アクセサリーや小物など商品を撮影することを、ブツ撮り(物撮り)といいます。フリマサイトやインターネットオークションを利用する人も増えているので、「ブツ撮りをもっと上手くできるようになりたい」と思っている人も多いでしょう。
この記事では、ブツ撮りの基本や、上手く撮るポイントなどについて紹介していきます。また自分で撮る方法だけではなく、プロに頼んだ場合のケースについても解説しているので、プロに頼もうと考えている人もでぜひ最後まで読んでください。
商品を上手く撮るためには
ECサイトに載せる写真を上手く撮るためには、良い機材を使うことはもちろん、上手く撮るコツを覚えることも大切です。機材は本格的に揃えようとすると50万円~100万円くらいになってしまうので、ECサイトを始める人や始めたばかりの人にはハードルが高いでしょう。しかしカメラは手持ちのものを使って、撮影用の照明にこだわって小型ストロボやLEDを使うだけでも十分にきれいな写真が撮れるのです。
カメラは使いやすくて画質が良いのは一眼レフで、安いもので約5~6万円で購入することができます。コンパクトのデジタルカメラの場合は、上にストロボを取り付けられるタイプのものがオススメです。またカメラと照明のほかにレフ板や背景紙、ディフューザーがあるとよいでしょう。1つずつ解説していきます。
スマホで撮影するなら
Android、iOSどちらでも撮影は可能ですが、最近の複数のカメラを搭載した機種がオススメです。特に「望遠カメラ」があるものならば、広角カメラで画面いっぱいに撮った時にバースがつき被写体が歪んでしまうのを抑えてくれます。GoogleのPixel 4シリーズやiPhoneの11Proなどがオススメです。
LEDライトを使う
照明には、外付けのLEDライトを使うのがオススメです。昼間の自然光を使って撮影するやり方でもいいですが、夜間でも光量が安定して供給できるLEDライトがあると便利です。
できればスマートフォンに内蔵されているライトではなく、外付けのものを用意しましょう。内蔵のライトでは照射範囲が狭くカメラの横に発光部があるので、撮るものの影が出てしまいます。ホワイトバランスや光量が調節できるライトが使いやすくてオススメです。
ベルボン「VFL-12」は、軽くて薄いので持ち運びも楽で、ホワイトバランス・光量共に調節可能、三脚に取り付けることもできます。さらに、モバイルバッテリーとしても使える優れものです。
三脚やスマホホルダーなど
撮影する時に、スマートフォンを固定できる三脚やスマホホルダーを用意しましょう。設置や持ち運びが簡単なものが便利です。
マンフロットの「PIXI」シリーズは特にオススメです。同じく、「Twist Gripスマートフォンアダプター 」を使うとスマートフォンをしっかり固定することができます。
他にもクランプにもなり、ホルダーが付いているベルボン「パワークランプ・キングオブキングスエディション」もよいでしょう。テーブル越しにスマートフォンやLEDライトなどを固定できます。
背景紙の選び方
背景紙は基本的に白を選びましょう。撮影する商品よりも大きいものを準備します。対象物の色によっては、他に合う色や布、ウッドパネルなどを使ってもよいでしょう。
専用の背景紙が1番好ましいですが、100円ショップにある模造紙などで代用することもできます。また、汚れや折り目がつかないように気を付けましょう。
レフ板に代用できるもの
レフ板は、LEDライトの光を反射させるので、影を柔らかくしてくれます。市販のレフ板を使うのもいいですが、白いボードを二つ折りにしたものでも代用することができます。
ディフューザーの代用品
ディフューザーは、LEDライトの光を拡散してくれるので、明るさをやわらげてくれます。専用のものでももちろんいいですが、100円ショップにある乳白色のシートを何枚か重ねることで、光を通す量を変えられるので代用できます。
売り上げアップに繋がる商品の撮り方
次に、サイトを訪れた人が、買いたくなるような商品の撮影の仕方について紹介します。1つの商品に対していくつかの写真を撮影することが大切です。
ズーム写真で引きつける
商品全体が入り込むような写真だけではなく、セールスポイントになる部分を、ズームにしてアップで撮ります。食品ならば美味しさがより伝わるでしょう。
シチュエーションをつける
商品紹介の写真の他に、シチュエーションを演出した写真を撮ります。マグカップの場合、オシャレな布を敷いたり、スプーンなどの小物を飾ると効果的です。ライトはそのままでも、配置や下地を変えるだけで変化のある写真が撮れます。
注文が増える商品撮影テクニックやコツは下記の記事でも詳しく解説されています。合わせてご確認ください。
ポイントを抑えればスマホでも一眼レフのような写真が撮れる
スマホではきれいな写真が撮れないと悩んでいる方もいるかもしれません。もちろんミラーレスの一眼レフのようなセンサーサイズが大きいカメラで撮影する方が、きれいに撮れる写真もあります。しかし、スマホでブツ撮りするコツを知っておけば、十分にきれいな写真を撮ることが可能です。
ブログに載せる写真であれば、きれいに撮るポイントを知っていれば、スマホでも良い写真が撮れて加工もできます。
スマホでブツ撮りするなら「十分な明るさ」を確保する
良い写真を撮るためにはストロボやセンサーサイズも大切ですが、まずは十分な明るさをキープしましょう。写真を撮る時、写った光をセンサーがデータ化して画像にするので、昼間でも十分な明るさを保つためにプロはストロボを使います。
明るい場所と暗い場所で撮った写真を比べてみましょう。左の写真の明るい場所の写真は商品のディテールがしっかり出ていますが、右の暗い場所の写真は、光量が足らず、輪郭がぼやけてしまっています。このような事態を避けるためにも、なるべく明るい場所で撮影することを心がけましょう。
こちらの写真はさらに明るい場所で撮影したものです。加工するデータ量としては十分なのでこのくらいの明るさを目指しましょう。
スマホアプリには、上下に画面をなぞるとピントを合わせて露出を調整することができるものがあります。しかしこのやり方だと、多少不自然な印象になるので使わなくても大丈夫です。
スマホでブツ撮りするなら構図にこだわる
最大限の明るさを確保できたら、構図を決めましょう。三角構図や三分割構図など難しいことがわからなくても、気を付けるべきポイントが分かっていればきれいなスマホできれいな写真を撮ることができます。
避けるべきポイントは以下の通りです。
・余白はしっかりとあける
この例の場合だと、商品の周辺の余白が少ないので、圧迫感があります。
・余計なものや生活感の出るものは置かないようにする
こちらの写真は、周辺にティッシュペーパーの箱や、輪ゴムなど余計なものが写り込んでいるため、商品写真としては不向きな上、生活感があり、だらしない印象になっています。
・反射しやすいテーブルや机などは避け、被写体のライティングにも気を遣う
この写真では、被写体に光源が反射していて、商品写真としては好ましくありません。また、反射しやすいテーブルや机などで撮影した場合も余計な光が被写体に反射する可能性があるため、撮影に使うのは避けた方がよいでしょう。
以下の例のように、あらかじめ撮影する角度を決め、高い位置から商品全体を収めて撮影すると、商品の魅力が伝わりやすい写真が撮れます。
スマホでブツ撮りする時の加工方法
スマホで撮影した写真は、無料のアプリを使って加工するときれいに仕上がります。作業工程の半分ぐらいを加工に費やすと、クオリティの高い写真ができるでしょう。
アプリは色々ありますが、中でもVSCOは写真をフィルムカメラのような仕上がりにしたり、レタッチも色々できて便利です。AdobeのLightroomを使う人も中にはいますが、VSCOを使えばより簡単に加工ができてデザインもおしゃれなので、iPhoneユーザーの方には特におすすめです。
それでは、実際に写真を加工してみましょう。
スマホで撮影したこの写真を、 アプリで色味・明るさなど調節していきます。「クールな印象」「温かみがある」など、どんな写真にしたいか具体的なイメージがあるとよりクオリティの高い加工ができます。
ホワイトバランスを調整することで、写真全体の色味が整います。クールな印象に仕上げるなら寒色寄りに、暖かさを出すなら暖色寄りなど調節してみてください。さらにHSLで商品の色を好みの色に調節します。
次に、コントラストを上げてクリアにし、明瞭度を上げて、商品のディティールをくっきりさせます。海外のInstagramでは明瞭度を上げた写真が多く載せられているので、参考にしながら不自然にならない程度に調整してみましょう。
スマホで撮影した写真は、光を取り入れていても少し暗い感じになるので、最後に露出を上げて明るい印象にします。明るくしすぎると白飛びしてしまうので気をつけましょう。
すべての加工が終わると、かなりきれいな仕上がりになります。写真を加工することで、よりクオリティの高い商品写真に仕上がりました。
左が加工前で右がスマホアプリで加工した写真です。
写真全体が明るい印象になり、色も鮮やかになったため、加工前よりも商品の魅力がより伝わりやすい写真になったかと思います。このように、スマホアプリで商品写真を加工する場合は、ちょっとしたポイントを押さえるだけで、仕上がりが全く違ってきます。
自分で撮影してみる
今まで紹介したことを踏まえて実際に撮影するときに抑えておきたいポイントを紹介します。
ライティングの基本
ライティングの基本を覚えましょう。小型軽量のLEDライトを使用した場合、ライトボックスやアクセサリーの装着または使用ができないので、直接ブツに光を照射するか天井バウンスになります。直接照射する場合は、影が強く出るので乳白色のシートをライトのサイズに切ってディフューザーの代わりにするとよいでしょう。
シートは100円ショップで買えます。シートの枚数を重ねれば、影の濃さや出方を調節することができます。
天井バウンスの場合は、ライトスタンドを伸ばしたり縮めるなどして距離を変えることで、光の調節ができます。撮影する時に、高さを微調整しながら試してみてください。
グリッド線で水平を保つ
三脚にスマホをセットしてLEDライトをつけ、被写体のセッティングができたら、撮影になります。撮影する時には水平をしっかり意識しましょう。
三脚で固定していても傾きが出ることがあります。そのためグリッド線を使うと、傾きや水平の角度がわかりやすくなります。使用するスマートフォンによって設定の仕方が変わりますが、iPhoneなら、「設定→カメラ→グリッド」を選択すれば、画面上に表示されます。
望遠にしすぎない
特に小さいものを撮影する場合、望遠レンズを使っても商品を画面に大きく入れられないことがあります。その時には、デジタルズームがオススメです。
iPhone11Proシリーズなら最大10倍までズームにできますが、5倍くらいまでにした方がきれいに撮ることができます。また、Pixel4シリーズなら、超解像ズーム機能があるので最大8倍まで拡大しても比較的きれいに撮影できます。
露出補正とAE/AF機能
画面内に水平に商品を配置したら、露出とピントを合わせます。スマートフォンの場合、シャッタースピードとISO感度を使って明るさ調整することができます。
iPhoneならば、画面の中のピントを合わせたい位置をタッチしてそのまま長押しします。画面の上部に「AE/AFロック」と表示されたら、ブツの明るさとピントが固定されたことになります。
画面の四角い枠の右の太陽のマークを上下に動かすことで、明るさを調節することができます。この機能を使うと露出が調整できるので、好みの明るさの写真を撮ることができます。
Pixel4シリーズの場合、画面に写る被写体をタップするだけでピントが固定され、右側のデュアル露出補正で明るさを調節することができます。
光の調節はディフューザーで
画面の明るさはとは別に、影をコントロールしたい時にディフューザーを使います。100円ショップで手に入る乳白色のシートで簡単に作ることができます。
シートをLEDライトのサイズに合わせてカットして、枚数を重ねてLEDライトにテープで貼り付ければ、影を柔らかくすることができます。枚数を増やせばよりソフトになるので好みの影に調節できます。LEDライトを直接照射した場合、明るさはありますが影が濃く出ています。
ディフューザーを2枚重ねてLEDライトに貼ると、写真が多少暗くなりますが、その代わり影が柔らかくなります。
ディフューザーを4枚にした場合、写真はさらに暗くなりましたが、影がよりソフトになっています。影を好みの濃さに調節したあとは、露出補正で明るくすればOKです。
スマートフォンで撮影する時も、100円ショップで手に入るような簡単なグッズできれいなブツ撮りができます。さらに背景紙の素材や色を変えたり、ライトを当てる位置を変えたりすることで、個性のある写真を撮ることができます。ブログやネットオークション、フリマサイトなどでも人目を引く写真を撮りましょう。
プロのカメラマンにブツ撮りを依頼するメリットとは
前項までは自分でブツ撮りをする方法について紹介してきました。手軽にスマホや簡単な材料でクオリティの高い写真を撮ることに挑戦するのもいいけれど、「難しそう」「自信がない」という人は、プロのカメラマンに依頼してみてはいかがでしょうか。
機材を揃える必要がない
プロに依頼すれば、カメラや照明、レフ板やディフューザーなどを自分で揃える必要がありません。さらにスタジオを借りて撮影するとなると、レンタル費用も発生するのでかなりのコストがかかります。
プロの技術で撮ってもらう
たとえ自分で撮影するために機材を揃えても、ブツを撮るノウハウや技術がなければ、売り上げアップするような写真は撮れません。プロに依頼することで、上質な機材を使い、技術と経験を活かした完璧な写真を撮ってもらうことができます。
時間と労力の削減
人にきれいと思わせるような写真を撮ろうとすると、それなりの時間と労力が必要になります。プロに依頼すれば、これらのこともすべて準備して撮影してくれるので、ブツ撮りに費やしていた時間を別の仕事や商品選定などに使うことができます。
購買意欲をかきたてる写真
自分で撮った写真とプロに依頼したブツ撮りの写真の、どちらが多く売れたかというのはとても大切なポイントです。多くの企業が、自社の商品を売り出す時に、プロに撮影を依頼します。
素人や社内の人間が撮影することはありません。人の心に響く「美味しそう」「便利そう」「使ってみたい」と思わせる写真を、素人が撮るのはなかなか簡単なことではないということです。
スマホで簡単にオークションやフリマサイトに出品する写真を撮ることはできますが、やはりコストをかけたブツ撮りをしたショップの方がより多くの客を引き寄せています。商品写真を見たユーザーが買いたい!と思える写真を撮らなければ、売り上げは上がらないということです。
まとめ
商品(ブツ)を撮影する時のテクニックや、気をつけたいポイントなどについて紹介しました。ちょっとしたことでも知っていると知らないとでは、写真に大きく差が出ます。テクニックがわかれば、自分で撮ってもプロ並にきれいな写真を撮ることができます。