中国輸入に限らず、貿易でやり取りする際に必要となる書類の1つに「インボイス」があります。
インボイスはお店で買い物をした時にもらえるレシートのように、「相手とやり取りした記録」となる書類です。
インボイスは、書類以外の物品を海外から輸入、輸出する際に、税関に提出する必要があり、税関はこのインボイスを元に物品を確認し関税を決定します。
商業貿易をする際には、自分でも確認が必要となるインボイスについて、その内容を詳しくご紹介します。
インボイス(INVOICE)とは?その意味と必要性
中国輸入をした際に、荷物の中に一緒に入っている書類にインボイス(INVOICE)があります。
インボイスには、輸出者と輸入者の情報、入っている物品(商品)についての情報、貨物を載せた船や航空機の情報、支払いに関する情報が明記されており、これを見ればどれぐらい物品のやり取りに費用がかかったのかを確認することができます。
書類は全て英語で書かれていますが、間違いがないかどうかを輸入者自身で確認する必要がありますので、内容について詳しく見ていきましょう。
インボイスとは?
物流道の物流用語によると
「インボイスとは請求書のこと。
主に輸出入を行うときに使用し、約定品の出荷案内書、物品明細書、価格計算書、代金請求書を兼ねた商用書類で、売主が買主宛に作成します。」
とあります。
日本でも仕事のやり取りの際には、見積書を出してもらう→相手から請求書が届く→配送の手配書が届く→物品が納品され納品書が届くという流れでやり取りしますが、インボイスもその都度やり取りする書類で、一口にインボイスとまとめていっていますが、5つのインボイスがあり、相手とのやり取りの度に送られてきます。
やり取りの順番で発行されるインボイスは以下の通りです。
・プロフォーマインボイス 見積もりの発行時に使われ、輸入許可を受け取るために必要となります。
・コマーシャルインボイス 日本での請求書と同じ意味があり、輸出貨物についての情報もこのインボイスで分かります。
・シッピングインボイス 日本での納品書と同じ扱いとなる書類です。
・カスタムズインボイス コマーシャルインボイスと兼用されることが多く、カナダやオーストラリアなど特定の国へ輸出する際に必要となる書類です。
この中で中国輸入でのやり取りで使われ、最も必要となるのがコマーシャルインボイスであり、一般的にこれを「インボイス」と呼んでいます。
インボイスにはどんなことが書かれているの?
インボイスで重要なのは、記載されている内容が正しいか、またきちんと必要な情報が明記されているかということです。
インボイスには、税関で関税の計算をする際に必要な情報が明記されているためです。
関税は国内の商品や産業、製造者を守るためにあり、国の大切な収入源の1つとなっています。
国によって輸入や輸出にもかかる場合がありますが、日本では輸入時にのみかかります。
中国輸入などの場合は、価格にかかる「従価税」によって課税価格が決まります。
課税価格とは、輸出した際の船積みにかかる費用、海上保険料、さらに運賃を商品の卸価格に加えたものです。
また商品の価格は常に変動しますので、インボイスである程度の課税額は分かりますが、実際に関税を通るまではいくらかかるのかは分かりません。
インボイスを元に関税や消費税が請求される仕組み
日本では輸入品に関税がかかる他に、消費税もかかります。
この額を決定する際にも、インボイスが必要となります。
消費税は日本の規定で決められた税金であるため、輸入した人が負担することになっています。
輸入した商品によって関税額は変わりますが、服やバッグなどのアパレル商品に関しては、関税率は8%から16%となっています。
もしその商品の関税率が10%だった場合は、関税率の10%と消費税の10%をあわせて20%が仕入れ額から計算され、輸入者に請求されることになります。
インボイスの3つの種類と役割
海外企業と商品の販売のやり取りをする際、日本での商品のやり取りと同じように、書類が必要となります。
やり取りの度に必要となるため、どの書類をどのタイミングで用意すればいいのか分からないということはないでしょうか。
インボイスは先にご紹介したように5種類ありますが、今回は中国輸入で必要となる3つの書類について、その役割を詳しくご紹介します。
プロフォーマインボイス(Proforma Invoice)とは?その役割は?
日本での見積書と同じように扱われる書類です。
輸入する国が、事前に輸入許可や認可を得るために必要となるため、商談が成立する前に輸出者が提出する必要があります。
見積書であるため、実際にはまだ物品のやり取りはしていませんので公的な証明を受けることはできません。
コマーシャルインボイス(Commercial Invoice)とは?その役割は?
貿易の商取引では最も重要であり、インボイスとは一般的にはこのコマーシャルインボイスのことをいいます。
日本における請求書と同じ役割があり、輸出者が作成して輸出者に送ります。
請求時に使用する他、輸出通関の際には税関へ提出しますので、商品と一緒に送られます。
コマーシャルインボイスには、輸出する商品の品名(原材料や使用用途なども含む)、単価、数量、輸送する船の名前、貿易における取引条件、決算条件、支払い条件などが明記されています。
EMS(国際スピード郵便)など航空便にも必要となるインボイスも、このコマーシャルインボイスです。
インボイスに加え、船便の場合はパッキングリストも一緒に作成し提出します。
シッピングインボイス(Shipping Invoice)とは?その役割は?
日本における納品書と同じ役割を持つのが、シッピングインボイスです。
出荷の案内、配送手配、輸出して税関を通る際にそれぞれ確認されます。
船便だけでなく、航空便、トラック便で貨物を輸送する際にも必要となる書類です。
船積みなどにかかった費用を請求するための書類ですが、請求書としての意味合いよりは、納品書に近い役割です。
実際の請求はコマーシャルインボイスを利用して行われます。
インボイスの使用目的とその用途について
インボイスが、海外企業とのやり取りに重要な役目を果たしていることはお分かりいただけたでしょうか。
こちらではインボイスが使用される目的や用途について、具体的に詳しくご紹介します。
インボイスは何の目的で使われるの?
インボイスには、貿易取引の内容が明記されており、その情報を元に関税を決定する目的があります。
課税価格が1万円以下の貨物の場合には免税のルールによって課税されない仕組みですが(ただし除外される商品もあります)、それ以外の場合は全て課税の対象となります。
インボイスには、取引した商品の価格や内容の他、輸入の際にかかった経費などの情報についても書かれています。
これらの情報を総合的に見て、関税率が決まります。
インボイスは通関でどのように使われているの?
具体的には、インボイスに明記された情報を元に、通関で関税を決定します。
インボイスには商品の価格だけでなく、日本までの輸送にかかった経費も明記されています。
これは関税が「貨物の価格」に加え、「輸送にかかった諸経費」を合わせた額で課税価格が決定することが理由です。
貿易の際には、取引条件としてFOBやCIFなどが用いられます。
FOBは船に荷物を載せるまでは、輸出する側(売主)が運賃や保険を負担しますが、積み込まれた後は輸入者(買主)が運賃と保険を負担する条件です。
CIFは輸出者が運賃と保険を負担する方法で、中国輸入を始め、ほぼこちらの条件での取引が行われています。
輸送する際に事故があっても保険で対応できますので、リスクはCIF条件の方が低いためです。
インボイスには貨物の価格、船賃、そして海上保険がそれぞれ記入されていますので、税関ではこの合計額であるCIF価格を関税対象として見ることになります。
コマーシャルインボイスとプロフォーマインボイスの違いとは?
インボイスでよく使われる3つのインボイスの中で、プロフォーマインボイスとコマーシャルインボイスについて、その違いがよく分からないといったことが少なからずあります。
この2つの大きな違いは、プロフォーマインボイスが「仮の書類」であることに対し、コマーシャルインボイスは「正式な書類」であることが挙げられます。
プロフォーマインボイスは見積書と同じで、ここの表記されている価格は決定価格ではありません。
あくまでも輸出許可を取るために申請時に必要なだけで、関税や保険を決定する際に必要となるのは、正確な金額が記入されたコマーシャルインボイスのみです。
プロフォーマインボイスでは税関を通ることはできません。
利益を載せない場合のインボイスの3つの表記方法
インボイスは、貿易取引の内容を明記し、関税を決定する際の資料となる重要な書類です。
ただし利益を乗せる必要がない取引の場合は、どのような価格表記をすればいいのでしょうか。
考えられる3つのパターンについて、その対処法を詳しくご紹介します。
貨物をプレゼントする場合はどう記入する?
輸入した貨物を、個人的な使用目的で相手に渡す、いわゆるプレゼントとして送る場合、価格の欄は無料でいいのか考えてしまいますよね。
この貨物自体の価値は無料ですが、実際にインボイスに「無料」と書くことはできません。
それは、関税ではその荷物が、送り主、受け取り主の都合で無料になっているということまでは分からないからです。
関税のシステムでは、あくまでもその貨物(物品)が何であり、その市場価格や流通価格が今いくらでやり取りをしているのかという部分でしか判断ができません。
そのため、インボイスでは物品に対する名称や材質などの説明に加え、その価格も明記する必要があります。
その上で、「NO COMMERCIAL VALUE/Value for customs purpose only」と書きます。
これは商業的価値はありませんが、通関用に本来の価値を提示します、という意味で、これを見れば通関も判断することが可能となります。
商業的なサンプルを輸入する際にインボイスはどう書く?
商品のやり取りをする際、特に中国輸入で中国の工場に製造をお願いする場合には、サンプルのやり取りをしますが、この場合のインボイスはどう書けばいいのでしょうか。
よくあるのが、海外に出掛ける際に、ちょっとしたサンプルを持参しようとしたところ、税関で問題になるケースです。
サンプルや試作品は、それ自体は売り物になっていないので基本的には無料ですし、大きさや物によっては、免税となる国も多くあります。
ただしインボイスに記入をちゃんとしていなかったために、持ち込みができず処分せざるを得なかったということも大いにあり得ます。
この場合も、サンプル品や試作品の名称や素材、価格を記入します。
そして「NO COMMERCIAL VALUE/Value for customs purpose only」と明記すればいいのです。
ただし大量の貨物に対して、「NO COMMERCIAL VALUE」とすると、脱税を疑われる可能性もありますので、注意が必要です。
同じ会社間で輸入をする場合はインボイスはどうなるの?
日本の会社が外国の会社と業務提携をし、その会社の商品を日本に輸入する場合、同じ会社なのですから利益が絡むことはありませんので、インボイスには金額は0円とすべきでしょうか?
この際にも、インボイスには商品の金額は明記する必要があります。
ただしこの場合は、価格に利益を乗せずに、税関で持ち込む際に同じ会社内でのやり取りであるということを口頭で説明する必要があります。
もしくは2つの会社が業務提携をしていることを証明する書類などがあれば、それを提示することでも説明となります。
インボイスの記載でよくある注意すべき3つのポイント
輸入や輸出の際にやり取りされるインボイスですが、記入方法についての正式な書式があるわけではないので、いざ作成使用とした時や受け取った時に何を確認すればいいのか悩んでしまいがちです。
ここではインボイスの記載について、注意すべきポイントをご紹介します。
インボイスに記載することは?
インボイスには書くべき項目がありますが、所定の書式があるわけではありません。
必要となる記載事項には、以下のものがあります。
・発行者 輸出者の情報(社名や住所、連絡先など)
・インボイス番号
・インボイスを発行した日付け
・輸入者 輸入申告をする人の情報を記入します。
・送り先 輸入者の住所と違う宛先に送る場合に記入します。
・ケースマーク 輸送する箱につけられた番号のことです。
・船便情報 輸送する船の情報や、便名、出航予定日など。
・積込港と荷卸港 途中で経由する港や荷下ろしする港などの情報を記入します。
・支払い条件 輸送費や保険の支払いについて必要があれば記入します。
・製品名や個数、金額 通貨単位と個数単位はパッキングリストと統一する必要がありますので、事前に取り決めが必要です。
・インターコムズ 貿易条件には、輸出者がどこまで輸送費や保険を負担するか、また輸入者がどこまで負担するか、事前に取り決めが必要です。
インターコムズは世界共通の貿易ルールとなります。
・原産国表示 どこの国が原産かを明記します。
・署名 直筆が必要な場合もあります。
会社によってインボイスの書式は違いますので、取引する会社の書式に合わせて書くようにしましょう。
無料の貨物を送る場合のインボイスの正しい書き方は?
関税では輸入したものの価格とそれにかかった経費により、課税する価格を決定します。
無償の商品やサンプル品は取引に使うものではないので、金銭的な価値はないものと考えがちですが、無料であっても関税にはその価格を明記して申告する必要があります。
この場合はその商品の価格を明記した上で、「NO COMMERCIAL VALUE/Value for customs purpose only」と記入します。
商業的価値のない商品ですが、関税のチェックのために本来の価格を明記しますといった意味があります。
無料の貨物でも金額が記入されていないと、再チェックされるため、貨物の荷下ろしに時間がかかり、他の人に迷惑をかけるだけでなく、脱税の目的があったと受け取られ、今後のやり取りにも影響を及ぼしてしまいますので注意しましょう。
インボイスによる問題発生の例
あってはいけないことですが、よくある事例として、貨物をX線にかけたところ、インボイスやパッキングリストに明記されていない不明の荷物が見つかるということがあります。
サンプル品など輸出者から無償で提供されたり、また前回のやり取りで破損した商品の代替え品で、価格的には無料となるものなのですが、もちろんこれもインボイスに記入が必要です。
ただ無料だから記入しなくていいと思った、という思い込みでこういったことが起こりがちなのです。
この場合、全ての荷物をコンテナから出して全ての商品について、個数と価格を調べなければなりません。
その間荷物を出すことはできませんので、倉庫代が必要になるだけでなく、輸送に関するあらゆる手続きがストップします。
それだけでなく税関に修正申告をし、経緯報告の書類を提出する必要があります。
また今後の税関のやり取りで、正しくインボイスを記入していても、全ての商品を確認するまで税関を通してもらえないといったペナルティが課されることもあります。
インボイスは正しく記入し、輸出者にも不要な荷物を入れないように周知徹底する必要があります。
インボイスで注意すべき3つの項目
インボイスの記入の仕方によっては、税関で止められることになりますので、注意すべきポイントについて詳しくご紹介します。
価格の確認はしっかりしておく
インボイスに記入されている商品の数量と、実際に輸入する商品の数量が違う場合や、商品の価格が安すぎる場合などは、アンダーバリューの疑いが持たれ、税関で荷物がストップしてしまいます。
書類と実際の貨物に相違が起きないよう、インボイスを事前に確認するなど、相違が起きないよう徹底することが必要です。
特に無料品やサンプルなどを入れる場合には注意しましょう。
薬機法に該当しないかチェックしよう
薬機法とは、医薬品や医療機器などを使用した際、それによる危害が起こらないよう安全を確認し、品質や有効性について規制を行うものです。
細かな規定がありますが、中国輸入などでの商品をやり取りする際に、「人体に対して使用するもの」は、取り締まりの対象となります。
化粧品や医薬品を輸入することはありませんが、健康グッズや美容グッズなどの商品は許可証を求められることがあります。
この場合はそれができませんので、商品を廃棄するしかありません。
こういった事態にならないように、商品説明などには注意が必要です。
身体への効能や効果をうたう商品説明、「効果があります」「治癒します」などといった文言は書かないようにすることも対策となります。
食品衛生法に注意しよう
食品衛生法は、食品に関係するものが中心ですが、食器など「口に直接つくもの、お弁当箱など「食品が直接触れるもの」も該当商品となっています。
オールステンレスであれば問題ないとされるのですが、プラスチック製などの場合は引っかかってしまうこともあるため、食器ではない別の用途であることを記載するといった対処をするか、そもそも輸入しないようにするしかありません。
輸入時のインボイスでよくあるアンダーバリューについての3つの注意点
インボイスを使ったアンダーバリューの問題が多く発生し、輸入事業を行っている人に大きな打撃を与えています。
ここではアンダーバリューに巻き込まれないために、注意したいポイントをご紹介します。
中国からの輸入はインボイスに特に注意!
インボイスとは、海外から貨物を輸入した際に、輸出者から請求書として送られる書類です。
中国輸入では、大きな取引の金額になると、インボイスの価格が輸出者側から大幅に値下げをした状態で提出されていることがあります。
税関などから確認されることがありますので、輸入に関してやり取りした書類や記録(Eメールなども含む)はきちんと保存しておき、分かるようにしておく必要があります。
中国輸入では特に、こちらから指示していないにもかかわらず、インボイスの金額を下げてくることがあるのです。
中国からの輸入でアンダーバリューは当たり前?
インボイスの商品の金額を安く記入し、関税や消費税を安くする方法をアンダーバリューといい、これは脱税行為となります。
価格についての証明書類は必要ないため、中国ではアンダーバリューで価格を記載することが常態化しているのが現状です。
こちらで何も指示していないにもかかわらず、アンダーバリューでインボイスを記入し、指摘すると「みんなやってますよ」と返されるといったことも少なからずあるようです。
アンダーバリューは犯罪行為!知っていても知らなくても同じ
アンダーバリューについては、海外取引に詳しい人が、犯罪と知っていながら悪用するというパターンも少なからずありますが、その一方で海外取引に慣れていない人や、取引先に勝手にアンダーバリューをされていて、気がつかないまましていたという人も多くいます。
アンダーバリューはその事実を知っていても知らなくても、犯罪行為であることに変わりはなく、全ての責任を取らされるだけでなく、今後の取引にも大きな悪影響を与えるということを忘れてはいけません。
インボイスは正しく正確に記入しよう
インボイスは、どの国と、誰と、そしてどんな商品を売買契約し、輸入したかを証明し、それにかかった経費を請求する役割を持っている重要書類です。
輸入許可を申告する際に必要となるプロフォーマインボイスと違い、コマーシャルインボイスは関税だけでなく貨物の輸送や輸送にかかる保険関係でも必要となります。
正しく記入し、トラブルで余計な経費がかかることのないよう、輸出者と打ち合わせをして正確な書類を作成するようにしましょう。