回っている正規品は、必ずしも海外製品がそのまま流通しているわけではありません。医薬品医療機器等法で禁止されている成分が含まれている場合は、通関時にその成分だけが取り除かれてから輸入されます。もし正規品にそのような処置がされていた場合、海外から並行輸入した商品をそのまま販売すると違法になります。
並行輸入に関する行政の見解
現状では、上記の条件を満たしている限り、並行輸入に違法性はありません。通関時に特別な手続きや許可を求められることもありません。
化粧品の輸入販売は大変
化粧品や医薬品の輸入販売は必要な許可が多くて大変です。その分ライバルが少ないというメリットはありますが、輸入初心者が安易に手を出すべきジャンルではありません。
化粧品の輸入転売を始めようと思っている方は、この記事をよく読んで、海外製の化粧品を扱うデメリットについても理解を深めておいてください。