化粧品は無税!?海外通販するなら知っておきたい関税の知識

インターネットが普及したおかげで、海外の通販サイトでも手軽に利用できるようになりました。日本未発売の商品が手に入ったり、日本で買うよりも安い値段で買えたりするなど、海外通販には日本のショップで買い物をするのとは違った魅力があります。

ただ、個人で海外通販を利用する場合でも、海外から商品を買っている以上は輸入になることには注意が必要です。場合によっては、関税を支払う義務が生じます。

この記事では、どんな場合に関税が発生するのか、関税はどうやって支払うのかといった関税に関する疑問点を解消していきます。海外通販サイトを利用している人やこれから利用してみたいと思っている人は、この記事を参考にしてください。

目次

関税に関する基本知識

まずは、基本的な知識から解説していきます。

海外から商品を輸入する際にかかる税金には、関税の他に消費税もあります。国内の消費税と同じように、飲食料品に関しては軽減税率の適用があります。

次に、関税と消費税の計算方法をご紹介します。

関税は、課税価格に関税率をかけて算出します。課税価格には商品の代金のほか、輸送料と保険料も含まれます。これに対して、課税価格に関税額を足した合計額に消費税率をかけたものが消費税額となります。

なお、関税率は、税関のホームページにある実行関税率表で調べることができます。

参考:輸入統計品目表(実行関税率表)

以上をまとめると、関税額と消費税額の計算方法は以下のようになります。

(商品の代金+輸送料+保険料)× 関税率=関税額

{(商品の代金+輸送料+保険料)+関税額 }× 消費税率=消費税額

より詳しい説明は、以下のページを確認してください。

参考:1111 関税、消費税等の税額計算方法(カスタムスアンサー)

ただ、関税等に関しては、基本的には郵便局員などに請求された額を支払うだけなので、自分で計算する必要はありません。また、後で解説するように関税がかからない場合もあります。商品を購入するかどうか決める際に関税を計算しておきたいという人以外は、関税等の計算方法についてはあまり気にしなくても大丈夫です。

課税価格1万円以下の場合の免税と簡易税率

上記の計算方法を用いて税額を算出するのが原則ですが、課税価格(商品代金+輸送料+保険料)が1万円以下の場合は、関税と消費税が免除される制度があります。商品の品目によっては免除対象にならない場合もありますが、基本的には課税価格が1万円以下であれば免税になるので、上で説明したような計算をする必要はありません。詳しくは、以下の税関のページを確認してください。

参考:1006 課税価格の合計額が1万円以下の物品の免税適用について(カスタムスアンサー)

また、課税価格が20万円以下の場合は、小額輸入貨物として簡易税率が適用されます。あえて一般税率で計算することもできますが、通常は簡易税率の方が税率が安いので、こちらを適用したほうが無難です。簡易税率についても、品目によっては適用がない場合があります。詳細は以下のページを確認してください。

参考:少額輸入貨物の簡易税率

個人使用目的で輸入する場合

個人輸入の場合は免税になる範囲がさらに広くなります。

具体的には、免税になる場合の計算方法が変わります。輸送料や保険料が含まれなくなり、単に商品代金に0.6をかけたものが課税価格となります。

つまり、商品代金に0.6をかけたものが1万円以内なら、関税や消費税はかからないということです。具体的に計算すると、商品代金16,666円までなら免税ということです。

ただ、この制度を利用できるのは個人使用目的で輸入する場合に限られますし、個人で輸入すれば全て個人使用目的になるというわけでもありません。この点については、後で解説します。

関税・消費税はどうやって支払うか

関税や消費税(以下、税金)がかかる場合の支払い方法を解説します。ここでは国際郵便で荷物が送られてきた場合を例に説明します。

まず前提として、課税価格が20万円を越える場合は、輸入申請が必要になります。輸入申請は自分で行うこともできますが、日本郵便を含む通関業者に依頼することもできます。申請をして輸入許可を受けることで、荷物の受け取りが可能になります。課税価格20万円以下の場合は、この手続きは必要ありません。

そして、税金がかからない場合や税額が1万円以下の場合は、直接荷物が配達されてきます。配達された際に郵便局員に税金を支払って荷物を受け取る仕組みになっています。

税金が1万円越え30万円以下の場合は、郵便局から事前に連絡があります。この場合、希望すれば配達してくれますので、その際に郵便局員に税金を支払えばOKです。

すぐにお金を用意するのが難しい場合などは、国際郵便物課税通知書を送ってもらいます。この場合は、後日、これを持って郵便局に行き、窓口で税金を支払って荷物を受け取ることになります。税額が30万円を越える荷物については、最初から課税通知書が送られてきます。後は同様の手続きとなります。

以上の手続きについては、郵便局のホームページに記載があります。

参考:海外からの郵便物を受け取る

事前に課税の有無や具体的な税額がわからない場合も…

これは海外通販でよく利用されるEMS(国際スピード郵便)に多いのですが、本来は税金がかかる場合でも、課税されないまま荷物が届くことがあります。EMSの取扱量が多いことから、事実上課税手続きがなされずスルーされていることが多いからです。しかし、配送業者としてFedExやDHLのような民間事業者を利用した場合には、ほぼ間違いなく課税されます。こうなると、課税されるか否かは配送業者次第ということになるので、事前に課税の有無を知ることは困難です。

また、実際に荷物が配達されるまでは、課税される具体的な金額について正確に知ることはできません。例えば、上で紹介した実行関税率表の第12部第64類を見てみてください。この表のどれに当たって、どの関税率が適用されるかは、実際に課税されるまでは分からないことが多いのです。

このように、輸入では事前に課税の有無や具体的な税額がわからない場合もあるのです。

海外通販を利用する際の注意点

ここでは、化粧品の場合を例にして、海外通販を利用する際の注意点について説明します。

個人輸入について理解しよう

すでに軽く触れましたが、いわゆる個人輸入というのは、個人が自分で使用する目的で商品を輸入することです。したがって、個人輸入した化粧品は、他人に売ったり、ゆずったりしてはいけません。また、自分の分を購入する際に、ついでに他の人の分もまとめて輸入するといったこともできません。この点をよく理解しておきましょう。

そして、「個人が自分で使用する」という前提なので、一度に輸入できる個数が制限されています。化粧品の場合、1品目につき24個以内とされています。1品目につきというのは、例えばアイシャドーを買う場合なら、ブランドや商品、色などが違っても、アイシャドー全体で24個が上限ということです。

化粧品の個人輸入についての詳細は、以下の厚生労働省のページを確認してください。タイトルが「医薬品等の個人輸入について」となっていますが、化粧品は薬機法の規制を受けるので、医薬品と同じ扱いです。

参考:医薬品等の個人輸入について

海外で売られている化粧品は処方が違うことも

化粧品の場合、海外ブランドが日本で販売している商品と、そのブランドが現地で販売している商品とでは処方が異なる場合があります。そのため、よく調べてから購入するようにしましょう。

処方以外にも異なる点がありえる

これは化粧品に限ったことではありませんが、同じ商品でも日本で販売されているものと海外で販売されているものとでパッケージ等が異なる場合があります。また、海外からの発送ということもあって、パッケージに傷や汚れがある場合もあります。

さらに、商品の色味などは、パソコンなどの画面で確認した場合と、実際の商品とで違って見えることがあります。思っていた色と違っても返品ができないので、この点も注意しましょう。

輸入が規制される商品について

普通に海外通販で商品を購入している場合は、あまり神経質になる必要はありませんが、海外通販も輸入であることには違いがない以上、輸入規制がかかる商品もあります。念のため確認しておきましょう。

関税法による規制

まず関税法で規制される物品があります。麻薬や覚せい剤、指定薬物、拳銃、爆発物、火薬類など、12分野に及ぶ規制があります。詳細は以下の税関のページに記載されています。常識的に考えれば規制されて当然の物品ばかりですが、念のため一読しておくと良いでしょう。

参考:2001輸入してはならない貨物とは (カスタムスアンサー)

なお、規制される物品の中には、「公安または風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品」のように、法律の文言だけでは具体的に輸入が禁止されている商品か否かを判別するのが難しい場合もあります。疑問点がある場合は、遠慮せず税関相談官に相談するようにしてください。

関税法以外の法規による規制

関税法以外にも輸入を規制する法律はあります。上でご紹介した医薬品等に関する薬機法もその一つです。

それ以外には、希少な動植物を保護するためのワシントン条約、食品や食器、調理器具などを規制する食品衛生法、植物の種子などを規制する植物検疫法、肉の加工品や乳などを規制する家畜伝染病予防法、銃や刀を規制する鉄砲刀剣類所持等取締法といったものがあります。

全面的に輸入が禁止されるものだけでなく、事前の許可・承認が必要だったり、輸入の際に検疫が義務付けられていたりと、規制の手段も色々です。

海外通販を利用するメリット

ここまでの関税や輸入規制に関する話を読んで、「個人輸入は面倒くさい」と思われたかもしれません。しかし、海外通販には国内で商品を購入するのとは違ったメリットがあります。

海外のブランド品が格安で購入できる

海外通販を利用すると、海外のブランド品が安く買えます。そもそも国内と海外で価格差がある場合もありますし、海外のショッピングサイトの中には頻繁にセールを行ったりクーポンを配布したりしているところがあるので、それらを利用することでさらに安く買える場合があるのです。

特に新作商品を購入する場合、日本だと高値を付けられがちですが、海外では値引きされていることもままあるので、海外通販を利用するメリットが大きくなります。

国際送料が無料の場合も

海外通販を利用するデメリットとしては、国内通販よりも送料が高くつくことが挙げられます。ただ、化粧品のようなコンパクトな商品であれば、海外通販でも送料無料で販売されている場合があります

こういった送料無料サービスを利用できれば、海外通販のデメリットは小さくなるでしょう。

関税がかからない場合もある

そもそも関税の主な目的は、国内産業の保護にあります。海外の製品に関税を課すことで、国内製品との価格競争面でのバランスを取ろうとしているのです。

したがって、特に国内産業を保護する必要がない場合は、関税は課されません。例えば、この記事で何度か出てきた化粧品については無税とされています。ただし、この場合も課税価格が1万円を超えると、消費税は課されます

関連記事: 化粧品せどりで儲かる商品10選と仕入先7選

海外でかかる税金、付加価値税(VAT)とは?

海外でかかる税金には付加価値税というものもあります。Value Added Tax、略してVATとも呼ばれます。完全に同じではありませんが、日本の消費税に近いものです。

この記事の最後に、東アジアの4国(中国、台湾、シンガポール、マレーシア)のVATについて簡単に解説しておきます。

なお、以下で解説する内容は、日本貿易振興機構(JETRO ジェトロ)のホームページの記載を参考に作成しています。より詳しい内容を確認したい方は、ジェトロのホームページを参照してください。

参考:日本貿易振興機構(JETRO ジェトロ)

中国のVAT「増値税」

中国のVATは増値税といいます。課税対象によって13%、9%、6%、0%と税率に違いがあります。

増値税は、売上高に増値税率をかけたものから、仕入高に増値控除率を掛けたものを引いて算出します。増値控除税率は、9%または10%です。

簡易課税方式を選択した場合は、5%の徴収率を売上高に掛けて計算します。小規模納税者の場合や一般納税者の特定納税項目に関しては、徴収率は3%です。

中国の増値税は、日本の消費税と比べると制度設計が複雑です。

なお、中国にも消費税という税金はあります。もっとも、これはタバコや酒などの特定品目の生産や委託加工、輸入の際に課される税金で、日本の消費税とは別物です。

台湾のVAT「営業税」

台湾のVATは営業税です。営業税には非付加価値型も含まれるので、正確には営業税の一部ということになります。税率は5%です。

シンガポールのVAT「財・サービス税」

シンガポールのVATは、Goods & Services Tax、略してGSTと呼ばれます。基本的にすべての財貨及びサービスが課税対象となり、標準税率は8%です。ただし、2024年に9%に増税することが予定されています。

なお、商品の輸出や一定の国際サービスに関しては、課税率0%の扱いとすることが定められています。

マレーシアのVAT「売上税」

マレーシアには物品・サービス税(GST)というVATがありましたが、これが廃止されて売上税(Sales Tax)とサービス税(Service Tax)が導入されました。両者を併せてSSTと呼びます。

売上税の税率は5%または10%、サービス税は6%です。他に、特定の品目に課される物品税もあります。

関税のことを知って、安心して海外通販を楽しもう!

海外から物品を輸入する際に知っておきたい、関税に関する知識について説明してきました。

関税について詳しく知らなくても、海外通販を楽しむことはできます。ただ、関税に関する知識があれば、大体の課税額が予測できるので、安心して買い物ができるようになります。基本的なところだけでも構わないので、この記事を参考に関税に関する知識を身に付けていきましょう。

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この記事を監修した人

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