輸入ビジネスの買い付けと切っても切れないのが関税や消費税。
数字は苦手という方や、面倒だと感じる方もいるかもしれませんが、流れを把握し自分で計算することは、利益の確保にもつながっていくのです。
今回は、関税・消費税の流れと計算方法を中心に、知っておくべき重要なことを紹介していきます。
輸入消費税の課税と納付計算方法
輸入した商品を保税地域から引き取る際、輸入消費税というものが課税されます。
国内と輸入時、それぞれの消費税納付の流れを説明していきます。
尚、輸入における税関費用については、下記の記事を参考にしてください。
消費税とは
そもそも消費税とは、国内で商品やサービスを購入した際に課税される税金のことで、最終的に消費する人が負担しています。
これは輸入したものであっても、国内で消費されるものならば、通常の消費税と同じく最終的に消費する人が負担するものです。
尚、Amazonの出品サービスの手数料や消費税については、下記の記事を参考にしてください。
参考:税法改正がAmazonの消費税に影響する?Amazon出品サービスの手数料や消費税についての情報まとめ
消費税が発生するタイミングとは?
【通常の消費税】
国内で事業者がビジネスとしての報酬を得るために、商品を販売したりサービスを提供したりする際に課税されます。
【輸入消費税の計算】
輸入によって商品を仕入れる場合は、国外取引となるため課税の対象外となるのです。
国外取引とは、商品を買い付ける際、商品の所在が国外にあった場合のことを言います。
ただし、保税地域から引き取る際には消費税が課税される仕組みです。
消費税の納付方法
【通常の消費税の計算】
事業者は、消費者が支払った消費税を「預かる」という形になります。
その預かった消費税から、仕入れの際に支払った消費税を引いた額を納付する流れです。
【輸入消費税の計算】
輸入によって仕入れた場合は、仕入れた人に消費税の納付義務があります。
保税地域から引き取る段階で、直接納付するという流れです。
輸入仕入の消費税区分の方法
消費税区分の方法はいたって簡単です。手順を追って該当するか否かを判定して行きましょう。
その1.荷物を保税地域から引き取ったか
まず最初に、外国から輸入したもの(貨物)を保税地域から引き取っているかどうかを見ていきます。
保税地域というのは、輸入した貨物を輸入の許可等諸々の手続きを終えるまで保管したり、加工や製造をするための場所です。
保税地域に預けられる海外からの貨物は、事業者の物だけではありません。一般の消費者が個人で利用する目的の物やお土産等、海外から運ばれてきたものは全て該当します。
なぜ個人でも該当するかというと、消費税は最終的に消費する人が負担するものであり、個人の場合は保税地域から引き取った時点で最終消費と考えられるからです。
尚、輸入時に必要となるインボイスについての詳細は、下記記事を参考にしてください。
参考:中国輸入で必要となるインボイスとは?その詳細を知っておこう
その2.非課税取引の対象であるか
消費税法では、以下の7つのいずれかに該当している物は、非課税取引となります。
・有価証券等(外国為替等を含む)
・郵便切手類
・印紙
・証紙
・物品切手等
・身体障害者用物品
・教科用図書
上記に該当しない物は消費税として10%(軽減税率の対象となるものは8%)が課税されるので、輸入申告と納付を行いましょう。
尚、アンダーバリューについては、下記の記事を参考にしてください。
参考:中国輸入でアンダーバリューは絶対にダメ!抵触行為に注意しよう
輸入消費税の申告と納付計算方法
保税地域から引き取った貨物が課税対象となる場合は、事業者・個人に関わらず輸入申告と消費税の納付をしなくてはなりません。
保税地域所轄の税関長あてに、輸入者や商品の情報等、必要な項目を記入した「輸入申告書」を作成・提出します。
貨物を引き取るまでに消費税を納付しましょう。
中国輸入の消費税計算と課税品目
中国で制定されている消費税暫定条例に基づいて、以下に該当する事業者及び個人は消費税を納めることが義務付けられています。
・中国国内で製造や委託による加工を行っている場合
・条例で規定された物を輸入する場合
・条例で規定された物を販売する場合
消費税の計算方法
消費税と地方消費税の両方を計算していきます。
計算で出た数の100円未満は切り捨ててください。
消費税10%の場合
消費税(国税)=(商品代金+送料etc)×関税率7.8%
地方消費税=消費税(国税)×22÷78
消費税8%(軽減税率)の場合
消費税=(商品代金+送料etc)×関税率6.24%
地方消費税=消費税×17.6÷62.4
※輸入消費税は、国税と地方消費税で分かれています。
消費税10%の場合、国税部分の消費税で7.8%、残りを地方消費税で計算し、2つを合わせておよそ10%になるのです。
また、Amazonでの輸入ビジネスにおける利益計算方法については、下記の記事を参考にしてください。
消費税が課税される品目
主な課税品目を紹介します。
・アルコールやタバコ
・石油製品(ガソリン、ディーゼル等)
・化粧品(シッカロールを除いたもの)
・爆竹、花火
・木製の床板や割り箸
・高価な装飾品(宝石等)や腕時計
・乗用車、大型バイク、超高級車
・レジャーボート
・ゴルフ用品
・電池(水銀フリーの電池、太陽光電池、燃料電池等を除いたもの)
・塗料(低VOC製品を除いたもの)
課税価格が少なければ税金が免除される
商品代金と国際送料の合計が10,000円以下の場合は、関税と消費税は免除になります。
なお、個人で輸入した場合は、合計金額の60%が課税価格となるため16,666円以内であれば免除です。
輸入代行業者によって送料に差はありますが、平均して20㎏で10,000円ほどなので、始めのうちは商品価格の低いもののみ仕入れて送料と合わせて10,000円を切るようにすると経費が約10%削減できます。
イーウーパスポートは、格安レートの送料で利用できる輸入代行業者です。輸入も1箱から対応してくれるので、送料と合わせて10,000円を切るように調整しやすいです。
物流会社は、佐川急便、DHLなど大手各社の航空便やLCL混載便、格安快速便などの船便までの15社以上から選べます。
またイーウーパスポートでは、商品の仕入れや出品までの基本的な流れが学べる無料で在宅中国輸入ビジネス講座を提供しています。全7回のメール講座で中国輸入の基本を学ぶ事ができます。
興味のある方はぜひ無料で在宅中国輸入ビジネス講座を受講してください。
輸入関税と消費税の計算例
実際に数字を当てはめて、3つのパターンで関税と消費税を出していきたいと思います。
ちなみに関税は、商品代金+保険料+送料を合計したCIF価格に対してかけられるので注意しましょう。
関税も消費税と同様、100円未満は切り捨てて計算します。
CIFは国際的な取引規則
貿易取引においては、互いの国の文化や慣習などの違いから解釈の違いを産み、トラブルになりがちです。
そこで、国際商業会議所(ICC)が制定した国際的な貿易規則が、インコタームズです。商慣習や国際情勢の変化に伴い何度か改定されており、2020年に最新の改定がありました。
インコタームズ2020では、2つのクラスと11の規則が存在し、その11の規則のうちの1つがCIFです。
CIFでは、輸出する側が船舶の手配料・運賃・海上保険料の3つを負担する事になっています。ただし危険負担(災害などどちらにも責任がない事由による貨物の滅失や損傷を負担すること)は輸出港から貨物を船に積み込むまでとなっています。
パターン1:CIF価格が19万円の場合
CIF価格が20万円以下の場合は、簡易税率が適用されます。
今回は関税率、消費税率を10%で計算してみましょう。
【関税】 19万円(CIF価格)×10%(関税率)=19,000円
【消費税】 (19万円+19,000円)×7.8%=16,302円→16,300円 ※100円未満切り捨て
【地方消費税】 16,300円×22÷78=4,597円→4,500円 ※100円未満切り捨て
【税金合計金額】 19,000円+16,300円+4,500円=39,800円
商品によって簡易税率、一般税率共に数字が変わってくるので、より確定した数字を出したい場合は税率表で調べてから計算するとよいでしょう。
実際に支払う金額は、税金合計金額に手数料等を足した金額になります。
パターン2:個人輸入で少額計算の場合
個人で輸入した場合は、商品代金の60%が課税対象となります。
今回は例として、商品代金10万円、簡易税率を5%、消費税を10%として計算してみましょう。
【課税対象額】 10万円×60%=60,000円
【関税】 60,000円×5%(関税率)=3,000円
【消費税】 (60,000円+3,000円)×7.8%=4,914円→4,900円 ※100円未満切り捨て
【地方消費税】 4,900円×22÷78=1,382円→1,300円 ※100円未満切り捨て
【税金合計金額】 3,000円+4,900円+1,300円=9,200円
こちらもパターン1と同様、支払う金額は税金合計金額に手数料等を足した金額になります。
また、Amazon販売で必要となるコスト一覧については、下記の記事を参考にしてください。
参考:中国輸入×Amazon販売で必要なコスト一覧!カットすべきコストは?
パターン3:輸入関税が無税の場合の計算
今回はCIF価格が225,300円で関税が無税の場合を計算していきましょう。消費税は10%とします。
なお、CIF価格は1,000円未満を切り捨てます。
【消費税】 225,000円×7.8%=17,550円→17,500円 ※100円未満切り捨て
【地方消費税】 17,500円×22÷78=4,935円→4,900円 ※100円未満切り捨て
【税金合計金額】 17,500円+4,900円=22,400円
この場合でも上記2ケース同様、手数料を足した金額を納付します。
簡易課税で有効に消費税対策をしよう
売上が1,000万円を超えてから2年が経つと、消費税を納める課税事業者という扱いになります。
納める金額の計算は【売上の消費税 − 仕入・経費時に納めた消費税 = 納付額】です。
輸入で仕入れをしている場合、後々納付する消費税の額が大きくなることがあるので注意が必要になります。というのも、輸入の場合は仕入れに含まれている消費税が少ないことがあるのです。
たとえば、売上5,000万円、仕入3,000万円、経費が800万円だとして、全て国内で仕入れたケースと輸入で仕入れたケースを比較してみましょう。
・国内での仕入れ
(売上の消費税)500万円-(仕入時の消費税)300万円-(経費の消費税)80万円=(納付額)120万円 となります。
・輸入での仕入れ
仮に仕入れに含まれる消費税の金額が100万円だった場合、
500万円-100万円-80万円=320万円
となり、輸入の場合200万円も多く支払わなければならないのです。売上や仕入、経費の金額が同じでも多額の差になってしまいます。
ですが、輸入によって仕入れていても消費税を抑えることはできるのです。
簡易課税とは
簡易課税とは、みなし仕入れ率を使うことで簡単に仕入控除の税金額を出し消費税を計算していくというやり方です。
通常は、仕入れと経費で支払った消費税が仕入控除の税額となるのですが、簡易課税では支払った消費税は考える必要がなくなります。
【売上の消費税-(売上の消費税×みなし税率)=納付額】という計算になるのです。
ちなみにネットショップのみなし税率は80%となります。
これを先ほどの売上5,000万円の場合に当てはめてみると、
500万円-400万円=100万円となり、輸入した場合はもちろん大幅なカットが期待できますが、全て国内で仕入れている場合の金額からも20万円ほどカットすることが可能になるのです。
消費税は、節税や税金対策が難しいというのが定説ですが、今かかっている経費や消費税額によっては簡易課税で対策できると言えます。
ただし、簡易課税を適用させるにはいくつか条件があります。まず大前提として、前々年の売上が5,000万円を超えていないことが必須条件です。
その他の注意点についても説明していきます。
輸入消費税の計算時に注意したいポイント①
簡易課税への切り替えはすぐにできるものではありません。
簡易課税に切り替えたい期間の初日の前日までに消費税簡易課税制度選択届出書を提出しておく必要があります。
地域の管轄の税務署長宛に提出しましょう。
注意したいポイント②
原則として簡易課税の適用から2年間は、消費税の計算方法を変更することができません。そして、中止をする際にも再度届け出る必要があります。
また、実際に支払った消費税は関係なくなるので、高額な仕入れや経費が発生しても、消費税の還付を受けられないのです。
2年の間に高額な出費をする予定がないか、慎重に考えましょう。
原則としてと書きましたが、売上が5,000万円を超えた場合には原則課税に戻り、逆に1,000万円以下になった場合は課税事業者の対象から外れます。
簡易課税は、大きなメリットが期待できる一方で、注意しなければ大きなデメリットにもなりえます。しかし、原価がそれほど高くない商品を扱っているなど、状況次第では使った方が利益を残す上で有利になる制度でもあるのです。
輸入消費税は控除可能
輸入消費税は消費税確定申告のときに控除することができます。控除可能な金額は、荷物を受け取るときに支払った消費税額全額です。
そのためには「輸入許可通知書」等の書類が必要です。書類は捨てないようにしましょう。
輸入消費税額も仕入税額控除の対象となっているのは、その年のものだけでなく、納付期限の延長を受けて未納となっている分も控除対象となります。延長を受けずに未納となっている分は、控除対象にならないので注意してください。
消費税区分にも気をつける必要があります。輸入にかかる消費税の内、全てが輸入消費税というわけではなく、一部に地方消費税が含まれています。控除対象の対象となるのは輸入消費税のみです。
通関業者の請求書に輸入消費税と地方消費税が区別されて書かれている事が多いですが、ない場合は輸入許可証に必ず書かれています。それらの書類を参考にしましょう。
なお、簡易課税が適用されている場合は、輸入消費税の控除はありませんので留意してください。
個人や免税業者の輸入消費税の支払いはどうなるのか
通常の消費税支払い義務のない個人や免税業者でも、輸入消費税の納税義務はあります。
しかし、免税業者は消費税の確定申告はしませんので、輸入消費税の控除を受けることは出来ません。
控除できないなら払い損ではないかと思うかも知れませんが、そもそも通常の消費税も控除できるものではありません。控除できる輸入消費税が特殊なのです。
さらに、消費税は販売価格に転嫁されるもので、担税者は消費者です。事業者にあるのは納税義務だけなので、そこに損得はありません。
輸入消費税は帳簿上、仕入高に計上できるので損金として計上できます。
参考:日本貿易振興機構JETRO|輸入における消費税の課税:日本
参考:国税庁|消費税のしくみ
関税・消費税の支払い方法は何がある?
個人で商品を輸入した際、関税・消費税を支払う方法は3つあります。
・着払い
・銀行振込
・クレジットカード決済
それぞれの方法を説明していきます。
着払い
自宅もしくは指定した場所まで、商品を届けてくれる場合に利用する方法です。
荷物を受け取る際に配送業者の方に関税・消費税を現金で支払います。場合によっては「代金引換」と言われることもありますが、中身は関税と消費税ですので同じ意味合いになります。
クレジットカードは利用できないので、必ず現金を用意しておきましょう。
銀行振込
商品が日本に到着し関税・消費税の請求が来たら指定された口座に振り込む方法です。
この方法では、業者によって支払いが確認できるまで配送されない場合や、先に立て替えてくれる場合など対応がまちまちなので、事前に確認しておくとよいでしょう。
クレジットカード決済
DHLとFEDEXを利用していれば、クレジットでの決済が可能です。
DHLだと支払うタイミングを選べるので、希望のタイミングをSMSまたはemailにてオンラインポータルサイトに連絡します。
FedExでクレジットカード払いをしたい場合も、カスタマーサービスまで電話での連絡が必要になります。
OCSやEMSを利用した場合はクレジットカードでの決済ができないので注意しましょう。
尚、輸入における送金方法については、下記の記事を参考にしてください。
輸入消費税の計算で絶対にしてはいけないアンダーバリューについて
輸入をする上で必ず知っておかなければならない、かつやってはいけないことがあります。
本当に危険な【アンダーバリュー】について説明していきます。
インボイスの重要さ
アンダーバリューの前にインボイスの説明をします。
これが理解できていないと、知らず知らず違法行為をしてしまう羽目になる場合もあるのです。
インボイスとは、税関を通す際に必要な書類で、仕入書とも呼ばれています。このインボイスには、仕入れた貨物に対する大事なデータが記載されているのです。
関税を出す場合もこのインボイスの情報を基に計算しています。
とても重要な書類ですが、その内容を証明することは第三者にはできず、価格を改ざんすることもできてしまうのです。
本当の金額が100万円だったとしても、インボイスに書かれている金額が10万円になっていればその金額で計算されてしまいます。
アンダーバリューとは、関税額を安くするためにインボイスを利用し実際より安い金額を書き、後で実際の金額を支払う行為ですが、これはれっきとした不法取引で脱税していることになるため、刑事罰の対象です。絶対にしてはいけません。
気づかぬうちに違法行為をしていることも
自分の意思で書いたり、業者側に指示するのは言語道断ですが、気づかぬうちに違法行為をしてしまっていた……というケースもあります。
アンダーバリューはどの国でも違法となる行為ですが、中には余計なお世話で勝手に安く表記してくる業者もいるのです。
自分では気づかなくても、これももちろん犯罪に当たります。知らなかったと言って片付くものではありません。
業者側が本当に計算間違いをしていただけという場合もありますが、これも通用しません。
インボイスを自分の目でしっかり確認し、取引した内容と違うようであればすぐに申告、修正を行いましょう。
輸入消費税の計算でアンダーバリューが発覚した時はどうなる?
アンダーバリューが発覚した場合、どんなことが起こるのでしょうか。
まず、過少申告加算税や延滞税を支払わなくてはなりません。さらに悪質と判断された場合は重加算税も支払う可能性があります。
当然過去の取引も全て調査され、その分支払いが増加していくことが考えられるのです。
悪質であれば今後の輸入が禁止されることもありますし、そうでなくても輸入の都度厳重に検査されるようになります。
これだけでも、ビジネスとしてやって行けなくなる可能性が十分にありますが、犯罪なので逮捕等刑事罰を受けることもあるのです。
バレなければ良い、海外でもやってる人が多いだろう等軽い気持ちで手を出してはいけません。
しつこいようですが、犯罪です。仮に業者に持ちかけられても絶対に乗らずに対応しましょう。
中国輸入の関税・消費税で大切なこと
輸入ビジネスを行う上で、関税・消費税のことを知っておくのはとても重要なことです。
法律が絡んでくる部分がいくつもあって難しく感じるかもしれませんが、わからないままなんとなくやり過ごすのは危険ですし、大損にもつながりかねません。
また、計算も自分で行うようにしましょう。
計算をするかしないかで、利益が出るかどうか正しく把握できます。
苦手な人は何度も練習したり、調べるなどして克服してください。それくらい大切なことなのです。
今回の記事をぜひ頭に入れて、ビジネスの幅を広げていってください。
また、中国輸入であるトラブルについては、下記の記事を参考にしてください。
参考:中国輸入でよくあるトラブルとは?対策方法を知ってリスクに備えよう